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超能力者の愛を貴女に

作者:樹 泉
誤字脱字等ございましたらお知らせ下さい。
 俺は何故か、超能力がある世界に転生した。転生した俺は氷室(ひむろ) 清司(せいし)という。
 超能力は全人類が持っている能力であるそうだ。
 だが、俺は混乱している。この国の国名を聞いたんだ。名前は何と言ったと思う? 日本だぜ。
 日本人の外見は黒髪黒目じゃなかったか? この国はずいぶん色に溢れているようだ。何といっても俺の外見、淡い水色の髪に空色の瞳だぜ。元日本人としては考えられん。あれだ、パラレルワールドというやつに転生したようだ。

超能力には階級(レベル)が存在するらしい。その一例を聞いてみた。

レベル1 自身に関係ある能力や現象を感知できる。
レベル2 自身の能力で小さな現象を起こせる。 *1円玉を数cm移動できる。
レベル3 レベル2より自身の能力で現象を起こせる。 *500円玉を1m移動できる。
レベル4 人体に影響を与える。 *人を移動させる事ができる。
レベル5 戦術レベルの現象を起こせる。 *トラックを移動できる。
レベル6 戦略レベルの現象を起こせる。

 1例は(サイコ)動力(キネシス)だ。レベルが強い者になるほど必要とされるが、レベルが低い者も必要とされている。レベルが低い者程感知能力が高いからだ。
 レベル別に確率で分けると、レベル1とレベル2だけで60%強を占める。

 俺のレベルはレベル3の氷結(フリーズ)だ。
 レベル3というのは、所謂低能力者に分類される。レベル1~レベル3を低能力者、レベル4~レベル6が高能力者だ。

 俺の祖父はレベル6の氷結(フリーズ)、祖母はレベル5の転移(テレポ)能力(ーター)。高能力者同士のカップルだ。
 なんでも能力の種類は遺伝するが、レベルまでは遺伝しないらしい。

 小学校から超能力開発が始まり、高校生位で超能力のレベルが安定するらしい。
 今の俺は3歳、超能力は伸びるはず。今から修行すれば能力も上がり、超能力者としての立場を確立できるかもしれない。
 そうと決まれば、さっそく祖父母の家に行って、修行を着けてもらおう。

 やったぜ、小学校に上がる前にレベル4になった。これで高能力者の仲間入りだ。
 祖父だが、普段は優しいくせに修行は辛いのなんの。
 で、小学校だが、祖父母の通っていた高能力者の学校、(あい)(らん)学園の初等部に通う事になった。
 愛藍学園はこの国で唯一の高能力者専門の学園だ。低能力者だけで75%を超える為、高能力者の人数はそこまで多くはない。よって1つの学園に纏めて入る訳である。

 俺は学年が上がるにつれモテ出した。何を言っているのかって? 事実だ。
 俺の容姿だが、かなり整っているんだ。まだ子供だから中性的で、どこか冷たいイメージを持たれがちだが、明るく誰へだてなく成績の良い俺に女子がノックアウトされているらしい。まだ、ちょっとした憧れとかの様だが。
 だが、俺に言い訳させて欲しい。この容姿は遺伝だ。両親、どちらかというと祖父に似た俺の容姿は、このように産んでくれた母親に感謝すべきだ。
 それに女子にモテるからって天狗になるのも精神年齢的に辛い。成績が良いのだって2度目の子供生活だ、これで点数低かったら泣ける。
 勉強だって、超能力に重点を置いているからそこまで難しくない。
 それにな、俺はロリコンではない。何度でも言うぞ、ロリコンではない。

 俺の学年には俺以上にモテる奴等が居る。レベル6発火(パイロ)能力者(キネシス)()(むら) (しょう)。レベル5の(らい)童子(どうじ) (とし)()だ。こいつ等は俺の友達でもある。
 翔は同じ年の男子にしては大人びていて、ちょっと俺様な所がある。俊輝はお調子者だが、周りを良く見ている。俺達3人は良く遊ぶようになった。

