不惑の木と運試しの箱
クロウウィンの前夜、パイの会を終えたネア達は恙無く解散し、就寝する筈であった。
しかし、そんな折に霧の間にあった小さな小箱に気付いたのはアルテアである。
「ほお…………隠し箱だな」
そう呟き歩み寄ったのは、天板の木に絵を描かれた美しい細工箱だ。
サイドの部分は深い森を表した意匠で彫刻が施され、天板の絵には大きな林檎の木と水色の一角獣が描かれている。
「おや、不惑の木の印だね」
「…………となると、王族の持ち物ですね」
「来た時にはそのような箱があっただろうか」
「うーん、帰り際に現れるような魔術の仕掛けがあるっぽいかな…………」
「隠し箱ということは、中に何かを隠してあるものなのだな…………」
「エーダリア様、不用意に触れませんよう」
わらわらとそちらに歩み寄る男達に、ネアは隣のディノの三つ編みをくいくいっと引っ張った。
「ディノ、不惑の木とは何なのでしょう?」
「ほら、林檎の絵なのだけど実の部分が青く描かれているだろう?これは不惑の木と呼ばれて時々育つ、誘惑を資質とする林檎の亜種なんだ」
「まぁ、実際に青い実を実らせる林檎の木があるのですね?」
「うん。誘惑の系譜の魔術を打ち消す効果があって、呪いなどに効くらしいよ。だからこの不惑の木の絵が描かれた容れ物に入っているものは、解毒剤や、何かを退ける為の祝福であることが多いのだそうだ」
「と言うことは、これはお薬…………?」
ネアは珍しい薬箱だったりするのかなとわくわくしたが、なぜか手を伸ばして箱に触れたアルテアが片眉を持ち上げる。
「…………そうとも言い切れないな。水色の一角獣は誘惑の象徴だ。こいつが咥えているのは青い林檎だろ」
「…………そうなるとこれは、運試しの箱なのだろうか?」
「むむ、運試しの箱?」
「ほら、ネアも前に一緒に試した酒壺みたいなものだよ。あっちは酒席の運試しだけど、運試しの箱は夜会なんかでカード遊びの代わりに開ける箱で、開け方が幾つかあるんだ。で、開け方次第で中身が変わるから、宝物を引けるかどうかを試して勝敗を決めるんだよね」
ノア曰く、この箱には少なくとも十通り以上の開け方があるらしい。
箱の装飾などを読み解き、自分がこれぞと思ったやり方で蓋を開けると、本来の不惑の木印の隠し箱であれば、中から砂糖菓子や飴玉などが転がり出てくる。
開けたものはそれを口に入れ、体に障りのない程度の毒だったり、幸福な気持ちになれる祝福でそれぞれに一喜一憂するのだという。
「でも王族の持ち主だし、中身はもっと良いものっぽいんだよなぁ………」
「ほわ、…………また厄介な遊びを…………」
「まぁ、人間用じゃないからこういうものもね…………」
「…………十通りだな」
「うーん、俺には七通りまでしか分かりませんね」
「ありゃ。僕も十通りかな………」
「……………十三通りあるかな」
魔物達はそれぞれ、箱の開け方を何通りか見付けたようだ。
ノアとアルテアは十通りで一致していたが、最後にディノがさらに三つ増やせば、魔物達はぐりんと振り返る。
「…………ええ?!そんなにある?!」
「…………どれだ?」
とても前のめりになったノアとアルテアの二人に、ディノは一つずつ開け方を説明していった。
エーダリアは目を光らせて真剣に覗き込み、あまり箱に近付き過ぎないようにと呆れたヒルドに襟首を掴まれている。
「…………青い林檎の中に一つ、表面の色の濃淡から光の向きが変わったものがあるだろう?その光の模様は書の系譜の予兆だ。そうなると箱のどこかに書を表すものがある筈だよ」
「…………うわ、あった!ここ木の枝じゃなくて、本の背表紙だ」
「…………もう一つはどこだ?」
「一角獣の足元の菫と、箱の留め金の菫色だね。同じ色のものが四つ揃えば、四の菫になって木の根元に捻れた根が現れる」
