挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
廃神様と女神様Lv1 作者:井口亮

第三部『宵闇の天幕編』

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

211/255

自分の中のドラゴンが知ること。


 ――シルフィリスが『真名』を獲得しました。

 念のため、前に仕掛けておいたトラバサミが上手い具合に嵌まってくれたか?
 盛大にとんずらかましたシルフィリスは赤い竜がどうにでもするだろうと思ったが。
 何がフラグとなって真名の獲得なんかに繋がったんだ?
 だが、今、目の前ののっぴきならない状況をどうにかするのがまずもって俺ンとこに寄越されたロールって奴だ。
 チュートリアに銃口を向けたクラウディアの銃口が再び、俺に向かう。
 爆ぜる銃弾に追い立てられ、俺はチュートリアとクラウディアの二人を相手にする。

 「チュートリア、前に。あの人の強さは理解しているでしょう?躊躇えば――躊躇無く、殺しに来る」
 「あ――う――」

 クラウディアは的確にチュートリアを配置し、俺の軌道を制限してきやがる。
 m9でチュートリアを叩けば、射線から俺の位置を割られてスナイパーライフルが飛んで来やがる。

 「やれやれ……どうねじ曲がればこうなっちまうかね」

 足元で爆ぜた弾丸を見送り、マグナムのリロードをする。
 腐っても重装職。
 殺しきれなければ回復されてぐだぐだと面倒臭くなる。

 ――デッドリーで生かしておいたのが、回復されて仇となった。

 「チュートリア。ロクロータ様は間違い無くあなたを潰しに来る。応じようとしないで。全力で防げば、死ぬまでは。防いでくれれば――あとは、私が」

 なかなかに俺の手管を見ていらっしゃる。
 俺は鼻を鳴らして不敵に笑うと苛立ち紛れに発砲して位置を知らせてやる。

 「――上等だ。セオリー通りでかつ、有効な戦術。敬意を表して真っ向から叩き潰してやる」

 室内から飛び出し、真っ向からチュートリアを睨み据える。
 どこまでも覚悟の定まっていない少女が狼狽える。

 ――その奥からクラウディアの銃口が俺を静かに狙っていた。

 ヘッドショットが厳しいと判れば『レッグブレイク』で足を奪おうとしてくる。

 「――稲妻を撃ち抜けるかよ」

 稲妻ステップで一気に駆け抜ける。
 ジグザグに走る俺の足を狙った弾丸が床の上で爆ぜ、火花を後にチュートリアへ肉薄する。

 ――さっきまでの勢いはどこへいったのか。

 殺意を向けられただけですぐに挫けてしまう。

 「――ッハァァ――簡単にィ負けてんじゃねえぞォ」

 吐き出した息が白く尾を引き、腰を引いたチュートリアに追いすがる。
 付きだしたマグナムの銃口に盾をかざすが、その脇をすり抜ける。
 脇の下から後頭部に向けた銃口が爆ぜ、ぐるりと回った体の先、腕の中の銃が暴れる。

 ――ステップで背後を取り続け、ヘッドショットを続ける。

 やがて壁に背をつける事を覚えるが、それこそ俺の求めるサンドバック。

 ――フレンジーからのバスターショット。

 MPを一気に吐き出す弾丸の壁がチュートリアを壁ごと押しつぶす。
 ちゃちな木材の壁を吹き飛ばし、圧倒されたチュートリアが地面を転がる。
 追いすがり、踏みつけ、額に弾丸を叩きつけ、吐き出す。

 「憎め憎め憎め。怒り、憎しみ、殺したいから始まるンだよ。他人は所詮、どこまでいっても他人。自分の為に何かしてくれるなんて夢見てんじゃねえ。どいつもこいつもクズクズクズ、糞の詰まった肉袋でしかない。そんなクズを憎んで怒って、殺してぇと思えればはじめてお前も一人前――そいつらクズの仲間入りだ」

