#6 勝負解禁編5
「ヒトエちゃん…?」
少年は絶句した。菊池が、ディーラー? 菊池をよく知る少年にも、寝耳に水の事実であった。
少年と菊池の目が合う。
「ナオキ…」
菊池の様子がおかしかった。目にうっすらと涙を浮かべ、明らかに彼女が恐怖におののいているのがうかがえた。
「彼女はね、ディーラー特待生だよ。…入学試験の面接を覚えているか?」
宮沢が口を開ける。
この場にいる2年の全員が思い出した。入試面接であった奇妙な光景―。
「君、ちょっとこれをきってみてくれないかい?」
少年は面接の途中、面接官の教師から一組のトランプを渡された。ジョーカーのない52枚のカード。少年は奇妙に思いながらもカードをきる。
「すまないね。何でもないから気にしなくていいよ。そう、手先の器用さを見るためのものだから」
手先の器用さを見るため、など単なる口実だった。宮沢が真実を語る。
「ファイブスクウェアのディーラーは完全に公平なカード配布と、カード捌きの美しさが必要だ。逆に言えば、その2つさえ満たせばディーラーになれる。3年に一度入学試験の面接で新たなディーラーを選出していたのさ、そして、栄えある20人目のディーラーに選ばれたのが…、彼女だった」
宮沢が菊池を指差す。
「授業料全額免除と引き換えに、3年間ディーラーとしての役目を全うしてもらう。そして彼女は、過去のディーラーと同じように、このファイブスクウェアの『全て』を叩き込まれた。ファイブスクウェアの歴史、存在意義、そして公正に、マシーンのように勝負を進行するという使命―」
少年は菊池の異変が、その教え込まれた「何か」によるものだと悟る。彼女は、何を知ってしまったのか。
「さ、ディーラーとしての初仕事だ。ファイブスクウェア自体も2年ぶりの実施だ。最近誰も勝負吹っかけてくれなくて退屈してたところだ、よろしく頼むわ、菊池さーん?」
「は、はい…」
菊池が弱々しく返事する。
4つの机を並べ、椅子を両サイドに置く。簡素な、バトルフィールドの完成だった。
田河と少年がその椅子に腰掛ける。ちょうど2人との距離が同じになるように菊池が立った。
勝負者がこの2人であることが分かり、菊池はさらに狼狽したようだった。
「まさか、ナオキが、ファイブスクウェアを…?」 |