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アム誤算

 二人の冒険者風の男が、慌てて村にやって来た。

 

 ノトスの街から一番近い村である、このシータの村にはあまり冒険者達はやって来ない。

 その理由は近くに大きい街があるのだから。

 わざわざこの村に来る必要がない、そして魔物の大移動があったとしても、ノトス周辺で抑えられるので、この村を起点に防衛戦が行われる事はないと聞いていた。

 

 必然的に冒険者が寄り付き難い村。

 村を守る冒険者を得る機会が少ない村なので、対策として大袈裟過ぎる防壁までも作っている。



 だから、血相を変えて村にやって来た冒険者風の男達は、何か良からぬ事を企んでいる輩ではないかと、最初はそう疑った。

 このシータの村には、税を取り立てる役人は来ても、冒険者が慌てて来ることは無いのだから違和感を覚えた。

 だが――


「聞いてくれ! 俺はノトス周辺を警備しているドミニクと言う者だ。いま、魔物の群れがこの村に迫っている」

「っな!?」


 自分も含め、相手を警戒していた者や、呑気に事を構えていた者、特に興味も持っていなかった者も、その全員が血相を変えた。


 『魔物の群れがこの村に迫っている』、それは魔物大移動のことを意味しており、この村が巻き込まれる事は無いと聞かされていたモノであった。 


 ノトスの街周辺に魔物の群れが迫れば、ノトスの街が防衛線を張ると、そう聞かされていたのだから。



 今の話は嘘であって欲しい、何かの間違いだろう。

 そんな思いが一瞬浮かんだが――


「ああああああああああ!?」


 冒険者達が来た方角を指差しながら、泣きそうな声を上げる者が居た。

 皆がその指差す方を見ると、其処には無数の黒い影が見えていた。

 

「ま、魔物の群れだあああああ!?」



 その声を合図に、村は一気に騒然と混乱した。

 とにかく逃げようとする者、ただ茫然とする者、家の中に駆け込む者、そして冒険者の二人に縋り付く者。


「た、助けてください冒険者様」

「ああ、任せろ。その為に俺らは来たんだ」


 

 

 魔物があまりに突然現れた為、村を仕切る村長の指示を待たずに動き出す者が多数いた。

 魔物が迫って来る方向とは逆側にある門から逃げ出す者達、一体何処へ逃げるつもりなのか、碌な用意もなく飛び出していった。


 それとは別で、家の中に逃げ込むだけの者。 

 もしかすると、地下に貯蔵庫のようなモノでもあり、其処へ避難しているのかもしれないが、自分達の生存率を上げる為の事しか考えていない様子。


 

 そして自分は――


「村に用意されている武器を集めて来ました、弓と剣、それと槍です」

「よし、槍を使える者は防壁の上で、弓を扱える奴もだ。剣を使える奴は正面に集まってくれ、この門を死守するぞ!」


 冒険者達の指示のもと、自分達は己で防衛することになった。しかし、騙し騙し使っていた門は、大急ぎで閉じようとした際に、片方の蝶番が外れてしまっていた。

 つっかえを咬ませる事で、片方の扉は固定出来たのだが、片方の扉は倒れたままになってしまい、直す時間も無かった。


 そしてそのまま魔物との戦闘が始まった。



 門のすぐ内側で応戦し、中に入って来た魔物を討ち取る流れ。

 自分の役目は、討ち漏らした魔物を倒す前衛役。


 村にやってきた冒険者の二人は幸運なことに、かなりの高レベル冒険者。

 レベル30を超えている冒険者で、魔物と一対一であれば問題なく倒していき、特に中年の方は戦い方が上手く、WSウエポンスキルの使い方が絶妙だった。

 要所要所だけWSウエポンスキルを使用してSPを温存し、押されそうになった時などは、範囲系WSウエポンスキルで敵を退けて立て直す立ち回りを見せ、それはもう一人の冒険者よりも遥かに巧かった。