 初等部の5、6年と生徒会に入る事になった。翔や俊輝と一緒だ。
 1番能力の高い翔が生徒会長になり、主に翔のフォローをしていた俺が副会長になった。
 5年の半ばに俺はレベル5になっていた。身体が成長して来たからか、能力のレベルが上がったからか分からないが、祖父の修行が厳しくなった。
 本来学園の寮に住むはずが、祖父母の家が学園に近かった為、祖父母の家から通っている。
 まあ、そんな訳で、俺は毎日ヒーヒー言いながら修行して居る訳だ。

 そんな俺が中等部に上がり暫くしたころ、1人の女子生徒に呼び出された。
 普段なら呼び出しに応じたりしないのだが、今回呼び出しに使われた文句が気になった。

「氷室様いきなり呼び出して申し訳ありません」

 それが女子生徒、(たちばな) (あおい)とのファーストコンタクトだった。
 いや、様付けは俺の趣味じゃないから! いつの間にか俺達3人にファンクラブができたんだよ。で、俺達3人に対して様付け&敬語対応。俺は鳥肌が立つから止めて欲しいって遠回りに行ったんだが、聞いてもらえなかった。

「橘 葵さん、だよね。俺に何か用か?」

「氷室様不躾で申し訳ありませんが、前世というのを信じますか?」

 そう、橘さんからの呼び出し文句は『前世を信じますか?』という物だ。
 俺という存在が居るのだから、他に前世を覚えている人が居ても可笑しくはない。だが、どうやって俺に前世があると当たりを着けたのか。

「俺個人としては信じているな。だが如何してだ?」

「氷室様は『超能力者の愛を貴女に』というゲームを御存じですか?」

「いや、申し訳ないけど知らないな」

「そうですか……。お時間取らせて申し訳ありません」

 橘さんはそう言うと走り去ろうとした。だが、小さく「転生者じゃなかったんだ」と言う呟きが聞こえた。

「橘さん待って」

 俺は橘さんの呟きを聞いた瞬間、橘さんの腕を掴んでいた。

「あ、ごめん」

「いえ」

 腕を掴んだ事を謝った俺に、橘さんは1言返すのがやっとの様だ。
 目には涙が湛えられており、今にも零れ落ちそうだ。俺はその顔を見てドキリとして、行動が1泊遅れる。

「氷室様?」

「すまない、俺は前世を信じている」

「え」

「俺には前世の記憶がある。君も、だろう?」

 俺の正直な告白に橘さんは目を丸くし、溜まっていた涙が1筋零れ落ちた。俺はハンカチを取り出して橘さんに渡した。

「すみません」

「いや」

 橘さんがハンカチで目を拭い、しばし沈黙が流れる。

「わ、私にも前世の記憶があります。この世界は私が前世でプレイしていた『超能力者の愛を貴女に』というゲームに酷似しているんです」

「さっきも言っていたな。そのゲームはいったい何なんだ?」

 橘さんからの意外な告白に俺は前世を思い出していた。そう言えばWeb小説にゲームの世界に転生、という物があったな、と。
 橘さんは顔を赤らめながら、少しもじもじしていた。

「その、乙女ゲームなんです!」

 やっと声を出した橘さんは、緊張のせいか少し声が大きくなっていた。そして、誰かに聞こえていないかキョロキョロしだした。

「大丈夫だ、誰にも聞こえていない。此処は余り生徒が近寄らないからな」

「そ、そうですよね」

 俺の言葉に橘さんはホッと息を吐いた。

「それで、乙女ゲームの世界に似ていると言っていたが、どんな内容だ?」

 おれのそんな問いに、橘さんは語り出した。最初は少しどもりながら、段々と滑らかに。

 話を纏めると、超能力のある世界で超能力者が集う学園、愛藍学園高等部2年の1年間が乙女ゲームの舞台だそうだ。
 高等部2年、つまり高校2年になり突如超能力のレベルの上がった少女が、ここ愛藍学園に転校して来る。
 そして翔、俺、俊輝の3人と、他数名の攻略者を攻略していく物語らしい。
 ゲームの俺は超能力のレベルが4で、中々上がらないレベルに苛立っているとか。橘さんは既にレベル5になっている俺に違和感を感じ、勇気を出して呼び出したそうだ。
 ゲームでは俺は氷の王子(プリン)()と呼ばれていたとか、うわー、鳥肌が立つ。
 と、言うか。このまま高等部2年になった時ヒロイン次第で俺、攻略されるの? 目茶苦茶嫌だ。
 俺は『超能力者の愛を貴女に』ってゲームを知らない、知っているのは橘さんだ。橘さんと話しあった結果、橘さんと同盟を組んだ。

