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廃神様と女神様Lv1 作者:井口亮

第四章

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暗黒流れ星は絶対に真似しないでください。


 「ロック、麦の貯蔵をこんなに残してどうする?それよりかは金に換えて犬を買うべきじゃないのか?」
 「いえ、それより芋の方を売りに出しましょう。行商さんが持ってきた相場を見ればそっちの方が高く売れます。犬のほかに鉄も余分に買えます」

 ジーショの村では開墾の速度を上げるのに今度の行商で犬を二頭買う予定でいた。
 僕は村の帳簿を手に村長の家で板に炭で簡単な計算を任されていた。
 麦が麻袋一袋で680ジルなのに対して、芋は1200ジルに跳ね上がる。
 芋自体の相場が上がっており、芋自体はあまり備蓄に向いておらず、吐き出せるうちに吐き出して換金しておくべきだと思ったのだ。

 「それに、おそらく冬の前に炭の相場が高騰すると思います。鉄を加工して斧にできれば今のうちに炭を沢山作っておけば、冬の前に余分に余らせて売ることができると思いますよ」
 「ふむ、なるほど。確かにどの村も冬の前には炭の備蓄を考えて売り渋るからな」
 「そうです。だから、ジーショはほかの逆をやって稼ぐんです」

 儲けるコツ、それは他人と違うことをすること。
 なぜなら、『多くの人』が『実は儲けていないから』だ。
 儲けるためにはその『多くの人』たちと『違う』ことをすれば儲けることができる。

 「痛っ――つぅぅ……」

 それをどこで覚えたか思いだそうとして頭に痛みが走る。
 村長のカーソンさんは髭をなでながらどこか心配そうに僕を見つめる。

 「大丈夫か?最近頭痛が酷そうだな?ネーナに薬を多めに処方してもらうといい。しかし、ローからはどうにもならんと聞いていたがなかなかどうして。頭の回転が早い。算術をどこで学んだ?」
 「えっと、これくらいは子供でもできるのでは?」
 「それでは神童の域じゃの。プロフテリアで教育を受けていれば簡単な算術であっても子供のうちに教わるのであろうがここではすべて親から教わる。親が学んでおらねば師に習う。じゃが、おぬしの場合は相当、練習したのであろう。その早さは天性のものとは思えん。まあ、誰にでも取り柄はあるものじゃ。すまんが、材木の帳簿の整理を頼もう」
 「あれ?昨日頼まれたのでやっておきましたけど」
 「なに?昨日頼んだのは家畜の飼料の帳簿だぞ?」
 「いえ、帳簿の整理を頼まれたので全部かと思ってやっておきましたよ?いくつか計算違いがあったので直しておきました」
 「これは……どうしたものか、わしの仕事がなくなってしまったな」

 僕がやってるのは簡単なかけ算と割り算の組み合わせだ。
 これくらい辺境の村になると簡単な算術であっても重宝される。
 ローさんの紹介で村長のカーソンさんの下で使いっ走りとして働くようになって、一週間もする頃には村の人たちも少しずつだが、受け入れてくれるようになった。
 僕は朝の仕事を終えると、やることがなくなり書庫に向かうことにした。
 朝は村長のところで使いっ走りをして、あいた時間は読書やローさんの手伝いをして過ごす。
 それが僕の日課になっていた。

 「おい、ロック」

 後ろから肩口をつかまれ、振り向かされる。
 そこには明らかに不機嫌になっていたテオが居た。

 「おまえ、村長の使いっ走りになってから調子乗ってんじゃねえか?」
 「え?」
 「自警団で抱えていた鉄の在庫、勝手に村の備蓄に移しやがっただろ!鉄は武器や鎧になるんだ!お前は俺たちに死ねって言うのかよ!」
 「それは言いがかりだよ。自警団が求める鉄はきちんと確保してるし、次の行商じゃ武器とか鎧にも予算は割いてもっといい物を使ってもらう予定だよ」
 「ああ?何勝手に決めてんだよ。俺たちの使う道具はみんな鍛冶屋のジョッシさんが作ることになってんだよ」
 「そのジョッシさんからそうしてくれって言われたんだ。ジョッシさんは包丁や馬具みたいな日用品の鍛冶はできるけど、武器は得意じゃないんだ。武器の修理や鎧を作ってたら村のみんなの道具を作れないからって――」
 「うるせえよ!俺たちはジョッシさんの作ったモンじゃないと使わねえぞ?結局死ぬ話になるんじゃねえか――そうだ、お前が代わりに武器を持たずに魔物と戦ってみろよ。できるからこういう嫌がらせすんだろ?チュートリアさんの話だったら余裕なんだろうしやってみせてくれよ」

 嫌らしく笑うテオにどこまでも胸の奥がすくんでいく。
 言いがかりも甚だしい。

 ――その根っこにあるのが『気にくわない』から。

 それだけで人間は他人にどこまでも嫌らしくなれる生き物なんだ。
 僕は何を言っても因縁をつけてくるテオを避けて逃げようとするが、後ろから首根っこを捕まれる。

 「おい、逃げんなよ」
 「やめてくれ」
 「ああ?やめてください申し訳ありませんでしただろ?」

 後ろから肩を抱き込み、額で僕の頭を打ち付けるテオ。
 痛みに顔をしかめると唾を吐きかけられた。
 テオは鼻を鳴らして僕から離れると、僕の鼻面に拳骨をたたき込む。

 ――鈍い音と鋭い痛みに視界が跳ねる。

 倒れて地面に打ち付けた後頭部が鈍い痛みを訴えてくる。

 「テオ!」

 遅まきにやってきたネーナが僕とテオの尋常じゃない様子を見て声を荒げるがテオは意に介すことなくネーナを睨みつける。
 そして、下卑た笑みで僕を見下ろす。

 「自分で転んだんだよ。なあ?」

 僕はよろよろと身を起こしながら頭を振るう。
 ぼたぼたと流れる鼻血にむせて咳き込むが、その様子を見てネーナが察した。

 「あんた、そこまでロックが憎いの?可愛い女の子に腕っ節で敵わないからって八つ当たりとか男としてとことん惨めな奴ね」
 「ああ?」

 ――その惨めな男にすら敵わない僕は、一体何なのだろう。

 深くのしかかる事実にどこかいたたまれなくなって僕は立ち上がる。

 「ネーナ、いいんだ。僕が転んだだけだ」
 「何言ってるの!仰向けに倒れて鼻血なんか出る訳ないでしょ!」
 「二回転んだ。それでいいでしょ」

 僕がそう告げるとどこか誇らしげにテオが僕の肩を抱く。

 「だとよ?余計なお世話だったなネーナ」

 満足げに僕の肩を叩いて立ち去っていくテオに憤りを感じながらも鬱屈としたものを飲み下し、腹の中で解いてしまう。

 「ロック、あんたのそういうところ、良くないわよ」

 ネーナはそう言いながらハンカチで僕の顔を拭う。
 その手を振り払い、僕は笑みを作ろうとして痛みに顔をしかめる。

 「いいんだ。放っておいて」

 逃げるようにその場を離れようとするが、チュートリアさんが僕を見つける方が早かった。
 チュートリアさんが驚いた様子で僕とネーナを交互に見る。
 だが、僕は顔を隠すように背を向けて二人から離れる。
 苛立ちとやるせなさ、憎しみが胸の中で渦巻き、そしてそれを飲み下す。

 「マスター!」
 「うるっさいっ!もううんざりなんだっ!」

 叫んでしまって、やってしまったと思う。
 驚いた様子で僕を見つめ返すチュートリアさんの瞳が痛い。
 僕はうつむき、項垂れると、大きく息を吐いて胸にくすぶる黒い澱を飲み下した。

 「……ごめんなさい」

 謝罪に意味は無い。
 この二人にすら見限られれば、僕はこの村で生きていけない。
 だから――『生きて』いくために『仕方なく』、『謝る』。
 理不尽を前にしても力が無ければどうにもならない。
 わかっていても、そうしなければいけない自分がどこまでも惨めで、卑怯で死にたくなる。
 だが、『謝る』だけで自分が他人より弱いことを喧伝しそれ以上の関わりを断てるという処世だけは覚えていた。

 ――どうせなら、それすら忘れていればいいものを。

 僕は言葉を無くす二人を一度だけ振り返るとその場を立ち去ろうとした。
 だが、その時、地面を巨大な影が通りすぎた。
 驚いて空を見上げると赤い影が旋回していた。
 巨大な翼で空を打ち、大きく風を巻き上げるとそれは勢いよく地面に降りてくる。
 大地を揺らし、両の腕と足で地面をしっかりつかむと、長い首をあげ、獰猛な眼光が僕を射貫く。
 ゆっくりと起き上がった頭が静かに僕とチュートリアさんを交互に見渡す。
 全身を魔法の光が放つ意匠を凝らした深紅の鎧で包んだドラゴンだ。

 「あらら、本当に居るんでかー」

 間延びした声が竜の背から響く。
 騎乗する竜より深い深紅の鎧に身を包んだ、騎士だった。
 背に交差させて背負った巨大な剣がどこまでも威圧的で足が震える。
 どこまでも冗長に竜の背を降りたそれは僕を見て、怪訝な顔をする。

 「あっちゃん何やってんの?」

 あっちゃん、とは僕のことだろうか?
 まるで、ここに居ることを責めるような響きに僕は胸がすくむ。

 「竜さん!シル!」

 僕が何かをする前に、チュートリアさんが声を上げた。
 どこか驚いた様子で竜とその深紅の騎士に駆け寄る。
 竜に、シル、だとすれば騎士の名前がシルさんということになる。

 「チューちゃん久しぶり。で?何でこんなとこに居るの?」
 「えと、それはですね、その」

 狼狽するチュートリアさんは割と珍しくない。
 だけど、こうして『何かを怖れて』狼狽する姿ははじめて見る。
 村の周囲の魔物相手でもうろたえることのない彼女がここまで狼狽えるのははじめてである。
 どうしようかと思う前に、僕は声をかけていた。

 「あ、あの、シルさん。チュートリアさんとお知り合いなんですか?」

 僕は騎士に向けてそう尋ねるが、騎士は僕を難しい目で睨み付けると隣に居る竜と顔を合わせる。
 隣に居る竜も人間のように首をかしげ、僕を見つめるとあんぐりと口を開けた。

 「……ロクロータ殿、で間違いは無いでしょうが、これは」

 竜が喋ったことに驚きを隠せない。
 だが、それ以上に相手の方が驚いているようだった。

 「あっちゃん、俺、シルじゃねーよ?もともと頭おかしかったけど、さらにおかしくなっちゃったん?」

 赤い騎士は僕をなめ回すように見つめて、大きく息を吐いた。
 隣で竜が難しそうに目を細め、静かに燐光に包まれる。
 淡い燐光が竜を包み、燐光が風で飛ぶと中から少女が現れた。

 ――竜が、少女へと変身した?

 金色の髪を頭の両端で縛ったツインテールの少女。
 だが、長大な剣を背負い、赤い戦装束に身を包んだ少女からはどこか刃物のような冷たい印象を覚えた。
 それは切れ長で形のいい瞳と、どこかのお姫様を思わせるような美貌からくる印象なのだが、その少女は僕を見つめどこか困ったような顔をしていた。

 「まさか、噂は本当でしたようですね」
 「むーん、参ったなぁ。本当にあっちゃんだったよ」

 恭しく隣の騎士に申し述べる少女に、騎士は本当に困ったという様子で頭をばりばりと掻きむしる。
 アッチャン、とは僕のことだろうか?
 僕の名前はロクロータ、ではなく、本当はそっちの名前でチュートリアさんが嘘をついている?
 だが、この人が言うアッチャンというのが別の人だという可能性もある。
 だけど、この騎士とチュートリアさんには面識があって、いよいよわからなくなってくる。

 「えと、すみません。記憶を無くしてしまったみたいで。ご足労をかけたみたいですが、一体、どのような」

 僕は素直にそう告げると、少女は目を丸くして驚き、騎士は何か気持ち悪いようなものを見るような目つきで僕を見た。

 「うわぁ気持ちわるっ!なにこれ!」
 「……ほ、本当にロクロータ殿なのですか?え?マジリアリィ?」

 本気で気持ち悪がる騎士と、驚きのあまり声が裏返る少女。
 僕は混乱が酷くなる前に聞き出せることを聞こうとした。

 「えと、シルさん、でよかったですか?僕のことを知っているんですか?」
 「ちょちょちょ!シル!聞いたシル!?俺のことをシルって言ったよ!しかもあっちゃんがさんづけしとる!」
 「それより敬語で僕とか僕とか言ってますよ!頭がおかしくなってしまったのですか?」

 そこまで、驚かれることなのだろうか。
 僕は訳もわからず言葉を失っていると、どこか、何かを諦めたような瞳でチュートリアさんが説明する。

 「ええ、マジでリアリィです。これが、うちのマスターで間違いありません。あと、今、むちゃんこ弱いです。記憶無くしちゃってます。みんないわゆる普通の人なマスターを見るとおかしいって思いますよね?そこにどこかほっとしちゃってる自分がなんだかすごく、そう、すごくいたたまれなくて切なさがっとーざへぅ……」

 騎士がチュートリアさんにまくしたてて語る。

 「いやね?あの後、野菜村に先に戻るっつー話をしてたっしょ?調整して待ってるって言うからどれっくらい人死んでるかなーとか、苦労して発狂してんのかなーとか楽しみにしてたらあっちゃん居ないんでやんの。野菜村の片隅ぶっ壊して不時着してたまたま戻ってたキクさんが半狂乱になってこれはこれで面白いなーとか思って八つ当たりつーか正当に当たり散らされるあっちゃんをワクテカして待ってたわけなんだが?キクさんもーすごい激おこぷんぷん丸ですんげー楽しみにしてたんだけど、一週間もあけてメンテでアプデでいろいろあんのに音信不通でどこか消えたとかそろそろシャレにならんかなーと思ってた矢先にですよ?行商が西の方でチューちゃんの姿を見たとかいうから、偵察飛ばしたんよ。そしたらあっちゃんも居るって話で何しとんこいつと思ってた訳ですよ」
 「いや、たぶん、えと、その、えーと……記憶を無くしてまっとうな人間として生きて、ま、ました」

