よるばな
間が空きました。
この時期にまさかの喉風邪、本気でキツかった。
うっかり風邪が原因でエタるところでした。
昔ラティが住んで居たという森を目指す。
シャの町からの道のりは思いのほか険しく、苦戦しながら馬車を進める。
馬車で登るのは若干厳しい丘や、最近あまり使われていないのか、整備されていた道も荒れている。
要は真っすぐに進めず、悪路を馬車で進んでいたのだ。
「う~~、思ったより進まないです」
「あの、丘や小山で遠回りさせられていますからねぇ」
サリオの愚痴にラティが相槌をうつ。
俺はそれを見ながら、全く別の事を二つほど頭の中で考えていた。
ラティが昔住んでいた森に着いたら、俺はどうしたいのか?
それとサリオの事。
前者は答えが出ず、後者は……。
俺は馬車の後ろに付いてくるタルンタに目を向け。
( 夜に聞くか、)
俺はそう決めた。
悪路に苦戦しつつ、日が落ち始めるとすぐに野営の準備を開始した。
暗い中での馬車は危険と習っているからだ。
少し早めの夕食を済ませ、サリオには今日は一日中、御者で疲れただろうからすぐに寝ろと言って寝かし。ラティには俺が最初に見張り役をすると伝え、今は俺とタルンタの二人だけ。
野郎二人だけの空間。
俺はサリオの件で、タルンタと話をしたいと思ってはいたが。
――あああああ、どうやって話を切り出したらイイんだ、
そもそも何を話したいんだ俺? アレ?本気で分からない‥
俺はタルンタと話をしたいと思ってはいたが、具体的には何も決まっていなかった。ほとんどモヤっとした程度の事だけで、どうやって話を切り出したら良いのか掴めず、俺が悩んでいると。
「アンタに聞きたい事がある」
「お、おぅ?」
いつの間にかタルンタは、俺の目の前までやって来ていた。
見張り役としてあるまじき失態だが、今はそれよりも、相手から話しかけて来てくれた事に感謝し、そして返事を返しつつ隣に座れと俺は目配せした。
野郎二人が焚き火の前で並んで座っている光景。
どんなシチュエーションだよっと心の中でツッコミを入れ、俺は次の言葉を待つ。
「確認なんだが、サリオは鍛冶屋に居たんだよな?」
「ああ、居たな、そんで捨てられてたよ」
「――ッは? 捨てられた!?」
「ああ、」
俺はその時の状況をタルンタに話をしてやった。
鍛冶屋から聞いた、”育ったら奴隷として売ろう”
だが、【幼女】持ちの為に育たず、それなら捨てるかっとなった事。
そしてそれを俺が拾い。本来、街などに入れないハーフエルフであるサリオの為に、俺の奴隷として扱い、彼女と今まで一緒に冒険していた事を伝えた。
それを聞き終えたタルンタは簡単な感想を口にする。
「そうだったのですか、サリオは本当に冒険者として、そして奴隷として生きていたのですね」
「奴隷ってか、まぁ仲間だな、身分を奴隷にしておかないと色々と面倒で」
俺はタルンタと話しているうちに、自分の中で把握し切れていなかったモヤモヤの正体が見えてきた。
それはサリオの今後。
サリオは立派な冒険者とは言えない。
冒険者として必要な、警戒心や心得などが全く備わっていないのだから。
単純に、超火力の後衛。
使える補助魔法も数が少なく、回復系魔法が使えない欠点もある。
冒険者達からは、多少ではあるが好意的に取って貰えるようにはなって来たが、やはりそれは超火力のサリオを見ている。
超火力の魔法もサリオの一部とも言えるが、やはり何処か違うだろう。
ハーフエルフであるサリオを、サリオとして受け入れてくれる人や、そんな状況があれば良いと思い始めていたのだ。
ハーフエルフと知られた瞬間に、周りが激怒するような異常な状況。
もしかすると、サリオにとっては当たり前なのかもしれないが、今は勇者達がいる時代。
もしかすると。
今のこの環境をひっくり返せるのでは?っと思う。
そんなモヤモヤしたモノの正体が見えて来た俺に、タルンタが――
「オレにサリオを売ってください、それを言う為にオレは来ました」
「へ?」
頭の隅っこの方で、欠片程度だが予想をしていた事。
もしかすると‥‥
「前のエルフの村ではオレがサリオの面倒を見ていました。だがある日――」
タルンタは語る、鍛冶屋に引き取られる前、昔のサリオの事を。
サリオはある日突然、エルフの村に放り込まれたのだと言う。
エルフの村にサリオを連れて来た人物は不明だが、村にそれなりのお金を積んでいったそうだ、そしてそのお金と引き換えにサリオを引き取ったと。
サリオがエルフの村に来てから20年、その間サリオを連れて来た者は一度たりとも姿は現さず、最終的にサリオは鍛冶屋に引き渡されたと言う。
そしてタルンタは、そのサリオを15年以上の間、面倒を見て来たのだと。
仕事をしない者には食事などが与えられないエルフの森、そんな中でタルンタは常にサリオに仕事を割り振り、彼女が飢えないで済むようにしていたのだと語る。
俺はその後2~3会話を交わし、今この場では決めず、サリオの意見を聞いてみるで、この会話は一先ず終わった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の日。
俺はサリオの隣、サリオと一緒の御者台に座り彼女と会話をする。
聞き辛い事だが、サリオは冒険者を続けていきたいのか、それとも‥
「ほへ?嫌ですよ」
「へ?」
「だって冒険者辞めたら、お風呂とかスキヤキを食べれなくなるんですよねです」
「はい?」
