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あなたにとってヒーローとは誰ですか?
あなたにとってヒーローとは何ですか?
私ってなんですか?
私、昼ごはん食べましたか?
ヒーローと呼ばれて
作:子鉄


『薄汚いダニめっ、これで終わりだっファイナルアタック!』       

『ぎゃあぁぁぁぁっ!』 

『ふっ、あの世で跳ねときな』
            
今日もミラクル兄弟のおかげで地球に平和が訪れた。
ありがとうミラクル兄弟、ほんまにありがとう。              

【次回】最強の敵復活。見ない子はダニだよっ!                          

『いやー、おつかれっす。師匠今日もいいやられっぷりでしたね』     

『うん?ああ、いいんだけどさ、ダニはないんじゃないの?』                    

『え?でも、盛り上がり的な事を考えたっていうのがありまして・・・・』              

『台本に無かったよねぇ?うちの子も8才だから、そういうとこも見てんだわ』            

『あ、しっ、師匠の家庭までは考えてなかったっていうのはあります、はい』       

『うんうん、いいよ、いいけども、最後ツバ吐いたね?これ家で洗う嫁がどう思うよ、
え?どう思うよぉぉぉっ!』           

『・・・いや、ちょっと、そこら辺のけじめの部分が自分でもよく分かってなかった部分はあります、はい』                   

『おい兄ちゃん、あと最後の戦闘の時私の顔踏んでくれちゃったね?あ?こっちは姪が来月嫁に行くんだわ、ああ、行くんだわっ!』             

『自分・・・』

『帰れっ、帰れぇぇぇっ!うあぁぁぁぁっ、げほっげほっ』

当時の私は、ヒーロー戦隊ミラクル兄弟の主役に抜擢されたこともあり、有頂天になっていたのかもしれない。
師匠やご家族のことなど全く考えていなかったのだ。

しかし、ヒーローである私にどうすることができたであろう。
自分一人で判断のつくことではなかった。            

私は荷物をまとめるとスタジオを後にした。    
街は初夏の生温い空気に包まれ、力強い光が緑をキラキラと輝かせている。        
お陽様は元気に笑いながら僕たちを見守っていた。
      
私が進むべきは右か左か、道行く人々は何の迷いもなくその歩を進めていた。 
私の演技は間違っているのか、進む道が間違っているのか。           

ふと見ると、少年がミラクル兄弟ごっこをしていた。

『えいっ、参ったか!ヒーローは負けないぞ』

大きな夢を持った少年は、懸命に地球を守ろうと人形同士を闘わせている。
強烈なビンタを食らった気持ちだった。
純粋な目をした少年は、ヒーローを待っているんだ。

次の日目が覚めると色んな思いはどこかに消えていて、とても清々しい気分だった。
自分は自分で決めた道をまっすぐに歩んでいくんだ。            


『師匠、昨日はすいませんでした。自分、いちから勉強させていただきます』             
スタジオ入りすると、まず師匠に元気よくあいさつし、昨日の非礼を詫びた。

『もう、ええんや』

そう言うと日本を背負ってきた大俳優は笑いながら遠くを見た。
師匠は許してくれた。  
こんなどうしようもない私を許してくれた。
もう負けるわけにはいかない。子供達が待っている。

