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unconventional【スキル・メイク・オンライン】 作者:紺藤シグル
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22話 森の忍者

 零がシンを助けたのは、唯の偶然だった。

 以前木に登り視認した町明かりらしき物が、本当に山の(ふもと)に存在したのかを確認するために、零は木の頂上に登っていた。
 確かに存在することをその目で確認し木を降りていると、下で少年の叫び声が聞こえてきた。

 (ブルーウルフに襲われているのか)

 深夜のため夜目のスキルが発動し、光源の無いところでは視界が緑色になっているのだが、少年が持つランプの光によって、夜目のスキルは一時的に発動していない状態になっている。
 倒れている少年の周りを3体のブルーウルフが囲い込み、今にも襲い掛かろうとしているところを見て、零はどう見ても少年には勝てそうも無いので、気まぐれで助けることにしたのだ。

 (あの子は強くなるな)

 事の顛末(てんまつ)を思い出しながら、零は新しい町が有るであろう方向に歩を進める。

 シンは弱かったが、彼には強くなるための信念があった。
 努力を(おこた)ることが無ければ、順調に成長するだろう。

 (――っと、近くに敵が居るな)

 考え事をしていて負けましたなんて、言い訳としては最悪だ。
 すぐさま頭を切り替えて、戦闘モードに変更する。

 気配のした方向に行ってみると、そこには3頭のシカが、地面に生えている草をゆっくりと噛み締めながら食べていた。
  シカは肩高0.8m、体長1.5m、尾長10cm。尾の上面は体の背側と同じ褐色で、下面――つまりお腹の部分は純白になっている。

 零は一瞬見逃そうかと思ったが、シカには様々な用途が存在することを思い出す。
 食肉や毛皮、角は加工して矢尻や釣り針にすることもできる。
 狩っていて損は無い。

 そう考えを改めた零は木の陰から飛び出し、2頭を一振りで横に斬り裂いた。
 先ほどのブルーウルフの時も驚いたが、この新しいブロードソードは斬れ味がとても良い。

 始まりの町で買っておいた砥石で研げば、血糊(ちのり)が付いて斬れ味が落ちても、また斬れ味を戻すことが可能になった。
 これで今のところは武器の問題は解決し、戦闘に集中できる。

 (良い仕事をしてくれた)

 ダインに感謝しつつもう一振りし、残った1頭も斬り伏せる。

 (鹿肉を手に入れることも出来たし、料理もしてみるか)

 どんな味がするのか想像しながら、零は倒したオジロジカという名称のシカたちを剥ぎ取っていった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 道中でブルーウルフやオジロジカ、そして新しく発見した体長1mほどのネズミを倒しながら、零は森の奥へ順調に歩を進めていた。
 真っ暗な森の中で、月明かりが届いている比較的開けた空間に足を踏み入れる。

 「(つう)っ!」

 すると不意に背中が何かに掴まれて、刺されたような痛みを感じる。
 零はすぐさまブロードソードを鞘から抜き、自分には当たらないように背中を斬りつけた。 

 背中から重みが取れ、ぐりぐりとナイフを食い込ませて行くような痛みが無くなる。

 零が後ろを振り向くと、視界には褐色に白い斑紋のフクロウが、音も立てずに羽を広げ、空中を飛んでいた。

 フクロウの全長は50cm程度だが、羽を広げることで1mほどの横幅になっている。
 尾の長さが20cmほどで、やや長く扇形だ。

 リアルのフクロウは、普段は穏やかでおとなしい気質であるため、人間から非常に親しまれている鳥であるが、繁殖期には雛を守るため巣に近づく人間に対して攻撃的になる。
 巣に近づく人間に向かって飛びかかり、鋭い爪で目を攻撃して失明させたり、耳を引きちぎったりする事例も確認されている。

