#8 勝負解禁編7
少年は自分に与えられた5枚のカードを確認した。
スペードの5、ダイヤの7、クラブの2、ハートのJ、スペードのK…。
揃っていない。見事に揃っていない。このばらばらな手札を、どうしたものか。
少年は田河の方をちらりと見る。田河は5枚目を開けた時に、ぴくりと顔をこわばらせたように見えたが、それも一瞬ですぐ元の落ち着いた表情に戻った。
少年と田河がどのカードを交換するか思考していた間、ただでさえ静かだった生徒会室はますますの静寂に包まれた。あまりの静けさに宮沢が業を煮やす。
「あー、もう、2人とも駆け引きってもんがなっちゃいねえぜ! 両者だんまりじゃただのカード遊びで終わっちまうじゃねえか!」
だが、対人ポーカーなど経験のない2人はどう振る舞えばよいのか判らない。少年が言う。
「いや、いきなり駆け引きと言われてもどうすればいいか…」
宮沢は少し考えた後、言う。
「例えばな、お前のカードは今、ワンペアにも満たないダメハンドだったとする」
少年は偶然にも今まさにそんな手札だったため一瞬どきりとしたが、顔には出さずに済んだ。宮沢が続ける。
「そこでだ、そんな時には『俺は今ツーペア揃ってるぜ!』とか『あと1枚でストレートになるぜ!』とかハッタリかましてみるのさ。それだけで相手には多少の脅威になる」
「はあ」
「その逆で、いい手が揃ってたり揃いそうになってる時に渋い表情をしたりすれば、相手に『こいつの手はたいした手じゃないな』と思い込ませることもできる。ただし、演技が下手だとかんたんに見破られるぜ」
何も言わないのもつまらないし、せっかくだから嘘の手札を言ってみようと思った少年は、思い切って高い手札ができていると宣言することにした。
「それじゃ…、今俺がどんな手になっているか言ってもいいですか」
少年は田河に向かって言い、田河も「どうぞ」と許可する。
少年は深呼吸すると、宣言した。
「お、俺は今…、5のフォーカードができていますよ!」
普段は嘘などめったにつかない少年にとって、一世一代の大嘘をついてみせた瞬間であった。部屋中がざわつく。ポーカーのルールがよく分かっていない生徒会メンバーも、少年が上位の手札ができていることを宣言してしまったことは理解できた。
「ははっ、また大きく出たもんだな! ホントにできてんのかー?」
笑う宮沢に、少年はむきになって言う。
「できてるにきまってるじゃないですか! 今ここには、4枚の5のカードが―」
「それはない」
少年の言葉を、田河がさえぎった。 |