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孤高の青年は飽くなき強さを追い求める ~unconventional【スキル・メイク・オンライン】~ 作者:紺藤シグル
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16話 様々な楽しみ方

 「あの人だかりは何だ?」

 零たちが交差点に差し掛かろうとしていると、人垣を作ってワイワイと盛り上がっている集団が目に入った。

 「誰か有名人がいるか、珍しい食べ物でもあるんじゃないでしょうか?」

 「ちょっと気になるし私たちも行ってみましょう?」

 リアに促されるまま人垣の中に入り込む。
 興奮気味のプレイヤーたちの合間を縫って行くと、人垣の中央には一人の男性プレイヤーがいた。

 「こうやって多くの人達に、こんなに近くで見られながら実況プレイするのは緊張しますね」

 男性プレイヤーは、緊張していると口では言っているが、多くの人々に囲まれている状況が慣れているのか、口調に淀みは無い。
 彼の言動や行動を見て観客が盛り上がるのを見ていると、何だか歌手のライブ会場や、お笑い芸人のライブを見に行っているような感覚に陥る。

 「ゲーム実況プレイヤーみたいね」

 「このゲームは実況プレイすることを許可してるのか?」

 「していますよ。ゲームの人口を増やすためのマーケティング活動の一環ですね。許可を出して実況プレイヤーに実況してもらって、動画を投稿してもらうことで知名度アップができますからね」

 ゲーム実況動画とは、プレイヤーが実況しながらゲームをやった様子を収めた動画のことだ。
 そして実況しているプレイヤーのことを、ゲーム実況プレイヤーと呼んでいる。
 ゲームを実況するとは言っても様々なスタイルがあるので、実況しているとは言えない物も存在する。

 「それにしても人気があるんだな。こんなにも人が集まってるなんて」

 「実況プレイヤーの中には有名になって、実況プレイをしてお金を稼いでる人たちもいますからね。彼もあれだけ人が集まるということは、中々に有名なのかもしれません」

 「まあどんな切っ掛けでも人口が増えるのは良いことなんじゃないかしら?過疎っちゃうよりはずっとマシだものね」

 実況プレイヤーに興味がそれほどあるわけでもない3人は、人垣から抜け出してまた歩き出していた。
 人垣がどんどん遠くに離れていく。

 「今の奴みたいに運営が色んな施策をしていたりするのか?」

 「はい。色んなことをしていますよ。テレビのCMやネットへの配信はもちろんですけど、他にも企業向けにも何かやってたりするみたいです」

 「それ知ってるわ。遠くにいる人達と会議や資料を使った交渉、会談をできるように会議室があるって話。しかも企業に無償でゲームを2台配布しているんでしょう?実際に体験してもらうために」

 「みたいですね。資料をデータにしてゲーム内に持ち込んで、会議室で大スクリーンを使って遠くの人間にもプレゼンテーションをすることができるとか」

 「他の支部の人達との会議とかには有用かもしれないな。全国に散らばる子会社の代表をゲーム内の会議室に集めれば、物理的な距離による時間消費、交通費の節約、時間を合わせるための時間調整が簡単になったり、言い出したらもっとあるが、メリットはかなりあるだろう」

 頭の中に会議室の様子が浮かんで来る。

 「実際に使った会社はあるのか?」

 「いえ、今日がゲーム開始ですから、まだ居ないと思いますよ」

 「それもそうか」

 もっともな言葉に納得しながら歩いていると、前から一人の女性プレイヤーが話し掛けてきた。

 「少し時間を頂いてもいいですか?」

 営業スマイルを浮かべながら首を傾げている女性の前で、3人は足を止める。

 「内容によります」

 「私の服装の感想が欲しいんです!!」

 彼女は手を合わせてお願いのポーズを取ってくる。

 「感想ですか?」

 沙織が困惑の表情を浮かべて眉を寄せる。

 「私ファッションデザイナーを目指してまして、ここなら好きな服を1000円で一揃い作ることが出来るので、自分のデザインした服を他人に評価してもらうには最適なんです」

