第29話
それから俺たちは役割分担を決めた。
ほったらかしにしていたこの島の神字を新たに書き込む役目を俺が、ゲームに必要そうな念能力者をジンが集めることになった。
ジンとの旅で俺もオーラの扱いや神字については成長したので、トワリエラたちにも手伝ってもらいながらやり始めた。
ジンが仲間を見つけてくると言ったときに知っている仲間だけでも教えようかと思ったが、ジンのほうが断ってきた。
自分で見て決めたいそうだ。
本当に妬ましいほどかっこいい男だ。
それからは本当に久しぶりにみんなとだけだった。
息抜きみたいな感じだった。
前は自分の全力を傾けてやっと神字を書き込めていたのに簡単なものは片手間に出来るほどだった。
それでも前に書き込んだ神字よりも強力だった。
前よりも順調に俺は島に神字を書き込んでいった。
単調作業だったが前との差を感じられて俺は楽しんで書き込んでいった。
ジンとちょっとの間旅をしただけで自分の実力が上がったのを実感できるなんて、どれだけあのたびはハードだったのだろうか。
ジンがすでに伝説の人物扱いされるのが理解できる。
俺みたいに微妙な理由で伝説の人物扱いされているのとはやっぱり違う。
それでも、近頃はオーラ量がありえないほど増加した。
ジンとの旅で何度も死に掛けたというか死んだので、オーラ量が増えた。
ジンも大食いや施設めぐりが楽しいので、俺のオーラをふやすことに貢献してやるとか言って俺をぼこぼこにする。
あのはじめての戦い以来、俺はほとんどジンには勝てていない。
俺のほうがオーラ量が多いというのに、俺のオーラにはまれにしか気迫がこもらないので勝てない。
ジンとの旅の途中で会ってネテロ師範には本当にうれしそうな目で見られた。
俺をジンと会わせてはっぱをかけるつもりだったのは丸わかりだった。
ついでに、俺はネテロ師範にも襲われた。
結果は相変わらずだったが、前よりは長い時間持ったので本当に本当にネテロ師範は楽しそうだった。
それを見ていたジンも楽しそうだったが俺はすごく楽しくなかった。
負けるのが当然だとしても、負け続けたりぼろぼろにされるのが楽しいわけがない。
まあ、人外には勝てないことはあきらめているが、それでも強くなれるのはよかった。
戦いの才能はジンにもネテロ師範にもまったくないと言われたが、俺の堅牢なオーラを突破するのは骨が折れるらしい。
ただ、二人とも新技の実験に俺を使うのはやめて欲しい。
普通新技なんかしたら失敗するのに、この二人の場合は威力調節が出来ないとんでもない必殺技とか出すので泣きたくなるのだ。
新技なら新技らしく、たまには威力不足とかなればいいのに今まで一度だってそんなことにはならなかった。
二人とも謝る言葉は、すまん、本物の人間を生死を考えないで全力を出せると思うとテンションが上がってとか絶対に納得いかない理由だ。
そのせいで、俺は守りのときに一番オーラに気迫がこもるようになった。
俺を戦闘に目を向かせるつもりなら逆効果じゃないかと文句を言うと、最強の防御力を持った念能力者を目指してくれとか言われた。
もちろん、俺は怒って襲い掛かったが返り討ちにあった。
理不尽すぎると思う。
昔を思い出すと屋敷に引きこもりたくなりそうなので、何も考えずに出来る単純作業に戻った。
仲間を探しに島の外に出たジンがそれほど時間をかけずに島に戻ってきた。
子供を連れて。
「お前の子供か!」
違うと分かっていながら驚いて見せたら、ジンではなくてその子供のほうに吹き飛ばされた。
俺は空に吹き飛ばされながらこんな小さいのにも吹き飛ばされる運命なんだなと、かなりの余裕を持って吹き飛ばされた。
いろいろと本当にいろいろと余裕が出てきている。
その後紹介されると、双子の姉妹でエレナとイータと名乗った。
さすがに俺はこれにはびっくりしていたが、ジンもその顔でこの二人は当たりだと気づいたようだ。
