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生徒会送別会。
箸休め十二品目−リンク45、「真冬の嵐」作戦



臨時生徒会室にてイブキ‐アレシアが明日ここ、ロウダス島を離れる事、実は学園とはロウダス学園ではなくロミリア学園だという事を知り、あらゆる意味で生徒会の面々は脱力感を覚えた。

「か、会長! それは本当なんですか!?」

生徒会補佐で、今回最も苦労したであろうマウレシアが発言する。

「本当です」

「そ、そんな……私のあの努力は一体…………」

マウレシアはガクリとうなだれる。
一日でロウダス島中に張り紙を張るという無理難題を四方八方奔走し、様々な借りを作り、ようやくめどがついたと会長に報告しに来たらこの有様である。
まあ、虚脱感や喪失感に苛まれるのも無理はない。

「わ、我々が今日した仕事は何だったんだあぁぁ!?」

今叫んでいるのは、生徒会に僅か二名しかいない男子の内の一人、ラケルーだ。ちなみにロウダス学園紳士同盟会長でもある。どうでもいいが。

彼は紳士同盟の力を駆使し、学園男子の二割に既に聞き込みをする事に成功した今回三番目の功労者だ。

「無駄だったんでしょ?」

「率直すぎるお言葉!!!」

マウレシアとラケルーに止めを刺したのは、ぶっちゃけ遊んでいたラベンダである。

「会長。何故部外者がいるのですか? というか敵対してませんでしたか?」

この発言をしたのは書記のミニストラ。オルディナと共に脱線しがちな生徒会の面々を正気に戻す役割が与えられている。

「イブキと彼女も親しくなってしまいましたから、仕方ありません」

「それが何の関係があるんですか?」



会長が口を開く。

「明日11時、イブキの送別会をここでします」

「「「「「何だって!!!!!???」」」」」

ノリがいい数人が叫んだ。

会長は爆弾を投下する。

「ちなみにイブキにはコスプレをしてもらいます」

その言葉はこの場に歓喜をもたらした。



どこまでコスプレが見たいんだか知らないが、全員が疲労をものともせずよく働いた。時間がないので荷物は二階に丸投げし、徹底的に掃除をした。

「皆さん大掃除お疲れ様です。では、明日6時に料理担当はここに集合。舞台担当は8時集合。衣装担当も8時です。明日が本番、体に気をつけて下さい。以上、解散!」

終わったのは午後9時。朝から動き回っていた生徒会の面々は、疲労しながらもイブキのコスプレを糧に頑張った。
これで、コスプレがなかったらどうするのだろうか。

そこは抜かりなかった。生徒会の情報網を駆使してサイトと接触。既にイブキに逃れる術はなかったのである。



そして当日を迎える。

料理、舞台、衣装、全てが完璧に整った。

あとは、主賓の到着を待つのみ。

扉が開く。

そこにはいたのは、正に女神と呼ぶに相応しい存在だった。幻想的に光り輝く白銀の腰にまで届く髪、宝石であるルビーにも優るとも劣らない紅い瞳、白雪のような綺麗な肌、未だ幼いながらも美しさを感じさせる容姿、そこに加わる可愛さ、今ですらここまで人を魅了している。将来が末恐ろしいものである。

しかしながらその女神の存在は僅かに薄らいでる。やはり、自らの不確かさが影響しているのだろうか。

だが、薄かったからこそ生徒会の面々は正気を保つ事が出来た。
あるいは正面から見た瞬間、あまりの美しさに呆然としているだけかも知れないが。

そして送別会が始まる。
司会はもちろん副会長オルディナだ。

「これより、アレシアちゃんの送別会を始めます」

盛大な拍手が巻き起こる。イブキは面食らっているようだ。

「ではアレシアちゃん、何か一言」

「……まず、私なんかのためにここまでして頂き感謝しています」

「そんな事ないぞーー!!」
「きゃー!! 可愛いー!!!」

「静粛に、ご静粛に!」

イブキの謙遜というより自虐混じりの言葉に、反対の言葉が集まり、司会が何とか宥める。

「私は……ただの間違いでここに来ましたが、来てよかったです。いい人ばかりです。嬉しいです。最後に……私は頑張って記憶を取り戻したいと思います。ありがとうございました」

「……? 記憶?」
「どういう事?」
「何だろうね?」

「補足致します。アレシアちゃんは記憶喪失です」

「「「「「何だってーーーーー!!!!!???」」」」」

事情を知る四人以外が、叫んだ。まさかここまで知らずにいたのかとイブキと四人も違う意味でびっくりだ。

「まさか、そんな展開だったとは……泣かせるぜ!!!」
「世の中理不尽ね……」
「可哀相だよ……ふぇ〜ん!」

若干混沌となりつつある。ミシェルはこのままだと空気がしみじみとしたままで続いてしまうと判断。予定を変更した。

「イブキ、来なさい」

「え?」

舞台裏(お風呂脱衣所)に連れ込み、着替えさせる。ある秘策をイブキに携えて…………

「い、嫌です! そんな事したくありません!」

「イブキ、彼女らは昨日イブキが帰ってから今日まであなたの為に準備したんですよ? その努力の報酬だと思いなさい」

「……し、しかし喜ぶとは思えません」

「失敗なんてありえないですよ。それともサイトさんに見て貰いますか?」

「な、何でサイトが出て来るんですか!?」

「宿ホスピテ……に泊まってますね?」

「ぐ……」

「サイトさん呼びますか……」

「わ、分かりました!! やります! やりますからサイトを連れて来ないで下さい!!」

「では私は席で待ってます」



送別会はある意味名前に相応しく、しみじみとした空気が流れていた。

その時、会長とイブキが抜け出す。この家はお風呂脱衣所とトイレが一体化しているのでイブキを会長が連れ出しただけだと思われた。

しかし戻って来たのは会長だけ。

「会長、アレシアちゃんはどうしたんですか?」

「副会長、見ていなさい」

そしてイブキが出て来た。メイドさんの姿で。

「「「「「…………………………」」」」」

イブキは恥ずかしさから、その他はあまりにも可愛かったから、理由は違うが会場に静寂が訪れた。

そこに、集音マイクでもないと聞こえないようなか細い声が響いた。

「げ、元気を出して下さい……ご主人様…………」

イブキは今なら羞恥のあまり死ねるだろう。

だが、周りは違った。イブキが顔を真っ赤に染めながらあんな発言をしたのだ。

会場は一気にヒートアップする。会場にいた全員がイブキに殺到。顔から血を流す者も多数いた。

イブキが解放されたのはあれから二時間は経った頃である。

会長はイブキのコスプレの危険性を体に擦り傷、打撲等を受け、体の芯まで理解した。
しかし一番イブキに近かった事もあり、イブキに一番触れて何処か満足気な表情だった。

サイトは窓から様子を見ていたが、そろそろ生徒会の面々が沈静したと判断。扉から堂々と侵入した。

また会場は再加熱した。

サイトの容姿を述べてみよう。
漆黒の髪、全てを飲み込むような黒い眼、少し冷淡そうに見えるも端正な顔立ち。百八十は越える身長。

そして会場はほぼ女性しかいなかった。

この会場が再度沈静化するのに一時間は経過した。

イブキをサイトがからかい、イブキがむきになり反発。そのむきになった顔が嗜虐心を誘い会場がまたも暴走。やっと口にした料理をイブキが褒め、料理担当が感激で泣き出す。
騒がしくも、楽しい時間だっただろう。

これが、イブキのロウダス最後の思い出である。


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