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「すぎゆくなつのひ」の順番通りにはいかず、いきなり「ぎ」でした(笑)ユウとカオルの結婚式が来る前に公開したかったので……
それでは、どうぞ。
ギラギラと太陽は笑う
おーい、カオル、悪かったって。遅れてホントにゴメンナサイです。
いやあ、早朝ロケが長引いちゃって。ほら、公園のボートで絶叫するって言ってたCMの話。え?俺がNG出すもんかよ。って…本当は出しまくりなんだけどな。素人同然なんだから、頑張るしかねえよ。
メインが伊藤ヒロムでさ。知ってるだろ?あのイケメン俳優。あいつがご機嫌ナナメだったんだ。ったく。何様のつもりなんだろうな?
俺が指定通りに池に飛び込んだのに、ヒロムのせいで撮り直し。頭乾かして、着替えて……あれじゃ、押すのもしょうがねえよ。
ノッた瞬間、いきなりマジでいい顔したから、売れっ子さんに文句言うつもりないけどさ。

そうやって仕事の話をすると、カオルはいつも眩しそうな顔になって。
俺としては、なんだか妙に誇らしい気がする。
そんな顔で見られたことなんて、今までなかったもんだから。
きっと俺が芸能人みたいになったからとか、テレビに出られるからとか、そういう下世話な喜びじゃないんだよな。
音楽なんてさ。俺は真剣だけど食い扶持にはなってねえし、始めたのは高校時代にカオルが「結構いい声してるよね」と一言褒めたのがきっかけっていう、どうしようもない初々しい経緯な訳で。
剣道だって、母親に入れさせられたのが始まりだけど、カオルがいるから才能もないのに続けていられたし。
要するに、自分で自分のために仕事として獲得して、カオルの見えない場所で知らない仲間と一つの物を創り上げてる、そんな状況初めてだから、それを喜んでくれてるんだよな。
でもさ、俺は俺のために、じゃないんだ。カオルのために生きる俺のために、こうやって浮き沈み激しい世界で食い繋いでいこうって決心してんだぜ?
なんて、恩着せがましく言うつもりはさらさらないけどな。

ああ、あっついなぁ。なにもこんな日に式場の下見に行かなくてもよくね?
…って悪い悪い、俺のせいだったっけ。
ごめんな、忙しいからって、ちゃんと相談乗れなくて。もっと一緒にいたいのにな。
あー、式場なんてどこでもいいのに。結婚式なんて、どこでやったってカオルが主役。シン兄のドレス着て、世界一綺麗なカオルを見せつけられれば、俺はもう十分だよ。
コツンて額を頭に落としたら…ああもうわかったよ。その一睨みでわかるんだって。
なんなのよ公道でこういうことしないでよっていつも言ってるでしょ、とか。どうしてすぐそうやって歯の浮くようなセリフ吐いてしかも自覚症状なしってどゆこと?とか言いたいんだなってさ。すぐ、わかっちゃうんだ。
カオルといると楽。
楽なのに、誰といるより浮足立ってくる。
思わず電車でアイシテルって囁いたら、それこそトマトみたいに真っ赤になっちゃってさ。
一体何年付き合ってんの?慣れない態度、可愛いったらないよ。

へえ、このチャペル、結構狭いんだな。写真で見た印象より、暖かい感じ。
これがバージンロードって奴?へへ、ここ、じいちゃんと腕組んで歩くんだ。
いてえ、照れるからって肘鉄はやめれ。
せっかく海沿いなのに、窓一つないんだな。
そう呟いたらホテルマンの思うツボで、こちらですって違う出口を開けられて。
わあ、、、って叫ぶのも、仕方ないよな。
どっか外国で石壁の家の夜みたいな、キャンドル色の空間だったのに、いきなり太平洋ドッカーン、だもんな。
海があるって知りながら、つい目が眩むほど意外だった。
この感動のために、わざわざ窓もなくて薄暗い神聖な感じにしてたんだなって凄く納得した俺は、それこそホテルの思うツボだ。
でも、いいじゃん?ここにしようぜって。
カオル、用意周到はいいけど、心配しすぎじゃね?
ここでフラワーシャワーやら写真撮影なんて、綺麗でいいじゃんか。
式が真冬だからって心配しなくても、ここは一年中結婚式やってるんだから。雨の場合だってあるんだし、その辺を考慮していないはずがないだろ?
ほら、防寒具も貸してくれるし、天気次第で建物の中に変更もできるって。

