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第66話


「とうとうグリードアイランドに行けるな」


「ああ、そうだな」


今俺たちはバッテラの居城に向かっている。やっとここまで来ることが出来た。本当はもっと早く原作にかかわりたかったのに、ハンター試験に行くやつは厳選されてしまった。たいして強いやつではないのも選ばれたが文句は言えなかった。そいつらは組織結成当時からいたやつらで、入ったばっかりの俺では相手をしてもらえなかった。


「なんだって俺はもっと早く組織に入れなかったんだよ。そうすればゴンやキルアと仲良く出来たのに」


「ば、馬鹿野郎、それは言うなよ。組織で問題になってるんだからな」


俺はその言葉に何も返さなかった。だって、原作にかかわりたくないんだったらグリードアイランドに来なければいいだろうに。グリードアイランドに来ている時点で原作にかかわらないとかないっていうのに、今の組織はハンター試験からおかしくなった。原作にかかわろうとしたら殺されるらしい。本当のばかばかしい。それはハンター試験に行ったやつらが弱いだけだ。俺は強いから殺しに来たやつらを逆に殺してやるよ。まあ、そいつには感謝かな。そのおかげで入ったばかりの俺がグリードアイランドに来られるんだから。


「しっかし、あの蝶紳士はなに考えてるんだかな」


「ああ、そうだな」


俺もあれには辟易している。中身はどうだが知らないが、見た目は爺なのにあの格好どおりのパワフルさがうっとうしい。あいつは組織でも少数派だった原作にかかわらないようにしようとかいう馬鹿集団の代表の一人だった。


「あいつらは本気で馬鹿にしか見えなかったな」


「いや、まあ、なあ」


俺の横のやつは日和見主義なようで言葉を濁した。まったく、どんな理由であれせっかく漫画の世界に転生できたのに何を考えているんだか。まあ、やっぱり俺がオリ主にふさわしいな。俺は強い。そして、見た目もオリ主にふさわしい。転生者で集まっているが誰もが俺より強さも見た目も下だ。


「はは、楽しみだ」


「えっ、何か言ったか、リューガ」


「いや、なにも」


まったく馬鹿で困るぜ。なんだってこんな低脳なやつが選ばれたんだか。まあ、かまわない。このまま、グリードアイランドで最強を示して組織を俺の物にしてやる。




「おっと、一人で歩いていると危ないよ」


俺はうまくビスケの後にゲームに入れるようにした。じゃんけんは原作で知っていたから転生者全員が勝ちまくってゴンに続いて入ろうとしやがった。まったく目先の原作キャラにつられやがって馬鹿で困るぜ。一番重要なのはビスケと仲良くなることだろうが、そうすりゃあ、後でゴンとキルアは付いてくる。それが誰にも分からないとは馬鹿だな。ビスケはグリードアイランド初心者だからかすぐにプレイヤーに狙われやがった。原作通りだ。原作でもスペルカードで全員何かしら狙われたとか言っていたからな。ここで助ければまさにオリ主決定さ。


「はん、お姫様を守る騎士気取りかよ。てめえもどうせ初心者だろうが」


「三下が、この俺様を誰だと思ってやがる。お前ごときには何も出来んさ、ブック」


「なっ!?」


面白いほどビスケを狙ってきた三下が驚いてやがる。まさか、俺が経験者だと思っていなかったからか驚いてやがる。入ってきてすぐじゃあスペルカードは一枚もないのには向こうも気がついているだろう。だが、指定カードは消えない。つまり、バインダーを出した俺が初心者ではなくて何かを持ってるかもしれないとか思ってやがる。実際俺は一度も来たことはないがはったりも重要さ。


「どうすんだ?」


「てめえは入ってきたばっかだろうが」


まあ、スペルカードが絶対にない程度は三下でも分かるか。


「別に、指定カードがあるぜ」


「ぐうっ!」


はは、ぐちゃぐちゃになって最高な顔だぜ。所詮は三下、オリ主である俺に倒されるためにいるような存在だな。まあ、初心者狩りをする程度の三下ごときじゃあハプニングには対応できるわけがない。これだから俺はビスケを助けに来たのさ。ここで完璧に助ければビスケは俺にほれる。どうせ本来の容姿のせいでもてたこともなかっただろうから、この俺の完璧な容姿にほれないわけがねえ。そうすりゃあ、俺はもっと強くなれる。まあ、もとから俺は強いがな。


