ファンタジーショートショート:「ご職業は?」「・・・勇者です」
ある料亭で行われたお見合いでの一幕1組の男女がテーブルを挟んで緊張の面持ちで向き合っていた。
お互いを知るために様々な質問が飛び交ってた。
「ご職業は?」
女性の方が男性に質問をする。
「職業ですか・・・今は勇者をやっています」
少し間を空けて男性が答えた。
「まぁ!勇者ですか!それで世界はどのくらい救われたのですか?」
目を輝かせながら女性は問いかけた。
「どのくらいですか・・・?ええと・・・」
数時間後。居酒屋で先ほどの男性を囲むように友人達が集っていた。
「それで何て答えたんだよ?」
友人1人が男性に聞く。
「やっと先日1つ救うことができましたって」
「それじゃだめだろー!」
友人たちが声を揃えて言う。
「せめて2つ3つ位多めに言っておけばよかったんだ」
「馬鹿正直に言ったら駄目だろう!」
「1つなんて見向きもされないぞ!」
それを聞いた男性は落ち込む。
「やっぱり今のご時勢それ位でないと駄目かぁ。1つ救うのだけでもかなり大変なんだけどな・・・」
その言葉を耳にした友人がある1冊の雑誌を手渡す。
「ほれ、今どんなやつがもてるのか書いてあるぜ」
彼は友人達とそれを読み始めた。
「やっぱり2つ3つ救ってる勇者がもてるみたいだな」
「逆に10も20も救ってると引かれるみたいだよ?」
「魔王経験してから勇者になるってもの良いんだと」
「何それ?昔悪かったけど今では落ち着いてますみたいなのがもてるの?」
読み終わって男性は溜息をつく
「もうこれなら勇者なんて公務員とか目指したほうが良さそう」
「今更だよ!」
「まぁそっち目指すなら応援してやるけどさ」
等と言いつつビールを飲み干す彼らであった。
後日、就職にも世界2つ3つ救っておいたほうが有利と言う事実に心が揺らぐ男性の姿があった。