少年の嘘
「僕のお父さんは会社の社長で、昨日も最新のゲーム機を買ってもらったんだ」
学校の昼休みの教室、少年はクラスメイト達に嘘をついた。少年の父は社長などではなく、中小企業の営業マンであり、勿論最新のゲーム機を買ってもらってもいない。
「おい、またこいつのお得意の嘘が始まったぞ。もう騙される奴なんかいないんだよ、嘘つき野郎」
少年の嘘を見抜いていたクラスメイト達は、誰一人少年の言葉を真に受ける事なく、少年を無視して教室を出ていき、後に残された少年は、寂しげな表情で生徒達で賑わう校庭をいつまでも眺めていた。
その日の夜、少年の夢に現れた悪魔が言った。
「よし、良い子だ。今日も立派に嘘をついたね。お前には毎日嘘をつかないと死んでしまう呪いをかけてあるんだ。私はお前が孤立していく様が楽しくて仕方がない。死にたくなければ、明日もちゃんと嘘をつくんだよ」
ニヤリといやらしく笑う悪魔に、
「うん、わかったよ」
と、少年は人生で最後となる嘘をついた。