18/44
声帯少女
この街には、ある伝説がある。
それは
“声帯少女”だ──
6歳という幼さでありながら、声帯を奪われてしまった少女は、今も声を出せずにいる。
美し過ぎる、透き通った声……
6歳とは思えない、その声はたちまち噂になり……
そして、“伝説”となった。
しかし、彼女の美し過ぎる、透き通った声は……
瞬く間に失われてしまった。
彼女は泣いた。
来る日も来る日も、毎日。
どう足掻いても、自分の声はもう出せない。
自分のあの声を聴くことも、もう出来ない──
あの声帯は一体、何処へ?
声帯が何処にあるのかも分からない。
そう思うと、彼女は恐怖に陥った。
何故、私は声帯を失うことになったのか。
そして、その声帯は今、何処にあるのだろうか。
その自分の声帯自体、未だに存在しているのだろうか。
恐怖と疑問とが入り交じりながらも、彼女は今日も生きている。