第九話 再会と行方
船内
ハセヲは甲板に歩いてくると、先客がいた。
マルクト軍の軍服を纏ったポニーテールの細めの男。
ハセヲは何故か、懐かしさを覚えた。
男はハセヲに気付いたようでこちらを向いた。
懐かしさを覚えるはずだ。そこには似合わない軍服に身を包んだ《クーン》がいたのだから。
クーンはポカーンとする。ハセヲも驚きを隠せない。
「お前まで来てなのか……?」
「良く分かんないんだけどな。っていうかハセヲ……『こっちでも死の恐怖なのか?』」
その言葉には
『人を殺すのは辛くないか?』
と気遣うクーンの優しさがあった。ハセヲは久しぶりの感覚に薄い笑みを浮かべ
「人を殺したことはねぇよ。魔物はあるけどな」
「そっか〜……アトリちゃんが泣かないで済みそうだな」
クーンは嬉しそうに言った。しかしハセヲはアトリと聞いた瞬間、眉をひそめた。
「おい、クーン……まさかあの電波女来てんのか?」
「そんな可哀想な事言うなって。アトリちゃんはキムラスカにいるんだ」
「なんでキムラスカに?」
クーンは困ったように笑うと納得の解答をした。
「運悪く来たとき、国境で分かれちゃってな。俺はマルクト領でアトリちゃんがキムラスカ領。あてもなくさ迷ってなくちゃいいけど……」
(なってそうなんだよな)
ハセヲとクーンは心の中で同じことを考えていた。
アトリは貴族の家で働いているとも知らず。
「それでなんで軍に?」
「あの格好目立つだろ?」
「あたりまえだ」
「それで怪しいって、あの鬼大佐に捕まってさ。あれはもう拷問だぞ。うっかりしたこと言うと、チクチク攻めるんだ。あれは精神的に病んだって」
「それでなんで疑ってる奴を軍に入れんだ?」
「目の届く範囲にいた方が監視しやすいそうだ。槍を構えて『生きていたかったら……何も起こさないようにしてください』って、満面の笑みで言われたんだぞ。しかも目が笑っていなかったし。それ以来、雑用だ」
頬の引きつった苦笑いをするクーンだった。
船内の一室にはいる。中には、イオンにアニス、ジェイドがいた。
一緒に入ってきたハセヲとクーンをみて、ジェイドは妖しく笑う。
「ク〜ン。ハセヲ君とは知り合いだったんですか〜」
妙な威圧感を放つジェイドに冷や汗タラタラのクーン。
「いや〜〜ジェ、ジェイドさん?」
ハセヲに助けの視線を送り、ハセヲはわかったと首を縦に振る。
「フフフフフ」
槍を構えて、妖しく笑うジェイドをイオンが抑える。アニスは楽しそうに見ている。絶対、腹黒いな。
「わかった!話す、話すから!」
クーンはそう叫ぶと説明しだした。
「異世界から……ですか?」
ジェイドがハセヲに聞くとハセヲは
「そうだ」と答える。
「僕は信じていいと思います」
「イオン様も信じるなら私も信じようかな?ハセヲだしね」
アニスがいうとクーンはウインクした。
(信頼されてるな)
ハセヲは意味分からんという顔をするがシカトした。
「信じがたいですが、その方がしっくりきますね。まあ、詳しい話は任務が終わってから聴くことにしましょう」
ジェイドがクーンに笑顔を向けるとクーンは引きつった笑みを返すばかり。
そんな空気、知らんとばかりに、ジェイドにハセヲは次の目的地について聞く。
「エンゲープです。そこに親書が届くことになっています」
「わかった」
苦笑いしているクーンと、とびっきりの笑顔のジェイドを残し、イオンとアニスとハセヲは自室に戻り、とこについた。
|