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廃神様と女神様Lv1 作者:井口亮

第2部『二つの太陽編』

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装甲戦艦アサヒガニラス3号さん。さん付けしろよデコ助ども

 ヴォルヴ砂漠より南は『世界の果て』に至る『大砂海』が広がっている。
 砂の海、といえば聞こえはいいが実際は流砂が渦巻き人が歩けたものではないデッドエリアだったりする。
 だが、そこはユニークモブの巣窟となっておりレア素材やレアアイテムの宝庫となっておりオワコンまでの一時期にこぞって皆が足を運んだ経緯もある。

 「大砂海を越えた砂漠陸地に大砂嵐は存在する。大砂嵐まで辿り着くためにはまずは大砂海を越えねばならぬ」

 大砂海はひっきりなしに流れの変わる流砂が渦巻く地帯で徒歩で踏破することはまず不可能だ。
 一度、流砂に巻き込まれてしまえばどれだけ移動スキルを駆使しようが戻ってこれず砂漠のスリップダメージで資源が枯渇するまで焼かれるだけだ。
 空を飛んでいこうにも流砂の巻き起こす風が散発的な砂嵐を発生させ、地面に叩き落とされる。
 そうして一度地面に足を付けてしまえば飛び上がることも叶わず人間の丸焼きができあがるまで焼かれ続ける。
 一見して移動不能エリアまでの境界線ラインとして設けられたように思えたこの踏破不能領域は死に戻り前提のコンテンツだと思われた。
 しかしながら、暇人は居るものでこの大砂海を攻略するためになみなみならぬ労力を費やした人間達が居た。

 「かつて、レジス達に導かれたイリアが大砂海に挑んだ方法は、未だにヴォルヴに伝わっている」

 俺はダスメシャムスの郊外に横たわるそれを見上げて、思わず口笛を吹いてしまう。

 「すっげえな、懐かしくて笑いそうだ」

 それは巨大な戦艦だった。
 平らなボードの上に砲門を備え、横に翼のように広がる帆は甲虫が羽を広げたようにも見える。
 翼の生えたカブトガニのようなそのシルエットはかつて『ファミルラ』で大砂海を攻略しようと挑んだ人間達がいきついた一つの形であった。
 前部分に装甲を重ね、巨大モブの衝突に耐え、横に広げた帆を上下に動かし風を得て推進力とする。
 尻尾のように伸びた3本のオールは転覆を防ぐために、そして、方向を転換する為に砂に刺さるようにされている。
 前足のように細かに伸びたオールは機動の微調整の為のもので、まさしくカブトガニの生態をパクって作られたそれは大砂海を渡った、最初の戦艦だった。

 「知っているのか?」
 「アサヒガニラス3号さんだろう?衝撃的だったぜ」

 俺とは違うサーバーで大砂海の巨大ユニーク相手に立ち回ったそれこそ『伝説の戦艦』の一つだ。
 レジェンドモンスターといい『攻略不能』と言われたコンテンツに真っ向から挑んだ製作系コンテンツの集大成とも言える戦艦。
 それが『アサヒガニラス3号さん』だ。
 ガニラスさんの横にはいくつものビート板のような船が並んでいる。
 コンテンツ解放のキークエストの一つが砂漠の神獣ガルパトロス討伐によるものと判明して以降、多くのプレイヤーが死に戻り前提で大砂海に挑んだ。
 だが、その多くが途中の流砂で無駄に砂漠資材を消耗し、死に戻りし、ほんの幾ばくかの幸運に恵まれたものだけがガルパトロスの姿を見て、その圧倒的なスペックの前に喰い散らかされてきた。
 文字通り運営が『攻略できるなら、攻略してみせろ』と突きつけてきた難題だった。
 そんな中、俺が居たサーバーの中にも道中の流砂を『船』で移動しようとする動きが生まれた。
 砂漠資材を大量に搬送しながら流砂の特性を利用し、流れるだけ流れてエンカウントを待つ方法で、流砂の流れ着く先によっては大空洞に叩き落とされたりしたがそれでも無駄に流砂を徒歩で流れる寄りかはマシだといくつものイカダが砂の上に浮いた。
 そして、そのイカダは一月の間に舵をつけて幾ばくかの操作性を得て、帆船のように帆を張ることを覚えた。
 幾度かの改修を経てイカダはやがてビート板と呼ばれるようになったが、それには理由がある。

