※R15としてありますが、性描写はほんの一部になります(いわゆる性行為シーンはありません)。
※長編ですので、個人サイト内にキャラ紹介のコーナーが設置してあります。必要な方はご利用ください。
朝のまどろみの中、彼女を起こしてくれるのは、いつもひとりの男の声だった――が、
「いつまでぐーたら寝てんだよ!」
という御伽の国の眠り姫の妄想も打ち砕くように、現実はシビアに女の身に降り注いだ。
ぐーごぐーごとベッドの上で大の字に寝ていたうら若き女は、その怒号の主により、下のシーツを思い切り引っ張られ間抜けな格好でベッドの下に転げ落ちる。
「いったいなあ……。もー少し優しく起こせないのかよ」
長くさらさらな黒髪の女性――黙っていれば相当な美人であるのだが、それも台無しになるような、ジャージ姿で床に胡坐をかき頭をがりがりと掻きながら、自分を起こした男――と言ってもネクタイ姿の高校の制服を着た背の高い少年――に訴えかけた。
「お前が優しく起こして起きるようなヤツなら、前からそうしてる」
少年はつっけんどんにそう答えると、
「早く着替えてメシ食え、仕事遅刻するぞ」
とまるで母親のように、ぐうたらな女の世話を焼く。
「源二、今日の朝飯はー?」
女は躊躇いなく源二、と呼ばれた少年の前で着ていたTシャツを脱ぎ捨てながら尋ねる。
「白米、味噌汁、納豆、サケ、」
源二は舌打ちをしてそこから目を逸らしながら、自身が作った朝食の内容を連呼する。
「卵焼き食べたい」
早起きを得意とする少年にいつも朝食を作ってもらっているという低血圧の女は、今度は下のジャージを脱ぎ捨て下着姿のまま出勤用の服を漁りながら、尚も勝手なことを言うが、
「作ってある」
「さすがだね」
背中を向けて答えた、彼女の思考などお見通しの彼の言葉に、その女……一夜は満足そうににんまり笑った。
これが二人が二人だけで生きていくこととなった、五年前のあの日からの朝の光景なのであった。
・・・・・・・・・・
このぐうたらな一夜でも、源二が家に来る前までは一人で暮らしていた。彼女自身も幼い頃から仕事で母親が居なかったので、別に料理が出来ないわけでもなく、現に今も夕飯は当番制で作っている。しかし彼女よりも朝が強く手際がよい源二は、朝食と一緒に一夜の弁当まで作っくれているのだ。
その弁当を今日も持って(更に彼は自分の分の弁当も作っている)、一夜は目覚めた身体でひとつ伸びをすると、自宅アパートから徒歩三十分の市の交流学習センターへと出勤していった。
◇拍手&簡易メッセ◇
個人サイト>碧落の砂時計TOP
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。