「くっ、くそおぉぉぉぉっ! 再来リターン使用オンマサドラへ」


馬鹿が俺のはったりに気づかずに無様に逃げ帰りやがった。まあ、馬鹿にしてやるのはかわいそうだな。俺のオリ主のための犠牲キャラだからな。今度会っても殺さずに置いてやるかな。さてと、後はビスケだな。


「大丈夫かい? 危なかったね、君みたいなかわいい子が一人だと危ないよ。このゲームは本当に死ぬからね。俺が守ってあげるよ」


「……あっ、はい」


最初の沈黙は俺に見惚れてたな。まあ、当然さ。俺の容姿は完璧、そして、助けに入るタイミングもばっちり、後はビスケをか弱い少女として扱えば完璧さ。ははは、完璧すぎて怖いぜ。




「どうしてこうなりやがったっ!!」


俺様の計画は完璧だったのになんだってこうなりやがったんだ。なぜか知らないがビスケに避けられてやがる。


「くそっ!!」


俺様はやつ当たりで壁を蹴り壊す。だが、鬱憤は晴れない。晴れるわけがない。


「くそっ、やっぱり周りに集まりやがったあの馬鹿どものせいか? くそが、くそはくそらしくしてろよ。俺様の邪魔しやがって、くそがっ!!」


ビスケと仲良く最初の町に来れたっていうのに邪魔が入った。町の中でビスケに接触しようと馬鹿が来た。俺はそいつらを鼻で哂った。もちろんビスケに気がつかれないようにだ。なぜなら、接触するにはもうすでに遅かったからだ。すでに、ビスケのピンチも俺様が助けて、俺様がグリードアイランドのことを教えてやっていた。もうすでに俺様とビスケの間には入れなかったっていうのに。接触するにはタイミングも完璧じゃないとな。そう思っていた。


「くそがっ、本当にくそが、俺様との間に入れないのが分かったらさっさとあきらめてどっか行けよ。くっそっ!」


馬鹿どもが集まってきたせいで俺までうっとうしがられた。あの馬鹿どもが俺を仲間だとか言いやがったからだ。そのせいで、俺もあの馬鹿どもの同類に見られた。


「くそどもがっ! 誰が手前らなんぞの仲間だ。おめえらごときじゃあ俺様の捨て駒にも不足だってんだ」


組織から派遣されるやつらは全員面通しされていたから、俺様のことを知っているやつがいた。そいつが、そいつが、ビスケのそばにいる俺をだしにして仲良くなろうとしやがった。ビスケの前だったから追い払うわけにもいかなかった。せっかくピンチを助けたっていうのに、好感度を下げるわけにはいかなかった。そのせいで、そいつもそいつと一緒にいたやつらも調子に乗りやがった。


「くそっ!! あいつが俺様を仲間だとか言いやがったあいつがいなけりゃあ完璧だっだのに、くそっ!」


最初のそいつが近づいてきたと思ったら、どんどん集まってきやがった。すぐに俺様とビスケの周りにたかりにきやがった。


「あのごみ共が! 1匹いたらいくらでも湧いてくるゴキブリかよ。くそ、ごみでゴキブリごときが俺様の完璧な計画を邪魔しやがって、そのうえ、そのうえ、ああ、くそっ!!」