俺がどうやって原作と同じ人物をと聞いたら、俺様も原作の俺も見る目があったってことさとかっこよく決めてさっさと島を出て行こうとしたので、俺はあわてて引き止めてあの双子に説明したのかと聞いたら、まったく何の説明もせずに有無を言わせず連れてきたらしい。
それって幼女誘拐かと聞くとそうとも言うかもと、後のことは俺に全部丸投げして逃げるように島を出て行った。
さすがにこれは想像していなかったと双子に説明を求めるもまったく相手をしてくれない。
話しかけても完全に無視されてしまう。
無理に近づくと吹き飛ばされてしまう。
このイベントの難度は高すぎる。
野生動物並みに警戒している誘拐してきた幼女とのコミュニケーション。
ジンのおかげでだいぶなおったといっても引きこもりの俺にどうすればと怯え続けたいた。
俺もジンに習ってトワリエラとシンクレラに双子の相手を丸投げした。
念能力者として実力が上がったので二人同時に具現化できるようになっていて本当に助かった。
二人は人付き合いが得意なのか近くに居ても吹き飛ばされたりはしなかった。
俺も大丈夫かと近づくと俺はまた吹き飛ばされた。
俺とトワリエラやシンクレラでは対応が違うのは分かるが、殴り飛ばされて空を飛んでる身としてはなにかが納得いかなかった。
逆の立場なら俺もそういう対応をしそうだが納得はしたくない。
そのことは置いといて、あらためて考えると幼女誘拐はやりすぎなので双子のことを探し始めた。
俺もハンター歴はジン以上なので特殊なことではない限りはジン以上のコネがある。
ハンターとのつながりはジン以上にあるのだ。
引きこもりの俺より少ないジンがまずいのかもしれないが、ジンの気まぐれには早々付き合える人間は居ないからしかたないかもしれない。
そういったコネを使えば双子のことはすぐに見つけることが出来た。
とある資産家のご令嬢だ。
ちなみに、とあるマフィアのご令嬢と言い換えることが出来る。
「はは、こりゃあ、面倒がないな……ってそんなわけがあるかーっ! どんなところの子供を誘拐してんだあのボケは。なにか、波乱万丈の人生じゃないといやなのか? 一分一秒を惜しんで危険と隣りあわせじゃないと生きていけないのか、魚の一種みたいに泳ぎ続けないと死ぬみたいなことか、あの馬鹿は」
双子は俺にはかけらも興味は示さなかったが、自分たちのことを調べられているということは分かったのか、近づいてきて俺のパソコンを見た。
「安心しろ、さすがに誘拐は……」
いくら必要と分かっていてもこんな風に誘拐するのはいけないと思って話しかけようとしたら、そんな雰囲気ではなかった。
今まで俺が近づいても逃げるばっかりだったのに、双子はパソコンを見るためとはいえ俺の体にくっついていた。
それだけなら自分の家のことを心配しているからだと納得できたのだが、双子の様子にはそれだけでは納得できなかった。
俺の服の裾を震える手で握り締めていたのだ。
震えているのも誘拐されたのなら当然だが、俺が近づけば逃げてそれでも近づけば俺を吹き飛ばすことが出来ていた双子だ。
こんな姿は見ていない。
島に来てからずっと無表情だったが、こんなおびえている姿は見たことがない。
それに心細さで震えていたとしても誘拐犯の仲間の服の裾は持たないだろう。
俺は双子に招待状を渡して具現化した俺の屋敷に無理やり入れた。
その後はみんなに任せて俺は島を出た。
6日後に俺は帰ってきた。
その日にジンも新しい人を見つけてきたようで島の住人が増えていた。
その住人はリストとドゥーンと言った。
ドゥーンはこんな豪勢な屋敷に入れないずにその前で寝袋生活は拷問だと言っていた。
俺がいないうちに島に来て俺の許可がないから屋敷に入れなかったのだろう。
俺はそのままジンを含めて全員を屋敷に入れた。
