秘密の国のアリス(19/95)縦書き表示RDF


秘密の国のアリス
作:恋華 咲



第19話:デート日和





わたしはダムに貰ったワンピースを着て、全身鏡の前でくるりとターンした。

「やっぱり可愛いこの服。ダム達センスいいな」

実はこの服着るの初めてだったりする。何故なら、鎖骨が丸見えだから。これ着てお茶会に行ったら100%の確率で三月に襲われる。
そんなことを考えながら、わたしはもう一度鏡をチェックした。
髪型オッケー。
メイクオッケー。
香水オッケー。
よし、わたしにしてはバッチリだね。

「お姉さん、入っていいですか?」

ノックの音に遅れて、白うさぎくんの声が扉の向こうから聞こえた。
わたしは舞うような気持ちをなんとか抑え、いいよと許可の言葉を言う。

「わぁ」

入ってきた白うさぎくんが最初に発したのは感嘆の言葉だった。わたしはちょっと照れくさくなり、視線をあちこちに泳がせる。

「たまには、エプロンドレス以外もいいかなーと思って…」

そうこぼすと、白うさぎくんはにっこりと微笑み

「とてもお似合いです。可愛いですね、お姉さん」

と言った。
か、可愛いって言った!? 今、白うさぎくんがわたしに可愛いって……! 嬉しすぎて泣きそう。
――でも、服に負けてる気がしない事もない。
あんまり、こういうフェミニンな洋服着ないんだもん。

「じゃあ、行きましょうか」

軽く悩んでいると、白うさぎくんがわたしに手を差しのべる。ホント、幼いのに紳士だなぁ。
わたしは少年の手に、そっと自分のを重ねた。

そう、今日は念願のデートなんです。





  ◇

「お姉さん、どこか行きたい場所ありますか?」

街中手を繋いだまま、白うさぎくんが上目使いで尋ねる。秘密の国人生初デートがこんな好みのタイプなんて、幸せだ。
っていうか……行きたい場所?
――ヤバイ。浮かれすぎてて、何も考えてなかった。

「お姉さん?」

黙るわたしを不思議そうな面持ちで覘きこんでくる少年。

「え、えっと…」

頬をかきながら、わたしは周りを見渡した。デートと言ったら、映画、遊園地、公園だけど。そんなの近くにないよ。なにか、なにかお店……!
――あ。
お店、という単語で思い出した。そうだ、トゥーイドル。
確かダムに前もらった名刺に地図が書いてあったはず。

「あ、決まりました?」

表情に出てしまったのか、白うさぎが反応した。
決まった? 決まったのかこれ? だって、せっかくのデートなのに、わざわざ他の友達に会う必要も……。
だけど、ちょっと興味あるんだよね。可愛い服いっぱいありそうだし。

「あの、トゥーイドルってお店。ダムが来てって言ってたから、行きたいかも」
「ああ、いいですね。そういえば、お姉さん服ありませんよね。すいません、気づかなくて」
「あ、いや、わたしも何も言ってなかったし」
「いえ、やはり女の子はお洒落するべきです。行きましょう、ダムさん達のブティックなら僕も場所知ってますから」

そう笑って白うさぎくんは、わたしの手を優しく、だけどしっかりと握ってひいた。
ああ、幸せ……!



上品で高級感が漂うと共に愛らしさもある外装。ショーウィンドウに飾ってある服はどれも綺麗なものばかりだった。

「ここか……」

つい甘いため息が漏れる。そのくらい、素敵なのだ。

「入りましょうか」

白うさぎくんの言葉にわたしは頷く。自動ドアが開き、わたしは生唾を飲んだ。
ドキドキする気持ちを感じながら、ゆっくりと足を踏み入れる。そして、聞こえた第一声はよく知ってる者の声だった。

「いらっしゃ───アリス?」

その人物は一瞬だけ目を見開いたが、直ぐに表情を柔らかくし、優しい笑みを浮かべた。
――えっと…。あの性悪少年がこんな風に笑うわけないから………。

「いらっしゃい。来てくれたんだ。もしかしてデート?」
「はい。お姉さんとの約束でしたし」

わたしが答えるより早く、白うさぎくんが口を開く。
ガラス細工のように繊細な紫の瞳。優しい笑顔。穏やかな物腰。間違いない、ダムだ。

「…今日は、メガネかけてないんだね」

無意識に口から滑りおちた言葉。それにダムは、あぁ、と頷きこう説明した。

「あのメガネは伊達なんだ。視力いいよ、僕」
「じゃあ、なんでかけてるのさ?」
「それは、ディーと見分けがつくように。店員もわからないと色々困るでしょ?」

そう言い、中指でメガネをあげる仕草をする。
なるほど。確かにそっくりだもんね。でも、なんで今日はかけてないのかな。

「たまたま忘れちゃったんだ」
「………あのさ、この世界の人は心を読む魔法でも使えるわけ?」
「魔法だなんて、ロマンチストだねアリス」

にこっと何食わぬ顔で笑うダム。
――この人、意外とあなどれないかも。
優しいし、常識人であることは確かなんだけど……。なんて言うか、含みがあるって感じ。

「それにしても、アリス」

唐突に、ジッと見られた。細められた瞳に、心臓が震える。

「可愛いね。普段の格好もいいけど、なんか新鮮だよ」
「あ、ありがとう」

職業柄かもしれないけど、褒めるのが上手い。可愛いと言われて、嬉しくないはずないから。
しかも、前はメガネかけてたから知的に見えたけど、今はちょっと色気がある。メガネはずすだけで、こんなに印象変わるんだ。

「どうしたの? アリス」

淡く笑む彼。なんだか和むとともに、少しだけドキッとした。


「オイお前等」

背後からの気配。不機嫌な声。わたしはゆっくりと振り返る。

「店内でいちゃつくんじゃねぇよ」

眉間にシワをよせ、双子の片割れがやってきた。




次回に続きます。











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう