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廃神様と女神様Lv1 作者:井口亮

第2部『二つの太陽編』

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反省するならまだ可愛い。中には開き直る奴もいる。ゆとり死すべし慈悲は無い。

 ――粗末なあばら屋だがこういった時に重宝するのが自己所有の家だ。

 ひと心地つける場所に戻ってこれるというのはこうも安心感があるものなのかね。
 どっと押し寄せてきた疲れに、眠たくなり大きな欠伸をしてしまう。

 「……ご主人、ボクが哨戒に立ちましょうか?」
 「そうだな。索敵のできるザリガニとペアで見張りしてくれると助かる」

 デッテイウは静かに頷くと、家の隣に寝そべった。
 レウスの帰還させ、かわりにメタルドラゴンのザリガニを置いておくと俺はそそくさと家の中に入る。

 「ここが師匠の家ッスか。なんか、粗末ッスね」

 ずかずかと入ってきたマノアは正直すぎる感想を言ってくれる。

 「昨日作ったばっかりだ。逃げ隠れするのに便利なように作ったモンだからあんまし手は入れてねえよ」

 俺はインベントリからガッチャガチャと奪ってきた銃器をマテリアライズして広げ、思い出したようにデッテイウの鞄からビーストとエルフを引きずり出してくる。
 それらの装備を引っぺがし、鎖で縛って転がしておくと俺はいそいそとポーション素材からポーションを作り始める。
 そんな様子を見ていたマノアは自分も勝手に武器の手入れをし出し、俺は横目でちらりとその姿を見ただけでぼうっと突っ立ってるチュートリアを見た。

 ――何かを言いたいのだろうが、何も言えないでいるツラだ。

 「……ぼっとしてねえで、何もすることがなけりゃ寝ればいいだろう」
 「いえ……私は……」

 居るんだよなぁ。どこの職場にも。
 指示がないと何もできない奴って。

 「師匠?もしよかったら銃器を一つ譲ってくれると嬉しいッス。自分、今回で遠距離で戦う方法を覚えたいと思ったッス」
 「やめておけ。スレイヤー系のウォリだろお前。下手に半端な遠距離覚えるくらいなら両手剣での立ち回り覚えろよ。遠距離攻撃なんかなくたって高速移動しながら攪乱すればいいだけだ。両手剣にはスライドレイジとか優秀な移動攻撃があるんだから」
 「でも、今日みたいな集団で来られたら正直キツいっス」
 「基本は待ち伏せして、死角、あるいは被弾覚悟でスライドレイジからタメ無しクロスブレイクかサークルエッジ、あるいはブレイブスライドで一気にダメージ奪ってダッシュやステップで逃げるのが基本だ。遠距離武器なんざ俺みたいなレンジャー系以外使う必要はねえよ。本職の立ち回りに特化しないで他に手を出してたら、結果、弱くなるんだよ」
 「師匠……レンジャーだったんスか!?」
 「職業はローグだよ。ブレイバーに必要なスキルを集める為にな」
 「ブレイバーって……英雄クラスの人が選択できる職業じゃないッスか」
 「自分の行く末くらいは見定めておけよ。そいつは……必要なことだっ、と」

 スタミナポーションの制作に失敗してしまう。
 まあ、修練がてらの制作だからままあることだ。
 大きく欠伸をして、そろそろ眠らないといけないと思う。
 だが、ポーション制作もそうだが銃器のうち使えない物はバラして機械知識のスキルを上げる作業が残ってる。
 横で面白そうにポーション制作を見ているテンガが俺と瓶を交互に見比べる。

 「てんがつくろーか?」
 「手伝ってくれんのか?」
 「ぽーよんつくるのとくいやで」
 「あんがとよ」

 テンガはごそごそと袖の中をまさぐり上級ポーション制作キットを出して広げると、自分で素材を調合し始める。
 そういやこいつ高レベルポーション制作スキル持ちだったな。
 さくさくと作っていくテンガが得意げに俺にできあがったポーションを見せる。

 「えーゆーのくすりー」
 「……勝手に素材使ったらキクに怒られんだろうが」
 「きくにゃーがろーたーにつくったげてっていってた」
 「俺が後で金払わなならんのやで」
 「ろは、でいいっていえばおっけーらしい」

 随分とキクさんも太っ腹になってくれた訳で。
 本来なら金を追うプレイヤーはロハになんて絶対にしない。
 俺なんかは時折、要らない物を整理と称してばらまいたりするがそういったこまやかな銭勘定もしっかりとして少しでも金を稼ぐのが掲示板戦士としての本来のあり方だ。

 ――脱出不能のデスゲームとして俺も、キクも価値観が変わりつつある。

 「ありがたく使わせて貰うよ」
 「てんがえらい?」
 「えらいえらい。後でおうどん食べような」

 どこかくすぐったそうな顔をして身を捩るテンガがポーション制作に戻る。

 ――やることの無いチュートリアだけがぼうっと俺を見ていた。

 「あの……マスター……私は……」
 「やることが無いなら、寝ろよ。休むのも仕事だ」
 「ですが、皆さんが色々としていらっしゃるのに私だけ……」
 「なら、何かすりゃいいじゃねえか」

