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unconventional【スキル・メイク・オンライン】 作者:紺藤シグル
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94話 協力者

 桐嶋から転移させられた零は、無事に彼の馬であるハノーバーと合流し、今は第2の村を目指して馬で駆けていた。

 (今会った桐嶋が本当に製作者であるという証拠はないが、どちらにしても現時点では他に有力な情報も無い。今は信じて桐嶋の言うNPCを探しつつ、他の方法も模索するか……)

 様々な出来事があった為、零は馬上で情報の整理を行いつつ、やるべきことを決めて行く。

 (ゲーム外での捜索はあの人に任せるとしても、ゲーム内でも協力者が必要だな)

 既にスキル・メイク・オンラインをプレイしていて、ある程度ゲーム内を把握している零がゲーム内の捜索を担当。
 ゲーム外は旧知の人物に協力を要請して捜索は任せる。
 当初の予定と余り変わっていない様に見えるが、桐嶋と会う前と後で決定的に変化した部分がある。
 それはゲーム内での捜索に掛ける比重だ。

 (最悪の場合は切り札もある。余り使いたくはない手段だが……)

 今想像している全ての手段が失敗した時の奥の手を思い浮かべながら、零は苦い表情を浮かべる。
 しかし直ぐに今やるべき事へと頭を切り替えた。

 (()に角まずはリア達と合流しよう)

 聖や桐嶋と対話したことで、予想していた時間よりも到着するのが随分と遅れてしまっている。
 取りあえず第2の村へと向かっていることをメールでダインに送ると、第2の村の出入り口で待っていると返信が来ていた。

 (まずはリア達から協力者になってくれるか尋ねてみるか……)

 聖の目的を達成する為の手段を阻止するメンバーを集める上での第一歩に向けて、どう話を切り出すかを考えながら、零は馬を走らせ続けるのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「遅かったね。何かあったのかい?」

 第2の村の出入り口に到着した零に対して、開口一番に言葉を発したのはダインだった。
 他の面々も零が何故遅れたのかが気になっているのか、零を無言で見つめている。

 「その話は長くなる。取り敢えず何か食べながら話そう。皆はもう昼食は食べ終わったのか?」

 「いや。まだ食べてないよ」

 「じゃあ丁度良かった。店は適当な場所で良いか?」

 零は問いかけに対して全員が頷いたのを確認すると、以前第2の村へと来ていた時に見かけていた、大通りから外れた場所にある定食屋へと足を向ける。



 店に到着すると、大通りにある店とは違い、予想通り零が足を踏み入れた定食屋は閑散としていた。
 話をする上で周りの目を気にする必要があった訳ではないが、店が満席で待たされるよりは、少し遠くても()ぐに食事が出来ることにメリットを感じたので、この店に決めたのだ。

 そして零の予想通り、注文した料理は直ぐに全員分運ばれてきたお陰で、気兼ねなく聖と桐嶋の事について話すことが出来た。

 「信じ(がた)い話ですね……」

 「信じられなくても無理はないが、事実だ」

 零の話を最後まで聞き終えた面々が絶句している中、最初に口を開いたのは沙織だった。
 言葉を発した後に険しい表情で考え込む沙織に対して、零は真剣な表情で断言する。

 「危険な状況なのは理解できたけど、その話が本当なら警察に通報するなりすれば良いんじゃないかな?」

 ダインが自身の考えを零に向けて述べると、零は首を振って彼の提案を否定する。

 「おそらく警察には手が回っている。しかも聖と桐嶋の2人共がコネクションを持っていると考えた方がいい。念のため話してはみるが、まず無理だろう」

 確固たる証拠がある訳ではないが、零にそう推察させるだけの根拠は存在している。
 例えばこのスキル・メイク・オンラインは、内容的には最低でも対象年齢がR18になって(しか)るべきゲームだが、実際には全年齢対象のゲームになっている。

 特に最近では最強プレイヤー決定戦がネットで生放送されたことで、実際に人を殺しているかのような感覚をゲーム内で味わうことになる事を知った一部の保護者から、条例の有害指定図書に該当するのではないかと、各都道府県や警察に訴えかけられているが、全て握りつぶされている現状がある。

