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廃神様と女神様Lv1 作者:井口亮

第2部『二つの太陽編』

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溢れ出る封印を解くときは部屋の鍵を閉めないと、叩かれる。

スラング解説

金剛
ブラウザゲーム『艦隊これくしょん』出展
日本が戦艦建造技術の習得のため、英国に発注した高速準用戦艦で数々の戦果を上げる。
その歴史的背景があることからか『艦隊これくしょん』の中では『英国からの帰国子女』というキャラ付けをされている。
高速巡用戦艦は『ヘビー級ボクサーの火力でライト級の足を持たせたらどうか』という発想のもと生まれた戦艦で下位クラス相手には無双できるがヘビー級同士の撃ち合いになると沈んでしまい装甲の問題点を浮上して続く長門級(作中ビックセブンの通称)開発の基礎となる。
 お伊勢さんというのも戦艦『伊勢』のことで同上出展

『強いおじちゃん』
 漫画『エリア88』出典。
 友人の策謀により外人部隊に傭兵契約させられてしまった主人公が血みどろの航空戦をやる名作。
 作中に爆撃機『A-10サンダーボルト』を乗機とするグレッグ・ゲイツが最期に発した台詞『なに……おじちゃん強いから平気さ』が転じて『強いおじちゃん』
 
 ひとしきりチュートリアの心を折ったところで俺と赤い竜は『狩りに出かける』と称してその場を後にする。
 俺はポーションを飲んでもなんだか違和感の残る頬をさすりながらのろのろと歩き、隣を神妙な顔つきで歩く赤い竜がおもむろに尋ねてくる。

 「くりうがすたっどあっごいへぅ!ってどういう意味?」
 「くたばっちまえクソ野郎俺ぁ家に帰るって意味。俺が家に帰りてえよ」

 ホームの発音がどう見ても地獄行き。地獄からの使者ですかという話ですよ。
 泣き散らかす女ってのは面倒だし、そもそも俺が悪い訳ではないから放っておくことにした。

 「つか、準備くらいきちんとしてから出かけような。だから誰も竜ちゃんとパーティ組みたがらないんよ?」
 「だってー、忘れてたんだよー。それに今は大体コンテンツファインダーみたいなシステムで最近は勝手にパーティ入れるでしょー?だから別にいっかなーって」
 「いいかなーじゃありません。ログオンしたときとログアウトする前、きちんとインベントリ整理してから寝なさい」

 本当に赤い竜と居ると俺が面倒見よさそうに見える不思議。

 「キクにも気取られたくねえのにも一度会いにいかなならんとかアホじゃねえの?」
 「盾を修理に預けておくの忘れたんだよぉ」
 「予備のがあるでしょうに。それで我慢しなさい」
 「だってー、あっちゃん居れば盾盾できるでしょー?強ぇの来たらやらなならんでしょー」
 「それを含めて予備あるんでしょうに」
 「ドラグシールド系以外持つとかないわー」

 本当に我が儘坊主を相手にしている保母さんの気持ち。
 俺は大きく溜息をつくと村の中心にある村長の館に向かう。

 ――キクには銃器関係も全部引き渡しておいた。

 あとは見つけておいて欲しいレアがあれば俺が求める『竜具』の基礎が作れるはずだ。
 そのあたりの進捗も確認したかったからいいのだが何も出掛ける前でなくてもよかろうに。
 俺達はのそのそと村長の館に入るがホールに置かれた執務机にはキクさんの姿が見えない。
 裏の工房にでも居るんだろうとホールを抜けて工房のドアを開いたところ、だ。

 ――キクさんが榴弾砲をいそいそと背中にくくりつけて何やらやっていた。

 遠距離火力職のハンターをやるならスキルを上げていけば問題無く使えるだろうし、使えれば低レベル相手には無双できる榴弾砲は俺が持つよりキクさんの方が金回りいいから有効に使えるだろうと思って預けてきた訳ですよ。
 キクさんが珍しく鏡を前にして髪の毛を弄ってらっしゃる。
 これは珍しい。
 女子力を磨くキクさんなんて何かを教えてくれるチュートリア以上に珍しい。
 つまり、果てしなく見たこと無い。
 これは明日死ぬかもしれない死亡フラグだと思ったんですが、ふと思い直せばこれって凄いメシウマ状態なんじゃね?と思い直す。
 今度はどんな勘違いファッションをしてくれるんだろうと思って見ているとキクさんが髪の毛を弄り終わったようだ。