 そして誰もが、『これならイケるのでは?』っと、思い始めたのだが――


「くっ、数が多くなって来やがった…」

「ですね、魔物の群れの後続がやって来たって感じでしょうかね」


 『イケる』と思っていた素人考えは甘かった。

 今まで戦っていたのは魔物の群れの一部、これから押し寄せて来るのが本隊のようなものらしかった。

 これからが本番だと、中年の冒険者が注意を促してきた。


 そして、とうとう魔物達が一気に雪崩込んで来た。

 黒い靄のようなモノを纏った魔物共が、黒い波のようになって迫り来る。


「ここを死守すんぞ! 魔法使える奴をもっと呼んで来い、何だってイイから少しでも助けが欲しい」


 あまりの魔物の多さに、恐怖と絶望に飲み込まれそうになる自分達に、中年冒険者の男が声を張り上げて鼓舞する。


 だが、流石に目の前に迫り来る黒い魔物の波に対して、何処か諦めのようなモノを抱いていると――


「っしゃああああああ!!」


 ( は‥? )


 黒い波のように迫っていた魔物共が、より深い黒色の暴風に蹴散らされる。

 門の手前まで一杯に迫っていた魔物が全て、黒い霧となり霧散する。


「何が‥?」 


 思わず疑問の声が零れる。

 そして、その自分の疑問に答えるかのように、冒険者の男が声を発する。


「ジンナイ!? マジか…もう来たのかよ?」

「ああ、ロウが知らせてくれた、それに三雲も来ている」



 援軍として仲間が来たのだと理解出来た。

 これで3人が守れば、先程の強さを見せつけた黒い男が居れば、きっと助かるとそう思えた。


 WSウエポンスキルを使わずに、WSウエポンスキル並みの力を見せた一薙ぎ。

 単純に強いと表現するよりも、別次元の強さを見せた黒い男。



「ドミニクさん、ここは俺が引き受けるから、ワッツさんと二人で村に入り込んだ可能性がある霊体タイプを探して倒してくれ。今はいなかったとしても、いずれ入り込むはずだ」

「ちぃ、やっぱ居るよな、分かったここは任せたぜジンナイ」

「了解した、ドミニク隊長いきましょう」


 

 一瞬何を言っているのか理解が出来なかった。

 そんなアホな提案を出して来たのだから。


 ( 一人でって‥そんな無茶な…でも、さっきのは… )


 しかし、次の瞬間ある事が気になった。この黒い男のレベルが幾つなのか。

 

 中年の冒険者達とは、比べ物にならない程の強さを見せる黒い男。

 今まで門を死守していた冒険者達も強く、魔物を3体同時でも対処出来る程の強さだった。

 だがこの黒い男は、魔物を3体以上同時に屠り去って(・・・・・)いた。


 ドミニクと呼ばれている方の冒険者のレベルが30超え、ならばこの黒い男のレベルは一体いくつなのだろうと思い、自分は指で四角い枠を作り覗く(鑑定する)


 

ステータス


名前 陣内 陽一

職業 ゆうしゃ


【力のつよさ】89

【すばやさ】 93       

【身の固さ】 90

【EX】『武器強化(中)赤布』 『回復(弱)リング』『魔防(強)髪飾り』

【固有能力】【加速】

【パーティ】



 ――――――――――――――――――――――――――――――――



( は? レベルが無い? ――と言うよりもコレって‥ )


 規格外の強さだと思っていた黒い男は、様々な意味も込めて規格外。

 他の者とは比較が出来ないステータス表示であり、本当に計り知れないモノで、まるでどこか外れた存在であった。


 そしてその外れた存在、ボッチライン(孤高の一人最前線)と呼ばれた男は、本当に一人だけで正面の門を、援軍が到着するまでの間、約一時間を守り通したのだった。


 

 特に苦労した様子を見せずに。

 



  ――――――――――――――――――――――――――――――



 援軍の到着により、俺の一人?防衛戦は終わりを告げた。

 状況は今までよりも楽であった為か、ほぼ無傷で終え、しかも村人の被害も無しであった。

 