 その答えはたぶん、正鵠を射ているのだろう。
 だが、騎士は信じられないと言った様子で声を荒げる。

 「あっちゃんから基地外を取ったら何が残るというのかっ!塩水蒸発させて水を無くしたら、塩が残ります。あっちゃんから記憶を無くしたってそこに基地外が残りますよね?まっとうに生きれる訳ねーじゃんバッカだなー☆つか、基地外じゃないあっちゃんに需要あるわけねーだろ!だからあっちゃんにゆるふわドリルと馬鹿にされる」
 「いや、たぶん、マスターに記憶があれば、いろいろと赤い竜さんにツッコミ入れるんでしょうけど、それでいいです。ゆるふわドリルでいいです」

 諦めて視線をそらしたチュートリアさんをもう一人の少女が罵倒する。

 「そうですよチュートリア!あなたは最も直近で被害を受けてきたから身に染みてわかってるはずです!私も『いやうちのマスターも大概だけど、あっちに比べたらマシかな』って自分を慰めるのにすごく助かってるんです!」
 「ひどっ!それひどい!シルは同じ不遇友達だと思ってたのに!」
 「ひどいのはどっちだ!私のマスターはどうあがいても真人間になれないんですよ!見てください!こうして侮蔑されても、どこか誇らしげに笑っているあの、顔!あなたのマスターだけ真人間になるなんてずるい!ずるすぎる!チュートリアなんかとりあえず川に流されて野犬に喰われるくらい不幸になってしまえ!」
 「それもうやったし!やられたし!なんでマスターが真人間になっただけで私がこれだけ酷い目に遭うんですか!基地外でも真人間でも酷い目に遭うとか理不尽すぎて吐きそうだ!」
 「事態はもっと深刻だと自覚すべきだ!あなたのマスターから基地外を取り除いたら高い女子力しか残らなくなるじゃないですか!高い女子力しか残らないロクロータ殿の傍らに居れば、チュートリアには何の価値もなくなる!私の女子力もあびない!」
 「心配するところそこ!?そこなの!?それマスターに激しく無価値なステータスだよね!?私それより無価値なの!?」

 一体、僕はどんな人間だったのだろう。
 隣のネーナがどこまでも恐ろしいものを見る目つきで騎士と少女を見つめている。

 「ロック……この人たち、知り合いなの?」
 「えと……記憶に無いですけど、たぶん」

 ネーナはふるふると首を振り、後ずさる。

 「知らないって怖いわね……これ、『赤い竜』と『シルフィリス』よ」

 赤い竜に、シルフィリス?
 ネーナが説明してくれる。

 「……プロフテリア全土で強大な魔物のみを狙って狩る深紅の竜騎士。赤い竜としか名乗らず、竜の化身に跨がるハンター達の間で最近聞く伝説の存在よ。名前は名乗らず、『赤い竜』なんて通り名しかなくて、全身を竜の素材で作った武具に身を固めているから誰しもが本人の名乗る赤い竜という通り名で呼ぶことになった本当の伝説」
 「そんな……すごい人なんですか?」
 「隣のディクソの村の近くにバロゥンネイソンっていう巨大な蛇の魔物が現れたのを知ってる?それを倒したのが赤い竜だって話。実際、噂話としてしか聞いていなかったし人が竜になったりするわけ無いから尾ひれのついた噂かなって思ってたけど、まさか本当に存在するなんて……」

 そんなにすごい騎士なのか彼は。
 じゃあ、それに付き従う隣の少女も相当に強いのだろう。
 それと知り合いであるチュートリアさんが強いのも理解できる話だ。
 僕がそうやって一つわからないことを理解している間にわからないことがどんどんとやってくる。

 ――頭上を旋回し、二匹の飛竜が降りてくる。

 どちらにも女性が乗っていた。

 「師匠!本当に居たッスか!」

 一人は青い髪の冒険者風の出で立ちの少女で背中に大剣を背負っている。
 先ほどのシルフィリスという少女が赤を基調としたドレスのような装束であればこちらは籠手や具足こそ金属製のものを利用しているが胴の部分を薄い革製の防具を組み合わせた実用的な装備の本格的な冒険者に見える。

 「ロクロータ!ロクロータなの!無事なの!」

 もう一人は茶色の髪のどこかで見たことのあるような気がする袖の大きな服を着ている。
 胸元を交差させ、意匠の入った白を基調とした服に赤い裾の広がった折り目のきっちりした長袴を履いて弓を背負っている。

 「ろーたーだー。うやはー」

 その背中からひょっこりと猫耳を生やした桃色の髪の少女が顔を覗かせて興味深そうに僕を見ていた。
 皆が口々に僕の名を心配そうに呼び、彼らが僕を『知っている』人達だとわかる。
だが待って欲しい、いきなり言われても思考が追いつかない。

 「え、ええ。僕がロクロータです、はい、なんとか無事です。あ、あの?し、師匠って赤い竜さんのことじゃなくて?あの、僕のことですか?え、えと、どなたですか?」
 「し――師匠?ぼ、僕ぅ?なんか変な物喰ったッスか?」

 青い髪の少女が竜の背の上で気持ち悪いものを見る目で僕を見る。
 赤い竜さんといいシルフィリスさんといい僕がそんなに気持ち悪いのだろうか?

 「――っ!」

 だが、対照的にもう一人の女の人は竜から飛び降りるて僕の顔を見るなり唇をかみしめ、目を潤ませた。
 震える声が胸に突き刺さり、痛い。

 「あ、あんた――わ、私のことがわかんないの?い、いつもの冗談よね?し、知ってるんだから、キクさん知ってますよ?すぐに『なに泣きそうになってんだバーカwペナったと思ったwペナったと思ったw残念でしたーw』とか言って私をバカにすんでしょ?キクさんほどになれば、わ、わかるんだから!」
 「え、ええと……本当に申し訳ありません……その、本当にわからなくて」
 「キクよ!シマムラキク!あんた、わ、私をさんざっぱらぴーけーして炎上させて本人確認しに来たじゃない!一緒にドンキでハンバーグ食べたじゃない!ゲームの中でも外でもあい変わらずふてぶてしくて人の財布の中身すら知らないで勝手にバコバコ注文しくさって!私がもうこれ折半でも無理だって思ってあんたに頼み込んでお金借りようと気持ち決めてたら、途中トイレに行くとか言って居なくなって気がつけば勝手にこっちの勘定まで持ってくれてたじゃない!自分だってたいして金持ってきてなかったくせに強がりやがって、私に煽られたらペラッペラな財布見せつけて『電車賃もねえから歩いて帰るとかオチとしちゃこれで笑えるだろ。今月の課金分削らな』って格好良くもないのに笑いくさって――オ、オフでも会ってんのよ?そんな簡単に忘れられる訳ないじゃない!」