 ――両サイドに丸いカールを作ってヘアバンドをつけている。

 まあ、うん、見てくれ的には悪くは無いわな。
 もともと巫女服みたいなコンセプトが強い物を着ているから崩しとしてヘアバンドってのもあんまり癖が無いし、髪型をちょっと強めにするのも悪くは無いアセンブル。
 赤い竜が近寄ろうとするのを制止して、ハンドサインで静かにするように伝えると俺達は鏡の前でポーズを取りだしたキクさんを観察した。
 まあ、女の子らしいところもあるんだなぁと少しだけ関心した時だ。

 ――キクさんが雄々しく腕を振り上げておもむろに言ったんですよ。

 「――英国で生まれた帰国子女の金剛デース!ヨロシクオネガイシマース!」
 「「ブフゥゥゥゥw」」

 俺と竜ちゃんが揃って吹き出す。

 「なッ!あッ!あんた達――ッ!み、見て――」

 真っ赤や。
 顔真っ赤やでキクさん。

 「プ、ブフゥwす、すまんてwすまんて金剛さんw芸の建造中を見るツモリは無かったんやw」
 「ご、ごめんよwま、まさかネタを製作してるとはw思わなかったーw流石金剛さんやw轟沈しちゃうわーw」

 普段煽ることの無い赤い竜までゲラゲラ笑って地面を叩いてた。

 「こ、これはッ!そのッ!しょ、勝利ポーズとか?そんな感じにッ――」

 そのレシピ違うでキクさんwそれ墓穴建造するレシピやw
 そんな燃料大量に補給されちゃったらキラキラ状態で死体撃ちしちゃいますですよ僕達w

 「ヘイwきょうもあたまの中が良い天気ネーw」
 「日頃の無理がたたったみたいデースwやっと本当の私になれた気がシマースw」
 「提督に貰った大切な装備で何してんのーw次はマイクチェックしてみろよw」
 「傷に触れてあげてもいいけどさーw時間と場所を弁えなよーwあっちゃーんw」
 「俺ったちのハートを掴むのはやっぱり金剛さんやったんやーw流石やで金剛さんwとうとう戦艦に女子力求めるまでに成り下がったw」

 流石高速巡用戦艦金剛さんや。
 2-4突破ではお世話になるでホンマにw
 キクさんは顔を真っ赤にして腕を組むと、どこか憮然として俺たちに言ってくれた。

 「――だ、だって、可愛いんだもん……ばか」

 ダメだ。ダメすぎる。笑いが止まんねえw
 俺と赤い竜はげらげらと笑い転げて息を切らし、もは死ぬ寸前まで笑うとお互いに肩を支え合い、立ち上がる。

 「いやあ、強敵でしたねー金剛さんはw」
 「だめだよw高速巡洋戦艦は装甲薄いから叩きすぎたら壊れちゃうw」
 「魚雷やwケツに突っ込んだ魚雷で沈んだw」
 「アイオワ級もびっくりですわーw装甲巡洋艦相手には無双しちゃいますわーw」

 思い出して笑ってまた泣きそうになってしまう。
 金剛さんことキクさんも顔を真っ赤にして泣きそうになっていた。

 「恥ずかしい……今、私めっちゃ恥ずかしい……誰か解体してぇ……」

 俺達はひとしきり笑い、さんざっぱらキクさんをバカにした後、ようやく必要な装備を受け取った。

 ――俺の盾についてはまだ未完成だそうで。

 ぶっちゃけ盾より竜具の方が欲しいので俺としては問題無いのだがいささか虐めすぎたのかキクさんの様子がおかしい。

 「はぁ……」

 かつんかつん盾を叩いているキクさんがどこかアンニュイ。

 「金剛さん何溜息ついてんのー?」
 「金剛さん俺の盾マダー?」
 「あんたたちのせいでしょうがっ!」

 だいたい理由は俺たちのせい。

 「これでフィニッシュ?ノー、喰らいついたら離さないわーw俺達のせい?俺達のせい?ねえねえ金剛さん教えて金剛お姉様w女子力ゼロで可愛さアッピルしようとしてだけど自分でやってみても恥ずかしかった金剛お姉様ちょっと教えてーw」
 「謝るから許して……本当に許して……」

 泣きそうになるキクさんがどこか可愛く見える。さすが金剛お姉様だわ。
 とりま、貰うもんも貰ったしくれてやるものもくれてやったからさくっと行ってこようかなと思ったところで俺は一つ思い出す。

 「いっけねえ、ネタ建造で第4艦隊解放してたから忘れていたけど頼んでたデッテイウの竜具作れそうか?」
 「あんた確かデカマラさんの箱で『衛天サンダーボルト』引いてたでしょ?あれ使わないんだったらくれない?バラせば『雷撃核』取れると思うのよ。それなら初期段階すっ飛ばして一気にVer3くらいで作れそうなんだけど」

