#7 勝負解禁編6
「ち、違うって! 俺はただの練習台だから」
少年がとっさに弁解する。
「でも、ヒトエちゃんがディーラーだなんて知らなかった、どうしてこんな重大なこと黙ってたんだよ…」
続いて少年は菊池に訊いた。制服を着ている生徒たちとくたびれたスーツを着た宮沢がいる生徒会室で、夕日に映えるディーラー姿は明らかに異質であった。
菊池はうつむいていた。その目線は手元にあった一組のトランプにあった。
「相談、など誰にもできなかったからさ。このオシゴトはな、お前たちの想像をはるかに超えた代物なんだよ」
部屋の隅に腰掛け、ぷかぷかタバコを吸っていた宮沢が言う。
「そんな…」
少年は愕然とした。菊池はその”想像をはるかに超えた”使命を課せられながら普段の高校生活を送っていたのだ。そぶりなど、今日第2パソコン室で一瞬だけ見せたあの時を除けば、一切なかったのだ。
少年や、生徒会員たちに不安が高まってきたのを察知した宮沢は、極めて明るく弁解してみせた。
「なーに変なこと考えてんだよチミたちは! 別に彼女はフツーにカードきってるだけ! それだけの仕事だっつーの! ホラ、菊池さんももっとにこやかに明るく!」
「先生、ディーラーはマシーンのようにゲーム進行するのでは」
宮沢の隣で煙に耐えながら状況を見つめていた大江が宮沢に突っ込んだ。
菊池はすぅ、と一度深呼吸すると顔を上げ、カードをきり始めた。
シャッシャッシャッ、パララララ…と小気味いい音が鳴る。
菊池のシャッフルは、確かに美しく、見事だった。ただ、カードをきっているだけなのに、トランプの1枚1枚が生命を与えられたかのごとく、舞った。
そして、そのうちから少年と田河に1枚ずつ交互に計10枚、配られる。10枚のカードは2人に目掛けて地を這っていき、それぞれの目の前で停止した。
「ああそうだ、ファイブスクウェアのディーラーって勝負中は一切喋っちゃいけないことになるから、今日は特別に俺が解説してやるよ。…それじゃ2人ともカードをオープンしな」
宮沢に言われ、少年と田河は自分だけに見えるようにカードをめくる。 |