 ――ガルパトロスの圧倒的スペックだ。

 オーバーコンテンツモンスターの名に恥じない凶悪なスペックの前に一撃で粉砕されるイカダを降りたら、プレイヤー達は足場の定まらない流砂の上でガルパトロスと戦わなければならなかった。
 イカダが多少操作性を増したとはいえ、破壊されるだけの存在であることから『多少受けるだけのビート板じゃねえかw』と笑われただけだった。

 ――だが、そこに現れたのがこのアサヒガニラス3号さんだった。

 生産系廃人達が各々のスキルの粋を凝らして最強のビート板を作ろうと超巨大なビート板を作ったのが朝比奈1号。
 これは大砂海をわたれるだけの資材と方向蛇を備えた強大な船として皆の注目を集めた。
 だが、朝比奈1号は長大な航続距離を有していながらもガルパトロスとの戦闘に耐えきれず大破し砂の海に轟沈した。
 そして続いて建造されたアリス2号。
 これは砲門火力を有した砂上戦艦というカテゴリを作った船だった。
 ガルパトロスの戦闘に耐えられるように船の要所を鋼鉄製の装甲板で覆い、砲門火力を有した戦艦。
 積載された高機動ビート板に幾人かの人を乗せて発進する海兵隊戦術も取り、ガルパトロスに善戦する。

 ――だが、結果は奮戦空しくもガルパトロスのスペックに押し切られる形で轟沈した。

 しかし、朝比奈1号、アリス2号と砂上戦艦という生産系コンテンツはガルパトロスという死に戻りと幸運以外では出会うことすら許されなかったオーバーコンテンツモンスターの全貌を明らかにした。
 それだけで、俄然、プレイヤー達の挑戦心に火がついた。
 そして、満を持して現れたのが朝比奈3号――通称、アサヒガニラス3号さんだった。 砂上戦艦の3号機として7鯖に現れたそれは配信動画を見たプレイヤー達の度肝を抜く異様なシルエットをしていた。
 前部を何重ものレアメタル装甲で覆い、尻尾のようにのびた方向蛇で砂を右に左に切り、翼のように広げられた帆で推力を得る。
 重ねられた装甲板を遮蔽板としてゲーム内最大火力であるコンテンツ――魔法職プレイヤー達を並べ、尻尾の方向蛇を跳ね上げ近接プレイヤー達をガルパトロスに放るアサヒガニラスさんの戦い方は異常だった。
 だが、比較鈍重で近接攻撃を多用してくるガルパトロス相手にレアメタルで構築された装甲は耐え、生産系コンテンツの人間が絶えず補修することで朝比奈3号はガルパトロスの攻撃を全て耐えきってみせたのだ。
 幾度挑んでも倒れなかったガルパトロスが最後の咆吼を上げて沈んでいく様は全てのプレイヤー達を熱狂させた。
 そして、『大砂海の巨獣』コンテンツを終演に導いた偉大なる砂上戦艦を皆は畏怖と敬意、そしてその見た目の愛らしさから愛嬌を込めて『アサヒガニラス3号さん』と呼ぶようになったのだ。

 「かつて神獣を破ったレジス達の叡智は今もヴォルヴの誇りとなっている。装甲戦艦ガニスの修繕も間もなく終わる。我々は再び大砂嵐に挑むツモリだ」

 パジャⅦ世はカブトガニのようなシルエットのアサヒガニラス3号さんを見上げてどこか物悲しそうに呟いた。
 だが、俺や赤い竜はそんなことに気がつかず男の子をしてアサヒガニラスを見上げていた。