四の菫という伝承は、地下の国に入る為の言い伝えで、冬枯れの夜の森で不自然な四輪の菫の花を見付けた場合は、その次に目についた捻れた木の根元を探ると、地下の国への扉があると言われているらしい。
その場合の地下の扉は、主に金鉱脈の妖精や、鉱石の系譜の竜の住処に繋がっており、地下の国の作法に則り試練を乗り越えた者には、幾多もの冬を越えるだけの潤沢な財産が与えられるという。
霧の間の一角で小箱を囲んで美麗な魔物達がわいわいやり、そこには大国の元王子で魔術機関の長がいる。
呆れ顔の美しいシーもおり、何と不思議な光景だろうと、ネアは少しだけおかしくなった。
「……………アスタシアの伝承か。となると、それが本命か?」
「うーんどうかなぁ。試練を乗り越える必要はあるから、単純なものじゃないよね。僕の一押しは、この木の枝の結びの印かな。果実を得られる木の枝に現れる結びの印は、大きな幸福の前兆だからさ」
「安直だな。不惑の木だぞ?」
「でもほら、この木の枝の部分だけ微かに赤い色が混ざってるんだよね。ここは、資質の変化の及ばない理性の象徴ってことでしょ」
(………凄い。面白そうだけど私にはさっぱり分からない…………でも、面白い)
ノアとアルテアの推理合戦に、ネアは目を輝かせた。
エーダリアも大興奮なので、二人は顔を見合わせ魔物達がどのような結論を出すのかを、心ゆくまで見守りたいという気持ちを確かめ合う。
「…………核を砕いて箱そのものの魔術基盤を壊せば、中身は全部手に入るんじゃないのか?」
「お前のその力押しはやめろ…………」
「うわ、それじゃ開ける楽しみが台無しなんだけど!」
ウィリアムは相変わらずばっさりいく派のようで、この意見にはエーダリアも青ざめて首を振っている。
「ディノは、どの開け方が正しいと思いますか?」
「箱を作った者がどのような意図を込めたかによるかもしれないね。真理を紐解くべきか、或いは罠として制作されたものなのか。………前者だと私は思うのだけれど」
「むむむ、そうなると…………」
「これだな」
「あっ、アルテア!」
ノアの声が響き、ぽふんと音がした。
ぽてりと床に落ちたものを見てネアは目を丸くする。
「………フキュフ?!」
目を丸くしてけばけばになっているのは、初代ちびふわではないか。
「…………は!ち、違います!羊さん巻き角ではないちび鹿角の新たなるちびふわ!!」
「ご主人様……………」
「うっわ、合成獣だ……………」
「あらためて、第三者として見るときついな…………」
「フキュフ……………」
それぞれの対応に、新ちびふわは、けばけばになった。
赤紫色の瞳を丸くしてふるふる震えたちびふわに、ネアは慌てて手を伸ばすとその新たなる白もふを抱き上げた。
みっとなったちびふわに、慌ててディノがネアの両肩を掴む。
「ネア、無理をしてはいけないよ?」
「む?愛くるしいちびふわに、無理をするどころか、理性など消し飛びました。このちびふわはこうして抱っこします」
「……………怖くはないんだね?」
「怖くはないですよ。寧ろ、あまりの愛くるしさに胸がきゅんとします」
「……………気に入ったのだね?」
「はい!今夜はこの子を抱っこして寝ます!」
「……………ネアが合成獣に浮気する」
ここでディノは、ぺそりと項垂れた。
ネアはあまりの屈辱に震えているちびふわを抱っこして、この箱の製造者が分かったような気がすると頷いた。
「ディノ、これは……………」
「うん。恐らくは、グレアムだろう」
「それなら、彼ならこれじゃないかな…………」
「あ、ウィリアムさん………?」
ウィリアムはすっと手を伸ばすと、正面の側面にある赤い薔薇の花の部分に指先で触れた。