 確か、そんなレアユニを引いていたような気がする。
 もそっとチュートリアが上手になればくれてやろうかと考えていた武器でもある。
 レアユニークの名に恥じ無い特殊なお遊び効果がついているが、正しく使えれば範囲狩りに最適な武器でもあるからだ。

 ――『サンダーボルト』の異名のとおり雷撃系魔法の『レベル制限一部解除』特性がつく。

 本来ならばクラス制限で使えなくなる魔法スキルの雷撃系をこれを装備している間、武器レベルと同等のスキルレベルで解放される魔法スキルが使用できるというユニーク。
 こういった『レベル制限一部解除』特性付きのユニークは中レベル帯に多く分布していて他職のスキルレベルをあげるための開発の配慮とも言えるが、間違って高レベル帯で出してしまっていた武器も過去にはあった。
 こういったスキル同士の組み合わせがそのまま力になるゲームの場合、その組み合わせが所謂『ぶっ壊れ』を作る可能性が多々あるからだ。

 「ふんむ――」

 戦力増強とレアユニの損失、そして、衛天サンダーボルトさんを持っているという自尊心的なものが色々と葛藤する。

 「随分と悩むじゃない。何か問題でもあるん?」
 「衛天サンダーボルトさんやで?かっこいいし、大事にせな」
 「がっさくなーい?あのデザイン」
 「やはりちんちんついてない貴様にはわからんか。衛天サンダーボルト。つまり、大空から雷撃を降らすんやで?衛風獣豪イグルーさんとか衛封怨ファントムさんとか俺らにとっちゃ憧れなんよ」
 「わからん。その気持ちがさっぱりわからん。あのシリーズ見た目ゴツかったりキモかったりするから全部解体してるわー」
 「これだから金剛さんは。尻の穴に魚雷でも詰めて高速で走り回ってろ。時代は空やで空。零閃シリーズとか胸熱やん」
 「えー?あのなんか台所に放置して苔蒸した包丁みたいな色した刀しりーずぅ?一甲閃と瑞核式はなんとか実用かなぁと思うけどやっぱ解体は免れないわー」
 「お前んところの台所どうなってんのよ。包丁に苔が生えるとか女子力以前に病院行ってお薬処方してもらった方が良いレベルやでほんま」
 「物の例えよっ!錆びてるだけだしっ!」
 「それでもだめだろうに」

 キクさんってばこれだけ並べてもわかんないとか本当に、女子力どころか男子力すら無い。一体ぜんたいこのこは、なにで構成されているんだろう。

 「にわか金剛が。お前はいきなり金剛さんからじゃなくてお伊勢さんの魅力を知るところから始めろ。貴様にはビッグセブンは無理だ」
 「わからん、さっぱりわからん」

 衛天サンダーボルトには呼ばれ方がもう一つある。

 ――通称『強いおじちゃん』

 結構便利なスタン魔法が揃っているサンダーボルトさんは色んな使われ方をしていたし、ソーサルナイトに持たせれば雷撃魔法の威力が底上げされるし重宝する。
 ロマン職のソーサルナイトさんにはやはり無骨でダンディなのが多かったから、という理由がこの通称の理由とされているが、本当はそんなことはない。
 衛天サンダーボルトさんを載せたソーサルナイトさん達の死にログが決まって『なに、おじちゃん強いから平気さ……』と流し倒れていく様式美があった。
 そいで俺も気になって調べてみて、どっぷり嵌る男の子だったという訳ですよ。

 「本当にわからんわー」
 「軍艦主義は終わった。第二次世界大戦でエアパワーが実証された。紙より薄いこの命、燃え尽きるのにわずか数秒。貴様は中東でマッコイじいさんにトイペでも用意してもらえ」
 「で、寄越してくれんの?寄越さんの?どうすんの?それ、無くなると痛いの?」
 「痛いさ……でもおじちゃん強いから平気さ」

 俺は衛天サンダーボルトをマテリアライズしてキクさんに渡す。
 衛天サンダーボルトさんが竜具になればぶっちゃけ、本当に衛天サンダーボルトができるからだ。
 衛シリーズとよばれるこれらユニークには開発の意図した通称があった。
 衛天サンダーボルト――つまり、『A10サンダーボルト』。

 「――あときちんと製作代よこしなさいよ?素材費だけで3mかかってんだから」

 ――金も払わずに頼みをきいてくれるのは神様だけだ。
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