 「すっげーな竜ちゃん、ナマガニラスさんやで」
 「うわー!ほんものやー!うわー!ガニラスさんやべー!」
 「俺、『レジェンド戦艦』の『海アーガマ』は見たことあるけど、砂漠戦艦ははじめてや!」
 「欲しいわぁー、これ欲しぃわー……」

 生産系コンテンツはいくら課金したところで手に入るものではない。
 多大な労力とゲーム内で蓄えた財産をぶっ込んではじめてできあがるものなのだ。
 人の踏み越えてゆけない地域の探索に必要な強大な拠点。
 それが、戦艦コンテンツと呼ばれるもの。

 「あー、くそ。竜魂の戦艦もファミルラから持ってこれればいいのに」

 それなりに規模の大きなギルドであれば戦艦の1隻は保有している。
 逆に戦艦を保有しているかどうかがギルドのステータスにもなる。
 だがしかし、夢はやっぱりマイ戦艦。
 他人の戦艦に間借りするのではなく、自分の、そう、自分だけの戦艦を持つのが生産系の一つの夢ではある。

 「とはいえ、アサヒガニラス3号さんは海上戦闘じゃ弱いんだもんな」
 「すぐひっくり返るからね」

 砂上戦艦は大砂海用に建造されたこともあって海上に運ぶと安定性が悪い。
 大砂海の端から海洋に出られるが大波に煽られて転覆していたガニラスさんの動画を見た時は少し笑った。
 だが、ロマン溢れる戦艦さんも将来的に建造できることがわかってほっこりですよ。

 「ちなみに、これ、妖精さんは積んでるの?」
 「妖精?」
 「戦艦ってのはデフォルトで操作するとなると各部門にプレイヤーキャラクターを配置する形になる。だけど、そんなので人を何人も集めてられませんよってことで戦艦の細かい部分の操作を妖精が担当してたんだよ」
 「ふむ……大昔の文献にはイリアの船を妖精が導きという文言があったが……そのような妖精は今の時代には全てアストラへと戻ってしまっているのやもしれんな」

 パジャⅦ世の言葉を見るに未だ妖精さんは実装されていないようだ。
 コンテンツが解放されればいずれはやがて、といったところか。

 「修復までには時間がかかるのか?」
 「明日には出られよう。そう、明日にはな」

 どこか沈痛な面持ちのパジャⅦ世がどこか気にはなった。

  ◇◆◇◆◇◆

 「しんろぜろぜろー!ふうこーよろしー!ほろはれほろはれー!」

 どこか間の抜けたビーストの風読みが号令を上げる。

 「よいやっさー!よいやっさー!」

 それに応える屈強なビースト戦士達が帆を張る為にロープを引く。
 ガニラスさんの羽のような帆が持ち上がり、砂の混じった風を受けて膨らむ。
 大砂海にその身を浮かべるアサヒガニラス3号さんはやはりレジェンド級戦艦。

 「となりのりゅうさはよいりゅうさー!よいやっさー!よいやっさー!」

 合わせて舵を取り回すビーストに混じり、俺も操舵の為の巨大な車を押す。
 本来なら俺自身が押す必要は無いのだが、見ていると無性に混じりたくなる。

 「ほーもんひらけーよいやっさー!はっしゃおーらいしゅっぱつしんこー!そーれそれそれどかんどかーん!」

 遠く豆粒のようなヴォルヴの街に向け出航の砲撃を放つとアサヒガニラス3号さんはその勇姿を砂の中に沈め、一匹の巨大な怪獣となる。
 俺は操舵の車を一緒に押したビースト達に別れを告げると甲板に駆け上がり、艦橋で指揮を執るパジャⅦ世らのところに戻る。
 これもまた操舵室からは一苦労で本来なら船体の中を通って梯子を駆け上ってってところなのだがガニラスさんの背中を走ってチェーンフックで駆け上る。
 前部装甲の継ぎ目に設けられた戦闘甲板に降り、そこからブリッジへと入る。