ゴンやキルアにたかっていたやつらも合流したせいで、ゴンとキルアにも同類に見られやがった。


「くそくそくそくそ、あいつらのせいでキルアに見られたぞ。この俺様が、この俺様が」


俺はもう加減など出来なかった。いや、する気がなかったから目の前の壁を壊しまくった。それでもこの俺様の心は落ち着かない。落ち着くわけがない。


「俺様がごみどもと同じような者として、くずのような扱いを受けたんだぞっ!! キルアのあのごみを見るような目が、くそくそくそくそっ」


たかが物に当たった程度で気が晴れるわけがねえ。俺様がごみのように見られたんだぞ。何を代償にしたって代償になるわけがねえ。


「クソッ!」


最後にトドメとして放った一撃で俺様の目の前にあった建物は壊れた。


「見ろ! 俺様は蹴っただけでこれだけのことが出来るんだぞ。それをそれをくそっ!」


「すごいな、君は」


俺様はいきなり聞こえた声に振り向いた。そこには俺様のことを名前で呼びやがったやつがいた。


「君は…………」


馬鹿が何か言ってやがる。


「………………」


ごみが何か言ってやがる。


「……………………」


馬鹿でごみでくずでゴキブリのようなのが何か言ってやがる。


「…………………………」


なにかうれしそうに言ってやがる。


「………………………………」


俺様に迷惑をかけやがったのが何か言ってやがる。


「……………………………………」


俺様ノジャマをしたイキルカチ、いや、ソンザいするコトデさえツミなゴミクズガ…………イキテヤガル。


「おい」


「おっ、やっと俺の話を聞いてくれるようになったのか。よかった、みんな集まっているからこっちに」


「シネ」


「は」


「はん、誰がてめえらのようなごみと組むかよ。ぺっ!」


現実世界であるのなら誰もが見れば目を背けるような悲惨な光景が広がっていた。しかし、リューガがつばを吐きかけた途端にその光景は消えてなくなった。その場には残忍な笑顔で哂うリューガ以外には何も残っていなかった。


「ははは、ごみでも少しは役に立つか」


目障りなごみを処理した。そのおかげか少しは気が晴れたが少しだけだ。ごみにしては役に立ったといえるだろう。なんたって、この俺様の気分をよくする手伝いが出来たんだからな。


「そうだな。俺様のために犠牲になってもらうか。本当は俺様をあんな目で見たキルアは殺したいところだが、さすがに殺すのはなあ。まあ、ごみどもを殺せば気晴らしになるのが分かったしな。今会うと殺したくなるから、ビスケとかと合流するのは後にするか。そうすりゃあ、ビスケも頭が冷えて俺様のことをきちんと考えられるだろうしな。はは、ははは、はははははは」


俺様は他の組織の転生者は役に立たないものだと思っていたが、案外役に立つ。あの命乞いする目は最高だ。今まで賞金首を殺してきたが、転生者の目に浮かぶあれは最高の感情だ。仲間に裏切られたとかいう顔だ。


「ははは、まったく笑いが止まらねえぜ。俺様がごみごときと仲間なわけがないだろうが」


あいつが死ぬ瞬間に浮かべた表情は俺の気分を晴れさせるには十分だった。何にも罪がないやつらなら殺すのはかわいそうだと思うが、あいつらは違う。俺様の邪魔をした。俺様が殺すのに十分すぎるほどの罪がある。


「俺様の邪魔をするやつは殺してやるぜ。いやいや、ごみだから殺すんじゃなくて掃除するって言うべきだな。うんうん、ごみはごみらしくだな」


俺様は最高の遊びを思いついて気分が良かった。後で合流する気だったが、今すぐに合流してもキルアを殺さないでもすむかもしれない。それほどまでに思いついて遊びが楽しみだった。ごみ処理という名の遊びが。






「やっと、この町から出て行くみたいだな」


隠密行動をしていたおかげで転生者にも他のプレイヤーにも目をつけられることなく食道楽が出来た。ついでに、ショップで常連になったので指定カードも増やすことが出来た。レアカードではないが収集癖でもない限りは問題がない。


「ごめん。カード集めに魅力は感じない」


「……そうですか」


俺は子供のころカード集めにはまったので悲しかった。レアカード集めが出来なくても、俺としては『スケルトンメガネ』はレアで欲しかったけど駄目だった。俺のバインダーには『スケルトンメガネ』『コネクッション』『クラブ王様』『魔女の媚薬』は1枚も渡してもらっていない。