一通り説明受けて式場を仮予約して、帰る前にもう少し見物させてもらうことになった。やっぱりホテルマン抜きで、もっと自由に見物してみたいじゃん?
写真撮影するための台があって、海はそこからもよく見えて。
すっげえ、目、開けてられないよ。目も色素が薄いからかな。真上からの太陽と紫外線で目の奥がジリジリ痛くなる。
カオルは?って顔を見たら、片手を陰にして、水平線を見詰めてた。
極限まで薄目にした俺と違って、大きな目をもっと大きくして、珍しく感動した顔を隠さずに呆けてた。
その表情が可愛くて綺麗で、ドレスも着てないのに、もう結婚式みたいな気になっちゃってさ。
うっかり屈んでキスしたら…
こんなことってあるんだ。
照れて突き放すこともなく、驚いて逃げる素振りもなく、シャツの胸を両手で握って上を向いて、背伸びしてくれたんだ。
俺、幸せだ。
別に人前でイチャイチャするのが目的でイチャイチャしたことなんてないけど、どうしようもない衝動で抱き締めたりすることはよくあって。
その度に拒否してくる、イヤじゃないのにイヤって雰囲気は堪んないんだよ。
でも応じられると、天にも昇る気持ちになるんだな。初めてだから、初めて知った。
って、調子に乗って舌を入れたら、さすがに突き飛ばされて、台から落ちそうになったけど。

なあ、見てみなよ、あの太陽。
ギラギラギラギラ、夏の太陽って、なんか生きてるよ。
カオルはクーラー弱いし、あんまりあっついのも苦手だけどな。でも、あのパワーは凄いと思うだろ?
マジで、すげえなぁ。半年後に俺らはここで結婚式して、夫婦になって、その頃にはじいちゃんとも家族として暮らしてて、準備しなきゃなんないのに実感なんて面白いほど全然ない。
それはユウが準備する暇ないからでしょって突っ込まれて、返す言葉も見付かりません。メンボクナイ。
そんな風にアーモンドみたいな瞳を細めて睨まれると、ゾクゾク心が浮き立ってきて、やっぱ俺ってMなのかな、それともそういう反応を見たがるSなのかな、どっちか結局わかんねえやって話は冗談半分で。
まあ、その瞳が一番カオルらしくて、一番表情を綺麗に表わしてるからなんだよ、実際は。
どうせなら、真夏のこんな天気の時に挙式したいなって呟いたら、目を丸くして呆れられて、オイそんなに馬鹿にするなよって思う。
馬鹿は馬鹿でしょ。寒いのよりも暑い方がよほど性質が悪い。写真撮影なんてしてる間に、参列してくれた人が具合悪くなったらどうするの?ダラダラ汗かいて写真撮影だなんて誰でもゴメンだから、今日みたいな休日にも下見できてるんじゃないの。
わかってるってば。俺がそういう変なこと思い付くと、やっぱり来年の真夏にしようぜ!って言い出すんじゃないか恐れてるんだろ。
当たり前でしょ、そんじゃそこらの無鉄砲じゃないって腹括って結婚するんだから、防衛するにも覚悟が要るのよ!それに…
カオルはそこで視線を外し、きゅっと俺の手に手を捻じ込んだんだ。
せっかくSHINEのドレスを着た花嫁姿なのに、汗でテカテカの写真残すなんて嫌だもん。
今日、なんかカオルらしくなくね?ていうかもう俺、昇天しそうだ。ていうかもう、できることならここで押し倒したいくらいなんだけど。
だから俺、ちょっと邪な自覚アリで言ってやったんだ。
わかってるよ。俺だって、宇宙一綺麗なカオルが早く見たいんだ。秋から延期になったのに、太陽のために夏まで延ばすなんて、ありえねえよ。誓いのキス、長々としたらみんなどう思うのかな?覚悟しといてな。
火を吹くほど赤面したカオルを見て、俺は勝利を確信した。
帰ったら即、イタダキマスな?
帰宅後は、いろいろと手間取ってしまったようです(笑)レンさんとの待ち合わせがあるのですが、大丈夫なんでしょうか?
という訳で、次の「浴衣と金魚と盆踊り」に、微妙に続きます。
短編は、本編「phantom honeymoon」で予告しながらの更新になります。本編をご存じなくお越しの方、ぜひぜひ本編にも足をお運びくださいませ。(←宣伝か?宣伝です)


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