 「本当に落ち着きないわねあんた」

 ブリッジで落ち着くキクさんにたしなめられるがこんな巨大戦艦を前にして落ち着けという方が無理がある。

 「船内構造は大体把握した。やっぱりというか居住スペースが全く無いわ。飢えた狼さんもびっくりだ」

 ゲームであり、かつ、オーバーコンテンツを喰う為の戦艦だけあって居住スペースのような無駄なものは無い。
 戦争資材を乗せられるだけのスペースが無駄に設けられただけであとは操舵機構と帆の格納スペースのみになる。
 砂上船艦といえば真正面からの衝突に合わせた衝角を設置するのがセオリーなのだがアサヒガニラス3号さんには衝角すら積んでいない。

 ――攻撃力を完全にプレイヤーキャラクターに任せた仕様だ。

 「イリアとして聞いたことはありましたが本物を見るのははじめてです」

 どこか興奮した様子のチュートリアだがその気持ちはわからんでもない。
 キクさんがどこか悔しそうに説明する。

 「アサヒガニラス3号さんは砂上戦艦として初めてオーバーコンテンツを喰らった戦艦なのよ。生産系のプレイヤー達の間じゃ文字通り伝説の戦艦なの。出し惜しみなく使われた前部装甲のアダマス製の装甲は城の外壁なんて比べるのもばからしいくらいに硬いわ。グランドラゴンでも1枚壊すのに20分以上はかかるでしょうね。正直、これを作るとしたら私の全財産が10倍あっても足りないくらいよ」
 「そんなに!?」

 驚くチュートリアに俺はバケツを脱ぎながら補足してやる。

 「アサヒガニラスのコンセプトは『絶対に沈まない』だからな。当時の外付け火力はファイアボール連射型の砲門のみで重さも相当だったから、それなら魔法を使うプレイヤーを載せた方が強いって判断だった。近接火力職はビート板――砂上揚陸船を使ってさっさと取り付いてこいって話だし、ナイト系はカタパルトでぶん投げて張り付かせていた。そっちの方が火力が出るからな?」
 「でも、それだと危険な攻撃があったときに戦っている兵士は逃げることができないんじゃ……」
 「お前さん、昔、プロフテリアの広場でぶっぱしたことがあるだろう?あれと同じことをこの船のブリッジの下の帰還石を使って行う」
 「帰還石?」
 「転移石のホームポイントを仮設できるオブジェクトだ。ギルドの拠点や自分の家なんかに設置しておいてそこに戻るのに使うんだが――こういう状況だと逆に、死に戻りして転移石を使ってまたここに戻るって方法で何度も何度もデスルーラからのリスポンアタックができるんだよ」
 「その為にはこの船が沈まないことの方が大事だったということなんですね?……なんだか、命の重さが全く感じられませんね」
 「言ったろ?俺達にとっちゃゲームだったんだ――本当の意味での『死』を迎えないイリアをデスペナルティ上等で飛び込ませる。非道と言うならチェスの駒を全部落とさないでクリアしてみろでブーメランだ」

 下地があるからだろうか納得したチュートリアとは対象的に難しそうな顔をしているシルフィリスが呟く。

 「しかし、パジャ王。このような戦艦をもってして破れた相手とはどのような相手なのだ?」

 それは気になるところでもある。

 ――アサヒガニラス3号さんの防御力はおそらく全戦艦の中でも随一を誇る。

 後発で新たに作られた戦艦とは設計思想が異なる。
 オーバーコンテンツを喰らうためだけに建造された戦艦であり、装甲に幾ばくかの機動力を足しただけという潔いコンセプトなのだ。

 ――当時の廃人達がそれのみに特化した。

 これがどういうことかわかるだろうか。
 それを退けるということはこれから挑む大砂嵐というコンテンツはそれ以上の火力を有しているものと見るべきだ。
 パジャⅦ世はシルフィリスに目をくれることなく砂の地平線を睨み応えた。

 「わからん」

 その応えには僅かながらに驚いた。

 「わからないことは無いだろう。これだけの突撃戦艦がありながらその姿を拝むことすらできないなんてバカな話があるかよ」
 「そのバカな話があったとしたら、戦女神のレジアンはどのような戦術を取るかね」

