ひとりぼっち霊感
「あっほら、あの三階の窓のとこ。あそこに幽霊がいるよ」
女の子が私を指差して、高い声を上げた。驚いた。私を目視できるような霊感の持ち主がいようとは。確かに私は50年前このアパートの三階から転落し、打ちどころが悪くて死亡したのだった。
「弱ったな…」
窓にへばり付きながら、地縛霊仲間の竹田の方を振り返る。彼もまた困り顔でこちらを指差す女の子を見下ろしていた。
「また! 男の人の幽霊が出てきた! ほら!」
驚いた女の子が振り返っても、そこには誰もいない。元から女の子は一人でこの心霊スポットに乗り込んできたのだが、気づく様子もない。
「霊感がありすぎて、周りの人間が訝しんで離れていったことに気がついてないんだ。今は誰もいない空間に友達の幻覚を見てるのだろう」
竹田が憐れむように手を合わせた。私もそれに倣った。願わくばあの女の子が、普通の人間に戻れますように。