 これだけでも桐嶋が国や都道府県の知事、警察に影響力のある人物だということを推測する根拠になりえる。

 世論がスキル・メイク・オンラインは危険だとする論調が大きくなれば、握りつぶすことも出来なくなる可能性が高いが、現代人はゲームやアニメと育ってきた世代の為、幸か不幸かそういったグロテスクな表現等に寛容になっているのも、有害指定図書ではないかと主張する一部の人間たちを押さえつける、少なくない助けになっていた。

 次に聖に関してだが、桐嶋と違い具体的な根拠は何も無い。
 しかし零が聖の立場なら、犯罪をやり(やす)くする為に、警察関係者とコネクションを作っていると断言できる。
 第三者から見れば屁理屈とも取れる筋道だが、零にとっては充分過ぎる理屈だった。

 「皆にSNSで危ないって知らせたら良いじゃん。それで解決だと思うし」

 集まっていた6人(零、リア、沙織、ダイン、一華、真希)の中で、唯一零の話を本気にしていない真希が楽観的な意見を述べると、零はダインの提案の時と同じように首を横に振った。

 「それも無理だな。SNSで発信したところで誰も本気にしない。余りにも現実離れした話だからな。実際、真希はまだ半信半疑だろう?」

 零の指摘を受けた真希は、図星を突かれ苦い顔になってしまう。
 そんな真希を横目に、ずっと黙っていたリアが恐る恐るといった様子で問い掛けて来る。

 「ねえ零。その桐嶋って人。どんな顔だった?」

 「顔?整ってはいたな。特徴を上げるなら、黒髪短髪で、少し垂れ目だった」

 零の言葉を聞いたリアの表情が余計に暗くなり、更に質問を重ねて来る。

 「身長や体形は?」

 「身長は180cm前半。体形は痩せ形だった。どうしたんだ?もしかして心当たりでもあるのか?」

 答えながら疑問が生じた零がリアに反問(はんもん)すると、リアは言いづらそうに弱弱しく言葉を紡ぐ。

 「もしかしたらだけど、スキル・メイク・オンラインの製作者は私の伯父(おじ)じゃないかと疑っているの」

 「本当か?」

 流石に信じられないという表情を浮かべる零に対して、リアは小さく頷き根拠を口にする。

 「私の伯父は少し変わり者だったの。私が小学生の頃に、伯父がオンラインゲームを作っていると言っていたわ。私がこのゲームを始めたのも『仮想空間で本物の人を使って、彼らがどうやって生きていくかを見たいんだ』って伯父が言ってたのを思い出して、もしかして伯父が作ったんじゃないかと思って始めたの」

 「その伯父は今どこに居るんだ?」

 「知らないわ。2年前から行方が分からないから」

 確かにリアの話を聞いていると、彼女の伯父が怪しい事は間違いなかった。

 桐嶋の顔を直接見た零は、桐嶋の顔が判別できる物があれば確認することが出来る。
 しかしそれと同時に、桐嶋が何の変装もせずに自身に姿を見せるだろうかという疑問も(いだ)いたが、それでも可能性は充分あると判断した。

 「悪いが伯父の写真はあるか?」

 「実家に帰れば見つかると思うわ」

 「後でメールで送ってくれないか?――いや、直接会うべきだな……」

 零が知っている彼女のメールアドレスは、飽く迄もスキル・メイク・オンラインを経由した物でしかない。
 もし今も桐嶋が零を監視しているなら、この会話を聞いて違う写真に改竄(かいざん)したメールに変更することも不可能ではないだろう。

 しかし、もし桐嶋がリアの伯父ならば、自身と会っていることは彼にとって不都合なはずだ。

 (やはりリアの考えすぎか?)

