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37、別れと出会い(?)



あれから私は港へ向かっています。

やはり陸路は時間かかりすぎますからね。

しかしティオキアは大きいですねぇ。
いくらあの宮殿が郊外にあるからといっても三時間歩いても港につかないです。あ、でも潮の香りがしますね。
案外近いかも知れません。


近いと言っても約一時間歩き着きました。お昼当たりに出たので日が傾いて来ました。
港には大小様々な船が行ったり来たりしています。
この中のどれかがロウダス島へ行くらしいのですが検討もつきません。
夜までに手掛かりを見付けたいんですが……

仕方ないです。誰かに聞いてみますか。

という訳で適当に人を捕まえて聞いてみたりしたところ、一隻の船に辿り着きました。

その船はロウダス学園自体が学園関係者や訪問者の為に運営している定期船なんだそうです。

今はタラップが架かり、そこに船員が通せん坊をしています。

「この船はロウダス学園に向かいますか?」

「あぁ、向かうよ。一人部屋の一等客室が銀貨十枚、四人部屋の二等客室が銀貨三枚、大部屋の三等客室が銅貨五十枚だ」

うーん、やはり安全面から見て一人部屋ですかね。

「一等客室にします」

私はバックをごそごそと漁り、銀貨を引っ張り出します。……あれ? こんな袋、ありましたっけ? まあ、いいか。
まずは船に乗船しましょう。

船員に銀貨十枚を渡すと代わりに銅板に一等と彫られた物を渡されました。
何でも入ったらこの銅板と引き換えに部屋鍵をくれるんだそうです。

という訳なのでタラップを駆け上がり船内に入ります。
入るとすぐに受付カウンタがあります。あそこできっと交換するんでしょう。

「本日はどういった御用件でしょうか?」

受付カウンタには定番というか綺麗な女性がいました。

私は黙って銅板を差し出します。

「お部屋の鍵ですね、少々お待ち下さい……………お客様は117号室になります。ご利用ありがとうございました」

鍵を手に入れたので近くにあった案内表示板から部屋の場所を突き止め117号室へと進みます。

この船は三段構造で、上から甲板、一等客室と食堂、二等客室、三等客室になっています。

という訳で部屋に入ります。部屋は船の中なので仕方ないですが狭くベッドがあるだけ。トイレは共用、お風呂はなし。そもそもお風呂なんてある場所が少ないですけどね。

「…はふぅ」

やっと一息つけました。何せお昼から歩きっぱなしです。くたくたなのですよ。

ベッドに横になると睡魔が圧倒的な兵力をもって蹂躙します。

う……ね、寝てしま…ま、いいや。





あ、寝てしまいました。部屋についている窓から夜空が見えます。船は順調に航行しているようです。

ちなみに、夜に船を出すのは最近可能になったようです。なんでも海図と羅針盤とかいうのが改良・発展したおかげだとか。

何か夜風にあたりたい気分です。
最近出会いと別れが頻繁にありましたから私の精神は若干脆くなっているみたいです。

邪魔なローブを捨て去り、甲板に出てみます。

満天の夜空には雲一つなくまばゆい星や月がよく見えます。
更に海は暗く何もかもを受け入れてくれそうです……何か、飛び降りれば楽になれそうな気が………

「ちっ!!!」

おっと、ついついやってしまいそうでした。
ぎりぎりで何とか青年に助けられました。

「すみません、助かりました」

あれ? 何か唖然としてますね。どうかしたんでしょうか。

「何でお前……」

彼が呟いた言葉に違和感。

「アレシア、お前生きていたのか……」

「!! 私の事を知っているんですか!?」

まさか知り合い!? 重要な手掛かり!?

「オレを……覚えて、ないのか?」

あう……イエス、なのです。

「知り合いか友達か分かりませんが私、記憶なくしてまして……よかったら、どんな関係か教えてくれませんか?」

「記憶を無くした?」

怪訝な表情をされますが、私だってなりたくてなったんじゃありませんよ。

「はい、すっぱりと」

「へええ……オレ? ……そうだな、恋人?」

…………は? ナンダッテ?

コイビト? ソレハナニ? あ、「来い尾藤」を聞き違えたんですかね?

「誰だよ尾藤って」

それとも「濃い微糖」? 

「それ微糖じゃないだろ」

「故意人」? 

「何をするんだよ?」

「小井眉刀」? 

「どんな薙刀?」



「くくく……真っ赤になってやんの。冗談だよ、じょ・う・だ・ん」

え……? からかわれた?わ、私、手玉に取られちゃいましたか? あ、え。

「な、ななななな何言ってんですかね!? や、やめてください質が悪いですよ!!」

「仕方ねーじゃん。面白いんだもん」

「ぶざけないで下さいっ!!」

こっちは必死なんです!

「本当は……そうだな、命の恩人?」

「? 私があなたを助けたりしたんですか?」

「逆だよ逆。オレがアレシアを助けたんだよ」

そんな事言われても……分からないですし…………

「嘘、じゃないですか? 記憶がないのをいい事に脚色していたりしてませんか?」

「あれ? 数分前に何があったか忘れたの?」

数分前……た、確かに助けられましたね。大変不本意ですが。しかし今はそんな事を聞いてるんじゃなくて。

「そうじゃなくて! 記憶喪失以前にどんな関係だったか聞いているんです!!」



「……お前の敵だよ」

その顔は……真剣そのものです。

瞬間間合いを取りリボルバーを……ローブにいれっぱなしでした。
仕方ないので背中に仕込んだ切れ味の良いナイフを取り出します。

「で、どうするつもりですか?」

慎重に対応しないと……私は主力兵装がないですからね。
勝てるか分かりません。



青年はしばらくこちらを見て……笑い出しました。

「な……だ、騙したんですか!?」

「いやー、おもしろいな」

「まっっったく面白くないですね!」

いらいらします。何か…………もう、疲れました。

「はあー、……結局どうなんですか?」

「は? お前だけ知らないのにオレだけ知ってるなんて嫌だね」

それってつまり、

「教えないつもりですか?」

「ん? そうだけど?」

「……教えてくれたらそれがきっかけで記憶が戻るかも知れないんです。教えて下さい」

「ヤダ」

もう! 何ですかねこの人!! 人が下手に出ているというのに!!

「もういいです! さようなら!!」

むしゃくしゃします。
何か、してはいけない事をしたい気分です。
くそぅ、やけ食いしてやる!!

「…何でついてくるんですか?」

我ながらついてくるなという意思が分かり易い刺々しい雰囲気を発しています。

「自意識過剰だぞ。オレはたまたま一緒に歩いてるだけだ」

イラリ。

私は、強い殺意を覚えました。


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