 ドンキとは何だろう。鈍器のことだろうか?
 鈍器で牛を叩いて挽肉にしてハンバーグを作ったのだろうか?
 とりとめもない思考が回る中、目の前のキクと名乗った女の子の瞳からぽろぽろと涙が零れる。

 「なんでぇ?帰るって言ってたよね?なんでこんなところで普通に暮らしてんの?マック食べに帰るって言ってたじゃない!絶対にこんなゲームに負けないで勝つって言ってたじゃない!帰るんでしょ!?帰るんだよねぇ!?新作マック食べに行くって言ってたじゃん!帰るぅ――ひぐっ――帰るって言ってたじゃん!」

 キクさんは僕の胸ぐらをつかんで激しく揺する。
 泣きはらした瞳が恨みがましく僕を射すくめるが、僕にはどうすることもできない。

 「ごめんなさい……本当に、ごめんなさい」
 「童貞のくせに謝るなぁっ!謝るなよっ!謝るくらいなら帰れよっ!ウゥ――帰ってよ!一緒に帰ってよ!新作マックぐらいつきあってやるから、一緒に帰ろうよぉ……なんで、なんで私の知らないところでゲーム終わらせてんの?ウァ――あ、アァ――」
 「トンファーキック!」

 嗚咽を繰り返し、今にも堰を切りそうなキクさんの尻を赤い竜さんが力一杯蹴り飛ばしていた。

 「痛ぁ!――赤い竜ゥ!何しやが――」
 「エビフライ!」

 赤い竜さんは虚空に輝く水晶を出したと思ったら水晶がエビフライに変わった。
 そのエビフライを力一杯キクさんに投げつけ、キクさんが鼻白む。
 そして告げる。

 「エビフライぶつけんぞ」
 「ぶつけてから言うなっ!なんだって――」
 「キクさんの乙女っぷりが面白いから見てたけど、そろそろシャレにならなくなるから止めてあげるドラゴニウムたっぷりの俺の優しさを褒めることを、許す」
 「な――」
 「あっちゃんがペナって記憶全部消し飛ばすとか、ねーわ。それっくらいには強いよ俺の相方は」

 そう言って赤い竜さんは僕の方をくいくいと親指で示す。
 そうしてひとしきり僕を頭の上からつま先まで眺めると、あごに手を当てて考える。

 「――ペナるようならホームポイントに戻される。ならリターン地点は最低でもセブンスヘッズだ。それなら野菜村で合流できるはずだ。それなら、まずは『デスペナルティ』以外の方法で『記憶』を失ったと考えるのが正解じゃないかな?」
 「そんな方法あるわけ――」
 「――何で無いと思った?」

 有無を言わさない迫力で赤い竜さんがキクさんを黙らせる。
 沈黙したキクさんが冷静さを取り戻したのを見計らって赤い竜さんが笑みを浮かべる。

 「ゲームの中に居るんだし、それっくらいあっても当たり前だよね?そもそもの『目的』が『廃人』のサンプリングなら必要があって『記憶』を奪うことくらいはしても当然なんじゃないかな?」
 「でも、それじゃあ――」
 「問題だよ。大問題。二つ目に大きな問題なんだ。運営が僕たちを『自由』にできるというこの『状態』は。ゲームとしての『公平性』が無いことになる」

 言葉を失うキクさんに赤い竜さんは肩をすくめると頭上を見上げる。

 ――頭上をさらに二頭の飛龍が旋回し、着陸する。

 ただならぬ様子に村の人達も家の中から僕たちを見ているが、尋常じゃ無い様子に誰もが出てこようとしない。
 着陸した飛龍の背には鉄兜をかぶったブルゾンの男と、肩にオウムを乗せた天然パーマの男が居た。

 「ファンタジー世界だからといって物理的にドラゴンが飛ぶとかありえない。これなら飛行機の方がマシだ!揚力もないのに飛ぶとか理解できない!つまり、果てしなく怖い」

 転がり落ちるように、というか、転がり落ちて飛龍から降りた天然パーマの男は白衣を土で汚しながら起き上がりずれた眼鏡を直す。
 僕なんかよりずっと貧弱そうな体の男だ。

 「博士。ここはゲームの中ですから当然でしょうや」

 もう一人の男は不気味すぎてよく『わからない』。
 これが前に聞いた『ヤサイムラ』の領主なのかと勘ぐってしまう。
 博士は痛そうに顔をしかめ、膝をなでながら続ける。

 「私にはゲームの中より君たち――コンセプトランナーの存在自体の方が理解に苦しむがな。なんだそのチート能力。是非私にハーレムを」
 「そりゃ無理。博士は博士で天才として自己確立しちまってるからいまっさら『論理』でもって認識操作ができない」
 「く、天才でイケメンと自己確立するべきだったか。あと、人並みの健康も」

 訳のわからないことを喋りながら二人は僕を見つけると、睨むように見据える。
 たじろぐ僕の横でキクさんが赤い竜さんに尋ねる。

 「この二人はなんで?」
 「――真っ先に疑うべきはいわゆる『チート』でしょ?なら、ゲーム的なアプローチじゃなくて、この人達に見てもらう方が解決法の模索としては早いからね」

 当然のように答える赤い竜さんにシルフィリスさんとチュートリアさんが顔を合わせる。

 「えと、赤い竜さんってこんな頭いい系の人でしたっけ?なんかいつもマスターにバカにされて得意げになってるイメージしか知らないんですけど」
 「私もこんなマスターは知らない。実は頭がいいならなぜ普段は。これは私のマスターも真人間になる希望を持っていいのか?砕かれるのが目に見えるから怖いのだが」

 そうなのだろうか?赤い竜さんは頭が悪い人なんだろうか?
 そんな二人を蚊帳の外に置いて、鉄兜の男と天然パーマの男は僕を見据える。

 「――状態は?」
 「んー、見たところ、記憶を無くしてるみたい」

 鉄兜に答える赤い竜さんに、チュートリアさんが補足する。

 「えと、『記憶』を『巻き戻し』すると言ってました。野菜村に着く前に上空でうさ耳の子供が魔法を使ってどーんとマスターとやり合って――コンテンツがどうだとか言って記憶を巻き戻すって言ってました」

 ふむ、と赤い竜さんが頷き、続ける。

 「コンテンツの消費速度が速すぎたのか。オーバードコンテンツで足止めして開発期間を稼ぐ手法だからうヴォルヴ、ネルベスカと解放したら後はプロフテリアくらいだもんね。それで『記憶』を『奪う』、か」

 その言葉に天然パーマが確認を取る。

 「それは本当に『記憶』を『奪う』なのだろうか?『奪う』という意義であれば推測が正しければ『取り戻す』――いや、正しくは『奪い返す』必要が出てくる」
 「それって何か違うの?」
 「『奪う』という概念であれば、彼の占有にある記憶からその占有を自己の占有に移す必要がある。一般的な記憶喪失というのはこの場合、記憶の『逸失』に他ならない。例えるなら、ハードディスクの中にあるデータをどこのフォルダに保存したかわからなくなり、検索にすら登ってこない隠しファイルにするのが『逸失』――つまり、一般的な記憶喪失だ。だが、『記憶』を『奪う』というのはカットペースト――切り取り貼り付けでハードディスクからデータごと切り取ってしまうのが『記憶』を『奪う』ということになる。だから、その『記憶』が保存されている場所から同じようにカットペーストをしなくちゃいけなくなる」

