女の子への道。(17/28)縦書き表示RDF


女の子への道。
作:生成 環



第十七話:歩ちゃん、デパートで迷子。


「楽しかったわ。唯さんに歩ちゃん」バスがもうすぐ駅前の終点に着くので、おばあさんはいった。

「こちらこそ。おばあさんに頭をなでてもらって、歩ちゃんもごきげんのようだから、そうよね歩ちゃん」
「ありがとう……、おばあさん」

歩は、はにかむようにいった。
バスが終点に着くと、おばあさんは、歩にいった。

「歩ちゃん。お姉ちゃんのいうことをちゃんと聞くのよ。いいわね」
「わかりました。歩は唯お姉ちゃんのいうことを聞きます」

「それでは、歩ちゃんに唯さん。元気でね」おばあさんは、バスから降りた。

「わたしたちも降りましょう。歩ちゃん、お姉ちゃんの手をちゃんと握るのよ」
「わかった……」バスから降りた歩は、唯の手を離した。

「ダメでしょ、歩ちゃん。手を離したら、迷子になるでしょ」唯は歩を叱った。
「でも、唯お姉ちゃん。歩は……」

「歩ちゃんは、おばあさんになんていわれたの」

「お姉ちゃんのいうことを聞くように……」

「そうでしょ。だから、お姉ちゃんの手を離したらダメでしょ」

「でも、歩はもう中学生……」

「違うわ。いまから歩ちゃんは小学生なのよ。お姉ちゃんのいうことを聞かなかったら、もうデパートにいかないから」

「唯お姉ちゃん。ゴメンなさい」

「わかればいいのよ。それと、学年はと聞かれたら、小学四年生というのよ」唯にいわれておどろいた歩だったが、大丈夫よと唯はいった。
「だっておばあさんは、歩ちゃんを小学四年生とまちがわれたでしょ」

「そんな……」歩は困惑した。
歩は中学生の、しかも男の子である。それが、歳を聞かれたら小学四年生と答えないといけない。つまり、歩は小学四年生の女の子の振る舞いをしなければいけないのだ。

「もっと堂々としなければダメよ、歩ちゃん。ばれて恥ずかしい目にあうのは歩ちゃんだから」

「……うん、お姉ちゃんわかったから……」歩はしかたなくいった。



デパートの中にはいると、唯は歩の手を引っ張っていき、エレベーターの前にきた。

「子供服売り場は、五階にあるのね」唯はいった。エレベーターの前では、歩と唯のふたりのほかに、二組の親子がいた。

「あの中では、歩ちゃんが一番かわいいわ」唯は小声でいった。
しかし、唯の声が聞こえたのか、母親たちは唯を睨みつけた。唯は平気な顔をした。

エレベーターの扉が開いたので、歩は中にはいろうとしたが、後ろのだれかに服を引っ張られた。その拍子で、歩だけがエレベーターに乗れなかった。

歩は、唯が来るのをまっていた。でも唯は、なかなか来なかった。まっててもしかたないので、歩はエスカレーターで五階までいくことにした。

エスカレーターのところに来ると、歩は五階までのぼったが、そこは家具売り場だった。

歩は、売り場をまちがえたと思い、エレベーターでほかの階を見た。しかし、子供服売り場はどこにもなかった。
歩はエレベーターの前に戻ろうとしたが、エレベーターでいろいろな売り場にいったので、歩はエレベーターがどこにあるのかわからなくなった。

歩が途方にくれていると、見兼ねたデパートの店員が歩に声をかけた。

「どうしたのお嬢ちゃん、お家の人はどうしたの」店員がやさしく歩にいった。
「あのね、唯お姉ちゃんといっしょにきたけど……」
「そうなの。唯お姉ちゃんといっしょなの。じゃあ、お姉さんといっしょに、唯お姉ちゃんをさがそうか」店員は、歩の同じ目線になっていった。それは、店員が、歩を小さな女の子として見たのだった。

デパートの店員は、歩の手をにぎった。
店員は、歩の手をとると、歩に合わせるようにゆっくり歩いた。

「お嬢ちゃんの名前は、なんていうのかなぁ」

「桜坂、……歩です」

「桜坂歩ね。歳はいくつなの」

「歩は……、小学四年生です……」

「小学四年生ね。エッ、小学四年生なの」店員は驚いた。

「そうなの。歩は、クラスのみんなからも、いつも年下扱いされるの……」店員は、歩が小学四年生だとは信じられなかった。それほど歩は、小学四年生になりきっていた。本当は小学四年生ではなくて、中学生の男の子だと知ったら、この店員はどういった顔をするのだろう、と歩は思うのだった。



歩が、店員に連れてこられたのは、迷子センターだった。迷子センターの部屋は、幼児がよろこびそうな、かわいらしい部屋だった。
歩は中にはいるのをイヤがった。

「ここでまっていれば、お姉ちゃんがむかえにくるから。この中でまっていてね」店員は、イヤがる歩を迷子センターの中にいれた。幸運にも、センターの中にはだれもいなかった。

「そうそう、この中のおもちゃで遊んでてもいいからね」

デパートの店員が、迷子センターからでていった。一人残された歩は、おもちゃを見た。でも、おもちゃは歩には幼稚すぎていた。
歩が適当に選んだおもちゃは、パンダのぬいぐるみだった。

「おそいなぁ、お姉ちゃんは、ねえパンダちゃん」歩は、パンダのぬいぐるみに話しかけた。
歩は、パンダのぬいぐるみを抱いて眠ってしまった。


唯は、歩が迷子センターに来ていると、館内放送があったので、歩をむかえにきた。店員に案内されて、唯は迷子センターにきた。

「ごめんね、歩ちゃん。さびしかったで……。まあ、かわいらしい寝顔」唯はいった。

「ほんとですわね。もしよかったら、お嬢ちゃんをもう少し寝かしておいても、よろしいですけど」

「お願いします。じゃあわたし、妹のために何か飲み物を買ってきます」



唯は迷子センターを出る前に、もう一度歩の寝顔を見た。
歩ちゃん、寝顔まで女の子になって、かわいいなと唯は思ったのであった。


第十七話を終わりました。この小説の評価/感想をよろしくお願いします。











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