11、モヤモヤ
2次会はワンパターンだけどカラオケに行った。
もうその頃には高垣はユウコちゃんにロックオンされて、ずっと2人で喋っている状態が続いていた。
そんな中、俺は…レイちゃんに生返事。それというのも、なんか…あの2人の動きばかり気になっちゃって…。
ああ、そのこと自体ムカつくし、腹が立つ。
高垣の存在が、俺の合コンを潰している感じがする。
そうだ、あの2人がうまくいけば、俺の悩みの大半は無くなるんじゃないか。
うまくいけ、うまくいけ…!
しかし。
心の中で、唱えれば唱えるほど、そう祈っているのか実はそう祈っていないのか…自分でもよく分からなくなってきた。
このモヤモヤ感は何?
そんなふうに悩みの中で過ごしてしまった。
そうしたら、カラオケ店を出た時にレイちゃんに言われた。
「私より、ユウコの方が気になってたのかなぁ?」
そっか、そんな様子に見えたか…。
「え?いや、違うよ、そんなことない」
俺は申し訳なく思いながら、そう返事をした。
俺が気になってたのは…ユウコちゃんでは無い。
「じゃあ、メアド聞いてもいい?また会えるかな」
自信無さげに聞いてくるレイちゃんの様子、いじらしい。
そうだよ、本来恋愛ってこうあるべきだ。
相手の性別に関係なく、いきなり襲い掛かるってのは、間違っている。
奴は、間違ってる。
俺と高垣との関係は、全くもって間違っている。
あんなのは無しだ。
たとえ今俺が、このメンバーの中で一番気になってしまうのが高垣だと認めたとしても、だ。
そうだ、それは認める。
しかしそれは、俺を好きだと言った高垣が、女の子との合コンでどう行動するかが気になるのであって、他に意味は無い。無いはずだ。
「うん、もちろん」
俺はレイちゃんに向かって頷いた。彼女はニッコリ笑った。その笑顔に、俺は今日の自分を申し訳なく思う。
「今日はゴメンね、ちょっと仕事でミスっちゃって、そのこと考えてぼんやりしてたかも」
「なんだ、そうなんだ〜」
「うん。合コンあると思って浮かれちゃったかな?」
「あはは」
こうやって、女の子と喋るの、悪くない。
っていうか、こっちがフツーなはずなのに。
その日は、俺は1人で家に帰った。
高垣とユウコちゃん…いつの間にかいなくなってた。
付き合うのかな…。
高垣、あんなに俺のことをぎゃあぎゃあと追い掛け回していたクセに…見切り早いぞ。
いや、早くて結構なんだけどさ。
1人でベッドに横になる。
時々携帯を見てしまう。
レイちゃんから、今日のお礼メールが来て、俺も返して…何回か、やり取りして…でも、高垣からは、何の連絡も無い。
無くて、いいんだけど…。
なんだろう、この違和感。
俺にもメアドを交換する女の子がいて、高垣には猛アタックをかける女の子がいて、まとまりそうで、俺が最初に望んだ以上の展開なのに…。
何か、足りない気分。
合コンの途中から、高垣は一度もコッチを見なくなった。
怒ったのか、それとも、ユウコちゃんの方が良くなったのか。
……。
電話も、メールも、来ないな。
正直、合コンの話を聞いた時の高垣の様子から、俺に対してもっと怒るとか、何か行動に出ると思ってた。
また、押しかけてくるとか…。
何?なんか俺、それを期待してる?
やっぱあのHに溺れたか?
……。
旅館で、押し倒された時のことを思い出す。
『ずっと我慢してたのに…浴衣、はだけ過ぎなんだよ。誘ってんのか?』
高垣の声を思い出して、身体がゾクッと震えた。
土日の間、何も起こらないまままたウイークデーが始まった。
仕事中の奴は、俺の方を見ようともしない。
はっきり言って『無視』してる感じ。
べ、別に俺は構わない。構わないぞ。
ただ、なんだか振り回されている自分に腹が立つ。
クソッ…。
レイちゃんとは次の金曜日に会う約束をした。
高垣のことを頭から追い出すためにも、新しい出会いは有効だと思う。
木曜日の午後、松戸が仕事でウチの課に来ていた。
ウチの係長と小一時間ほど打ち合わせをして、帰り際に俺の席に近寄ってきた。
「で、どう?」
そんなふうに、俺の耳元で小さく囁いた。
「どうって、何?」
「レイちゃん」
「…次の金曜に会うよ」
正直に答えたら、松戸は嬉しそうに目を細めた。
「うまいことやってんじゃん」
「…おかげさまで」
合コンに誘ってくれたのはコイツなので、軽く礼を言うと、松戸はふと視線を隣の課に移した。
「高垣の方はどうなってんのかな。なんか聞いてる?」
「いや…知らない」
「奴ら当日2人でいなくなったからさ〜。大人しく見えても、やっぱり顔がイイ奴は動きもいいな」
松戸がそんなふうに言う。
いや、高垣は真面目な奴だ、と思いかけて、違うな、と思い直した。
だって、いきなりゴーカンするような男だ。
いきなりお持ち帰りしたって変じゃない。
けど…。
俺も、高垣の方を見た。
あ…。
月曜以来、初めて目が合った。
なんだろう…なんか、ちょっと切ない表情。
なんだよ、何か言いたいこと、あるのかよ。
俺はなんだか面白くなくて、唇を噛んだ。
そしてサッと視線を逸らした。
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