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手順を踏め!
作:イシイ-イタル



5、書庫にて


 そんなふうに無視を再開して1週間目のことだ。
 夕方、俺は先輩に頼まれて書庫に資料を取りに行った。「積算資料」ってやつ。
 急がない、とは言われたけど、ちょうど暇になったところだったんだ。
 でも、書庫で探してみると指定された1年前のものが、所定の位置に無かった。
 …誰か借りてるんだな…。
 諦めて戻ろうとした時、扉が開いて…高垣が入ってきた。


「あ」
「…ども」
 仕方なく、俺は軽く会釈をした。

 あれ?

 高垣が持ってるの、俺が探してるヤツだ。
「高垣、それ、もう返す?」
 俺は本を指差しながら訊いた。
 喋りたくはないが、仕事の場合は別だ。
「ええ。返しに来たんです」
 高垣がそう言うので、俺は手を差し出した。
「じゃ、貸して」
「あ、はい」
 高垣が、俺に本を渡した。
 …と思ったら、腕をグッと掴まれた。
「わッ」
「お願い。俺と付き合って」



 まだ諦めてなかったのか、と俺は呆れた。
 呆れつつ、睨み合うこと5秒間。
 俺は、自分よりも10cmは背が高い、高垣の顔を凝視していた。
 その顔は真剣そのもので、正直気圧されそうになる。
「お願いします」
 俺は、掴まれた腕をグッと引き戻そうとしたが、向こうも思った以上に力を込めていた。
 反動で、高垣の方へよろめいた。
「おっと」
 奴が俺の両肩を支える。
 俺は慌てて退いた。
 慌てすぎて、本を落としてしまった。
 でも、拾っている場合じゃない。
 視線が外れたら、何か負けてしまう気がして…高垣から目が離せない。
「いやだ、付き合わない。お前も忘れろ」
 やっと、それだけ言うことができた。高垣の眉間に皺が寄る。

「…忘れようと思ったけど、できない」

 奴はすごく辛そうな表情でそう言った。
「こんなに毎日近くにいて、視界の中に入ってくる…忘れるなんてできない」

 そんなふうに本音をまっすぐにぶつけられて、俺は…俺は、言葉を選び間違ってしまった。

「俺は、忘れる努力をしてる」

 ん?
 言ってしまってから、なんかニュアンスがおかしい、と気がついた。
 まるで今のじゃあ、高垣と同じような意味で忘れられないって告白したみたいじゃなかったか?
 が、気付いた時には遅すぎた。
 高垣の顔がパッと明るくなって、俺を抱きしめた。
「わッ!」
「忘れなくていいだろ?」
 そう言って…唇を重ねてきた。
「…んッ!」
 唇の内側も、その奥も、全てを自分のものにしたい…とでも言うような、高垣のキス…。
 それはいつも通り熱くて、そして…。

 そうなんだ。
 こいつのキスって…。
 エロい。

「んぁッ…やめ…やめろって…」
 キスしながら、カッターシャツをズボンから引っ張り出してる。
 そして大きな手が、直に肌に触れてきた。
 それが…抵抗できなくて…。
「バ、バカッ!こんなところで…ッ…」
 乳首に奴の指が触れた。
「…ぁッ」
 触れて…撫でて…。
「…ぁんッ…イヤだッ…て…」
 その指が、焦らすように輪を描く。
 唇は、いつの間にか首筋を攻めていた。
 ネクタイが緩められて、ボタンが…外されて…。
 鎖骨を舐められて、俺の中の何かが外れた。
「ぁんッ…ダメ…ダメ…」
 それまで必死に抵抗してたけど、腕に力が入らなくなって、身体は本棚に押さえつけられ、下半身の昂ぶりも…高垣の太腿に知られてしまい…。
「俺とヤるの、いいんだろ?」
 囁く、声。
「ぁ…ん…」
「いいんだろ?」
 ベルトが緩められ、ズボンが足元に落ちた。
 高垣の手が下着の中に入ってくる。
「ぁ…たか…がき…ダメ…」
「…濡れてる…」
 高垣が、ゴクリと唾を飲み込んだ。
 息が荒くなっている。
 下着も、下ろされた。
 奴の手が、後ろ…俺の…あの部分に触れた。
 ヌルッとしたのは、俺の先走りだろうか。
 分からない。
 ただ、ゆるゆると触れて、そしてグッと…入ってきた。
「…ぁ…ぁ…ぁ…」
 俺は、声を押し殺すのに必死だ。
 なのに、奴の指は容赦なく俺の中へ、奥へ奥へとと進んでくる。
「ぁんッ…ぁンッ…!」
 指が増やされて、身体の中でクチュクチュと淫靡な音が響いてる。
「なぁ…」
 導かれた手の先に、奴の大きなアレが…ジッパーの隙間から、覗いていた。
 握り締める。
 握り締めてしまった。
 しっとりと熱を帯びた、固くて太いそれが…俺を犯そうとしている。
 ああ、でも、こんな場所じゃあ…いつ誰がやってくるか分からない。
 でも…でも…もう、指じゃ…届かない…。


「高垣…もう…ッ」
 ほとんど無意識に、俺は脚を拡げていた。
 高垣の腕が、その片方の脚を持ち上げた。
 そして…。

「ぁぁあッ!」

 またしても…。
 俺は許してしまったのだった。



 







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