 中等部の2年になり、中等部入りして直ぐに生徒会入りしていた俺達は、初等部との仕事量の差に押しつぶされそうになっていた。
 翔と俊輝との話し合いの結果、生徒会の人員を増やす事になった。この時俺は橘さんを推薦していた。
 橘さんとの話し合いを終えた俺は、橘さんを調べてみた。そうしたらレベル5の転移(テレポ)能力者(ーター)である事が分かった。愛藍学園の生徒会は、超能力のレベルが高い者ほど選ばれやすい。レベル5なら十二分に圏内だ。

 中等部の生徒会を橘さんも入れ4人で回していると、あっという間に高等部へ進学していた。
 中等部の生徒会を引退し次の世代に受け継いだ後、俺は念願のレベル6になっていた。祖父曰く「修行はこれからだ!」との事。
 橘さんは、何故か祖母に弟子入りして居る。祖母と橘さんのレベルは同じ。だが経験の差か、祖母の方がテレポートの精度が良い。

 高等部に上がり、橘さんから乙女ゲームのヒロインがどのように転校して来るか聞いた。
 なんでも両親が事故に合い、重傷を負ってしまう。両親の傷を治すには高超能力の治療(ヒー)能力者(リング)を連れて来るしかない。自分も治療(ヒー)能力(リング)でありながら両親の治療ができない。
 能力を上げようと学校で習っていた能力開発をすると、思いが通じたのか超能力のレベルが上がった。ヒロインの治療のお陰で両親は一命を止め、ヒロインの愛藍学園転校が決まった。
 というのがプロローグだそうだ。

 高等部2年に上がり、いよいよヒロインが転校して来るらしい。なんでもレベル3からレベル5に上がった治療(ヒー)能力者(リング)が居るとうわさが流れている。

「氷室様、転校生ですが少し気になる事が……」

「如何したんだ。橘さん」

 転校生、姫野(ひめの) (あい)()が転校して来て直ぐ、俺は橘さんと空き教室で会っていた。

「姫野さんですが、ゲームではレベル4だったはずなんです。それに性格が違います」

「なるほど、俺達と同じ転生者の可能性があると。翔と俊輝も1人で居る時に良く会うと言っていたが」

「恐らくゲームシナリオ通りに動いているのでしょう」

「俺はまだ姫野にあって居ないんだよな」

 そう、俺はまだ姫野とは会っていない。

「その、氷室様はゲームと随分違いますから」

「そうか」

 俺は橘さんの話を聞き、納得した。レベル4で鬱屈としている者とレベル6までのし上がった俺、性格は俺が転生した時点で違いすぎる。

 その後、俺も姫野に会った。何時会ったかというと、生徒会の仕事で忙しく移動している時だ。忙しいから後にしてくれ、と言っても委細構わず纏わり着いて来る。
 このせいでイライラして過ごしていると、翔と俊輝も同じ状態である事に気付いた。

 2人に話を聞くと、2人共同じ状態なのだとか。
 3人で姫野に着いて話し合ってみたが、俺達の言葉は聞かない。ならば同じ女生徒であるファンクラブの会長に言ってもらうのはどうか、という話になった。彼女たちなら統制も取れているし、無暗に攻撃もしないだろう。

 ファンクラブに姫野の対応を任せて2週間、生徒会の扉をノックもなしにいきなり開けて来た者がいた。
 そう、姫野だ。

「聞いて下さい、翔様、清司様、俊輝様。ファンクラブの人達が虐めて来るんです」

「姫野か、扉はノックしろ。話があるなら聞いてやる。扉を閉めろ」

 俺はこの時酷く冷たい声が出ていたと思う。翔と俊樹もいきなり入って来た姫野に驚いているが、それ以上に俺の対応に驚いている。
 『清司様』か、俺はまだあいつにも呼ばれていないんだぞ。