大俳優に対するリスペクトの精神、父への思い、母への感謝ここに賛美。
マイコーフォンチェック、ワンツーYO!
そんな気持ちだった。            

――父さん、母さん、そして師匠、新しい自分を見てください。


『それでは参ります。3・2・1・スタート!』
            
『でたな大王!やっつけてやるっ』

『げーへっへっ』    

『この気持ち悪いブタ野郎っ!ぺっ』                   

『え?・・・』

『嫁に行くおまえの姪はいつも鼻毛が出ているっ!』          

『いや、あれ?ちょっと・・・』

私にもう迷いは無かった。
子供達が待っているんだ。
子供たちが・・・・            

『くらえっ、おまえが偉そうに乗ってくるベンツは実はレンタカーだチョップ!』     

『うあぁぁっ、やられた』       

『うるさいっ!嫁は八百屋のおやじと浮気しているキック!』                     
『・・・・えっ?いや、やっやられた、完全にやられたっ』     

『だまれっ!女装して夜の街を歩くなパンチ!』            

『おいっ!やられたちゅーてるわなっ』           

『まだまだっ、お前はかつら・・・・』        


―――ピー       


番組の途中ですがここで臨時のニュースをお伝えします。
只今、生放送中に一部不適切な映像が流れたことを深くお詫びいたします。

では次のニュースです。
カルガモの家族が元気よく橋を渡りました。    
可愛らしいですね。   
食べちゃいたいです。
なっ、なんばん、鴨南蛮だよ。                       

でっ、では一旦CMに入ります。

――いつでもどこでもドンチャン騒ぎ!
――飲んだら乗ろう!
――乗るなら飲もう!
みんなで乗ろうぜ三つ葉タクシー

******

――走ってますか?
まっすぐな道を
――覚えてますか?
あの人の笑顔を
君のために僕は安全運転をする

――FEELING TOGETHER KEISHICHO

ここまでの放送は警視庁の提供でお送りしました。


その後、番組は打ち切られ、私はスタジオを摘み出された。
職を失い路頭に迷ったのだ。 
全て幻想だったんだ。
ヒーローなんかじゃない、ブタ野郎は俺だったんだ。

『あはっ、あははははっ!』           

それからは何もかもが無茶苦茶だった。      
きっとショックで頭の線が切れていたのであろう。 
気が付いた時は病院のベッドの上だった。

一面を白い壁に囲また部屋で、手足を縛られ口には雑巾が詰め込まれていた。
カレンダーを見ればあの日から三年の月日が経過していた。
何があったんだ、何が・・・・          

私は早速書類にサインをし、保証金300万円を納め外に出ることを許された。       
とんだヒーローである。 

外に出るともう夕暮れ時だった。
ゆっくり傾いた夕焼けが、静かに流れる川に映しだされている。         
重なって映る自分は、誇らしげに輝く真っ赤な太陽を見ることができずに目を逸らした。  すぐ傍では小さな鴨の親子が東から西に仲良く流れていく。  
ああ、自分はどこに流れていくのか。

泥々の少年達が無心に走り回っていた。

あの日いつまでも夢中になって追い掛けてた白いボールは、自分の未来や希望の象徴だったのであろう。
            
いつからか走ることをやめた少年は今、何も考えずに走り続ける少年達を見て涙がでた。
携帯電話を取出し、記憶を頼りにボタンを押すと、懐かしい声が聞こえてくる。

『母ちゃん、俺』

懐かしい声はいつもと変わる事無く自分を包んでくれた。
自分が自分であることの証明を与えてくれるその声は、自分が世界と向き合う勇気を与えてくれた。 
ふと転がってきたボールを少年に投げ返すと、笑って親指を立てた。           泣いてる暇なんかない。
消え行く夕日は強烈に光り、こんな自分を笑っているようだった。
今はまだ情けなくて弱い自分も、いつか壁をぶっこわして突き進むんだ。
行った道の先に何があるか分からないよ、でも行かなきゃいけない。行かなきゃ。                  



『はい、OKです!』

『これですべてのシーンが終わりました、お疲れさまです』         

こうして私の自伝的映画はクランクアップを迎えた。            
今私は俳優として、監督として様々な方面でがんばっている。              こんな自分でいられるのはあの時、壁を破ろうと思ったおかげだろう。         

ありがとう父さん、ありがとう母さん、ありがとう支えてくれたみんな。
そして、ありがとう自分自身。
そう、今なにより自分自身に感謝したい。
ありがとうと言いたい、頑張ったと言いたい、そして、抱いてと言われたい。
もてたいんだわ、こっちは。

50冊目の日記をそう締め括り、静かに目を閉じた。

思えば自分の人生、これでよかったのだろうか。
あんなこともあった、こんなこともあった。
あの娘を抱いた夜もあった。二万円を払ったのだ。

嫌な事だけじゃない、楽しいことだけじゃない、全部が全部ひっくるめて自分なんだ。
自分て素敵だ。

心の中でそう綴ると、ピンクのネグリジェを脱いで床についた。


感想をお待ち申し上げます。













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