その広間にはみんなと双子が居た。
双子は屋敷に入ってきたのが男ばっかりだったからかみんなの後ろに隠れるようにして俺たちを迎えた。
俺と双子の間にはなんとも言えない雰囲気が漂っていた。
このとき、ドゥーンが空気を読めずにメイドを口説こうとしたらリストに黙らされていた。
ドゥーンは女好きだなと思ったが、空気が読めないのではなくてあえて読んで馬鹿をした可能性もあるので、俺は何も言わなかった。
俺はそのまま双子に双子の親権を俺が奪い取ったという書類を見せた。
ついでに、すぐに俺との養子縁組を破棄できる書類も渡した。
見た目からは想像できないほど頭のいい双子はその書類がどういう意味を持つのか分かっているのか、そのまま書類を眺めていた。
それから俺たちは案内されるままに広間に集まった。
「おいおい、ここは最高だな。あんな美人のメイ」
またもやリストに黙らされていた。
さっきのは演技だったようだが、今度は本当だったからかリストの突込みがさっきとは比べ物にならないほどの威力があって、そのまま気絶していた。
「すみませんがこの馬鹿は外に出しといてください」
リストがドゥーンの行動を自分のことのように謝っている姿からは、ジンの尻拭いに借り出される俺がイメージできた。
なんとなく仲良くなれそうだと思った。
ジンはハンターとしても念能力者としても超超一流だがいろいろと問題を起こすのも一流なのだ。
面倒なことにかかわりたがるが、後始末とかの退屈な面倒は俺に回ってくる。
ドゥーンの行動に頭を下げる姿はジンに振り回されていた俺の姿を思い出して、リストとはほぼ初対面だが友人になれそうだと感じた。
「それであの双子がそこのシトンさんの子供なんですよね」
出された紅茶を優雅に飲むしぐさはまさに王子様のようだったが、その発言には俺は顔をしかめた。
「なんであの双子が俺の子供だと」
あの角度からでは書類の文字は見えないはずだ。
「え? なんでそんなに僕警戒されてるんですか? ジンさんがここに来る船のうえで教えてくれましたよ」
俺は席を立ちジンの胸倉をつかんだ。
俺に双子のことを丸投げしておいて勝手にそんなうわさをばら撒くなという目で睨んだ。
「まてまて、そんなに怒るなよ。お前ならあの双子のためにどうするか分かってたから、だからそう言ったんだって、案の定さっきの書類はそのためのもので、双子が気に入らなけりゃあ、すぐにでも養子縁組を解消できる書類もあるんだろ」
ジンの予想通りだったので俺はそのまま席に戻って乱暴に茶を飲み干した。
俺の行動が完全にジンに読まれているのが不満だった。
「結局あの双子はなんだったんですか?」
リストが俺に聞いてきたが俺は不機嫌だったのでひねた答えしか返せなかった。
「俺があの双子を欲しがったから、親元に殴りこみに行って武力と権力にものをいわせて無理やり俺の養子にしたんだ。それだけのことだ」
それを聞いたらリストは本当にうれしそうに笑っていた。
まさに王子様の微笑といえばいいのか女性なら見惚れてしまうだろう。
俺は危機感を感じて睨んだ。
「ここのメイドを口説いたら殺すぞ」
俺が怒気をこめて言ってもその笑みはいささかも崩れなかった。
「あれ、おかしいですね。あなたの好みはあの双子ではないのですか? 今ここに居るメイドにその好みに合うメイドはひとりも居ないようですけど、だって、あの双子を無理やり手に入れようとしたんですよね?」
俺はその笑顔が気にくわなくて茶をがぶ飲みしていた。
「ジンさん、ゲームを作るのはそれほど楽しそうに思えませんが、あなたたちと何かをすることは何よりも楽しそうです。一緒にがんばりましょう」
何の話か分からないが、ジンとは話が付いていたようなので、俺はもうなんだか腹が立っていて屋敷から出たかったので全員を、双子を含めて外に出した。