 鉄兜の男がチュートリアさんに確認を取る。

 「――うさ耳のって言ったよな?それは『巻き戻し』をすると言ったのか?」
 「うえ?あ、はい。なんでこんな変な格好してるのかな?とか思いましたけど、まあ、魔法使いとか変な格好だしそれが当たり前なのかなぁとか思ってしまいましたが」

 鉄兜と天然パーマが互いを見て頷く。

 「――これは君たちの言うところの『バイアス』じゃないかな?」
 「ですね。うさ耳――ウサギ、不思議の国のアリスのウサギで『時間』の概念かもしれません」
 「あ!そんなことも言ってました!『時間』がどーとか!……あれ?でもなんで今間まで忘れていたんだろう」

 確証を得たらしい二人は頷きあうと僕の瞳を覗き込む。

 「――『巻き戻し』であれば逆に進めてやれば戻る可能性は?」
 「限りなく低いでしょう。無理矢理行えば新しい記憶で埋めることになるから元の人格には戻りません。むしろ、二重の人格が形成されるので分裂の恐れもあります」
 「癪に触るが、地道に『条件』を探していくしかないか――『自己認識』によるブレイクは可能か?」
 「相手が『時間』となると『時間』を中心にした条件付けになる。『時間』を超えることが可能ならば可能ということなんでしょうけど、認識対象がこいつを中心に行われなければならないから不可能だ」
 「ふんむ……『上書き』で走らせて一つ一つブレイクを行っていくのが妥当になるか」
 「『記憶』を『巻き戻し』して平然と自我を保っているなら周辺記憶の欠落もあるでしょう。『上書き』で人格を『エミュレート』して無理矢理形成しても今度は認識障害に陥る」

 わけのわからないことを話し出す二人に赤い竜さんが怪訝な顔をする。

 「ちょっとよくわかんねーぬ。あっちゃんは戻るの?」
 「『記憶』の『巻き戻し』であるなら放っておけば確実に戻る。だけど、無理矢理戻そうとするとファンブる可能性がある」

 鉄兜が肩をすくめるが、それでもよくわからない。

 「つまり、どういうこと?」
 「記憶を弄るってのは簡単なことじゃねーんだ。『記憶』ってのは全部『自分』がインプットしたものを照合する作業だから、『記憶』の定義付けは全て認識対象である『自分』で行うことになる。それを外部的に改ざんできる方法は無いから、実際的な手段としては照合した情報に『誤認』を与えるかその照合方法に『方向付け』をしてやるしかない。『』誤認』させる場合には元となる情報を知っていて、かつ、誤認できる情報を提供する必要があるが、知りもしない相手の情報をねつ造できるわけがない。であれば、方法としては後者の照合方法の『方向付け』で必要な情報を『見れなく』することが正しくなる。だが、この場合、厄介なのは他の照合できる情報を照合した際に見られなくなっている情報が無いことの不自然さから推断を繰り返して見られなくなった情報を補完することができる。一時的な記憶の欠落であれば他の記憶から照合して『こうだったであろう』を手繰り寄せることができる。だけど、それをされたらそもそも『記憶』を欠落させた意味がなくなる。相手の目的が何にせよそうした『記憶』がすぐに戻らないように人格以外の必要以外の記憶を思い出せないようにしているんだ」
 「よくわからんけど、その理屈だと勝手に自分の人格含めた全部の記憶をぶっ飛ばしちゃうんじゃね?」
 「そうだな、細かな調整ができなければ全ての記憶が吹き飛ぶ。だけど、そうならないようにできる人間が居て、それが記憶を調整し続けてるから厄介なんだ」
 「それって誰?」

 赤い竜さんの質問に、鉄兜さんは『僕』を指し示した。

 「そうならないように調整しているのが『本人』だからタチが悪いだんよ」

 赤い竜さんはどこか納得したような顔をして、キクさんは何を言われているのかよくわからないような顔つきになった。

 「じゃあこいつ自分で記憶を消し飛ばしたわけ?」
 「いや、正しくはきっかけを与えられて、自分で記憶を消すようになったというのが正解なんだ――チュートリア、だっけか?他にその『時間』は何か言ってたか?」

 話を振られたチュートリアさんが慌てて答える。

 「え?あ、そういうえば『廃人』を『確立』する前に戻すとか、『コンテンツ』の開発速度がどーとか言ってました」

 チュートリアさんの言葉を受けて鉄兜が鼻を鳴らす

 「――自身を『廃人』と認める前の人格に戻したってことか」
 「コンテンツってことはやっぱりコンテンツの開発速度が追いついていないから十分な開発ができるまでってことかな」
 「なら、最悪、コンテンツの開発が間に合う状態になれば記憶は元に戻るってことになる」
 「えー!それまで俺が面倒なことやらなくちゃいけないじゃん!なんとかならねーの?」 赤い竜さんがとても面倒くさそうな顔で僕を恨みがましく見る。

 鉄兜は僕を示してあらためて説明する。

 「可能か不可能かで言えば可能だ。が、水の上を走るくらいに難しい。言ってしまえば超凶悪な催眠術のようなものでこいつは自分で『廃人』を確立する前までに記憶を巻き戻して維持し続けてるんだ。その催眠術は俺も使えるから上書きしてやりゃ強引に人格を引っ張り出すことができるが、それを無理矢理やってしまうと人格が壊れる。文字通り『廃人』になっちまうって奴だ」
 「催眠術を催眠術で解くことはできねーの?」
 「そこまで器用にかけることができねんだわ。催眠術の条件付けを一つ一つ解除していくにも次から次にこいつ自身が条件を増やす状態。まあ、ウィルスに犯されたプログラムをウィルス一つ一つ駆除していくか、プログラム自体を上書きするかの方法しかなくて前者はウィルスが自己増殖するし、プログラムの上書きは元のプログラム文が悪さしてエラーを吐き出しまくる状態になる。救いは時間経過で勝手に治ることだ」
 「ふんむ、めんどくせーのなー」
 「こればっかりはな」

 鉄兜は肩をすくめて答えると僕の方をまじまじと見た。
 釣られて僕を見つめた赤い竜がふんむと頷く。

 「しかし、これ全くの別人じゃんね?こんなにも人って変わんの?」
 「変わるか変わらないかで言えば、変わる」
 「いや、これどう見たって基地外じゃないやん。単なる無害そうな陰キャやん」
 「軍隊が厳しい訓練と洗脳でもって屈強な兵隊を作るだろう?本物の『あっちゃん』を知ってるってことなら、そういうことだろうさ。俺だって元々こんな性格だぞ?」

