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俗に言う悪役令嬢って、こんな感じで良いのでしょう?

作者:三好
 突然だが、私は悪役令嬢である。
 後々現れるヒロイン氏が、攻略対象の一人である我が国の第一王子殿下と添い遂げようとした際に邪魔をしてくる咬ませで負け犬なライバルーーそういう星の下に生まれてきた存在なのだ。
 私は、私がライバルしてる乙女なゲームのある前世を覚えている、どう考えても頭の痛い子……でもこれは現実なんだからしょうがない。

 取り敢えず手始めに、悪役令嬢らしく王子様に付き纏ってみようと思う!悪役令嬢らしく地位はあるのでお城の舞踏会だって行けちゃうのだ!
 ……え? まだ小さいからお茶会? 王子様がいるなら構わなくってよ!

 年頃の男の子が喜ぶものって何か、を考えて前世幼少時代の山猿精神が戻ってきた。なるほど、これか!
 私は挨拶もそこそこに、美しいお城の庭園へと降り立った。
「殿下!ほら見て下さいましっお庭に不思議な虫がいましたの!」
「きゃぁぁあ!何てものを!殿下、捨てて下さいまし!」
「へぇ、城の庭にはこんなのがいるのか」

 お父様に怒られた。

 虫が駄目なら……いや、まだあった!私は気を取り直し、もう一度パタパタと庭へ向かった。
「殿下〜、先程はごめんなさいまし。お詫びにどうぞ、池にいた綺麗な蛙ですわ!」
「ひぃぃぃい!殿下、汚らしゅう御座いますから其方に!ポイと!」
「本当に鮮やかだな。あ、これ図鑑で見たことがあるな」

 うちの侍女長にも怒られた。

 後々考えてみると、恋愛経験が無さ過ぎるのが悪いのかぱっと見、男子小学生が好きな子を虐めるみたいになってしまった。
 これはちょっと、悪役って言うか令嬢として駄目だ。反省しなくては。
 あと殿下の反応は予想外だった。王子様ってすごい。

 やっぱり色気付いた方向で付き纏って嫌がられた方がライバルっぽいかな……難しいなぁ。
 王子様は穏やかそうだし、相当鬱陶しくないと。

 私は次のお茶会に向けて万全の準備を整え、いつもよりめかし込んだ姿で登城した。
 現れた私に対し、王子様の周りではお城の侍女達がそれと分からぬよう警戒体制をとっている。
 あら? わたし悪役令嬢っぽくなってきたんじゃない!? これは練習の成果を見せてやらねばなりませんね!
「殿下……貴方様の、清涼な風の吹く大草原のように爽やかな緑色が美しい瞳に、乾杯ですわ!」
「有難う、お前の瞳は凪いだ海が光を浴びたような綺麗な色だな。ティーカップだが、乾杯」

 私は三日三晩考えたのに殿下は一瞬で返してきた。悔しい。

 そして私は気付いた。私よりずっと教養があって当然なのだ。彼はこの国の第一王子様で、将来の国王様なのだから。
 アプローチを変えよう!
 私は殿下の後をひよこのようについて行く。いや、可愛らしく言い過ぎた。恣意的な表現だ。まるで金魚のフン……も令嬢としてよろしくない。困った。
「殿下っ!」
「なんだ?」
「殿下!」
「どうした」
「殿下〜〜!」
「?」

 必要以上にべたべたしてみたけど殿下は首を傾げてされるがままだった。失敗。

 王子様と言うのはこんなに心が広いものなのか……このお年頃に、大して仲良くもない娘に纏わり付かれて顔色一つ変えないなんて。
 流石は将来この国を背負って立つお方!なんてご立派なの!
 愛国心と王族への敬愛で、私はいっそ殿下に心酔しそうであった。だがしかし、私は悪役令嬢として心を鬼にしなけらばならぬ。
 自分の中では最高に凛々しく、自己陶酔の淵で殿下に微笑みかける。そして、後ろ手に隠していたものをすっと差し出した。
「殿下。貴方様の微笑みは、自然の恵みを受け美しく花開いた大輪の薔薇のよう……」
「有難う、本当に綺麗な薔薇だな。侍女長、これを花瓶に」
「畏まりました」
「あ、ああっ!待って、殿下の御髪に飾って差し上げたかったのに!」
「男は髪に花を付けないんじゃないか?」
「待ってぇ!」

 お母様に呼び出された。

 困った顔と言うか、呆れた顔をするお母様はそれでも美人である。ああ、流石は王家の血筋。
 見れば見るほど殿下のように優しげで高貴なお顔立ちに、不覚にもきゅんとする。
 お父様のクールで聡明そうな、少し厳しいお顔立ちも好きだけど。私はお父様似だからなぁ。
「リベラ、ああいうのは殿方のすることよ」
「えぇまあ、わたくしも薄々は……」
「殿下は穏やかなお方だけど、余りしつこくすると嫌われてしまうかも知れないわ」
「……つまり、方向性は間違っていない……?」
「何ですって?」
「いいえ!気を付けますわ!お母様!」

 有難う、お母様……わたし、自信を取り戻しました!

 殿下の隣に座り、しなだりかかるのは無礼なので上目遣いで甘える。よーしよし、これはかなり鬱陶しいわ!
「殿下、わたくし、酔ってしまいましたわぁ……」
「紅茶で酔えるのか?」
「殿下ぁ……今日は、帰りたくないんですの」
「何だ家出か。話は通しておくが、早めに仲直りしろよ」
「……はぁい」
 通じないな、とも思ったけど、何より殿下、優しい……!