「それで、姫野何の様だ」

「それがですね、御三方のファンクラブ会長が私を虐めるんです」

「ほう」

「それはもう酷いんですよ。教科書やノートを破いたり、私に向かって超能力を使って来るんです」

 ファンクラブからは注意している、と報告を受けている。俺達も様子を見に行ったが、対応は丁寧だった。
 教科書やノートなど、学校の備品を壊す生徒はいないはずだ。
 それより、超能力を向けられた、という言葉にピクリと翔と俊輝が反応する。
 この超能力社会では、超能力を使う事に厳格な制限がある。学校で超能力を使うなど校則違反だ。それを生徒に使ったとなれば、それは犯罪行為でもある。

「生徒会長の火村 翔です。此処最近校内で超能力の不正使用者はいますか? ……はい、居ない。ありがとうございます」

 即座に翔が職員室に確認の電話を入れる。姫野の話が本当であれは、深刻な話なのだ。

「姫野、今確認したが超能力の不正使用者は居ないそうだ」

「そんな事より愛理って呼んでって言ってるじゃないですか、翔様」

「そんな事よりではないな、姫野。人に向けて超能力を使用するという事は犯罪だ」

 此方の話を聞かない姫野に苛立ちが募る。
 翔だけじゃない、俺が声をかけても話を聞かない。

「姫野、教科書とノート、超能力を向けられたのは何処だ?」

「え、清司様? 如何したの?」

「清司と呼ぶな。早く答えろ」

「に、2ーAの教室です」

 俺が冷やかに聞くと、流石におかしいと思ったのか姫野が慌てだす。
 だから清司と呼ぶのをやめろ。

「翔、俊輝ビデオを借りて来る」

「「お、おう」」

 俺は防犯カメラのビデオを借りに早足で職員室に向かい、事情を話しビデオを借りた。

 ビデオを生徒会に持ち帰り姫野を含めて見ていると、姫野の顔が青ざめて行く。
 そう、ビデオに映されていたのは、姫野が自分で自分の教科書やノートを破く姿だった。

「姫野どういう事だ?」

「だ、だって。私がヒロインなのに私の方を向いてくれないんだもん」

「だからと言って、冤罪を擦り付けて良い訳ではない」

 超能力を向けられた。と、簡単に嘘をついて良い事ではない。下手をすれば警察を呼び検証しなければいけないのだ。

「う、もうこんな学校止める。私転校する」

「それは無理だな。高能力者の学び舎はこの学園しかない」

「え? 私にこのままこの学園に通えっていうの!?」

「それがお前の罰になるだろう」

 いきなり転校すると言って来た姫野に、俺は即答で答える。
 罰に関しては、今回の事は俺達と少数の教諭しか知らない。訳を説明すれば、注意で済むだろう。
 散々脅したが、学生間で超能力使用の事件は時々起るのだ。その時の為に監視カメラが付いている。

 そんな事より俺は、しなければいけに事に気が付いた。

「橘さん。少し着いて来てくれないか?」

「え? は、はい」

 空気の様に扱われていた橘さんを連れ、俺は普段2人で会う空き教室に向かった。声はできるだけ穏やかになる様に気を付けた。

 空き教室にたどり着いた俺は、橘さんに向き直った。

「橘さん、いや葵。俺は君が好きだ。付き合ってくれ」

「え?」

「葵、俺の愛は君にある」

「ゲームと同じ言葉……」

 ゲームの清司にイラつきながら、返事を待った。
 ポカンとした葵の顔が次第に赤くなっていく。最終的に耳まで赤くし、俯いてしまった。
 そんな葵の仕種が途轍もなく可愛らしい。

「さっき姫野に『清司』と言われて、今まで我慢していた気持ちが我慢できなくなった。清司と呼んで欲しいのは葵だけなんだ。……返事は?」

「せ、清司様。私も貴方の事が好きです」

「様なんていらない。清司と呼び捨てにしてくれ」

「せ、せい、清司」

 俺は更に真っ赤になっている葵を抱きしめ、頬に手をかけ、上に持ち上げると葵の唇に触れた。
お読みいただきありがとうございます。

プロットを書いていた時より、葵が大人しくなりました。プロット中はもっと気の強いキャラだったはずが……。何故大人しくなった?

この話はこの短編で完結予定です。
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