 キクさんが鉄兜にどこか怪訝な顔で尋ねる。

 「前にもちょっと聞いたけど、何その基地外製造機。どうやったらあんな迷惑極まり無い基地外を量産できんのさ。つか、あんたも実際、商売敵なんだけどやってることめちゃくちゃ基地外じゃない。正直、これやあんたみたいな基地外を製造する人間がどれほど基地外なのか想像したくないわ」
 「俺達なんかまだ可愛い方だぞ?本物の『あっちゃん』は基地外なんてモンじゃねえよ。無法が服を着ながら合法にしていくデタラメだ。口癖は『俺は自分の利益のために世界平和を願っている。だから人類滅びねえかな』だからな。北のかの国がミサイル打つたびに『そこじゃねえ、ここ、もそっと寄せて。惜しいなあちゃんと狙えよ』とか言ってたな」
 「それ普通に大惨事じゃん!」
 「そんな人にかかれば人畜無害な陰キャも立派な基地外に成り上がる。ただま、無気力な陰キャが生きていくには世知辛い世の中だからな。基地外の方がまだ生きやすいってモンだ――試してみるだけ、試してみるか?」

 鉄兜はどこか確認を取るよにキクさんと赤い竜さんに告げる。

 「試すってなにを?」
 「強引に元に戻す方法だ。廃人になる前――つまり人格形成前に巻き戻されたのであれば、逆に人格形成を成したインパクトのある出来事から追体験で巻き戻されている認識を強引に引き出して一時的に元の人格を形成してそこから固定化を図る。もちろん、固定化するのは自分自身だから賭けになるんだが」
 「言ってることがよくわかんないんだけど」
 「まあ、トラウマから記憶戻して定着させようかって話だ」
 「できるの?」
 「『時間』の概念がが相手だと難しいだろうがやってみるだけならタダだからな。ただ……」

 言い淀む鉄兜に二人が首をかしげる。

 「……何か問題でも?」
 「ああ、見ててグロい」

 ◆◇◆◇◆

 僕達はジーショの村から離れた滝の上に居た。
 飛竜で飛べばすぐではあったが、空を飛ぶということがこれほど恐ろしいということを知らなかった。
 風は強いし地面は遠い。
 目もくらみそうな高さから落ちれば命は無い。
 その怖さに震えが止まらなかったが、すぐにその怖さは現実の物となる。
 白い水飛沫を上げ、濁流を落とす滝の上で鉄兜はどこか満足そうに笑った。

 「はっはっは、流石に高ぇな。これだけあればできるな暗黒流れ星」
 「いや、なんですか?その暗黒流れ星って」

 嫌な予感がする。そう、とてつもなく嫌な予感だ。
 皆が固唾をのんで見守る中、鉄兜の腕が僕をがっしりとつかんだ。
 細身だが鍛え上げられた腕はテオより強く僕の首根っこを捕まえて持ち上げる。

 「暗黒流れ星は暗黒流れ星だろ。お前も何度かやられたことはあるはずだ」
 「知らないですよ!というか暗黒流れ星ってなんなんですか!」
 「さて、質問です。ここにダムが……じゃなくて滝があります。この下には水がありますが彼らは何をしているでしょうか」

 その質問でその場で立ち会う多くの人達が察してしまったのだろう。
 僕はまさかと思って鉄兜を見上げ、滝の底を見つめる。
 蕩々と流れる濁流は激しい飛沫をあげて滝壺で虹を作っている。
 吹き上がる水蒸気の冷たさが、今は背筋を凍らせる恐怖に変わる。

 「え?ちょっとあの、無職さん、まさか、ええ?あの――エェェ――」

 チュートリアさんの狼狽えた声に親指を立てて応える鉄兜。
 一瞬の隙を突いて逃げようとする僕を羽交い締めにし、容赦なく地面に叩きつける。

 ――バックドロップ。

 空が回り、首から頭へ衝撃が駆け抜け肺がつぶれる。

 「グゥっ!」
 「逃げるなって。大丈夫大丈夫。水だって平気に落ちてるだろ?人間の体の7割は水だって言うからお前も大丈夫だから」
 「死ぬ!死んじゃう!誰か助けて!」
 「助からないし、助けは来ない。じゃあ、行ってみようか」

 僕を羽交い締めにしたまま、鉄兜は滝の縁まで来ると宣言した。

 「――俺達はこの世知辛い世の中の流星となる。必殺、暗黒流れ星」
 「ちょ――ま――うぁ、わぁぁぁぁぁぁあァァァァアアア!」

 跳躍した鉄兜に羽交い締めにされたまま僕は一緒に落ちる。
 流れる水を追い越し、虹を超えて、風の音すら置き去りにして水面が眼前に迫る。

 ――激しい衝撃が全身を叩き、冷たさが全身を刺した。

 緩やかに引かれた意識が落ち、僕は――『暗黒流れ星』に意識を持っていかれた。
 消える意識の中で、みんなが口々に何かを叫んでいたのが聞こえる。
 だが、僕の耳に残ったのは鉄兜の異常な一言だった。

 「角度が悪かった。もう一回」

 ◆◇◆◇

 「いや、絶対バカだろ。あれ現実でやられたら死ぬでしょ」
 「マジでやってんのあんなこと?暴行罪とか傷害罪じゃなくて殺人未遂でしょ。あんなこと現実でやって許されるとか怖いわ暗黒流れ星」

 赤い竜さんとキクさんがぼそぼそと喋る中、シルフィリスさんとチュートリアさんは言葉を無くしている。
 その傍らに居た僕のことを師匠と呼んだマノアさんはあんぐりと口を開けて驚いていた。

 ――暗黒流れ星は計5回行われた。

 「滝じゃやっぱダメだな、ダムじゃないとなんかそれっぽさが無いよなぁ。あとゲームだからか骨が折れない」
 「殺すなら殺せよ!いっそ殺せ!」
 「死んだらダメだろうに。死なないように恐怖を植え付けて痛めつける技だからな」

 ダムというのが何かわからないがそれは人を殺すためのものなのだろうか。
 骨が折れないとか言っているが、これは人を殺すための技なのだろうか。
 言ってることが無茶苦茶だ。頭が狂ってる。

 「どうだ小僧、思い出したか?」
 「……狂ってる」

 朦朧とする意識の中、水の冷たさと全身の痛さに吐き気がする。
 目の前の鉄兜の男の理不尽さに憎しみすら覚える。

 「まだしゃべれるんだな?じゃあ、次は『波動拳』いってみようか」

 ぞくりとする。
 僕の中の何かがその『はどうけん』というフレーズがとてつもなくヤバいものだと警鐘を鳴らす。
 逃げるにも体は動いてくれない。

 「波動拳ってあの波動拳かな?」
 「一応、このゲームにも『波動閃』ってあるよ?モンク系上位の拳仙のモーションスキルよね?チャージしてMPスタミナ全部吐き出した挙げ句行動不能で大ダメージ出す奴」
 「まさか、上位クラスはまだ解放されてねーし使えないでしょ。普通、波動拳って言ったらあの波動拳でしょ?昇竜なんとかや竜巻なんとかのある奴。キクさんは知らない?」
 「格ゲーくらいは遊んだことあるわよ。弟とよく遊んだし。ネット対戦だとボコボコにされるけど」