それから文句を言っているドゥーンを無視しながら、ジンはゲームの話をした。
双子も横にシンクレラがいるからかおとなしく話を聞いていた。
でも、俺が近づくと威嚇された。
ゲーム作りはこの瞬間から本格的にはじまったと言っても間違いではないだろう。
新たに連れてこられた二人も原作で見たが本当にすごい念能力者で自分がまだまだだと気落ちしそうだ。
特に双子はこの年ではありえないほどオーラの量もオーラの操作技術もすごくて、俺はいらないんじゃあと思ってしまうほどだった。
俺がこの中で明らかに年上なのに一番役立たずだ。
それからも俺の作業はもっぱら島のいたるところに神字を書き込むことになっている。
難しいことは双子とリストがやっている。
驚いたことにドゥーンはかなり頭がいい。
リストよりも頭の回転は速いかもしれない。
ただ、見直すことは出来なかった。
暇があれば、難しい作業をしているのに無理やり暇を作って、俺のメイドさんたちを口説きまくるのであいつだけは屋敷に完全に出入り禁止にした。
出来ればリストのほうがやばそうだが、こっちは相方のドゥーンと違って空気は読めるのか、メイドたちには必要以上に話しかけず、俺のいないところでは会わないようにしてくれている。
うれしいのだがそういう気配りができるところがメイドさんたちに好評だ。
それが、俺の危機感をすごく刺激する。
このごろリストと二人きりになると襲いそうになってしまった。
もちろんそういう意味ではないのだが、ついついそう屋敷のメイドさんに漏らしてしまったら大変なことになった。
今は屋敷の女性陣の間で俺とリストの掛け算がはやっている。
ついでに、ジンと俺の掛け算もはやっている。
いや、これは俺がジンと出会ってからずっとはやっているそうで倒れそうになった。
ジンが女にさっぱり興味がないので余計にひどいことになっている。
最初は言い返す気力もなかったのだが、本当にひどいことになってきたので気力を振り絞って文句を言った。
俺は女が大好きだ、女と見れば見境がなくなるぐらい好きなんだと叫ぶと、なぜか双子が近くにいて汚物を見るように見られてしまった。
前からあまり近づけなかったが、近づくと逃げられて呼び止めるために肩に触れると、セクハラという言葉とともに俺は空を飛んでいる。
ご機嫌をとろうといろいろプレゼントをするも効果はない。
毎日のように空を飛ばされている。
残念ながら双子にはかなり嫌われているようだ。
「おーい、そこのメイドの……すまん忘れた」
ジンは聞きたいことがあるのかシンクレラが一人になるのを見計らって話しかけてきた。
「ジン様、私の名前はシンクレラでございます。出来れば覚えていただきたいのですが、坊ちゃんがそうすると不機嫌になるので覚えられずとも私たちはかまいませんので、そのままで結構でございます」
ジンがこうやって無条件にメイドたちと話せるのもジンが今のところぜんぜん女性に興味を感じていないからだ。
他の人間と二人きりでメイドの誰かが会おうものならすぐさまシトンが飛んでくる。
それも泣きながら。
その光景を思い出したのかシンクレラは苦笑しながら用件を聞くことにした。
「それで、どのようなご用件でございますか」
「ああ、あの双子のことさ。あれがあそこまでおとなしくしてるのがびっくりでな。まあ、シトンに任せておけば、ああ、あいつ女に優しいだろ。だから、任せたんだが、まさかこの短期間でというのはびっくりしたから、そのことについて聞きたくて、あんたらなにしたんだ」
その答えはシンクレラにとってよほどよいことなのか微笑みながら答えた。
「私たちは何もしていませんわ。されたのは坊ちゃんだけです」
その答えは意外なのかジンは戸惑っていた。
「いや、さすがにあいつでもこの短期間には無理だろう。あんたたちが何かしたのかと」
「確かに坊ちゃんは頼りないです。男としてだめだめです」