 夕方には涙目のお父様が迎えに来た。
 誤解を解いて慰めるのが大変だった。申し訳ないことをした。

 それからちょっと、悪役令嬢アピールは控えめなものにしたのだった。



「成果が出た気がしないわ……!」
 数年後、相変わらず優しい殿下と、対応の柔らかくなった侍女達に囲まれながらお茶会をして、ホクホク顔で帰ってきた私は自室で我に返った。
 いや、でも……参加者が二人のお茶会ってお茶会と言って良いのかしら……護衛の騎士や侍女はいるし、あっ!私ご迷惑おかけしてる!? 悪役令嬢的!? しかし招待状はきちんと頂いている。
 とにかく、もうすぐ私と殿下は社交デビュー。お茶会は舞踏会にランクアップし、乙女ゲーム本編が始まってしまう!
 それなのにこの数年、同い年の私をまるで妹のように可愛がって下さっている。殿下、良い方過ぎる。
 本来なら原作開始時には王子様から蛇蝎の如く嫌われている筈なのだ。まぁ、殿下は爬虫類なら割と好きなんだけど……。

 極め付けに、次の日。
 滅多に入らないお父様のお仕事部屋に呼び出され、私が殿下の婚約者になった事を聞いた。なんで? いつのまに?
 王子様と出会ってから弟が生まれたので、うちに問題はないのですが……そこではなくて。
「お父様、お母様、どういうことなのでしょう?」
「おめでとうリベラ、お前の想いが届いたのだね」
「素晴らしいことです。お城から立派な使者様がいらしたのよ」
 求める返事が返って来ない。代わりに差し出されるのは、国王陛下の勅命……!?
「でも私、陛下に気に入られるような覚えは……」
「何を言っているんだ。どう考えても殿下御自ら、陛下に王妃にはお前をと望んで下さったのだろう」
「リベラは愛情表現が激しいから、辟易されないかと心配したこともあったけれど……私としたことが、無用な心配だったわね」
「え、え、え」
 良い仲に見えたってこと!?
 殿下が優し過ぎて、悪役令嬢アピールが空回りしてる事は知っていた。
 かと言ってそんな風に見られているとも思っていなかった。そして正直なところ、はっきり言って嬉しい。
 一緒に届けられたと言う、いつものお茶会の招待状を抱いて、私は顔を赤くしていた。



「あ、あの、殿下……」
「リベラメンテ、今日も可愛らしいな」
「ヒェッ……!?」
 今までいつも言われてて!殿下ってお世辞までお上手なのね!フェミニストで素敵!とか思ってたけど改めてじっくり聴くとすごい恥ずかしい!
「あの、ああああの、殿下、あの」
「分かっている。婚約の件だな」
「は、はい」
 憂いを含んだ表情も艶があってお美しい。まだ社交デビュー前なのに、こんなに素敵な殿下……これ以上素敵になったら、皆倒れてしまう。
「お前の了解も取らず、急なことを……すまない。非礼を詫びる」
「殿下っ!? そ、そのような」
「まだ時間があると思っていた。しかし、お前に婚約の申し入れがあると聞いて……気が急いたのだ」
 初耳である。
 私が殿下に懸想していると知って、お父様が止めてくれていたのかも知れない。
「……存じ上げませんでした」
「だが、私はお前にこそ隣にいて欲しいのだ。お前以外が王妃の座にあるなど、私には考えられない。お前を他の者になど渡したくはない」
 幸せ過ぎて倒れそう。誰か今の聞きまして? 早く書き留めて!
 しかし、私達の周りには完全に気配を消し、いないものとして置物になっている護衛の騎士様達しかいない。
「なっ、何故、わたくしのような者に、そのような……っ過分の、」
「何故、とは?」
「わ、わたくし殿下に、無礼な真似を……幼少の砌から、事あるごとに……その、纏わり付いて、ご迷惑を」
 しどろもどろで、何て聞き苦しいの!
「嬉しかったぞ」
「!?」
「お前といると、心が休まる。あんなに真っ直ぐに私を見つめるのはお前だけだ。ゆっくりでいい、お前には王子ではない俺も……アレクシードも、見て欲しいと思う」
「殿下……いえ、アレク様……」
「俺と共に歩んではくれないか、リベラ」
「よ、喜んで……!」

 かくして私、悪役令嬢リベラメンテは悪役令嬢ではなく、王子の婚約者として王妃修行に日々を費やすことになった。
 王子の社交デビューである舞踏会では、婚約者紹介と言う電撃発表。国王の勅命である婚約に、否やがある筈もなく。
 遠くで喜びはしゃいで奇声を上げんばかりのヒロイン氏は社交デビュー前から幼馴染の騎士様と良い仲だったようだ。



「殿下にこのようなことを申し上げるのもどうかとは思うのですが……ご存知の通りリベラはその、昔から変わった娘で」
「それで良いのです。幼い頃から、私はその変わったところに癒されてきました」
「まあ……!リベラをどうか、お願い申し上げます」
「はい。お任せください」
「殿下、お待たせしてしまって申し訳ございません!」
「さ、行こうか……リベラ?」
「あ!はい、アレク様!」

 取り越し苦労も多かったけど、終わり良ければすべて良し、よね!

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