 俺はポーションを作る手を休めることなく冷たく告げる。
 こういったことは言われてやるようじゃ終わってんだ。
 チュートリアに寝ろと言った手前、俺はふと昨日の夜のことを思い出してマノアに尋ねる。

 「冒険者、お前、寝床どうすんだ?」
 「寝袋で適当に寝るッスよ?寝袋くらいは持ってますって」
 「いや、最近、その寝袋すら持ってねえ奴が近くに居たモンでな?」
 「冒険者として終わってますねー。何しに外に出たんすかその人」
 「知らんがな」

 本人が居る前なのでアレだから俺は適当にオブラートに包んであげたのだが、ざっくりとチュートリアちゃんの胸を抉ってくれたみたいで。

 「……すみません。竜車で先に休ませて貰います」

 すごすごと出て行くチュートリアがどこか弱々しく、俺は舌打ちするがポーションを作る手を休めることは無い。
 出て行ったチュートリアを目で追うことなくマノアは眉を潜める。

 「……師匠のイリアだから、どんなものかと思えば、まだ、子供ッスね」

 手厳しいことを言ってくれるが、確かにその通りではある。

 「お前だって似たような年齢だろ」
 「ッスねー。でも、生きていくのに……年齢なんて関係ねえッスよ……こうした時間、上手に使ってせめて武器や防具くらいの手入れくらいはしておかないと。冒険者としての嗜みッス」

 マノアはリネンキュライスを脱ぐと繋ぎ目の革紐を解いて新しい革紐で結い直す作業を始める。
 汗でぬれたシャツが張りつき、どこか健康的ないやらしさがある。
 女の臭いが鼻につき、思わずポーションを零してしまう。

 「師匠もポーション作るのあんまし上手じゃねえッスね」
 「ズケズケと物を言いやがるな?そのとおりだよ。だから、上手になろうと何度もやるんだ。はじめっから何でも上手な奴なんざ居ねえよ。それに、自分が一番だと思ったことも一度もねえしな」

 現実だってそうだった。
 何をやっても上手くいかず、それでも上手くなるまで必死になって。
 一番になったと思えば、そこは頂上じゃなくてその先にどこまでも上が居る。

 「――師匠のイリアには、そうした向上心が全くねえッス」
 「で、その向上心とやらで俺みたいなキチガイに師事しているお前が居ると」
 「キチガイだろうがクズだろうが、強くなけりゃ生きていくのには厳しいのが世の中ッスよ」

 妙にさばさばとした屈託の無い笑みを浮かべる冒険者に俺はどこか疲れたため息をついて完成したポーションを仕舞う。

 「それにゃ禿同。だけど、ま?それだけが生き方じゃねえぞ。その理屈じゃ世の中にはクズかキチガイしか居なくなるからな」
 「師匠らしくないお言葉で」
 「今日一日でらしいとからしくねえとか決めつけてんじゃねえよ。俺も全部を知った気じゃねえが、俺みたいなクズ野郎は数えてみれば世の中に少ねえのも事実だろうに」
 「じゃあ、なんで師匠はクズやってるんスかー?」
 「人生がハードモードとっこしてノーフューチャーモードになった時、人間クズにでもカスパッパにでもならにゃ生きていけんのですよ。それが良いか悪いかでいえば悪いことなんだろうさ。だけど、ダメだっていうなら寝床と飯とゆとりを用意してくださいなって話でございましょうに」

 作業中の暇つぶしでこんな話をするのもつまらんわな。
 作業中の暇つぶしはネットでアニメを見るに限る。
 俺は比較レベルの低い銃器を選び、解体作業を始める。

 ――パーツ単位に分けて素材に変える作業だ。

 もうぞろデッテイウの飛行補助外装――円陣を組んでやらないとならないからレア素材を集めなければならない。

 「……でも、やられるだけでいるくらいなら、戦える方がいいッス」
 「結果、チュートリアの言うようにクッキーを焼く感覚で犯罪者のような人間ができあがるだけだぞ」
 「律法や道徳を犯した人間が犯罪者なら、その律法や道徳を作ってる人って一体誰ッスか?三食の飯が黙って用意されるアマちゃん達が自分たちを守る為に言ってることなら自分は正直、聞きたくねーッスよ」
 「随分と過激な発想でございますこと。俺なんかに師事しなくても十分に一人で食ってけるんじゃねえか」
 「でも私は……」
 「重い話は勘弁な。俺ぁ別にこのゲームを終わらせられればいいだけで、下らんサブストーリーに興味はねえから。経験値にも金にもならんサブクエ回すくらいなら、とっとと狩りにでもでかけて来ます。世界の平和で財布もプライドも膨らみませんことよ?」

 どこか神妙な面持ちの冒険者との空気を断ち切って俺は作業に没頭する。
 気絶しっ放しのエルフとビーストの族長を一瞥すると、俺は床に寝っ転がって身を捩ってるテンガに視線を移す。

 「……にゃ?」

 ポーション作りにも飽きたのかお腹を見せてごろごろしているテンガにちょっとだけ萌えた。
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