『スケルトンメガネ』
物が透けて見えるメガネ。
メモリで強弱の加減が出来る。
唯一魔法都市マサドラの呪文カードだけは透かすことが出来ない。


俺がこれを持つと何に使うかが決定しているらしくカードを分けてもらえなかった。


「馬鹿な。俺にはいざとなれば男のロマンローパーがあるんだぞ。わざわざカードをつかってまで」


「坊ちゃまは実験と称してメイドの下着当てをしたことがあります」


「待ってシンクレラそれはきちんと許可をとっぎゃあ」


『コネクッション』
このクッションに誰かを座らせれば、その人は1回だけあなたのお願いを聞いてくれる。
座った人の能力を超えてのお願いは無理。


これも俺が持つと何をするかが決定していた。


「俺は無理やりは嫌いだよ」


「スケルトンメガネの能力を試すために下着当ての許可を取れたのはこれのせい」


「ちょ、ちょっと、シンクレラなんというデマをぎゃあ」


「ではありません」


俺がスケルトンメガネのレアカードを欲しがったのは、監視をするときに建物があろうが岩があろうが監視できるので必要だと主張した。誰一人とて信じてくれなかった。


『クラブ王様』
この店の中にいる間は、店内の誰もがあなたの言うことを聞いてくれる。
ただし、この店での1時間は店外の1日を意味する。


これを俺が持っていると引きこもることが決定していた。


「いやいや、引きこもらないよ。引きこもりませんよ」


俺が何度主張しても誰も信じてくれなかった。そして、俺は屋敷を具現化して引きこもった。すぐにシンクレラに引きずり出されたけど。


「やっぱり、引きこもるんじゃない」


確かに引きこもってしまったが、今回引きこもりたいと思ったのは俺のせいではないはずだ……クスン。


『魔女の媚薬』
この薬に口づけをして意中の相手に飲ませれば、その人はあなたの虜となる。
1粒の効き目は1週間。
1ビン500粒入り。


「だから俺は無理やりは」


「坊ちゃまとメイドは相思相愛でしたが、ハードプレイをやりたがりません。ですので、どうしてもしたかったらしく最終手段としてこれを飲ませて……やっていました」


「えっ!? そ、それはち、ちがうぎゃあ」


「坊ちゃまが飲まされる側でしたが」


俺は痛いのは嫌いなのでやりたくなかった。しかし、あれだけの人数がいるといろいろな趣味のメイドさんが居る。それでも、最低限するのだとしても俺はS側がいい。しかし、中にはSなメイドさんも居た。コネクッションは俺の中では封印指定になったと言えば、ナニをされたか言わずとも分かるはず…………痛いけど気持ちよかったと思ってしまったので、俺の趣味はかなり手遅れなほど多岐に渡ってしまった。




「やっとか、この町のレストランは飽きたからね」


マチは盗賊ではなくて美食ハンターになれば良いと思う。ただ、根こそぎ取ってしまってすぐに美食ハンターのマナーが悪いやつとして、ブラックリストに載るという懸念があるけど。


「イデッ!」


「変なこと考えてるでしょ」


頭をはたかれた。マチは絶対にパクノダと同じように完全に心が読めると思う。俺がマチに対して何か考えていたら100パーセントばれるのだ。まあ、シンクレラたちメイドに言わせると俺は顔に出すぎるらしい。俺としては信じていなかったのだが、ちょっと気にしはじめた。しかし、直したいが直せるものではないのであきらめている。グリードアイランドで『ポーカーフェイスマスク』でも作ってもらおうか……透明なマスクでつけていると表情が動かなくなるとか。魅力的なものだが今は監視に集中するべきだ。


「ビスケとキルアの中は相当悪いな」


俺の一言に全員が苦笑いをしていた。離れたところからでもよく分かった。あの二人は仲良くするということにまったくと言っていいほど無理がある。あの二人が仲良くなることはないと言っていい。


「変化系と変化系は仲が悪いのかしら」


ヒソカの念系統の性格判断ではないが、変化系は性格に問題があるのだろう。監視してからキルアとビスケが仲良くしているのを見たことがない。ビスケとマチも考えてみるとあまり仲がよかったことはなかった気がする。喧嘩はしなかったが仲良く話をしているところは見たことがない。


「キルアの場合はゴンとの二人っきりの冒険を邪魔されたのがきいているんだろうな。前から思っていたけどスペシャルバインダー特製の『ホルモンクッキー』をキルアに食べさせて、ゴンとキルアをゴールインさせてもいいんじゃないかとこのごろ思うんだけど、どう思う? なあ、ソラリア」


「…………あはははは、どうだろうね」


俺の質問がよほど駄目だったのか目が泳いでいた。それも思いっきり泳いでいた。オリンピック選手も真っ青なほど泳いでいた。俺も正気に戻ってまじめに考えてみると本当にやばそうだったのでやめた。本当にゴールインされると関係各所から文句が出そうだ。特にゾルディックから怖い人が派遣されそうだ。


「やっと、合流できるけど、もう原作は完全崩壊だね」


「だなあ」


ビスケがゴンとキルアとくっついてしまったので、あろうことかビスケを憑依系転生者と決め付けて、ビスケを狙うかわいそうな転生者が増えた。そう考えるのも分からなくはない。もちろん、ビスケはビスケであり、そんな馬鹿な行動を起こすような転生者は一蹴されるだけだ。原作ではどれぐらいの強さだったか分からないが、ネテロ会長が興した流派である心源流拳法で、後に続く人材の教官をしているウイングを育て上げた実力は伊達ではない。念能力者としては確実に上から数えた方が早い。