それは言いすぎだろうとシトンを弁護したかったが、それを言っているシンクレラの声は本当にうれしそうだったので何も言わなかった。
「唯一私たちがしたことといえば、この島を出た坊ちゃんがなにをしたかをテレビで見せたことです」
そういえばこの屋敷のテレビにはシトンの周りの景色を映せる機能があったなあと思い出した。
「そのときの坊ちゃんを見たから考えが変わったんでしょう。あのときの坊ちゃんはジン様とのはじめての出会いのときのように素敵でいらしたわ」
「ああ、それじゃあ。あの双子が居たところに殴り込みしたのか? シトンがか」
自分でもさすがにすべてを面倒だからとシトンに丸投げするのは悪いかと思って調べたのだ。
双子をさらってきたところがどういう行動に出ているかを。
調べた結果はまったく気にする必要がなくなったということだけだ。
内心ではまさかとは思わないでもなかったが、シトンとその結果は絶対にイコールでは結べないと考えていた。
「他に誰かに手伝ってもらったとかは」
「ありませんでした。唯一連絡したところは流星街の長老さまのところでしたわ。ある場所でたくさんの死人が出るからそこから離れてくれという連絡だけでございました」
「他には連絡せずにかよ。まったく、俺様のことをとやかく言えねえじゃねえか」
普段から逃げることと生き残ることしか考えていないシトンが、双子が理由とは言ってもそういう行動に出たのがうれしくてしょうがないようで、シンクレラのようにうれしそうに笑っていた。
「それにしてはあの双子ってシトンのこと嫌ってねえか? いっつもぶん殴ってるぞ。それも硬でだ。いくらあいつの纏うオーラが異常な多さでも日常のときのオーラ量じゃあいつか死ぬぞ」
思い出すのは肩に触れただけで足をへし折られているシトンの姿だった。
他にもそのまま腕を引きちぎられているのを見た。
毎日のように普通の人間なら病院行きの怪我を負わされている。
それでも、めげることなく双子の機嫌をとろうとがんばる姿は哀れすぎる。
無傷のときに今日はなかったのかと聞くと治した後だったとかで、人への気遣いが面倒な俺でも気遣わなくてはいられない状態だ。
ネテロの爺さんと一緒になって技の練習台にしている自分が言えた義理ではないが、ひどすぎると思う。
いくらあいつでも普通のときは流で集めたオーラなら多少痛いですむが、硬は当たり所が悪ければ死ぬ。
それを心配して話しかけたのだがシンクレラはそれを笑って聞いていた。
「さすがのジン様も女心は坊ちゃま並みなのですね。あれは好意を隠すための照れ隠しですよ。ただ自分たちを哀れんでしただけではそうはならないでしょうが、坊ちゃまは死者の使いと呼ばれる方です。どのようなことになったかは想像がつきますでしょう」
温厚というか意気地なしというか主体性がないというか気弱な普段のシトンから想像はつかないが、ジンの旅についていけたのである。
それがどういうことか世界中のハンターが知っているだろう。
ジンのそばには名誉と金があるがそれ以上に危険と死があるということを。
俺自身は自分がどれだけ危険なことをしているか自覚はあるが、性分なのでなおす気はない。
そのせいで、自分に近づいてくる人間のほとんどが自分から去っていく。
死ぬかもう付き合いきれないと言って去っていく。
シトンほど自分に長く付き合えたのは居ないだろう。
自分についてこられるだけの実力があるのなら、自分に付き合う必要はないのだ。
そんな自分に付き合える普段の頼りないシトンではないシトンも俺は知っている。
だから、そのシトンが行動に出た結果ならああいうことも起こりうるだろうと納得できる。
だが、あの双子の殺しかねない攻撃が好意からの行動というのは予想外だった。
そのことにあきれる以外何も出来ない。
