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花輪の城と鉱石の呪い




わいわいと楽しく過ごす時間の中で、ネアは、ふと顔を上げた。

エーダリアの誕生日会の中、先程から一席だけ空になったままの席がある。



その座席を見てむむぅと眉を寄せていると、隣の席に移動してきていたノアが一緒に同じ方向を見てくれる。



「ネーア?」

「そう言えば、アルテアさんが行方不明のままなのです…………」

「ありゃ、そう言えばあのまま戻って来なかったなぁ…………」

「仕立ての魔物さんとの交渉をしているのか、身代わり君の類似品の開発にいそしんでいるのでしょうか?」

「うーん。それかもう、巣蜜も食べたし満足したのかもね」

「…………そう言えば、このお城は滅多に使わないと言っていましたし、何かお仕事をしているのかもしれませんね」

「やれやれ、彼がこういう籠り方をしていると、いいことがないんだけれどな………」



こちらの会話に加わり、そう溜め息を吐いたウィリアムに、それはまた悪さをしているということだろうかと、ネアは扉の方を見た。




本日の、エーダリアの誕生日会の会場を提供してくれているのはアルテアなのだが、ネアがディノと連名でエーダリアに贈ったコート付属の身代わり君アップリケを見た後で行方不明になっている。


ネアは、近くに姿が見えるだろうかとノアに来て貰いつつ扉を開けて周囲を窺ってみたのだが、この部屋の近くにはいないようだ。



「そう言えば、ノアはどうしてこのお城がここにあることを知っていたのですか?」



席に戻ると、ネアはずっと気になっていたそんな質問をしてみた。


先程まで、お誕生日と言えばで久し振りにみんなでやってみたカード遊びで使ったカードが、まだテーブルの上に置かれている。


空っぽになったお皿は重ねられ、しゅわりと輝く泡を蓄えた青い盥に浸けられていた。

これはネアの厨房にあったもので、ネアには難しい魔術祝福の強いお皿のお皿洗いまでの間にひとまず浸け置いてあるのだ。


この中だと、ウィリアムとノア、エーダリアにヒルドそしてグラストが洗えるのだが、こちらのお皿を持ち出す際に、ヒルドはお皿は洗わずに戻すようにと言われたのだそうだ。


それが厨房の皿洗い妖精達の拘りなのか、エーダリアのお誕生日だからという心遣いなのかまでは分からない。



(今回も勝てなかったな…………)



カード大会の方では、相変わらずウィリアムが謎のカードを駆使する負けない系の圧倒的な強さを誇り、ネアはまたしても二位だったので再戦を誓ったばかりだ。

グラストは思っていたよりも強く、三位と健闘してエーダリアを呆然とさせていた。



そんなこの部屋で和気藹々と過ごしたその時間の中で、時折ノアはこの城の昔の話をしていた。

なので、アルテアがここを自分の城とする前から知っていたのかなと、ずっと不思議に思っていたのだ。



「ああ、この城を建てた王を滅ぼしたのは僕だからね」


そんなネアの質問に、すいっと声を潜めて、ノアは珍しく魔物らしく笑った。


あまりお祝いの席に相応しい話題ではなさそうだが、ディノやグラスト達と何かを話している様子のエーダリアは気付いた様子はなく、そのまま何があったのかを聞いてみることにする。



「さては、悪い奴らだったのですか?」

「ありゃ。ネアはそう考えるんだね。僕は魔物だし、かなり残忍なこともしているのに?」

「アルテアさんにもそういうところがありますし、それは魔物さんなりに仕方のない性質のようなものだと理解していますが、ノアは、何かを得たりする為に荒ぶると言うよりは、自分の心の中できちんと理由のあることをすると思ったのです」



そう言ったネアに、ノアは小さく微笑んだ。

どこか嬉しそうに瞳を煌めかせ、そのくせ呆れたように肩を竦めてみせる。



「そうだよね、君は僕によく似てるんだった。恰好つけてもお見通しかぁ……………。ここはさ、小さな国だったんだけど王の美意識が強すぎてね………。ウィリアムも良く知ってると思うけど、その王は、死こそ完璧なものであるって考えたみたいで、美しい死者を攫ってきては、この城に幽閉してたんだよね」

