竜の巣でゴタゴタ
定番のゴタゴタ面倒回
竜の巣に、俺は初めて踏み入る。
広大な空間が特徴の竜の巣
その広さは、文字通り竜が生息していても不思議ではない広さ。
この竜の巣に湧く魔物の種類は、魔法生物系。
獣らしさは無く、スライム状の魔物や、光を放ちふわふわと浮ぶ魔物。
自然界に生息しているような形状の魔物ではなく、異形の魔物ばかり。
強さは、ノトスよりも楽な感じ。
だが、奥には比べ物にならない強い固体がいると言う。
それは竜。
この竜の巣には、しっかりと文字通りの存在が居るのだと。
そしてその竜は魔物ではなく、生物。
倒しても黒い霧となって霧散するのではなく、その死骸を残す。
そしてその死骸からは、上質な素材である竜の皮や鱗に爪などが獲れ、それを目的に竜を狩りに行く冒険者もいるそうだ。
ただ、強大な強さを誇る竜が相手では、それなりに敗北も多い。
特に強い固体と出会うと、一介の冒険者では傷一つ付けれずに全滅するらしい。
そして、その特別強い固体と出会ってしまったのが、勇者達。
苦戦を強いられ、不安定な状態の時に、地面の崩落が起き飲まれて行ったと。
俺は、ガレオスさんとハーティさんの2人から、その説明を道ながら受けていた。
「でだ、単発程度のWSじゃ弾かれるんだよ」
「ああ、放出系は全く歯が立たなかったね」
「地下迷宮のイワオトコ以上の堅さ?」
「う~ん、比較にならないかな、多分サリオさんの魔法でも無理かもだね」
「あの黒い鱗野郎はちょっと厄介だな」
ハーティさんはサリオの魔法でも無理だと言い、『会わないで、やり過ごしたい』とガレオスさんは言葉を続ける。
そう、俺達は若干暇を持て余していた。
その理由は。
「わたしが先に!弓WS”サイスラ”!」
「負けないワタシだって!弓WS”スラグショト”」
光煌めくレーザー光線のようなWSに、巨大な白い鏃が飛んで行くWS。
広く見通しの良い竜の巣。
メイン武器が弓である2人の勇者、三雲と橘が異様に張り切っているのだ。
「ジンナイ様、あたしも暇なのです」
「お前は頑張ってアカリを唱えてろ」
不満そうに生活魔法”アカリ”を使い続けるサリオ。
そして――
「正面から2匹来ます!後方は敵影なし!」
【索敵】に集中しているラティ。
まさに、索敵&屠る。
遮蔽物の少ない場所での、ラティの索敵精度は。ガレオスさん曰く『まるで別物のような【索敵】だ』自分の持っている【索敵】とは比較にならないと評価していた。
竜の巣の探索は思いの外、上手く進んでいた。
余計なゴタゴタ以外は。
「ハーティさん‥すいませんがSPがちょっとキツく」
「ハーティさん!わたしもSP枯渇気味です!同じ仲間なのでわたしを優先で!」
2人の勇者が競うように魔物を倒し、そして争うようにSP回復魔法を要求。
他には。
「ラティさん!見てくれッス!オイラの迅盾をっ!」
複数の魔物が襲って来た時は、盾役が時間を稼ぐのだが。
その時は、オッドが露骨に突き進んでいたのだ。
寧ろ必要無い場面であっても、飛び出して行く始末。
「あ~~確かに、ラティ嬢に言い寄って来てはいないが、アピールはするってか」
「彼も頑張りますね~、陣内君に凹まされたのに」
「狼人は短絡的、アタシ達猫人の余裕さを見習うべき」
現在はまだ浅い階層。
他の主要メンツは、ガス抜きの意味も込めてか、張り切り過ぎるメンツはそのまま放置の流れであった。
確かに、押さえつけるよりは良いだろうと、俺も傍観する。
そして同時に観察もしていた‥‥
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
特に問題無く探索は進み。
適度な平地を見つけ、俺達は交代で休憩や睡眠を取る。
前回の深淵迷宮で慣れた俺達。
速やかに休憩ベースキャンプを作り上げ、食事の用意や寝床の用意をするが。
「おい、さすがに非常識過ぎんだろ‥‥」
「ダンナ‥勇者の凄さは知ってたけど、これは想定外だ、」
「同じ【宝箱】でも、これは別格だね、」
橘が、竜の巣が広いのをいいことに、いつもの豪邸を取り出す。
地底世界に、突如出現する場違いな豪邸。
――コイツの【宝箱】、やっぱズルイな、
外だと其処まで気にならなかったけど、まさか地下でも出すとか、
無茶苦茶だろ!