俺は弾丸をリロードし、いつまでも甘ったれた少女に『教えて』やる。

 「自分もクズだと理解したら、あとはどれだけ強いクズになれるかだ。誰にも負けないクズになれ。金に汚く、弱者をいたぶり、自尊心を振り回せ。どんだけ綺麗事ほざいててもこうしてひん剥いてやりゃあ他人をブチ殺してでも自分が生き残りたいって願望だけが転がるンだよ。なら、クズはクズらしく、認めちまった方が楽だってモンよ」

 弾丸の嵐の中で息も絶え絶えになりながら、それでも俺を睨むチュートリア。
 その『折れない』はすっぱな『生意気』を手折ってやる。

 「だけど、それはッ――間違って――」
 「間違っちゃいないッ!何一つッ!何一つ間違っちゃあいないッ!現に――お前やクラウディア!そして、シルフィリスは選んだ!『それ』を選んでしまえる『クズ』さをてめえの中に持ってるンだよ!――そいつは、間違い無く『否定』できねえよなぁ?」

 俺は多分、喜々としているのだろう。
 PKをしたことの無い人間には理解のできない感覚だと、思う。
 だが、PKをしたことのある人間なら誰しも理解でき得る感覚でもある。

 ――自衛の為に、PKプレイヤーを殺した。
 ――自分達は狩り場を円滑に使えるようにするために。
 ――PKをする奴なんて総じてクズだから、やられて当然。

 PKプレイヤーに浴びせられる罵声の全てを聞いて心地良く感じられる。
 なぜなら――

 「お前の言うことは、全部、『言い訳』でしかねえんだよッ!」
 「ぎゃうっ――」

 足払いで転倒させると、浮いた顔面に膝を叩き込む。
 そして、浮いたチュートリアの体に強引にバスターシュートを叩き込む。

 ――爆ぜた薬莢の炸裂音が少女の体を回転させる。

 PKプレイヤーだからという免罪符を、大義名分を得たから彼らはゲームの中で積み上げたものをちっぽけな自尊心のために見せびらかす。
 別に、彼らはPKというものを憎んでいる訳では無い。
 PKプレイヤーというものを退治したという自尊心を満たしたいだけなのだ。
 それを誰かに誇って自慢したいだけなのだ。

 「ただ、その矛先に居ないから――」

 ――その為に、そのPKプレイヤーと『同じ』行為に正当性をさえずっただけなのだ。

 その程度の小さなクズが、より大きなクズに敵う訳が無い。

 「ただ、自分とは違う他人が傷ついているだけだから――」

 ――俺達、生粋のPKプレイヤーというのはそんな『クズ』どもが喚くのを燃料にしている。

 どんな綺麗事を並べ立てても、結局はてめえの自己満足のためだ。

 「『自分』がその矛先に立つだけで、同じクズになれる」

 それなら、いっそのこと、正当性も何もかもかなぐり捨てて俺達と同じところに立てばいいじゃないか。
 その覚悟すら無く綺麗な歌声でピーチク囀ってくれるモンだから――

 「何度でも何度でも叩き殺してやンよ」

今のチュートリアを叩くのは、その感触に似ている。
 地面で痙攣し、恐怖に目を見開いているチュートリアに俺は鼻を鳴らす。
 どこまでもどこまでも足りない。

 「地獄に落ちろ――がっとーざへぅ」

 俺は唾を吐きかけ、クラウディアに向き直る。
 ライフルからハンドガンに持ち直し、俺と対峙する。
 どこまでも冷めた瞳は、俺を真っ向から捉えて離さない。

 「――あなたは、私を、許すでしょう」

 背後でチュートリアが怪訝な顔をする。
 だが、俺はどこか、自分の底を見透かされたようで不機嫌になる。

 「だけど――私は、そんな私を許せない」
 「訳わかんねえご託だな」

 そもそも、人間という獣に言葉というものは不要だ。
 ただ、暴力があればいい。
 人間の原始的で最も効果的で洗練された暴力を交わすだけで意志が伝わる。

 ――先に動いたのはクラウディアだった。

 駆けだし、銃口を俺に向け、引き金を引く。
 ステップで射線からずれ、応じた弾丸の一発でクラウディアの肩を射貫く。
 ラプターの威力でノックバックし、たたらを踏んだクラウディアが地面を蹴飛ばす。

