「ねぇ、きのう何してたの?」
「ねぇ、あの時間どこにいたの?」
「なぁ、本当に信じていいの?」
「ていうかさ、俺のこと本当に好きなの?」
もう、うんざりだ。
君との会話は成り立たない。
「会話とは、二人あるいは少人数で向かい合って話し合うこと」だ。
そう辞書に書いてあるから、きっと正論だ。
君の場合、単なる相手に対する一方的な問いにすぎない。
それはまるで独り善がりであり、エゴイスティックである。
だから私はいつもこう答えるのだ。
「ねぇ、きのう私が遊んでたって言ったらどうするの?」
「ねぇ、あの時間家に居たよって言ったから何なの?」
「ねぇ、君にとっての信じることの基準て何?」
「ていうかさ、好きじゃなかったら初めから一緒に居なくない?」
そう言うと、君は必ず必死な表情で、お得意のエゴイスティックな問いかけをするのである。
「ねぇ、聞いて?俺は本当に陽菜のことが大好きなんだよ。世界の何よりも大切で、世界の誰よりも愛してるから…それなのにどうして陽菜は俺の気持ちを分かってくれないの?分かろうともしてくれないでしょ?俺はこんなに陽菜を想ってるし、陽菜のためになることなら何でもやってあげたいって思うし、現にいっぱい尽くしてるじゃん!!それなのにどうして陽菜はさ…ッ!」
また始まった。
「俺はこんなに大好きなのに…」
「陽菜のためにこんなにしてあげてるのに…」
私はこんな君を見つめながらいつも思う。
愛に見返りを求めている時点で、きっと君は何かを見失っているのではないかという気がしてならないのである。
恋愛は、きっと一人でするものじゃないはずだ。
君と居ると、何だか君だけが一人で恋愛をしているようで、だから結局、いつまでたってもただの恋愛ごっこのままなのだ。
「私はね、一緒に、二人で恋愛がしたいの。今のうちらはただ麻人だけが一人で恋愛してるみたいだよ。それはただの恋愛ごっこだよ。」
君はずっと黙っていた。
何にも言わずにただ黙っていた。
だけど私は嬉しかったのだ。
きっと、黙っているのは何かが伝わっている証拠だと思うからだ。
嫉妬と深い愛情は、本当に薄っぺらい紙一重だ。
だからこそ私は、その薄い紙に賭けてみたいと思ったのだ。
信じてみることにしたのである。
「私は麻人のことが大好きだよ。それに世界で一番麻人を信じてる。だから麻人も私を愛して、それで世界で一番私を信じて欲しいの。」
まずは小さな一歩から。
君と"会話"をしてみようと思う。 |