その直後また、ぼふんと音がした。
そして床に小さな生き物がすてんと落ちる。
しかし今度はちびふわ程小さくもなく、大型犬の子犬くらいの大きさはありそうだ。
「ガウ…………?」
くりっと首を傾げたその生き物を見た途端、ネアはまたしても破顔した。
「赤ちゃん狼さん!!!」
「フキュフー?!」
「ネア、落ち着いて、ウィリアムを抱える為にアルテアを胸元に突っ込むのは禁止だから!」
「ネアが浮気する…………」
ネアは慌てていつもの癖でちびふわを胸元にむぎゅっと押し込み、お尻をぺたんとつけて呆然と床に座り込んだ白い狼の子供姿のウィリアムに両手を差し伸べた。
荒ぶったディノとノアに慌てて止められたが、ウィリアムな子狼を抱き締めると幸せでいっぱいだ。
唐突に混乱の渦に飲み込まれた霧の間で、エーダリアが困惑の眼差しで頼もしい妖精の方を振り返っている。
「……………ヒルド、大変な事になってきた気がするのだが…………」
「ウィリアム様とアルテア様は、今晩はお泊まりでしょうね。…………明日の朝食の準備に、お二人のものを追加しておいた方が良さそうです。エーダリア様、明日の夜明けは晴れでしたでしょうか?」
特に動揺も見せずに涼やかな表情のヒルドに、エーダリアは小さく頷いた。
「あ、ああ。………確か明日は、朝は晴天、午後からは曇りだと聞いているが、クロウウィンとなる夜はまた晴れるそうだ」
「ウィリアム様のかけられた魔術は、衣の妖精のものだと思われます。であれば、明日の夜明けになれば元のお姿に戻れるでしょう」
「…………お前は驚かないのだな」
「おや、先月はリーナが子羊になりましたし、先週はゼベルとロマックも小鳥にされておりますよ。リーエンベルクの施設には気難しい仕掛けも多く、この程度のことは今更ですね」
「……………そ、そんなことがあったのか?」
「この元王宮には、まだ未踏とされる区画が開放され使用されている区画と同じくらいあると言われております。今更でしょう…………」
「…………確かに、ディートリンデの話だとリーエンベルクは現在認識されているより、遥かに広い筈なのだったな…………」
そんなやり取りをしているエーダリア達の隣で、ネアはウィリアムな子狼のむちむちのお腹を撫で回していた。
とろふわな霧竜に比べると、普通に子狼の毛皮な手触りだが、困惑したようにこちらを見上げる白金の瞳の無垢さに胸が熱くなった。
「か、可愛いです!ウィリアムさん、もっとぎゅっと抱っこさせて下さい!」
「………ガウ」
「ネア、まずはアルテアをそこから出そうか」
「ディノ?…………む、なぜにちびふわがここに……………?」
「フキュフ……………」
「ネア、合成獣になってもアルテアはアルテアだから、そんな羨ましいことしちゃ駄目だってば!」
「いつの間にかここに入っていました…………。ついついムグリスディノの癖で………」
「フキュフ!!」
ネアの記憶が少し曖昧なせいか、ちびふわは自分は無実であると小さな前足をたしたしした。
しかし、今の己がどこにいるのかにはたと気付くと、そのままぴしりと固まってしまう。
ふるふるしながら縋るようにネアを見上げたちびふわに、ネアはその小さな頭を指先で撫でてあげた。
「ふふ、ちびふわも甘えたですねぇ。今夜はもふもふまみれで眠れそうです……………」
「ネア、ウィリアムとアルテアには客間を借りてあげるよ?」
「ディノは、私から至高のもふもふを奪うのですか?」
「……………ウィリアムとアルテアなんて…………」
「うわ、ネア、毛皮の依怙贔屓禁止!シルが落ち込むから!!」
「むぐぅ。では、ディノも一緒に眠ればいいのです。ただし、毛皮を堪能せねばなりませんので、ウィリアムさんな狼さんと、ちびふわを間に入れて寝ましょうね」