「はあ、誰だよビスケを憑依者とか最初に考えたのは」


「そうだよね、このメンツだと合流したら毎日のように襲撃されるかも」


また、ため息が出てしまった。さっきも言ったが、ビスケとキルアのそりが合わず、いつも喧嘩している。特に、ビスケは素を出すわけにはいかないので、いつもキルアに負けているのだ。そうなればビスケのいらいらがどれほどか分かるだろう。そのせいで、いいやつ当たりの相手として転生者がぼろ雑巾のようになるのは当然の流れだ。


「それでなんとか発散できてるのにあれじゃあなあ」


ゴンがキルアを諌めている光景があった。キルアはそのせいでかなりイラついているのだ。それでも、ゴンの言うことは聞くのか我慢している。キルアは本当にゴン命だ。


「あれはゴンが鈍感だよなあ」


「そうね。原作だと女性を手玉にとっていた描写があったんだけどね。この世界だと違うのかな?」


いつも負けるビスケにゴンが味方をするから、キルアの機嫌がどんどん悪くなって、ゴンにばれないようにビスケに当たる。でも、変なところで勘のよいゴンがキルアを諌める。そして、キルアがイラついてビスケに当たって、ビスケの機嫌が悪くなって転生者への対応が過激になる。今までは重傷にならなければいいだったのが、死ななければいいになって、死んでもかまわないにランクアップしている。本当に最悪な悪循環だ。


「はあぁあぁぁぁぁっ」


「あはは、がんばってね」


ため息を吐くと幸せが逃げていくのなら、俺の残りの人生の幸せは全部なくなっているかもしれない。まあ、シンクレラやメイドさんたちに他にも女性と親密になれたのだから、十分に幸せだけどな。そう考えると俺の残りの幸せはない可能性もあるが……気にしてもしょうがないか。


「転生者とは本当にどうしたもんかな」


転生者と絶対に仲良くなりたいわけではなかったが、もうどうやっても修復が不可能にしか思えないとなると気分が重くなる。キメラアントに対しては戦力があればあるほどいいのに、絶対に仲良くなれそうにない。転生者は漫画の中に入ったせいなのか、うまくすると俺のようにありえないような念能力を作ることが出来る。組織の拠点の近くで空飛ぶ人間がたびたび情報誌(UFOとか信憑性が疑われるような記事を書くところに毎週のように)に掲載されている。普通なら信じないがたぶん誰かが空飛ぶ念能力を作ったのだろう。


「空飛ぶ念能力者とかとは仲良くなりたいなあ」


「なんで?」


「そりゃあ、いざとなったら空飛んで逃げられるとかすごいと思うけど」


「……逃げることに重点を置くんだね」


俺の発言に思いっきり呆れられたが、こんな世界では生き残る方法を何かしら持っておくべきだろ思う。まあ、死なない俺がいっても仕方がないけど。


「はあ、それにしても、転生者から見ると俺って完全に悪役ポジションなんだろうなあ」


俺は周りにいる女性を、標準よりもはるかにいい女性を見る。うれしいのだが、本当にうれしいのだが、これから命を狙われる可能性を考えると、どうしてもため息が出てくる。


「分かってはいたんだけど、ビスケに殺しはなしとか再起不能も勘弁してくれって言っとけばよかったかな。あの状態では守ってくれそうにないけど」


ゴンにばれないようにキルアがビスケに何かをしている。ビスケが髪の毛を触っているところを見ると、たぶんキルアが静電気を起こしてビスケの髪の毛にいたずらをしているのだろう。


「怖いもの知らずにもほどがあるぞ。キルアは」


「えっ!? でも、髪の毛を切られても特に文句は」


「まあ、別に髪の毛だから駄目って言うわけじゃないよ。静電気ってものすごくむかつかないか?」


「ああ、確かに冬の静電気は最悪よね」


ゴンと誰も交えずにお互いだけで一緒にいたいと思って、嫌がらせをするキルアの気持ちが俺には十分に分かる。だから、俺はほほえましい気持ちで見ることが出来る。俺もジンと二人だけで旅を、いや、冒険というべきかな、それをしているときは本当に楽しかった。さすがにメイドさんたちがわずらわしくなったことはないが、俺が1ヶ月以上も屋敷に戻らなかったときもあったと言えばわかってもらえるだろう。本当に一緒にいたいと思った奴と一緒に居ると時間が分からなくなって、他のことが気にならなくなるのだ。だが、ビスケには絶対に理解してもらえない。キルアがいなくなってからぷるぷる震えながら拳を握る姿には……絶望しか感じない。