 格闘ゲーム、キャンセル波動拳、待ちガイルとかマジやめて欲しい――
 全身の痛みを押しのける頭痛に胃が引きつり、食べた物をすべて吐き出す。

 「ウゥ――ウェ、ォォォェガ―――」

 ――だが、そんな僕の前に大きな袋が差し出された。

 「ちょうどいいわな。自分が入る寝袋だ。しっかり吐いておけ」

 細長い大きな袋に吐瀉物を入れ、鉄兜は僕の背中をさする。
 そして、袋を軽く広げて揺するとまんべんなく行き渡らせる。

 「さて、これは何でしょう。答えは、寝袋です」

 そして、その寝袋を僕の頭に被せる。

 「ウゥッ――」

 吐いた吐瀉物の酸っぱい臭いが充満した寝袋の中に押し込まれる。
 臭さに出ようと試みるが足を縛られ、寝袋の口をふさがれて出られなくなる。
 おもむろに足を抱えられ、持ち上げられる。

 「まずは、軽く回します。中身をよく混ぜ合わせましょう」

 振り上げられ、回される。
 遠心力で頭に血が昇り、また、吐いた吐瀉物がせり上がって顔を埋める。

「ここは本来、ゲロではなくなるべくなら汚物を使います。ですが、ありあわせが無ければ臭豆腐などの食品で代用するのも可です。間に合わせがなければ今回のようにゲロを吐かせるのも一つの方法です」

 なんの方法だって言うんだ。なんで僕がこんな目に――
 酷いことをされてしまうのは目に見えていた。
 少しでも逃げようと体を曲げて暴れようとするが、次第に強くなる遠心力に逆らえない。

 「はじめはこのように暴れて抵抗されます。ですから、こうして――手頃な樹木に叩きつけます」
 「ゴッブ――」

 顔面を激しい衝撃が襲った。
 首をもっていかれそうな衝撃と痛みに目が痛くなる。
 吐いたゲロが目に入り、力一杯ぶつけた鼻に入り痛みで焼ける。
 何度も、何度も、遠心力をつけて固い物にぶつけられる。

 「あれ木じゃなくて岩――」

 寝袋の中に居ては自分がぶつけられているのが木なのか岩なのかわからない。
 だが、木だろうが岩だろうが今は関係無い。

 「――こうしておとなしくなったところで、地面に放り投げます」

 抱えられていた足が離され、一瞬の浮遊感。
 その直後に頭から衝撃を覚え、転がる。

 ――臭さと痛さでなにもかもわからなくなる。
 何で、こんな理不尽な目に遭わされなくちゃいけないんだ。
 僕が一体、何をしたというんだ。

 「波動拳コマンドは覚えているかな?まずはレバーを下に入れて、しゃがみます。その後、斜め下にレバーを動かし、目の前の手頃な岩を拾います」

 何を言ってるかわからないが、それが、どこまでも理不尽なものだと理解できる。
 逃げようにも痛みと痺れで動くことすらできない。

 「最後にレバーを前に入れて、パンチボタンで投擲――『波動拳』」

 後頭部から衝撃が走り、顎が地面に押しつぶされて鋭い痛みが走る。

 「波動拳!波動拳!ソニブー!波動拳!竜巻旋風ゥ脚ッ!」
 「いや直接ぶん殴ってるし!つか波動拳関係なくねそれ!?」
 「真空波動拳!」

 次々と体中を襲う衝撃に僕は何も抵抗できず痙攣を繰り返す。

 ――殺される、このままじゃ、殺される。

 「引くわぁ――これリアルでやるの?マジ?リンチとかそういうレベルじゃなくて本当に死ぬじゃん……これ」

 キクさんの声だ。そう思うなら、助けてくれよ。

 「ああ、そうだ。俺もこいつも――『あっちゃん』にこうやって『殺された』んだ。どれ……」

 頭を蹴り上げられ、袋が持ち上げられる。
 力を無くした僕の体が引き上げられ、袋が破られ剥がされる。

 ――汚物にまみれ、血とアザで全身を汚した僕に皆が視線をそらした。

 だが、真っ向から僕を鉄兜がスリットの中の獰猛な瞳で睨み付け、鼻で笑った。

 「よぅ?どうだ理不尽になぶられる心地ってのは。理解したな?お前は価値の無い人間だ。生きてて何を生み出す訳でもなく、他人の何かになれる訳でも無く――そして、自分自身すら救うことのできない呼吸して飯を食って、糞をするだけの糞袋だ。まだ、手が汚れないだけ糞袋の方が役に立つな?」
 「――ぐぅ、うぅう!」

 汚れた髪をつかみ、僕を持ち上げる鉄兜の腕をつかんで引きはがそうとする。
 だが、鉄兜は僕を逃がさず僕の頭にヘッドバッドをくれると続けた。

 「――さあ、俺はお前をこれから殺す。別にいいだろ?無価値なんだから」
 「なんで――なんでッ!」
 「なんでも糞もねえよ、気分だ。世の中ってのは理不尽にできてる。お前にとってたまたま目の前にある理不尽が、今、俺なだけだ」

 ぎりぎりと前髪を握り、鉄兜は鼻を鳴らす。
 殺される、このままじゃ、殺されてしまう。
 だったら――

 「いい眼になってきたな?そうだ、殺してしまえ。理不尽を前に俯くな。俺は優しいんだ。だけど、俺以外の理不尽は優しくしてくれはしない。そんな理不尽を前に、お前は殺されるか、殺すか選べ――」

 どこか遠く、ねばりつく声が聞こえる。
 胸の奥底に横たわる黒いタールのような感情が静かに波紋を広げ、うねる。

 「――てめぇ――」

 ――自分も、他人も、等しく価値は無く。
 ――すべてに何も意味はなく。
 ――だが、己を見続けなければならないのであれば。

 「ガァァアア――ああッ――あぁああっ!痛いっ――痛いィィ!」

 頭が割れる。
 バチバチと視界に火花が走る。
 ぼたぼたと鼻血があふれ、口から血が零れる。
 全身が痙攣し、ばたばたと跳ね回る。

 「ッチ!手心を加えすぎたッ!クソ、失敗だッ!」

 鉄兜は暴れだした僕を地面に捨てると蹴り上げ、後ろから首を抱え込む。
 いつまでも続く痛みに僕は声にならない声を上げ続ける。

 「痛いっ!痛ぁぁ――あぁぁぁっ!アァっ!殺してくれェ――」
 「チィ!」

 撓んだ鉄兜の腕が一気に僕の首をへし折る。

 「――ホブッ」

 鋭い痛みが走ったのは一瞬。
 首の後ろでブツリと何かが切れる音がして、僕は、そのまま――

 ◆◇◆◇◆

 目は覚めていた。
 だが、僕は恐ろしくてその場でまだ、意識の戻らないふりを続けていた。
 僕らの狭い小屋に大勢の人が集まり、何かを一生懸命に話していた。

 「――まあ、すまん。ちょっと優しくやり過ぎた。先にセーフティの方が自分で働くようじゃまだまだだ」

 鉄兜の言葉に呆然としているのはキクさんという人だ。

 「いや、何を言ってるかわかんねーけど、あれよりエグくなんの?つか、プレイヤーキリングでデスペナが無いってのがわかったのは儲けものだけど、あれリアルでやったら死ぬよね?死ぬよね?あんたとか、こいつとか、そのリアル『あっちゃん』とやらに何やられてきたの?」
 「糞生意気な陰キャの心をへし折られて意識を飛ばして、そこから基地外を上書きしていく作業だ。俺たちの状況ってのはそうでもしないと生きてくのもままならない状況だったんだよ。俺も、たぶん、こいつも『あっちゃん』にはそういった意味では感謝してる」
 「いや、普通恨むよ?憎むよ?殺されても仕方ないよ?感謝するとかそれこそ頭おかしい基地外じゃんね」
 「そりゃそうさ。素直に恨んで憎むことから教えられる。殺しに行くことから教えられる。ボッコボコにされた挙句ナイフ渡されて殺し合いからはじめて――そこでさらにボコボコにされんだ」