 ――下手な跳躍は命取り。

 そう教えた。
 だが、それでも跳躍を選んだと言うことは――

 ――上空からのフレンジーによる面制圧射撃。

 俺が訓練中に一度だけ、ちつにくちゃんに使ったことがある。
 上空に飛べば対人では迎撃され、転倒からの即死を狙われることから上級職になるまでは絶対にしないこと。
 だが、ガンアーツを使う上で確実にキルが取れるなら跳躍してもいい場面がある。

 ――その一つが、跳躍してからのフレンジーによる面制圧射撃だ。

 滅多に放たれる弾丸で狙いを付けず、文字通り面にばらまく射撃だ。
 単発自体の威力が少なく、そのままでは相手によっては確殺が取れない。
 だが――その中のいくつかがヘッドショットになれば。

 ――確実に相手を殺す火力になる。

 閉所空間の近接戦闘におけるガンナーの必殺火力の一つであることは確かだ。
 だが――

 「下半身はくれてやるよ」

 同じガンナーなら跳躍してしまえばいい。
 射線を下に向けた状態なら、こちらは水平にしてヘッドショットを確実に決めてやる。
 至近からラプターの凶悪なマグナム弾がバスターシュートで爆ぜ、膨れあがったマズルフラッシュがクラウディアの顔面を飲み込む。
 遅れて着弾した弾丸が俺の腹から下に穴を開けて貫通するが、死ぬ程じゃあ無い。
 着地し、銃を弄ぶとホルスターに納めて俺は楽しく告げてあげる。

 「まだまだ。もっともっと世界を恨みましょう、他人を憎みましょう、理不尽に怒りましょう。正義のヒーローなんて存在しない。世界を救う救世主なんて存在しない。もし、そんなものが存在して――」

 いつまでも甘かった俺が気がつけなかった真理。
 他人であるあっちゃんが気づかせてくれた、かけがえの無い真理。
 俺が得た、いつだって俺のそばにある、真理。

 「どうしょうもなく困った自分を助けてあげられるなら――それは、他の誰でも無い。『自分自身』だ」

 吐き捨て、俺は背を向ける。
 徹底的に叩き壊し、まっさらにして、作り直す。

 ――手っ取り早いし、それしか、方法を知らん。

 俺に出来るかと言われれば、わからん。
 やれるか、やれないかじゃなく――やる。
 見下ろせばチュートリアがどこか怯えた目で俺を見上げている。
 どこまでも甘ったれた視線に、かつての自分を思い出し、反吐がでる。
 初心者怒るなかつて来た道、廃人笑うなやがて行く道。
 俺は大きく息を吐き出し、白みがかってきた空を見て呟く。

 「――お前達は黙って見ていろ。俺が――俺達が『白老竜』を――『殺す』」

 ◆◇◆◇◆

 寝不足のまま朝を迎え、俺と赤い竜は綺麗にぶっ壊れた屋敷のソファーに背中を預けて大きく欠伸をしていた。
 盛大な身内の痴話喧嘩でぶちこわされた俺がはじめて作ったお屋敷さんもただの廃墟と成りはてた。
 グラスフォレストの濃い青色の空を見上げ、朝の冷たい空気の中にさらされた俺達は何もやることがなくだらけていた。
 時折吹く風が草原を撫でていく音が心地良い。
 屋敷自体が生活することを目的としていたので建物の耐久性とかは全く気にしていなかった。
 そんなところで赤い竜ちゃんや俺が火力出せばこうなるわな。

 「まーまー……盛大に散らかしちゃってもー」
 「どーせあっちゃんが片付ける」
 「片付けねーよ。俺、職場以外の掃除ってあんましねえから」
 「それ逆じゃね?普通職場の掃除しなくて自宅の掃除するでしょ」
 「おまえなー。そういう性格やめろよ。みんな迷惑だろ」
 「ゲームで他人に迷惑かけまくるあっちゃん説得力ねーわー」

