A little Typyoone −人形師 源十郎−(2/16)PDFで表示縦書き表示RDF


A little Typyoone −人形師 源十郎−
作:”太った猫”



彼と彼女と彼女の風景2


 その光景を熱っぽい瞳でじっと見つめる人影があった。
『噂は本当だった。』と彼女は思った。

 能登のと 源十郎げんじゅうろうには黒いわるい噂がある。
 激烈なサディストである。というのがそれである。神無かんなと呼ばれる少女を手込めにし、三流官能小説よろしく彼女を監禁調教し主従の関係を結んだというのがそれである。その噂を聞きつけて彼女はここにやって来たのだった。他にも様々な彼女を魅了するに足る悪い噂があった。そして彼らを見張ることほぼ一週間、彼の黒い噂の一つ一つを確かめ、そして今日でその確信は固まった。
 衆人環視の中で自分の事を御主人様と呼ばせる剛胆さも素敵だし、その後に彼女の耳元で他の誰にも聞こえないように自分の奴隷に何事かを囁くという姿勢も素敵だし、彼は自分の理想に合致する。
「彼しかいない」そばの電柱に自分の手形をくっきりとつけながら人影は思った。あの人こそ私の理想。神無かんなというあの娘、あの娘のあの人に向ける眼差し、信頼よりなお深い愛情を通り越した盲従という名の種類の瞳。間違いないわ。彼こそ私の主人にふさわしい。彼なら私を導いてくれる。みんなには度胸がないのよ。幸福の価値観なんて人それぞれ違うもの。私は私の幸福を手に入れる。そうよ私は間違ってなんかいない。だってあの奴隷はあんなに幸せそうじゃない。そうなる過程なんてどうだっていいの、あの娘の姿こそが私の理想。私はあの人の奴隷もちものになるの。












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