「………………挟まなくてもいいかな」
「じゃあ、ディノは巣に…」
「ネアが虐待する……………」
べそべそするディノに羽織りものになられつつ、ネアは床に座り込み、膝の上にウィリアムな子狼を抱き上げる。
ずりりっと持ち上げられて後ろ足が開いてしまった破壊力の高い姿に、ネアははぁはぁしながらきゅっと抱き締めた。
「ガウ………………」
「ウィリアムさん、これはきっと、今日はみんなで一緒にぬくぬく寝ましょうと与えられた休暇です。なので………」
「え、ずるい……………」
「なぬ。なぜにへばりついてきたのだ………。さては、ノアもウィリアムさんを抱っこしたくなりましたね?」
「ありゃ、おかしな方に誤解されたぞ……………。ほら、僕もお兄ちゃんだからさ、時には一緒に寝ようかなと…」
「ネイ?」
「ごめんなさい……………」
穏やかに微笑んでこちらを見たヒルドに、ノアは、慌てて両手を持ち上げて首を振った。
ノアが立ち上がったことで、ネアは床に置かれたままになっている不思議な箱に目を止める。
(ディノが前者だと言うならば、…………これは、捻くれた考え方をせずに、こうあるべきだと普通に開けるべき箱。そしてきっと、グレアムさんが作ったものなのだと思う……………)
ディノが、ご主人様の胸元からちびふわなアルテアを引っこ抜き、ウィリアムなちび狼がそろりと膝から下りてゆく。
その隙にネアは、置かれた箱をひょいと取り上げた。
「ネア!」
「ディノ、これを何の影響も受けずに開けることは出来ますか?いいものもいらないという風にすれば…………」
「…………出来ると思うけれど、………ノアベルト、調整を見てくれるかい?」
「……………え、もしかしてネアが開けるの?それなら、…………ええと、選択でって、そっか、アルテアは使えないか………」
「フキュフ…………」
ノアはこちらに戻ってきてくれると、ディノと何やら難しい魔術の話をしていた。
慌てたようにエーダリアが寄ってきて、そんな二人の特等の魔物の話を、目をきらきらさせて聞いている。
「…………よし。…………で、僕はこれだと思うんだよね」
「君も開けてみるのかい?」
「うーん、僕が失敗した時、エーダリア達が面倒見てくれるかなぁ…………」
「任せてくれ。どのような魔術の侵食や、影響の推移があるのかをしっかり見ておくからな!」
「わーお、期待されてる……………」
「エーダリア様……………」
そこでノアは、まずは自分がと、いそいそと箱の一箇所に手をかけた。
その様子を見ながら、ネアがあえて無表情を整えていれば、なぜかぎくりとしたようにこちらを見る。
「え、…………もしかして間違ってると思ってる?」
「あら、ノアは自信がないのですか?」
「……………何で君がそんなに自信満々なんだろうと考えると、凄い不安になってきた…………」
「ノアベルト、頑張ってくれ!」
「…………ねぇ、ヒルド。僕さ、エーダリアには失敗するように応援されてる気がするんだけど………」
「エーダリア様……………」
呆れ顔のヒルドにじろりと見られ、エーダリアは恥じらうように目元を染めた。
しかし、ネアが試しに子狼なウィリアムのお尻を押してエーダリアに近付けてみると、エーダリアは目を輝かせて魔術の仕掛けで子狼になった終焉の魔物を観察し出したではないか。
逆に怯えてしまったのは子狼なウィリアムで、小さいながらにふさふさな尻尾をぴるぴるさせて、慌ててネアの膝の上に避難してくる。
「じゃあ、開けるよ」
「ノアベルト…………」
ノアの言葉に、ディノはこくりと頷いた。
ノアは神妙な顔で箱の林檎の木のとある部分を押し、それから一角獣の足元を押さえて箱を動かす。
すると、かちりと音がして、なぜか箱の底板が開いた。