 俺にそう呟いた声はどこか落胆していた。

 「――冗談だろ?曲がりなりにもレジェンド級の戦艦だ。ガルパトロスだって初期の頃のオーバーコンテンツモンスターとはいえ戦艦の地の耐久力でいえばアサヒガニラス3号さんはファミルラでも最強だ。最高クラスじゃねえ、最強なんだ。RMT換算で10万以上の化け物戦艦だぜ?見えないということの方がおかしい」
 「だが、事実だ。雨のように炎が降り注ぎ、我らはその姿を見ること叶わず砂の大地に横たわるガニスを後にした。ようやく、そう、ようやく大砂嵐の中心まで辿り着いたのにそこから撤退しなければならなくなったのだ」

 その話はにわかには信じられなかった。
 アダマス鉱石をふんだんに使った装甲は伊達じゃない。
 城を落とすよりアサヒガニラスを落とす方が難しいのは当時のプレイヤーであれば誰だってわかっていたことだ。

 ――俺が先ほど操舵室から上部甲板を伝って来たのは軽近接で切り込みをかけるルートを調べる為だ。

 火力でガニラスを潰すなんて考えすら起きないのがファミルラの普通の――いや、廃人だった俺達のスタンダードだ。
 それを叩き潰す火力を持ったモンスターが居るというのは正直、信じられない。

 「ふむー、難しいねー」

 赤い竜が珍しく考え込む。
 竜魂にも戦艦はあった。
 だが、比較、プレイヤーでの直接戦闘を好む傾向にあった竜魂はその資産の多くをそれぞれの装備に割き、戦艦自体は必要最低限の足と装甲があればよかった。

 ――踏破不能領域を進行できさえすればよかったのだ。

 正体の掴めないオーバーコンテンツモンスターに俺達は眉を潜める。

 「……炎ってことはイフリートやバルログ系統のモンスターなのか?それなら炎の火力的に考えてオーバーコンテンツとさっぴけば理解できなくもない」
 「ドラゴンって線もあるよ。ドラゴン系なら炎も使うだろうし、超火力であってもおかしくはない」
 「んー……便所コオロギみたいなイリア?姿がわからないってことは実は小さかったってことが原因かもしれないし……オーバーコンテンツだったらイリアである可能性が強いとは思うのよね」

 俺、赤い竜、キクがそれぞれ自分の所見を交えてみるがいずれも、そう、いずれも正しいと確信を得られない。


 「いずれにせよ、いずれにせよ、だ」

 俺は不安そうな顔をするイリアやビースト達に鼻を鳴らして断じてやる。

 「一度でもまみえないことには攻略する糸口にもなりはしない。少しでも情報が必要だ」

 頷く赤い竜やキクに不安が無いことを確認し、俺は操舵を握るミルク・キャンディに尋ねる。

 「……して、どれっくらいで付く予定なんだ?」
 「大砂海を越えれば滞留した砂丘が作る砂島が見えます。そこで一泊してから大砂嵐に挑みます。大砂嵐は一日もあれば中心には辿り着くことは可能でしょう。ですが、その途中には我々も見たことのない魔物が存在します」
 「アンノウンエネミーって奴か」

 オーバーコンテンツの周囲にはアンノウンエネミー。
 文字通り運営さんからの『攻略してみろ』といった挑戦状だ。

 「いいだろう。やってやんよ。ライオンに指噛まれたムツゴロウと違う本物の動物横行の王様の知り合いの俺は撫でるのじゃなくて殴るのが得意だから問題無い」

 どこか呆れた視線を向けてくるミルクを無視して俺はブリッジから覗く真正面の航路を睨み据えた。

 ――その遠く遠く、遙か先。

 空が逆巻き、砂が塔をとなって天上へ昇っていた。
 砂の雲が灰色の雨を降らして逆巻き、砂丘を抉っていた。
 パジャⅦ世がどこか獰猛に告げた。

 「間もなく、間もなく大砂海を渡る――見えるだろう?あれが、大砂嵐だ」

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