「……俺はあいつが原作とか言うのを話しているのを聞いて、俺の子供が面白そうに育つから子供を欲しいと思ったが、絶対にいらないな。照れ隠しってことはすきってことなんだろう? あんな愛情表現される女心が理解できないといけないんなら、絶対に結婚したくねえ」
シトンの不死身さがなければ一生治らないような怪我を毎日のようにつけられるのが愛ならば、俺は絶対に遠慮したいところだ。
自分だったら攻撃されたときに受け流せられると思うが、毎日のように硬で攻撃されれば万が一があるだろうし、いや、その可能性よりも自分ならとっさに反撃して双子を殺してしまうだろう。
そんな毎日は危険と死なら何でも来いであるさすがの俺でもいやだった。
この間、リストやドゥーンが女について話しているときに聞いたのとは違うが、そのときに女心は男には一生理解できないものだとか言っていたから、そんなもんだろうと納得した。
そんな女にほれるやつのことも一生理解できないと思った。
「しっかし、調べたら死人が出るとかそういうレベルじゃなかったぜ。何もかもがなくなっていたぜ。しいて言えばクレーターがあっただけだな。俺でもあそこまでのことはできねえぜ」
そのクレーターは隕石の落下と報道されているが真実は闇の中だ。
まさかそこにあった大富豪の屋敷には地下研究所があって、そこで生まれたときから、いや、生まれる前から超人、つまり、念能力者になるように人体実験が施される施設があったとは誰も想像できないだろう。
その施設では、唯一の成功体が盗まれたことでずっと警備体制が強化されて、すべての職員がぴりぴりしていた。
せっかく成功したのにと嘆いていたら、あらわれたのだ。
地獄の使いが。
それは本当に数多くの死者を引き連れていて、犠牲になった子供も、赤ん坊も、まだ人にすらなりきれていなかったもの、すべてを引き連れて蹂躙した。
誰一人としてその施設の関係者は生き残ることは出来なかった。
死者はすべてを知っているのだ。
だが、その死者の声は誰にも届かなかった。
この日までは。
自分たちをこんな風にしたのは誰か。
自分たちが無念を残しているのはなぜか。
自分たちはこの自分たちの代弁者に語るだけでいいのだ。
そうすればその代弁者は自分たちのために戦ってくれた。
相手が強く代弁者が死のうとも自分たちが望めば何度でも立ち上がった。
相手が強くとも自分たちが望めば代弁者はより強くなって自分たちの望みをかなえてくれる。
その代弁者はこの瞬間まさに自分たちのために存在していた。
その地に自分たち以外、誰もいなくなるまで代弁者は動き続けてくれた。
最後にはその施設の痕跡を地上に残さないようにすべてを無にした。
そのときの衝撃と光によってそのクレーターは長く語り継がれた。
一種の心霊スポットのように。
しかし、そこには絶対に幽霊は出てこない。
なぜならそこは死者の使いによってすべての怨念が浄化された土地だから。
その怨念によって復讐されたものたちもすべてが無に帰ったのだ。
かけらひとつさえ残ってはいない。
この土地は知らぬものには一夜にして出来た心霊スポットだが、その土地に関係したものはすべてがそのクレーターの誕生の瞬間になくなったのだ。
ただ唯一その施設で生き残った双子を除いて。
だが、その真実を知るものはそれを語らない。
ゆえに、すべてがなくなったということが真実になった。
シトンのゲームマスターとしての役目は神字を書き込むことです。
この異世界の生き方では神字を書き込むのには集中力とオーラが必要と勝手に設定しているのでこの役目をしています。
最後の方ではシトンが無双状態ですが、死者のオーラに支えられてのことですのでいつでもできるわけではありません。
これからもよろしくお願いします。
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