 「課金して新しい初期装備を作ったのか」

 「そうです。好きなデザインで作ることができて、しかもそれを着て他の人に評価までして貰えるので、とても助かっています」

 心底楽しそうな笑顔になる彼女を見て、ファッションをデザインすることが本当に楽しくて仕方がないことが伝わってきた。

 「そういうことなら、僭越(せんえつ)ながら感想を言わせて貰いますね」

 リアが了承したことで3人でそれぞれ感想を言っていく。

 「参考になりました!ありがとうございます!」

 元気一杯にお礼を言って頭を下げた後に、彼女はトタトタと零たちの横を通り過ぎて行った。

 「これからプロのデザイナーも出てきそうだな」

 両隣の2人も同意するように頷く。

 「この調子ならプロゲーマーも出て来るんじゃないか?」

 零の言葉に2人は顔を見合わせて、『何言ってるんだこいつ』とでも言いたいような顔をしてくる。

 「何だ?何か言いたいことがあるのか?」

 「あるわよ」

 呆れたとでも言わんばかりに深いため息をつくリア。

 「ゲームで生活費を稼ぐと言うなら、今このゲームでプロゲーマーに一番近いと言えるのは零さんではないでしょうか?」

 「貴方は既に35万円は稼いでるでしょう?」

 2人からの非難するような視線に居心地が悪くなる。

 「エレクトニック・スポーツって言うのがあるだろう?対人戦が始まれば賞金が出る大会が開催されそうだと思ったんだ」

 エレクトニック・スポーツとは、複数のプレイヤーで対戦されるコンピュータゲームをスポーツ・競技として(とら)える際の名称。
 実際はEスポーツと省略した形で使われることのほうが多い。

 「開催されるでしょうね。実際ベータテストの最終日には、決闘っていう両者合意の元で行われる対人戦が実装されたもの」

 「まだ正式サービスが始まってから、何故かは分かりませんが、対人戦が出来るように実装されていません。しかし実際に実装されたら、大会は行われると私も思います」

 「二人は出るのか?」

 「出るわ」

 「私は迷っています」

 即答したリアと、少しの間ができた沙織。

 「貴方は出るの?」

 「いや、出ない」

 「出ないの!?」

 即答した零に二人は驚きから目を見開いている。

 「貴方は現時点で優勝候補ナンバーワンと言っていいわ。賞金も稼げるだろし、出て損は余り無いと思うけれど?」

 「金はあるから別に良いんだ。それよりも強い奴と戦えることは魅力的だが、それによって有名になって面倒なことになるんだったら、出ずに大会で強かった奴に後で決闘を申し込めばいい」

 「本当に面倒事が嫌いなんですね」

 「まあな」

 肩を竦める零に、リアが挑発的に問いかけてくる。

 「私が強かったら私とも戦ってくれるの?」

 「もちろん。強ければこちらからお願いに行くよ」

 「その言葉忘れないでね」

 目を細めて言質(げんち)を取ったと言わんばかりにニヤリと笑ったリアに、零も挑発的に視線を送り返す。

 そんなやり取りをしていると、左手側の時計屋が零の目に止まった。

 「ここに入ろう」

 足を止めて時計屋に向かって歩き出した零を二人が追いかける。
 焦げ茶色のドアを開けると、カランカランと木と木がぶつかり合った入店音が頭の上から響いてきた。

 「いらっしゃい」

 ぶっきら棒な声が、店主と思わしき白髪のお爺さんから聞こえてきた。
 頭の上に黄色の文字で名前が出ているところを見ると、NPCなのだろう。
 彼はこちらを一度も見ることなく、手元で時計を弄っている。

 店内は壁掛け時計から懐中時計、腕時計と様々な時計が置いてあった。
 ぶっきら棒な店主とは違い、ランプの光で店内はかなりの明るさがある。
 時計の機械音が心地よく耳を擽り、購買意欲が注がれる。

 「時計屋に来たってことは時計を買いに来たんでしょう?でもメニューから時間を確認できるのに、時計が必要なの?」

 現実世界で言うなら、携帯で時間が確認できるのに時計が必要なのかという疑問と同じことだ。

 「ファッションの一環として欲しいということですか?」

 「いや、まあそれもあるにはあるが、本当の目的とは違うな」

 2人が首を傾げて考えている横で、零は気になった腕時計を手に取って確認する。

 「分からないか?」

 2人は少しの間悩んでいたが、結局分からなかったのか、教えてくれと目線で訴えかけて来たので、零は説明をするために口を開いた。

 「太陽の動き方が現実世界と同じなら、アナログ時計で方角を確認することが出来る。これからどんな場所が出て来るか分からないからな。今の内に準備しておこうと思ったんだよ」

 「時計で方角が分かるの?」

 リアが興味津々で聞いて来ると同時に、沙織も教えてくれと言わんばかりに近づいて来る。

 「短針を太陽に向ける。そして12時と短針がさしているちょうど間が南になるんだ」

 「それで分かるの?」

 「ああ」

 「便利ですね」

 感心して零を見る二人に少しこそばゆく感じながらも、購入する腕時計を決める。

 「プレイヤーを道に迷わせるステージとかも出てきそうだものね」

 「備えあれば憂いなしですか」

 2人も零の言葉を聞いて必要だと感じたのか、腕時計を探し始めた。

 「決まったわ」

 「私もです」

 2人で丸い形をしたお揃いのデザインの、赤と青の色違いのベルトをした腕時計を持ってくる。
 零は四角い形の黒のベルトをした腕時計を持って、NPCのお爺さんの居る所に持って行った。

 そして3人は購入し終えた腕時計を早速着けて、店内を後にしたのだった。
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