橘がドヤ顔をしつつ、【宝箱】から出した豪邸の前に立つ。
そして――
「女の子はみんな中で休憩してね」
人数は多くないが、多少は参加している女性陣に彼女は声をかける。
しかも、争い相手の勇者三雲にも。
「三雲さんも入って」
「え、なんで?」
「なんでって、当たり前でしょ?危険な男の前で寝させる訳にはいかないわよ」
「危険な男って‥‥」
橘はそう言って、俺達の方を見る。
橘のことだから、てっきり俺のことを指しているとモノだと思ったが。どうやら他に、俺以外の男も危険だと言っている様子。
さすがにハーティさんの方は見なかったが、ガレオスさんやオッドなど、言うならば、野性味がある男達に一瞥をくれる。
一瞬呆気に取られた三雲だが、少し考え、素直に橘の豪邸へと入る。
ただ、入る時に他の女性陣に目を向けた感じから。
――なるほど、抑えたのか、
確かに、ここで橘と揉めると、他の子が入り辛くなるな、
案外しっかりしてんじゃん三雲、
素直に従い、他の女性のこともしっかりと考えている三雲に、俺は感心する。
無駄に争ってはいるが、三雲はパーティの代表として、成長している所は成長している様子であった。
( 胸はあまり育ってなさそうだけど)
橘の豪邸により、見張り以外は、男女が区切られる形となった。
しかも豪邸は貴族が住んでいた建物であり、しっかりとした強固な作り。
竜の巣に湧く魔物では、簡単に外壁を破ることは出来そうになく、外よりも快適であり安全。しっかりとした休養が取れるだろう。
夕食が終わり、見張り役をこなしながら、俺はそんな感想を思い浮かべていた。
そしてもう一つ。
――橘って男に対して当たりがキツイな、
ハーティさんみたいな、礼儀正しい感じは別だけど、
他の男には妙に距離を取ってる感じするな。あ!学校でもそうだったか‥?
学校の時、全く橘には興味が無く、気にしていなかったが、ふと思い返してみると、そういった傾向があった気がした。
荒木や上杉といった荒い感じの男子生徒とは、距離を取る印象。
( 橘って意外と男嫌いか? )
ナンの村に来ていた、護衛の騎士はどんな感じだったか、思い出そうとしていると。それを邪魔するかのように声を掛けられる。
狼人オッドに――
「ちょっといいッスか?ジンナイ」
「なんだオッド、帰されたいのか?」
快く思っていない相手なだけに、俺は棘のある返事と声音を返す。
「いあ、えっと、ラティさんの事は、そのあきら‥めますッス‥‥」
「諦めるのね。で?何?」
「ただ、分かって欲しいことがあるんっス!」
「‥‥‥何を?」
「藍眼亜麻色髪の狼人は、西の狼人にとって特別な存在なんス」
「いままで、そんなことは無かったぞ?」
「西側以外では廃れた信仰ッス‥」
「一つ質問だ、何がどう特別なんだ?」
「へ?特別は特別ッス?狼人にとっては王?長?そんな感じッス」
それから、オッドによる拙い説得が始まった。
ラティが迫害されている狼人達の希望の星だの。それが亜麻色の狼人ならもっと凄いことや、狼人の守護者、森の番人、世界を護る者。
それは盛り過ぎだろう、と思う程の肩書きまで飛び出していた。
そして言葉の端々には。
――特別な狼人が、人の手に渡ってるのか気に喰わないってか、
まぁ、分からんでも無い‥‥だが、
「――だから、その子供も大事なんス。血を絶やす訳にはいかないんッス!」
最初はまだ拙いながらも自制していたオッドだが、語っているうちに熱くなり。再び、触れてはならない話をまた始めていた。
熱くなると見境無いのか。その話しを持ち出せば、帰されると言う事を忘れている様子。
ならば叩き帰そうと、腰を上げようとするが。
「ちょ~~っとコッチ来ようかオッド?話がある」
「――ッガレオスさん!?え?待ってくださ――ッぐ!?」
突然現れたガレオスさん。オッドの首と肩に腕を回し、いわゆるヘッドロックを掛けて、引き摺るようにオッドを退場させる。
どうやらガレオスさんは、オッドの話の流れを見守っていたようだが。マズイ流れになったのを見かね、飛び出してきた様子。
俺個人としては帰したい所だが、お世話になっているガレオスさんの顔を立てる。
( ガレオスさん、いつも誰かの面倒見てるな)
そして静けさを取り戻し、俺は再び見張りに集中する。
だが、心の中では‥‥
――言葉達の救出に来たけど、
戦闘よりも別のことの方が厄介だな、大人数は面倒ごとばかりだ‥
俺は心の中で愚痴を吐き。
それだけでは足りず、溜息もつきながら見張りを続けるのであった。
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