 正面だけに集中出来る戦況、魔物も牙や爪で攻撃してくる小型ばかり、槍とは違いリーチが短いので、待ち構えて突くか薙ぐかだけで事足りた。


 それと、遊撃のように動いていた三雲の存在も大きかった。

 彼女は馬車と再び合流して、馬車の御者台に乗り込み、其処からWSウエポンスキルを放ちながら戦っており、仮に接近されたとしても、護衛に就いた二人が馬車を守り、村に接近してくる魔物の群れを適度に間引いていた。


 

 そして、陣内組を軸とした冒険者達がやって来て魔物を全て駆逐した。

 、視界に映る範囲の魔物を――



「ららんさん、それは一体どういう事で?」

「まあのぅ、ちぃっと厄介なことになっておってのぉ」


 俺は援軍としてやって来たラティとサリオ、そして陣内組のメンツと合流した。

 そして暫くすると、何故か嗤う彫金師ららんさんがやって来たのだ。正直な所、ららんさんがやって来た時には嫌な予感がした。


 ららんさんがやって来た名目は、対霊体タイプ用の付加魔法品アクセサリーを配りにやって来た、っとなっていた。

 だが本当の目的は、俺にある情報を届ける為のメッセンジャーとして。



 そして、ららんさんから話を聞いた。

 あまりおおっぴらには出来ない話らしく、周囲の人払いと、ラティの【索敵】によるチェックをしてからその話を聞いたのだが――


「厄介って、完全にそれマズイですよね? マジでなにをやってんだか…」

「ホンマそうじゃなのぅ~」


 

 ららんさん語った内容は、これは酷いの一言だった。

 今回の魔物大移動の発見が遅れた理由は、単純に監視役の者が不在だったからだと言うのだ。

 ノトス()の領地を監視している人達を仕切っている人物、要は監視役の偉い人がやらかしたのだった。


 監視役の偉い人は、ノトス公爵より周囲の監視の仕事を請け負っていたのだが、今回のノトス公爵交代の際に、新公爵であるアムさんと少々揉めたそうだ。

 その揉めた内容は、支払われるお金の問題。


 『元ノトス公爵はこれだけ支払っていた』に対して、『どう考えても高すぎる』っと反論した新公爵となったアムさん。


 詳しい経緯は濁していたが、色々とあり、最終的にはアムさんの提示額でその時は話が付いたそうだが、後々になってそれが問題になったのだと。


 支払われる金額が減ったのだが、監視役のトップは、しっかり前と変わらない報酬額を取り、より少なくなった予算のままで、仕事を下に投げたのだと。


 仕事を振られた下の者も、以前と同じ額を取り、また下に投げる。

 そしてそれが続き、最終的には予算が枯渇していたのだと。


 要は、アムさんが新公爵になってから、実は監視役の仕事は全く機能していなかったと言うのだ。

 この魔物大移動の見逃しは、偶然ではなく必然であったと。


 

「アホかよ! なんでそんな‥え?上の人はそんな馬鹿なの?」

「ん~~それがのう、上の人ってのが、金だけ抜いて仕事はほぼやってないらしいんよ、脅して問い詰めたらゲロったみたいやの」 


「――ッ!?」


 ――マジか、

 ノトスってそんな酷かったのか、

 完全に回ってないんじゃ? もしかするともっと他にも問題が‥



 過労死しそうな程に頑張っているアムさんだが、大した引継ぎ作業も無しに公爵を寄越され、上手く回っていない様子に感じられた。

 

 そして、ららんさんから――


「そんでな、じんないさん。監視役が観察していなかったから、今回の魔物大移動の規模が全く把握出来ず、もう暫くの間、この村で待機をお願いしたいんよ」

「へ? それってこれから調べるってことかよ…」



 ららんさんの口から語られた内容は、何か詰んだようなモノであった。

  

読んで頂きありがとう御座います。

宜しければ、感想やご質問など頂けましたら嬉しいです。


あと、誤字脱字のご指摘なども…、

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[気になる点] ~何か詰んだようなモノであった。 〆のこの文の意味がよく分からず。 すでにこの状況が詰みである・追い詰められている・事態が切迫しているというような感覚を主人公が抱いた…のでしょうか?
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