7、電話
家に帰ってシャワーを浴びて。
Tシャツに綿のズボンを着てダラっとくつろいだ。
缶ビールをぷしゅ〜っと開けて、一口飲む。
「なんだかなぁ…」
なんて、愚痴っぽいため息がこぼれ落ちた。
最近、毎日が慌しい感じ。就職して3年と7ヶ月。やっと自分の居場所が出来て居心地良くなってきたって思っていたのに…。
奴がいる限り、職場に安息の場所は無いのかも。
それにしても。
なんで…気持ち良くなっちゃうんだろ、俺。
いや、奴との関係を認めたわけじゃなく、素朴な疑問…。
男のカラダって、そういうふうにできているんだろうか。慣れるっていうか…。
前立腺マッサージとか、聞くもんな。金払ってやってもらう奴がいるらしい。そりゃあもちろん女性にしてもらうんだけど…。
他の奴としても気持ちいいんだろうか、なんてぼんやり考えてしまう俺って意外と道徳観念低い?
でもまあ、じゃあ別の奴とやってみるか、なんて気にはならないけど。
ビールを飲んで、ぼ〜んやりとクダラナイことを考えてたら携帯が鳴った。
松戸かな。
酔ってたせいか、着信を確かめないで出てしまった。
「はい」
『…宮田…さん?』
うおっ…と。
携帯の向こうから、高垣の声がする。
「な、何?」
『あの…えっと…』
高垣が、電話の向こうでモジモジしてる。
「どうした?」
"電話の向こう"っていう安心感から、つい訊き返す。
…これかな、松戸が言ってた『微妙に優しくしてる』って…。
だったら、すぐ切ったほうがいいんだろうか。
そう思いながらも、俺は通話を切れないでいた。
携帯から高垣の躊躇う息遣いが伝わってくる。
それを聞いた俺は…。
なんで?
なんでだ?
…なんでだろう、ドキドキしてるんだ。
次に奴が何を言うのか分からなくて、一緒になって緊張してる。
なんか、この感覚って…覚えてる。でも、それは…。
俺が、今は決して考えてはいけないことを考えようとしてしまった瞬間だった。
ピンポーン。
チャイムが、鳴った。
張り詰めた状態の中、それを裂くようにチャイムが鳴った。
それはいつもより大きく聞こえ、俺は身体をビクッとさせた。
「ごめん、高垣、誰か来たみたいだから」
そう言って携帯を切る。
逃げるように玄関に行き、ドアを開けた。
「あ」
俺は、ポカンと口を開けた。
「宮田さん」
開けたドアの外に…ノッポが立っていた。
チャイムの音がやけに大きく聞こえたのは、携帯が音を拾ったからだったのだ。
「お前、何しに」
言いかけた俺を、奴はガバッと抱きしめて、そして玄関へ押し入ってきた。
「おい、ちょっと、ちょっと…!」
「宮田さん、会いたかった…!」
おいおい、それは恋人同士が使うセリフだろう!
唇を塞がれて何も言えない俺は、心の中でツッコミを入れた。
それで、ちょっと待って、なんでまたキスされてんだ、俺。
高垣の胸を押した。結構強く。
それでやっと、しつこい唇が離れていった。
「なんなんだ、それは!?」
気の利いた言葉が全く出てこない自分が情けない。
「こないだは、すみませんでした」
高垣が俺の腰を抱いたまま謝るが、今までの悪行のどれについて謝ってるんだか見当がつかない。
「なんだよ、それ」
睨んだら、その切れ長の目を伏せた。
「職場で…なんて」
あ〜あ〜あ〜、その件か…思い出すだけで眩暈しそう…と思っていたら、もっと眩暈のしそうな事を言いやがる。
「あんな場所じゃ、不完全燃焼だよな…ゴメン」
うおッ、誰かこの妄想男を捕まえてくれ〜!!!
っつーかさ、不完全燃焼どころか、却って燃えました…とは言えず、俺は奴の腕から出ようと暴れた。
「お前、バカじゃねーの?もう絶対お前とヘンなことしねぇからな!」
そう言ってやったら、ニヤリと笑った。
「ヘンなことって?」
「!」
そ、そんなこと、口で言えるか!
腹が立って震えてたら、
「こーゆーこと?」
なんて言いながら、俺の尻を撫でて…それから手が、指が、軽くその間にギュッと潜り込んできた。
「ッ…」
服の上からとはいえ…ちょっと…くすぐったい。
「やめろって、そういうことは」
「やめられない、だっていちいち反応が可愛いし」
「可愛い?お前誰に向かって」
「宮田さん」
高垣の手がTシャツの裾から入ってきて、脇腹を撫で上げる。
それから…乳首に触れて…。
「ここ、硬くなってる」
「お…お前が触るから…」
高垣が笑って、それからもっと乳首を弄りだした。
「…ぁ、…ぁ」
俺は唇を噛んだ。
「ホント、乳首弱いな」
コリコリと指の腹で撫で回されて…。
あ…ダメ…かも…。
もう、立っていられない。
壁にもたれて、高垣にしがみついてる。
もう、だって、俺、アソコも勃ってる…。
「ぁんッ…や…めて…高垣ッ…んんッ…ぁッ…!」
「宮田さん…すごい色っぽい…ホント、たまんねぇな」
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