表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

151/690

むかしいま

聖戦のラストー

かなり短め。

 無意識だけど、意識がある。

 夢を見ているけど、それが夢だと自覚している夢。


 昔のことを思い出す。

 深い森の中にある村のことを。



 村のみんなに言われて薬草とキノコ採りの毎日。

 ただ、これさえこなしていれば、村に住ませて貰えた。



 他に話かけられることは少ない。 

 『んっ』っとアゴで指された方を見て、仕事なのか、他の事なのか【理解】する。 

 

 そして【理解】したことをただやるだけ。

 もし【理解】を持っていなかったら、説明が面倒で放り出されていただろう。



 人の感情の機微は分からないけど、やれと言う指示は【理解】出来た。


 

 あまり思い出したくない、昔のこと。



 自分が売られた理由も【理解】出来た。

 みんなとは違う耳の長さ。


 中途半端な耳の長さ。

 これがみんなには嫌らしい、他にも理由があるのか視界にも入れたがらない。

 

 だから、取引に来ている鍛冶屋の親父に売られた。

 何故引き取ったのか、その理由は分からなかった、最初は‥‥




 街の鍛冶屋で引き取られて【理解】した。

 ハーフエルフは嫌われていると言うことが。



 でも嫌われている理由が理解したくなかった。

 

 ただ嫌われているから、嫌われているだなんて。

 【理解】持ちでも理解出来ない、世の中の当たり前の事らしい。

 でも、当たり前(・・・・)の事だから仕方ない。

 それを受け入れた。


 逃げ出すことも出来ない。

 逃げれば、全てを失うから。




 そして最後は見捨てられた。

 それはあたしが成長しなかったから。

 鍛冶屋の親父はあたしを奴隷として売るつもりだった。


 奴隷を売るには、本人の意思か、親の意思、これのどちらかが無いと、奴隷としては売り飛ばせない。

 本人の意思と偽り、それが強制だと判れば罰せられる。


 よくある話では。

 捕らえた娘を脅し、そのまま奴隷として売り飛ばそうとしたが、買い手の奴隷商からの『本当に貴方の意志ですか?もし違うのでしたら、あの者達を逮捕出来ますよ?』っと質問され、脅して売ろうとした側が捕まると言う話がある。


 だから選択をあたしにさせるつもりだったらしい。

 奴隷として売られるか、ハーフエルフとして放逐されるか。


 放逐されたハーフエルフは、ほぼ野垂れ死ぬ。

 保護者無しには街にも入れない、買い物も出来ない。

 これでは生きていける筈が無い。


 だから鍛冶屋の親父は、あたしに奴隷を受け入れろと言うつもりだった。

 多少の危険はあるが、あたしが素直に売られると予想していたのだろう。


 そしてその予想は間違っていなかった、言われたら素直に頷いていた筈。



 でも【幼女】持ちのあたしは成長しなかった。

 小さいハーフエルフには価値が付かず、奴隷として売るにはリスクが高すぎる。だからそのまま捨てられた。


 押し付けられた、失敗を理由に。


 


 せめて成長出来ていれば、せいどれいとして売ってくれただろう。

 エルフの血が入っているから、最低限の容姿は確保出来ただろうから。 

 理解したくないことだが【理解】してしまっていた。


 他にも、回復魔法が使えれば、回復役として冒険者に買われたかも知れないが、あたしはそれも持っていない。


 MPが多いだけで、攻撃しか出来ない後衛。

 それでは冒険者達に受けが悪い。



 捨てられるのは当たり前(・・・・)



 その当たり前の中で、拾ってくれる人がいた。

 世の中の当たり前を無視して、自分の価値観で判断する人に。


 その人の価値観で、あたしは拾われた。




 その人は、あたしの頭を撫でてくれる。

 時には、お腹も掴むけど。


 この異世界で、ハーフエルフの頭を撫でる人なんて滅多にいないのに。

 その人は、乱暴気味だが頭を撫でてくれる。



 


 うっすらとだが、声が聞こえる。

 その人(・・・)の声が‥‥


「――ませんでした!」


 あや?なんか謝っている?


「――矢理誘われて、断れず‥」


 何か必死だ、


「でも、でも‥‥」


 情けない声を上げている‥‥?


「他にも小山とか居たじゃん、アイツだって未成年だぞ!」

「小山君は‥‥、居ませんでした、見てませんっ」


「ええええ!?居たよね?それにオッドも俺達とそんな年変わらないし」

「異世界では、14才で成人なので問題ありません、」



 なんでしょうねコレ、

 酷く情けない声を上げるジンナイ様と、辛うじて聴き取れる程度の小声で話すコトノハ様、それと一言も喋らないラティちゃん?


 あたしの寝ていたベッドの横では、床に膝を付いて座りながら、体を前に倒し両手を付いて頭を下げているジンナイ様。

 

 確か、歴代勇者様達が伝えた、最上級の謝罪の構えでしたっけ?コレ‥‥


 そしてそれを見下ろすように立つ2人。

 ラティちゃんは、ピシっとした感じで手の平をお腹の下辺りで重ねた姿勢。

 コトノハ様は、モジモジした感じで落ち着きのない姿勢。


 あたしが寝ていたこの部屋は、テイシちゃんとラティちゃんも一緒の3人部屋。

 何故か、居た筈のテイシちゃんは居なくなっており。その代わりに3人がいる。

 

 一体これは――


「なんなんでしょうねコレ?です」

「俺が聞きたいわっ!」


「陣内君、反省しているのですか?」



 あ、また叱られた。

 これはジンナイ様が何かやらかして謝っているのです?


 あれ、でも‥

 叱っている側のラティちゃんは困った顔しているし、コトノハ様も‥


「ああいう場所は、もっと大人‥‥になってからがいいかと‥」

「‥‥はい、」


 蚊の鳴くような声でジンナイ様を叱る?コトノハ様。

 彼女は、物凄く申し訳なさそうな顔をして、ジンナイ様を見ている。


 叱られているジンナイ様の方は。

 頭を下げているので、彼女達からは見えないが、横にいるあたしには見えた。

 

 口元が少し綻んでいるのが‥



 本当になんなんでしょうねえです。

 怒られているのに嬉しそうにしているし、ハーフエルフのあたしは拾うし‥‥



 本当になんなんでしょうね‥‥


 この方は――


 でも一緒に居たいと思うあたしも、なんなんでしょうね‥‥


読んで頂きありがとう御座います。

宜しければ感想など頂けると嬉しいです。


それと誤字脱字などのご指摘も、


それと、日刊ランキング289位に入りましたー!

ランキングなんて縁の無いモノだと思っていたので、素直に嬉しい!

感謝です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