 (ただ)このゲームのフクロウが襲い掛かって来たのは、繁殖期だからと言う訳では無いだろう。 
 元々フクロウは猛禽類(もうきんるい)と呼ばれる鳥類の一種だ。
 猛禽類(もうきんるい)とは、鋭い爪と(くちばし)を持ち、他の動物を捕食する習性のある鳥類の総称とされている。
 獲物を捕まえるための鋭い爪、掴む力が強い(あしゆび)、鉤型に曲がったくちばしを持つことが共通の特徴で、 一般的に生態系の頂点に位置する例が多いことから、強さ・速さ・権力・高貴さの象徴として、猛獣などとともに戦闘機やスポーツカー、シンボルマーク、特撮やアニメのヒーローのモチーフになることが多い。

 その中でもフクロウは、木の枝で待ち伏せて音もなく飛び、獲物に飛び掛かることから『森の忍者』と称されることもある。

 今回も零に気づかれること無く、足の指を広げて彼の背中に鋭い爪を突き立て、押さえつけて締め殺そうとしたのだから、『森の忍者』と称されることにも納得だ。

 (厄介(やっかい)なのが出てきたな……)

 新しく作ったグレートブルーウルフのジャケットとVネックTシャツを着ていなければ、先ほどの攻撃が致命傷になっていたはずだ。
 初期装備のままなら背中を深々と突き刺され、出血死していたかもしれない。  

 (それなりに警戒していたんだが……。甘く見ていたか)

 まだまだ弱いなと、自分の力の無さを反省し、経験として蓄積していく。

 フクロウは剣を構えるこちらを警戒して無理に突っ込んで来ることは無く、お互いに膠着(こうちゃく)状態になっていた。

 「ゴッホウ、ゴロッケ、ゴゥホウ」

 フクロウは犬が吠えるような声で鳴くと、木の枝に着地し、その平たいお面のような顔で、ジッと
此方こちらを目視している。
 零は直観的に仲間を呼んだんだと感じ、周囲に気を張り巡らせる。

 フクロウは羽音を立てずにふわふわと飛ぶため、見つけるのは難しい。
 しかも人間よりも遥かに視力が優れていて、その差は100倍あると言われている。
 聴覚も発達しており、地表近くの地中にいるモグラの移動音を察知し、仕留めてしまうほどだ。

 逃げることは不可能だろう。

 2羽相手にする覚悟を決めて、向こうから攻めて来るのを待つ。
 身体を常に動かして周囲を視界に(おさ)め、これから来るであろう、もう1羽に不意打ちされないように警戒する。

 そうこうしていると零の視界に新たなフクロウが飛び込んできた。

 「ゴッホウ、ゴロッケ、ゴゥホウ」

 新たに来たフクロウの鳴き声は、今まで居たフクロウに比べて、低く(かす)れた余り響かない声を発していた。
 今まで居たフクロウも、その透き通った良く通る鳴き声を発し、空中に羽ばたいた。

 2羽で零を挟むように飛び回り、攻撃するタイミングを(うかが)っている。

 零はわざと動くのを止め、隙を作る。

 視界に入っているフクロウは動かないが、もう1羽はどうだろうか?

 頭の中で後ろから飛び掛かって来る、もう1羽フクロウをイメージし、タイミングを合わせて振り返りながら剣を振る。

 案の(じょう)飛び込んで来ていた、もう1羽のフクロウの身体を、ブロードソードが引き裂いた。

 残った1羽の存在を確認するべく、首を回す。
 すると残ったフクロウが怒り狂っているのか、鋭い爪を此方(こちら)に向けながら襲い掛かって来ていた。

 真っ直ぐ突っ込んで来るという愚策に出たフクロウに、零はこれまたタイミングを合わせて剣を振る。
 ブロードソードによって真っ二つに斬り裂かれて、残ったフクロウも絶命した。

 開けた森林内で月光を浴びながら、零は自身に傷を負わせたフクロウに賞賛の目を向け、佇んでいた。   
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