A little Typyoone −人形師 源十郎−(4/16)PDFで表示縦書き表示RDF


A little Typyoone −人形師 源十郎−
作:”太った猫”



嵐の前日 その2


「危ないところでしたね、御主人様っ」微笑んで、先ほどまで彼の足下でのたうちまわっていた女はそう言った。
「ふむ、ありがとう。というべきなんだろうな。この場合」意識を失ってなお自分の足首をつかむ男を見下ろし、その執念深さに感心しながらおざなりにそう言う。
「いいえ、当然の事をしたまでです御主人様。お礼なんて私に首輪かいいぬのしるしをつけてくださるだけでいいんです」言ってにこやかな顔で真っ赤な犬の首輪を自分に向かって差し出す。どうやら冗談でもないらしい。
「ふむ、人違い。ではないのか」にこやかに微笑んだままの彼女に向かって疲れたように視線をむけるが、
能登のと 源十郎げんじゅうろうっ、二年B組」言って彼女は胸のポケットから一枚の写真を差し出す。そしてそこには間違いなく自分と神無かんなが写っていた。
「ふむ、間違いでは ないようだな。だがな、覚えがないんだがな」写真の自分が写っている場所にピンクのペンで”これが私の未来の御主人様っ”と書かれているの見てげんなりとして言う。
「ああっ! ごめんなさいっ!! 一人で舞い上がっちゃって、でも近い将来そういう関係になる予定ですから別にいいですよね。それからこれはプレゼントですっ」一方的にまくしたて さきほど柔道部部長を撃沈したズシリと重いスポーツバッグを彼に押しつけると深々と一礼し時計を見「えっとぉ、今日はもう時間がないんでこれで…あ、わたし北洋ほくよう高校一年A組 如月きさらぎ 葉月はづきといいますっ、でもお好きに名付けてくださって結構ですっ。じゃぁねっ、御主人様っ」と言い残すと、まさに一陣の風と化して彼女は遠ざかっていった。












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