 気だるげな空気にまかせ、時間を潰し、俺はマテリアライズしたドラゴン巻きの串を手にし、頬張る。
 肉巻きおにぎりって最高の食い合わせだよなと思っていりゃ、横から赤い竜にかっぱらわれた。

 「おい」
 「いーじゃんね。朝飯朝飯」
 「っとにお前自分世話しねえよな」

 もう一本出して頬張り、串を咥えて弄ぶ。
 俺は気になったことを尋ねる。

 「……シルフィリスが真名を獲得したな」
 「そだね。条件あるんだろうか」
 「お前がわかんなかったらわかんねーよ」
 「チューちゃんはどうだったの?」
 「いつも通り甘ったれたまんまだ。真名とやらも手にはいんね」
 「だとしたら、何が条件なのかねー」

 色々と考えてみても今は理解できない。
 本当はもっと深く検証しなくちゃいけないことなのだろう。
 だが、そんなものは、今は、どうでもいい。
 高く昇っていく青白い太陽を見上げ、俺は小さく鼻を鳴らす。
 二階の床を吹き飛ばし、屋根も無くなり、ロビーは晴れてテラスになりました。
 ワンルームにすら劣るゼロルームの快適空間に俺は吹き抜ける風を額に受け、大きくソファーに沈み込んだ。
 遠くに神官服の裾をはためかせるソニアが見えた。
 ソニアは俺達の屋敷が半壊どころか全壊している様子に目を剥く。
 ソニアは半壊した屋敷を見て驚いてはいたが、どこか、こうなることは予想がついていただろう。

 ――むしろ、こうなることを仕向けてくれた原因ですらある。

 俺は手を振り、ソニアも手を振って返してくる。
 やがて、やってきたソニアが俺達を見てどこか苦笑いを浮かべる。

 「優雅だね。今日は天気がいいから屋根を吹き飛ばしてピクニック気分?」
 「強めの風が吹くとこうなる。あっちゃんには建築スキルもっと上げるように言っておくよ。さすがにお客さん来た時はずかしいわー」
 「何言ってやがる。これが仕様だ。気持ちいいだろ?ゼロルームのテラス付き。満点の星空の下で眠れるロクロータリゾートへようこうそ。シェフの気まぐれメニューの朝食バイキング、ただしおかわりは無しだ」
 「温泉とプールが無いからやり直し。雨降ったらどうすんのさ?」
 「そりゃあ、おめー、ほら、あれだ。風邪引くだろうに。竜ちゃん以外」
 「えー?俺にも風邪引かせろよー。頭グラぶるぐらい風邪引くわー」
 「それ引いてんのガチャじゃん!脳と預金が溶けてるってば」

 俺と赤い竜の返しに苦笑を深くしてソニアが真ん中に座る。
 どこか愛嬌のある少女は怯えたように身をすくめるが、赤い竜は軽く頭を撫でる。
 甘えるように頭を赤い竜にこすりつけるソニアが年相応の少女であることを改めて確認する。

 ――自分が押しつけたことの結果を見て、怯える。

 だが、そんなもの、『はじめから』知っていた俺達は気にもしていない。
 そんな俺達の様子を察したソニアはどこか安心したように鼻歌を歌い出す。

 「ソニア、今日は俺達が白老竜に挑む」
 「……え?」

 鼻歌が途切れ、苦笑が詰まる。
 俺達はどこまでも気だるげに疲れたままに欠伸をしながら告げる。

 「そろそろ俺達が挑むよ。屋敷作り直すのめんどいし」
 「今日から野宿だしな。雨降ったら大変だからおうち帰るわ。ゴールデンウィークも大分前に終わったし」

 俺達の軽口に、いつもは軽口で返すソニアが返してこない。

 「そっか……」

 ソニアはどこか驚いたような、狼狽えたような、それでいて、何かを諦めたような様子で呟いた。

 「じゃあ、今日、竜ちゃん達が白老竜と戦うんだね」

 遠からず来るであろう日を急に宣告され、ソニアはどこか感慨深げに宙を見つめた。
 そんな所在なさげな様子がどこか痛ましい。
 だが、追ってやってきた覚悟が彼女を支えると、竜の巫女として吐き出した。
 勢いよくソファーから立ち上がり、振り返ったソニアはいつもの笑顔をもって俺達に告げた。

