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孤高の青年は飽くなき強さを追い求める ~unconventional【スキル・メイク・オンライン】~ 作者:紺藤シグル
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17話 賞賛

 「こうして歩いてみると、綺麗ではあるけれど、何だか殺風景ね」

 街灯で照らされる家々に、赤と白の石畳で舗装された道。
 夜ということもあって、ある種幻想的な雰囲気が出来ているが、家の窓からは光が灯されることは無い。
 人の営みが感じられない光景は、ある意味で不気味と言えるかも知れなかった。

 「確かにこのままだと寂しい気はしますね」

 リアに同意する沙織の言葉に、零は一つの可能性を考える。

 「でもこれから家を買うプレイヤーが出てくれば、活気が出て来るんじゃないか?」

 「もっともな意見だけれど、家を買うには膨大なお金が必要よ。まだ当分の間は出て来ないと思うわ」

 家を買うと、このゲームのデスペナルティーをかなり軽減することが出来る。
 プレイヤーとしては、家を買うことはリスクマネージメントとしても有効であり、目標の一つと言っていいだろう。

 「購入は出来なくても、借りることは出来るんじゃないか?」

 「家を借りるメリットが無いんです」

 「維持費が掛かるし、デスペナルティーの軽減は、あくまでも家を買ったプレイヤーだけだから、借りるだけだと意味がないの」

 「それは俺らみたいなモンスターと戦うプレイヤーだけの話だろう?例えば鍛冶屋なんかは外で店を開いた方が注目を浴びるし、差別化を図れるはずだ。あの鍛冶ギルドの中だと限度があるしな」

 「そうね……。でも鍛冶屋だらけになるのも何だか嫌かも……」

 零の言葉に納得しつつも、鍛冶屋だらけの町の様子を想像したのか、複雑な表情を浮かべるリア。

 「リアルマネーと関係なく、純粋にゲームを楽しんでるプレイヤーは必ずいるさ。料理の修業をしているプレイヤーは自分の店を出すかもしれないし、雑貨店とかを出すプレイヤーや、宿を作るプレイヤーもいるかもしれない。それに――――」

 「それに?」

 「何だかまだまだ見つかっていないだけで、生産職にもいろいろな要素がこれから発覚していく気がするんだ」

 「今は皆リアルマネーが絡んでますから、鍛冶屋や戦闘プレイヤーが多いですもんね。確かに落ち着いたらどんどん増えるかもしれません」

 零が言い知れぬ予感を感じながら町を回っていると、遠目に海が見えてきた。
 海は月明かりに照らされて、幻想的で怪しい、魔力でも帯びているような、そんな人を引き付ける何かがあった。

 「地図を見ていたときは話が逸れたけど、この町は港町だったんだな」

 「そうよ。実際に触ってみると冷たくて気持ちいいの」

 「入ることは出来ないのか?」

 「できますよ。ベータテストのときには実際に入っていた人たちもいましたから」

 一体ゲームの中の海に入るのがどんな感覚なのか、想像がつかないだけに興味がそそられる。
 近づくにつれて、疎らにだが砂浜や海の中に人がいるのが確認できた。

 「もう既にプレイヤーがいるな」

 「まあ見たら入ってみたくもなるわよね。沙織も初めて見たときは子供みたいにはしゃいでたじゃない?」

 「はしゃいでなんていません!!」

 顔を真っ赤にして否定する沙織は、普段の冷静でクールビューティーなイメージを保とうと必死だ。

 「あの時はあくまでもゲームの中の海がどんな物なのか知りたいという知識的な欲求からであって、決して楽しそうだなとか思ってはいません!!」

 「でも海に入ってキャアキャア言いながら私に水を掛けてきたじゃない?」

 「あれは――――」

 「目をキラキラさせて楽しそうに笑ってたわよ?」

 「もう勘弁してください……」

 これ以上弁解しても自身が不利になっていく一方だと悟った沙織は、涙目になりながらリアに許しを請うた。
 そんな沙織を見てリアはクスクスと笑っている。
 そんな二人の姿を暖かく見守っていると、いつの間にか浜辺のすぐ近くに着いていた。

 海は穏やかに波を打ちながら、どこまでも続くような水平線を描いている。
 泳いでいる者、浜辺で寝転がっている者、水を掛け合っている者、様々なプレイヤーが、ゲームで体験する海を楽しんでいる。