「転生者にやつ当たりされるのもイヤだけど、あの状態のビスケが来るのはもっとイヤだ」


「……うん、そうだね。あの表情なら私にも分かるよ。ビスケが絶対に怒っているって」


「……もう潔くあきらめて、ビスケにはあの有り余る憤怒でもって転生者を狩ってもらうことを神様にでも願っとくか」


「は、ははは、それも仕方ないかもね」


俺の言葉に納得は出来ないがしょうがないと乾いた笑い声を上げていた。ソラリアも自分と見ず知らずの転生者の命だったら自分を選ぶようだ。俺が悪役認定されるのはこのパーティーから確定的で、ついでに、ビスケの行動が最後の後押しをしている。ゴンとキルアとビスケはじゃんけん大会で原作と同様に指定カードを手に入れた。そのときに、指定カードを奪いに来たプレイヤーの駄目プレイヤーはゴンとキルアが軽くあしらって、ビスケは静観していた。後の本格的なプレイヤーの前ではゴンとキルアは何も出来ない。それは実力差から仕方がないことだが、ビスケなら全員を相手取っても瞬殺できるレベルだ。しかし、しない。なぜなら、ゴンとキルアに死の危険を体験してもらうために実力を隠しているし、猫をかぶるのを楽しんでいるからだ。そうやって、実力を隠しているのに、転生者だけは本気(機嫌によっては死なないようにはしている)で相手をするのだ。転生者だから手加減をしていないのではなくて、ゴンとキルアにばれないように接触するからそういう目にあっていると気づくやつがいるだろうか…………おそらくいないだろうし、返り討ちにあった転生者が冷静に対処してくれるわけがない。


「はあぁぁ、合流するときは本当に気をつけないと襲撃されるな。合流したら絶対に俺が黒幕だと思われる。間違いではないような気がするけど、理不尽さを感じる」


もしも、誰もいなければ『ホルモンクッキー』で女性になって逃げていただろう。実際に、今からでも逃げ出したいほどだ。しかし、この後にあるキメラアント戦のことを考えると、ゴンとキルアには原作以上に強くなってもらわないといけない。多少時期がずれたりするかもしれないが、もう少し原作よりも長くビスケの修行を受けていれば、絶対にカイトに足手まといだと思われない程度には、いや、もしかしたら考えられないほどに強くなるかもしれない。原作のビスケはグリードアイランドで生きていけるのを目標に育てていたが、この世界のビスケにはキメラアントのことを話している。絶対に原作以上に強くなるはずだ。まあ、その分修行がひどいものになるだろうけど。


「ゴンとキルアなら喜びこそすれ、文句は言わないよな」


「あっ、町を出たよ。早く追いかけようよ」


「ああ、そうす……いや、ここからは俺一人で追いかけるわ」


全員が驚いた顔で俺を見る。


「どうして?」


「一人のほうが見つからないからな。まだ、転生者と戦いたくない」


「でも、見つかったときにはみんなで居た方が」


「大丈夫大丈夫、俺には男のロマンローパーがあるから見つかることはほとんどないし、絶とか隠は俺の十八番オハコだ」


俺の念能力男のロマンローパーを知っているので、すぐにそのほうがいいことに気がついた。実力的にはまだまだだが、ゴンもキルアも勘が良すぎて監視が大変だ。しかし、俺のこの念能力なら監視が楽だ。俺の絶と隠を見破れるやつはそうはいない。万が一にでもゴンとキルアが見破れるのなら、わざわざ危機感を煽る必要がない。俺の男のロマンローパーを見破れるということは、原作と違って常に凝などをしていて、ペーペーの念能力者ではないということになるのだから。だったら、俺やビスケが目の前で堅でもすれば実力差を感じて修行を受けてくれるだろう。常に凝を怠らないということはグリードアイランドをただのゲームとしてではなく、自分たちのレベルでは常に警戒しないと命に危険があるゲームだと認識しているということだから、説得は容易に出来る。


「常日頃からは無理でも、戦いがあれば凝をする程度になっていてくれると、天空闘技場でヒソカにおびえながら男のロマンローパーで稽古もどきをした甲斐があるんだけどな」


俺は男のロマンローパーを最大まで伸ばして離れてついていく。







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