「……………ありゃ」
ぴらりと落ちてきた紙に、何か文字が書いてある。
ネアとディノ、エーダリアとヒルドも覗き込み、よく見えない、ちびふわとちび狼が伸び上がる。
「ノア、何て書いてあるのですか?」
「……………失格。総じて考え過ぎだって書いてある」
「まぁ、…………このような遊びで言われてしまうと、なかなかにぐさりとくる言葉ですね」
「……………わーお、この箱を作った奴は底意地が悪いぞ……………」
「ふふ、言われてしまったように、ノアが考え過ぎなんですよ。貸してください」
特に劇的な変化もなく、エーダリアからも残念そうに見られてしまい、ノアは悲しげな顔をしてネアに箱を渡してくれた。
ネアは受け取った箱を手に持って一度ディノの方を見ると、ただ普通に手をかけて、オルゴール型の天板をぱかりと開くタイプの箱のごくごく普通の開け方をした。
(良いものも悪いものも、その効果は特に必要としない。だって箱は中にものをしまうものだから。だから普通に箱を開けて、中身を取り出すだけ)
するとどうだろう。
ぱかっと箱が開き、中には素晴らしく美しい結晶石が入っているではないか。
「まぁ、シャンデリアに使われている石でしょうか?とっても綺麗ですね」
「……………わーお」
「ご主人様…………」
ただ普通に箱を開けただけで戦利品を手にしたネアに、ディノに持たれたちびふわなアルテアと、子狼のウィリアムはけばけばになる。
ネアはしんとした部屋を見回し、手に取った結晶石を持ち上げてにっこりと微笑んだ。
「無欲の勝利ですね。箱とは何たるかをこの運試しの箱は伝えてくれたのです」
「ネア、見てご覧。箱の中に何か書いてあるよ」
「むむ、…………箱は箱、総じて所詮は額縁のようなもの。勝者にはこの導きの結晶石を。またの霧の間への導きの灯し火として」
「おや、この石を持っているとこの広間への道が開くようだね」
「まぁ!何て素敵なお土産なのでしょう。であればこれは、みんなで使えるようにどこかに置いておきましょうね」
ネアがそう言えば、エーダリアが驚いたような顔をする。
「ネア、……………いいのか?」
「あら、リーエンベルクはみんなのお家ですから、その中の秘密の広間の鍵は、家族で管理するのが当然でしょう?」
(ん……………?)
ふと、最後の小さな文字が気になった。
「……………我々から祝福を?」
その言葉に首を傾げてディノを見上げると、ディノはふっと水紺色の瞳を細めて微笑んだ。
きっとこの箱のその向こうに、ディノは、かつての大事な友人の面影を見たのだろう。
「それは貰っておいた方が良さそうだね。身につく縁になるというよりも、勝者に贈られる、その場限りの祝福だ。一度魔術の遮蔽を解くから、指先で触れてごらん」
「はい。…………我々ということは、前の犠牲の魔物さんと、……」
「恐らく、…………文言からすると額縁だろう。彼は…………少し困ったところもある魔物だから、もし何かあった場合は、その祝福を盾に出来る。このような仕掛けと褒賞は額縁の気質ではない。たまたまその祝福を取り付けられたグレアムからの、この箱を手にして開けることの出来た者への贈り物だろうね。彼がここに居た頃であれば、グレアムはウィームを庇護していた訳だから」
「ふむ。つまり、ウィームに来てくれるウィームに好意的な誰か、或いはここで過ごすウィームに住む無欲な誰かの為に用意された、グレアムさんからの贈り物なのですね。…………素敵な箱に出会いました!」
何だかとても暖かな気持ちになり、ネアは綺麗な細工箱をそっと撫でた。
「フキュフ!!」
「ガウ…………」
「何の変化もなくて得るものもないとか、最悪なんだけど……………」
挑戦に敗れた魔物達には、また別の感想があるようだ。