「…………………滅ぼして良しと判断しました」


ネアは、またおかしな人がいたようだぞと遠い目になり、現在はアルテアごとネアの持ち物になったこの城の外観が、惚れ惚れするくらいに繊細で美しい理由については都合よく考えないようにした。


ちょっと様子のおかしな人の拘りの城だとは思わず、純粋に美しい建造物だと思って滞在しよう。

特に心霊現象などが起こると困るので、一度ウィリアムに迷子の死者がいないか見回って貰った方がいいかもしれない。



そんなウィリアムは、小さく首を傾げてどこか冷たい微笑みを浮かべた。

これはウィリアムの表情に時折過ぎる終焉の魔物らしい酷薄さで、ネアは戦場では笑っていると言われる終焉の魔物はこんな目をするのだろうかと考えることもある。



「俺も、この国の王は好まなかったな。終焉の領域を荒らすのであれば、久し振りに国ごと滅ぼす案件になるかと懸念していたのを覚えている」

「だよねぇ。僕も、ウィリアムがその内滅ぼすだろうなぁって思ったけど、何かと僕を呼び出して味方にしようとするもんだから、四回目で我慢出来なくなったよね……………」

「まぁ。その独特な趣味のお手伝いをさせようとしたのですか?」

「そうそう。ウィリアムの目を盗んで死者に独自の命を与えたいって言い出してさ。そもそも僕は同じ趣味じゃないし、君のことも好きじゃないよって言ったんだけど、何でなのか都合の悪い話は聞かない人間だったなぁ………」

「ああ。確かに、都合の悪い話は聞こえない種類の人間だったな………」



そこでウィリアムも少し遠い目をしたので、ネアは首を傾げた。


すると、死者を攫うのが国ぐるみの犯行なのかどうかを調べる為にと、ウィリアム自ら潜入調査をしたことがあるらしい。


この国の王は、最初は事故で命を落としたお妃の遺体を愛でることから始め、徐々にその趣向をおかしくしていったのだそうだが、それは悲しみのあまりに心を壊したというよりは、純然たる趣味だったと魔物達は言う。



「ふむ。と言うことは、ウィリアムさんかノアのどちらかは、このお城の中にも詳しいのですか?」

「あ、僕はかなり知ってるよ。最初の召喚の時にはとびきり美しい乙女を紹介するって言われて、二か月滞在したからね。勿体ぶって最後の日の夜に見せられたのが死者だった時、どれだけがっかりしたか………」

「俺の場合は、あくまでも騎士棟住まいだったからな。城内にも警備の為に入ることはあったが、王の個人的な領域までは踏み込んでない」



ということなので、ネアは家主の捜索にはノアを伴うことにした。



また帰りの列車でも収穫に精を出すつもりであるのでそろそろ帰りたいし、呼びかけに応じないのも心配なので、アルテアを探しに行くと皆に伝えると、悲しげな目をした魔物が慌てて駆け寄ってくる。