俺はかなり誤魔化しながらだが、サリオに冒険者を辞めて、普通の元の生活に戻ってみたいかを聞いてみた。
そして返って来た答えは『嫌』だった。
一応、サリオに理由などを訊ねてみると――
『もし村に戻ったらまた美味しくない食事ばっかりです!あたしはスキヤキとかお肉が食べたいのですよです』
冒険者だと命懸けの事もあるぞ?っと聞くと――
『冒険者だと命の危険があるです?森での薬草探しも命懸けなのです! 守ってくれるラティちゃんがいる冒険者の方がよっぽど安全なのです。森の中を【索敵】無しで薬草採収とかどんな罰ゲームですかッ‥‥あ、それを今までやらされていたのです‥‥よく生きてましたあたし‥』
『いつもベッドで寝れるしお風呂にも入れる、冒険者最高なのです!』
サリオからの冒険者でいたい理由は単純であった。
衣食住がしっかりとしている冒険者が良い。要は、俺の奴隷でいたいと言うのだ。
だがこれは、冒険者でなくても叶える事は可能なのだ。
サリオが望んでいるのは、美味しい食事、ちゃんと寝れる寝床とお風呂。
それさえあれば良いっと言った感じであった。
そしてその日の夜。
再び野郎と二人が、焚き火の前で並んで腰を下ろす。
「タルンタさん、ちょっとお聞きしたいのですが‥」
「はい、」
柄にもなく俺は悩んでいた。
一体どうしたいのかを。
サリオは元々成り行きで俺の仲間になった。
バザーで知り合い、そして依頼を受けて、次に再会したら放り出されていた。
中央の城下町に住めないサリオの為に、俺が保護者になるべく、彼女には奴隷という形を取って貰い、今まで一緒にいたのだ。
色々とサリオの面倒を見てきた。
だが、同時に助けられた事も沢山ある。
だから納得が欲しかったのかもしれない。
だから――
「タルンタさん、サリオを買いたいと言いましたが、それは奴隷としてサリオを欲しいのですか?それとも他の別なモノとしてですか?」
「勿論奴隷として欲しい訳では無いです、純粋に彼女が欲しいんです」
――マジか、言いきりやがったコイツ、
サリオが欲しいと、しっかりと言いやがった‥
それなら、仕方ないのか‥‥
「じゃぁ、彼女を連れてシャの町に戻るのですか?」
「え‥‥、いや、それは流石に、」
( ん? )
「えっと、じゃぁどうするんですか?」
「そうですね‥‥、前に住んで居た森に戻ろうかと、」
「シャの町じゃ駄目なんですか?」
「流石にハーフエルフを連れて行くのは、ええ‥その、色々と‥」
「はい?サリオを連れて行くんですよね? その覚悟があるんですよね?」
「ええ、だから前のエルフの森ならまだイケるかと‥」
「待て、俺の質問に答えてください、俺は覚悟があるのかどうかを聞いている」
「っだ、だからっ、ハーフエルフでは色々と‥‥オレの立場とかも‥」
俺は苛立った。
無用なトラブルを回避する為にサリオがハーフエルフだと隠すことはある。
だがこの男は違った、この男は自分の立場も考えていた。
そして思い出す。コイツはシャの町でサリオがハーフエルフだとバレた時に、町の奴らに合わせてサリオと距離を取ったことを。
――なんだよコレ、
ハーフエルフを堂々と連れて行く覚悟は無いのかよ、
駄目だ!全くワカンネ‥
「単刀直入に聞く、アンタはサリオが好きなのか?」
「ああ、好きさ、あの小ささにあどけなさ、それに――」
タルンタは饒舌に語りだした。
『お前そんなキャラだったのかよ!?』っとツッコミを入れてしまいたいぐらいに、身振り手振り熱く暑苦しくサリオの良さを語った。
軽く魂を持って逝かれそうな程の熱意。
だが残念な事に、要約するとタルンタは”ロリコン”だった。
出来れば一生知りたくなかったロリコンの熱い想いを、俺は脳に刻み込まれた。
勿論色々とアウトな気がしたが、歴代勇者の価値観で、この異世界で幼女好きは意外と容認されている。
完全にアウトだけどセーフ異世界。
別の所で覚悟を見せられた俺。
最初はこの男にサリオを預けても、彼女は幸せになれないだろうと思った。だが、ちょっと視点を変えて穿った見方をしてみると、これはアリかもしれない。
閑話休題
次の日。
俺はサリオに、ある確認を行う。
「な~~サリオ、例えばだけどさ‥‥ロリコンがお前のこと好きって言ったらどう思う?一緒に居たいとか思うか?」
出来るだけオブラードに包んで訊ねるつもりだったが、内容な内容なだけにそれは諦め、俺はストレートに訊ねてみた。
「ぎゃぼー!嫌ですよです!ロリコンとかあたしに失礼なのです!」
『あたしは22才なのです』『大人の女性なのです』など、色々と俺に文句を言ってくる。それを聞いて俺は――
――そりゃそうか、
ロリコン野郎に、『好き』って言われてもだよな、
これはやっぱり断るか、
こうして俺は、サリオをタルンタに託すのを止めた。
それから暫くの間、馬車の旅は進み、目的地の森へ辿り着く。
その辿り着いた森には、情報通りに狼がいた。
魔石魔物の狼型よりも一回り小さく、大きさは3メートル程。
漆黒の毛並みに、藍色の眼。
そして一房だけ亜麻色の鬣。
そんな狼が一匹、森の中で静かに待ち構えていた。
読んで頂きありがとう御座います。
宜しければ感想など頂けましたら嬉しいです。
誤字脱字に誤用のご指摘なども頂けましたら、、
後、喉も大分良くなった来たので、すぐに次をお届け出来るかと。
今回は間が空き申し訳ありませんでした、本気で声が出なくてちょっと焦りました(力士みたいな声が出てました