 「じゃあ、祭壇で待ってるよ――」

 どこまでも悲壮な彼女の顔に俺達は告げる。

 「おう」

 逃げるように走り出したソニアの背中を見つめ、俺達は立ち上がる。

 ◆◇◆◇◆

 忘れ去られた竜の楽園があった。
 ニ・ヴァルースと共にアストラの階に浮かぶ幾つもの現世の一つでありながら、砕けたガラスのように散っていった楽園である。
 グラスフォレストと呼ばれたその世界で白き竜は千年の月日を生きた。
 ただの一人の少女であった白き竜が何を想い、何を願って千年の年月を見守り続けたのかは誰も知らない。
 だが、それでもただ、竜が育んだ子らはその深い愛情を忘れることはない。

 「エレニア……」
 「白老竜は……ソニアは、言った。我らの行く末を竜の魂に委ねると」

 竜の祭壇を見下ろしエレニアは弟のゲオルグに告げた。
 どこまでも雄々しい白い竜の姿が、幼い頃、鮮烈だった。
 グラスフォレストの空を飛んだその姿に怯え、畏れた。
 だが、その雄々しい竜はどこまでも優しかった。
 竜巫女ソニア――どこにでもいるような少女が白老竜であることを察し、彼女を守ろうと誓った。
 だが、彼女はどこまでも優しく、少女でありながら、そして――ドラゴニュート達の母であった。
 やがて滅び行く世界の現し身であるグラスフォレスト。
 全ての自然が理不尽な嵐に相まみえるように竜の雛たちは翼を広げなければならない。
 母たる竜は老いて、もはやその翼を艱難に広げることはできない。
 それでも必死に雛達の巣立ちに命を燃やし、母たる責務を果たそうとしていた。

 「ゲオルグ」
 「わかっている――俺は、戦士だ」

 それは異世界からやってきた。
 映し世であるニ・ヴァルースのアストラの階のさらにその向こう。
 かつて、白老竜がニ・ヴァルースに来るより遙か前。
 その世界の映し世から来た、異界の精霊レジスが顕現した――レジアン。
 ニ・ヴァルースの数多の神々を導いた異界の精霊は人の身に魂を宿し、彼らの前に立つ。

 ――青白い光の中に浮かぶ白い竜の瞳が揺れる。

 炎が揺れた。
 赤い、赤い炎が揺れた。
 それは、人である。
 だが、それは常に彼らに名乗った。

 ――『赤い竜』と。

 彼らは知ることになる。
 英雄が、神が跋扈する動乱の時代において、最も峻烈に生きた竜の伝説を。
 竜の魂の在りかを指し示した赤い竜を。
 白き竜と赤い竜が対峙する。
 その傍らに立つ禍々しい、だが、どこまでも澄んだ熱気が絡みつく。

 ――言葉は無い。

 覚悟を理解したものに、言葉は不要である。

 「――来たか」

 白い老いた竜が首をもたげ、人を睨み据える。
 だが、赤い竜は首を上げ、竜剣ドラグウェンデルの切っ先を突きつける。

 「異界の精霊よ――死ぬがよい」

 彼らは笑った。
 それに応じて、白老竜も笑った。
 どこか遠い世界に置いてきた彼らの笑みの意味を、エレニア達は最後まで知ることはできない。
 だが、しかし、それでも竜の魂は告げる。

 「「――それは、自分の中のドラゴンだけが知っている」」
cont_access.php?citi_cont_id=649025998&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