 砂浜に足を踏み入れると、ジャリッとした砂を踏む感覚と共に、足が少し砂浜に埋もれる。
 数歩そのまま歩くと、歩いた後には足跡が出来ていて、現実と変わらない光景に、ゲームの中だということを忘れそうになる。
 砂を手に取って掬い上げると、サラサラと指の隙間から零れ落ちて行った。

 「凄いですよね」

 ちょっとした検証をしていた零の隣で、沙織が呟く。

 「これだけの物を作るのに一体どれだけの技術が必要なのか、想像もつきません……」

 水平線を一直線に照らす月を見る沙織は、このゲームの世界に魅入られているようだった。

 「確かにこれだけのゲームを作るのは、想像もつかない技術が必要だろうね」

 人間をバーチャルの世界に入れるだけでも大変なのに、その世界でこれだけの物を作り上げている。
 彼女たちの純粋な賞賛とは別に、零は一体何故ここまでのゲームを作ったのか、その理由が知りたくなっていた。

 金儲けのためなのか。
 単純にこんなゲームを作ることが夢だったのか。
 人々がゲームをして楽しむ姿を見るのが純粋に好きなのか。

 それとも――――

 いずれにしても今ここで考えても答えは見つからない。
 制作者にどんな意図があるにしても、ここまでのゲームを作ってくれたことへの感謝と、尊敬の意を込めて、まずは純粋にこのゲームを自分なりに楽しもう。
 そう考えなおして、海に向かって歩き出す。

 「そういえば水着ってあるのか?」

 「私たちの水着姿が見たいの?」

 零は純粋な疑問として言っただけだったのだが、リアはそうは思わなかったらしい。
 いや、単純に零をからかうチャンスだと思ったのだろう。
 自身のその豊富な胸を強調するように、両腕でクロスさせるようにして胸を隠し、挑発的な視線を送ってくる。

 「ああ。目の保養に是非とも見たいね」

 零がニッコリと笑って、淀みなく返事をしたことがリアには予想外だったようで、目をパチパチと瞬きした後に、ムッとした表情に変わった。

 「そんな反応じゃあ面白くないわ。もっと慌てふためくとか、顔を真っ赤にするとか、初々しい反応を期待していたのに……」

 「こういうことを言われることに慣れているんですか?」

 沙織がリアを軽くあしらった零に対して、感心した様子で尋ねてくる。

 「こういうことって、どんなこと?」

 「えっと……」

 挑発的なことを言うことに慣れていないのか、沙織は口に出すことを躊躇う。

 「私に水着を来てほしいの?っとか、そういう言葉です……」

 顔を少し赤くして、語尾が小さくなりながら答えた沙織に向かって、零は追い打ちをかける。

 「もっと大きな声で言ってくれないと聞こえないんだけど?」

 目を細めて見詰める零に、沙織はますます顔を赤くしてあたふたとし出した。

 「あんまり沙織をからかわないの!」

 リアがズイッと沙織と零の間に入ってくる。
 先ほどまで自分が沙織のことをからかっていたことを棚に上げながら、リアは零を睨みつける。
 零の視線がリアに向いたことで解放された沙織が、ほっと一息ついて、胸を撫で下ろした。

 「確かにからかい過ぎた」

 零は反省した様子を見せず、クスクスと笑う。

 「何で笑うのよ!」

 「二人が可愛くてついついな」

 顔を伏せて大人しくしている沙織に、顔を赤くしながらも零を睨みつけてくるリア。
 どこか似ているが対照的な2人を見て、また笑いが込み上げてくる。

 「何でまた笑うのよ!」

 「いや、2人とも大人っぽいように見えて、まだまだ子供だなと思って」

 「そんなことはありません!」

 「そうよ!」

 「ムキになるところが余計に子供っぽい」

 痛いところを指摘されて、2人して黙り込む。
 そんな2人を微笑ましく思いながら腕時計で時間を確認した。

 「もう19時だ。一旦ログアウトして飯を食ったりするから、また今度な」

 「装備を取りに行くときに会うだろうし、また4時間後ね」

 「お前たちも来るのか?」

 「どんな物になったか興味がありますしね」

 「そうか。じゃあ4時間後に」

 「はい」

 「またね」

 それぞれ簡単な別れの言葉と共に、3人はログアウトし、現実世界へと戻って行った。

     
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