 少しの間、思考の海に落ちていた零だったが、リアが自身に向けて言葉を発したことで、再び意識を浮上させる。

 「直接会う必要があるの?」

 「ああ。桐嶋はゲーム内の会話を聞くことが可能みたいだからな。今の会話を聞かれていた場合、写真を送る形を取れば違う物にすり替えられる可能性がある」

 「それなら仕方がないわね。何処で会うの?」

 「リアが都合の良い場所で構わない」

 「それなら明日名古屋に来れる?私の実家は名古屋にあるから。そこの名古屋学園都市駅前で、16時に会いましょう?」

 「ああ。問題ない」

 零とリアの会話が一段落したところで、真希が何気ない口調で言葉を紡ぐ。

 「変な形だけど、ある意味オフ会じゃん」

 場の空気を壊すような発言にキョトンとする一同だったが、ダインが「確かにね」と呟いた事で会話が再開される。

 「そう言えば私も学園都市に住んでるよ」

 「私もです」

 「あたしもだよ」

 「私もだ」

 上から順番に、ダイン、沙織、真希、一華の順番で同意の答えを返していく。
 ここに居る全員が学生である事を考えれば、学園都市の性質上同じ地域に住んでいても不思議ではない。

 リアが待ち合わせ場所に指定した名古屋学園都市駅も、名古屋市の再開発に(ともな)って新しく作られた新駅でもある。

 「折角だからあたしたちも集まらない?」

 まるでピクニックにでも行くかのような感覚で提案する真希に対して、沙織が呆れた声色で指摘する。

 「真希。零さんとリアは遊びで会う訳じゃあ無いんですよ」

 「ごめんなさい……」

 沙織に叱られて真希は落ち込んでしまったが、彼女は悪気があって提案したわけでは無い。
 むしろ本来、真希だけでなくリア達も含めて、楽しむためにゲームをしているのだ。

 そういう意味では、異常なのは零の方とも言える。
 だからという訳ではないが、今度は零が真希と同じ提案を繰り返す形で言葉を発する。

 「いや、(むし)ろ集まってくれると助かる。出来ればこれからの事を考えても、全員のプライベートでの連絡先を知っておきたい」

 わざわざ直接会わずとも連絡先を交換する方法は存在するが、先ほど言ったようにスキル・メイク・オンラインを経由して連絡先を交換してしまうと、その連絡手段も監視対象に置かれる可能性が捨てきれない。
 勿論こうやって手間をかけても、何らかの形で監視対象に置かれる可能性は充分に有り得るが、何もしないよりはマシだと考えたのだ。

 「私たちも明日リアの言った時間に名古屋学園都市駅前に集まれば良いのかな?」

 「ああ。無理なら無理で構わないが……」

 出来れば来てほしいという雰囲気を零が出すと、全員が大丈夫だと回答した。
 全員の了承が取れたことで、零は次に一華へと顔を向ける。

 「それと一華に頼みたいことがあるんだが。一華の祖父と連絡を取ってくれないか?」

 「お爺様と?」

 「ああ。一華のお爺さんにも出来ればゲーム内での捜索を手伝って欲しいと思っているんだ」

 零の言葉を聞いて一華は少し驚いた表情を見せたが、直ぐにお爺様なら頼られて当然だと考え直し、真剣な表情へと移り変わる。

 「分かった。私はどうお爺様に説明したらいい?」

 「話は直接俺がするから、一華のお爺さんの連絡先を明日会う時に教えて欲しい。勿論一華のお爺さんに連絡先を教えても良いか許可を取った上でだ。誰に教えるか聞かれたら、俺の正体を言ってくれて構わない」

 零の言った正体とは、零が謎のソロプレイヤーだという事実についてだ。
 今までは秘密にしていたが、これからゲーム内での協力者を(つの)る上で、正体を明かしていく必要性があると零は判断した。

 そしてその1人目に選ばれたのが、一華の祖父である鉄次だ。

 「分かった。お爺様にお願いしておく」

 一華が肯定的な答えを返したことで、取りあえず大まかな予定が全て決まった。

 「明日直接会った時に更に詳しい話をするから、そのつもりで居てくれ。俺はこれから連絡を取らなきゃいけない相手がいるから、今日はもうログアウトする」

 「分かったわ。じゃあ私たちもお店から出ましょうか」

 食事も既に全員が食べ終わっている。
 そんな中まず初めに零が立ち上がり、それに続くようにリア達も椅子から腰を上げ会計を済ませに移動を開始する。
 会計をそれぞれ済ませて店の外に出た零は、別れの言葉を全員に送り、予定通りログアウトした。
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