 僕は、一体、何をしてきたんだろう。

 「今の世の中、恨むな憎むな、人と争うな。そうして静かにマウント取って使い潰して澄ました顔で善人面下げてやがる。陰キャだとそれすらわかんなくなってしまうのな。ネットゲームってのは俺ぁびんぼーだったしパソコン使えなかったからやる余裕なかったけど、憎んで羨んで、罵詈雑言吐きまくるこの環境ってのは存外、世の中で一番人間らしくまともな場所なんじゃねえか?」
 「そう言える神経がすでにまともじゃないと思うわ、私は」

 キクさんの言葉には僕も同意だ。
 憎んで、恨んで、他人を蔑むことに終始するなんて。

 「まともな人間がどこに居るよ。まとも取り繕って腹ン中じゃ何考えてるかわかったもんじゃねえ。どいつもこいつも一皮剥けばクズだろう?なら、いっそすがすがしくクズになりきってた方が潔いってモンだろ」
 「そんなんじゃ生きてらんないわよ」
 「生きてらんないのさ。だから、基地外になんだ」
 「そうじゃなくて!それだと、他人と関わって生きていけないって言ってるの!」
 「基本、人生はソロだからな」

 鉄兜は口を減らすことなく鼻で笑う。
 そして、眠っている僕の額をガントレットをつけたままの手でなでる。

 「まあ、こいつはまだ若いし、鉄火を納めるにゃまだ早い。小手先で他人との馴れ合いを捌いて意気を削るモンじゃねえ――そんな『あっちゃん』の言いつけをまだ必死に守ってるんだろうよ。昔の俺を見てるようで世知辛いわ」

 鉄兜はそれだけ言うとキクさんの頭をポンと撫でていく。

 「まあ、『時間』が解決してくれる。今は放っておくのが一番いいだろう」
 「ちょっと!どうにかするんじゃないの?どうすんのさ!」
 「どうにもならんし、どうにもしない。俺も、そいつも、自分のことで手一杯。だから、勝手にするさ」
 「無責任じゃん!」
 「男の人生だぞ。他人が責任を負うもんじゃねえよ」

 それだけ言い残して立ち去った鉄兜の背中に何かを思い出しそうになり、頭がまた痛みを訴える。
 そんな中、ずっと黙っていた赤い竜さんがようやく壁から背を離した。

 「――チューちゃん」
 「はい?」
 「あっちゃんの宝珠からのメニューコマンドは開けるの?」
 「いえ――記憶をなくしてからは開けなくなってます」
 「スキルも使えないならプレイヤー権限じゃないのかもしれんぬ――マノア、君はここに残ってあっちゃんの護衛を」

 赤い竜さんに言われてマノアさんが目を瞬かせる。

 「チューちゃん、マノアと一緒にあっちゃんを頼むよ」
 「えあ?あ、はい」
 「キクさん――いや、キク。俺たちは戻る」

 そう言って部屋を出ていこうとする赤い竜さんをキクさんが咎める。

 「ちょ、ちょっと!赤い竜!ロクロータを置いていくツモリ?」
 「ああ、居ても役に立たないからね。今のあっちゃんも、俺たちも」
 「だからって――」
 「だからって、時間は待っちゃくれない」

 赤い竜さんは険しい顔でキクさんを黙らせた。
 どこか静かな威圧感を見せながら赤い竜さんは続ける。

 「コンテンツが進めば新しく人が流れ込む。そうなれば競争だ。今だって競争は続いている。城もできていなければギルド保有の戦艦すら無い。だけど、もう他じゃ城も戦艦も出来上がってるんだ」
 「だけど……」

 言い淀むキクさんに赤い竜さんはいやらしい笑みで告げる。

 「キクさんにそういう縋る女ってキャラとしてねーわ。金を稼ぐのに特化した小汚いキャラならそれを通しな?女子力とかそれ、キクさんに死にパラメーターだから」
 「あんたっ――」

 怒り出そうとしたキクさんの額を赤い竜さんが弾き、押しとどめる。

 「しょうがないじゃん?俺もキャラじゃないだろ?だけど、あっちゃんが不在なら、俺がやるしかないでしょうさ」

 押し黙るキクさんに相好を崩す赤い竜さん。

 「――一緒に休む?冗談。俺たちは効率厨の上を行く廃人だぜ?あっちゃんが休んでるならその間にとっとと次のコンテンツを喰らいに行くよ。それとも、ビビった?」
 「いちいち煽るなッ!わかってるわよ!」

 ヒステリーを起こして金切り声を上げるキクさんに赤い竜さんが鼻を鳴らす。

 「わかっちゃいない――本当に、二つある問題のうち、一番大事な問題をキクさんはわかっちゃいないよ」
 「あーあーあー!もーうるっさい!わかったわよ!しゃかりきになればいいんでしょ!」
 「……アホ、気合入れなおせこのダボラ。俺も、お前も、あっちゃんより『下』にこのゲームに見られたんだぞ。俺や、お前じゃなくて、あっちゃんの方が脅威だからこうして『制限』かけられた事実、理解してんのか」

 キクさんと赤い竜さんの目つきが変わる。
 赤い竜さんは侮蔑するように鼻を鳴らすと、小屋を出て行った。

 「シル、飛ぶよ。喰らいに行く。今日は寝られると思うな」
 「御意」

 部屋の外で竜の羽ばたく風の音が響き、その余波が小屋の中まで入ってきた。
 キクさんは胸の前で拳を打ち合わせると僕をどこか苛立たし気に見下ろすと僕の腹に拳を叩き込んだ。

 「ゲフッ!ゲフっ!」
 「――呑気に寝腐りやがってこの。待ってろ、目に物見せてやる」

 痛みに寝たふりがバレないように呻くのをこらえる中、キクさんはのしのしとチュートリアさんを押しのけて小屋を出ていく。

 「テンガ!帰るわよ!今日からしゃかりきにしゃかりきかけるわよ!」
 「もう眠い……」

 嵐のように居なくなった連中に僕はどこか安堵する傍ら、どこまでも不安そうなチュートリアさんが彼らの飛び去った空を見つめていた。
 残されたマノアさんが冷たく、静かな瞳でチュートリアさんを見つめているのが、どこまでも印象的だった。
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