こちらの魔物は、エーダリアとヒルドが摘んだエーデリアの原種だという花の扱い方について、二人にあれこれ説明してあげる優しい臨時先生になっていたのだ。



「ネア、アルテアなら私が連れて来るよ」

「呼びかけてみても、カードにメッセージを書いてみても、応答がないのです………。ディノなら繋がる回線があったりしますか?」

「おや、それは珍しいね」



先程、呼んでみても返答がないと話した時のノアとウィリアムのように、ディノも驚いた顔をした。


滲むように揺れた水紺の瞳は、不思議に心を鎮静化させる薄暗の中では、光を放つ宝石の泉みたいで堪らなく美しい。



そうして、ネアには分らない魔物か魔術の何かを動かし、ディノは眉を顰めた。


困惑したように首を傾げているので、応答がなかったのだろうか。




「シルハーンの呼びかけにも応じませんか………困りましたね」

「案外、魔術調剤室か、古書の剥離部屋にでも籠ってるんじゃないのかな。その辺りだと精密作業だから不可侵領域だし、カードも開かなさそうだからさ」

「むむ。そのようなお部屋があったりするのですか?」

「そりゃアルテアだし、この城の特性を生かす為の作業をするからこそ、ここに滞在してる筈だからさ」

「そうなると、アルテアさんのことなので事故に遭っていたりする可能性もあるのですね…………」

「ありゃ。ネアの認識だとそうなるんだ…………」



魔物達はまだ、これまでの色々な事件があってもそうは思わないのだろうか。


ネアの言葉に彼等は逆に困惑してしまい、ネアが不思議そうに首を傾げると、なぜかディノは少しだけ落ち込んだようだ。

それまでのアルテアはまるで隙のない魔物だったそうで、ネアの認識が外れてはいないことが少し悲しいのだと言う。



飲み込めないのであれば使い魔の事故率をグラフ化するのも吝かではなかったが、この様子を見ていると、そんな教え方をされたらディノはますます落ち込んでしまいそうだ。



「では、そんな危なっかしい使い魔さんを、ノアと一緒に探してきますね」

「ネア、すまないな」

「いえ、エーダリア様達はまだのんびりしていて下さい。こちらのお城には、あわいのお城らしく、所有者による承認魔術の道というものがあると聞いたので、アルテアさんがいないと帰れませんものね」



最も厄介なのが、その承認魔術なのであった。



この城内を勝手に歩き回って荒らさないように、ネア達は本来この部屋から勝手に出られないという条件付けをされている。


しかし、ネアに限ってはその条件付けの魔術が外れていることを、先程廊下を覗いた際にノアが発見してくれたので、こうしてネアとその同行者くらいであれば部屋からの逃亡が可能だと判明したのだ。


何しろこちらにおわすは使い魔のご主人様なので当然なのだが、アルテアはうっかりそんな事実を忘れて簡易的な魔術制限しか、敷かなかったようなのだ。



「ネアが逃げようとする………」

「脱走ではないので落ち着いて下さいね。道案内の出来るノアは必須なのですし、三人になると承認魔術に弾かれてここに幽閉されてしまうかもしれないそうです。お留守番していて下さいね」

「……………私は、行ってはいけないのかい?」

「じゃあ、シルはムグリスになったら?」

「まぁ…………!」




そこで、二人と一匹はお城の探索に乗り出した。



とは言え、あれだけ厳しく部屋から出ないように言われていたので、言いつけを破ってこそこそ嗅ぎまわっていると思われたら拗ねるかもしれない。


ネアは、きちんとそのあたりの誠意を見せる為にも、アルテアの名を呼びながらうろつくことにした。




「迷子の迷子のアルテアさーん!」



呼び声はお城の建物の構造上とてもよく響いたのだが、アルテアからの返答はない。

ネア達はまず近くにある階段や窓などから周囲を探索し、その状態で応答がないとなるともっと深部まで探しに行かなければいけないのかなと困り顔になる。



「困りましたねぇ」

「キュ…………」

「うーん、これで出て来ないってなると、本気で事故ってる可能性もあるのかぁ」

「お風呂場で転んで倒れていたり、ぎっくり腰で立てなくなっている可能性があるのですね………」

「ネア、アルテアもそこまでか弱くはないと思うよ」

「キュ…………」



出来れば階段を下りて違う階に行ったりはあまりしたくないので、こうして部屋の外で声を張っているところで気付いて出てきて欲しかったのだが。

そう考えてネア達がいよいよ階段を下りようかなと思ったところで、階下のこちらからも扉の見えている部屋から、がこんと何かが落ちるような物音がした。


おやっと顔を見合わせ、お城らしい広い階段を下りてその部屋の前まで行くと、ノアが何とも言えない複雑そうな顔をする。



実をつけた木の絵柄の連続模様が彫り込まれた大きな扉は、これもまた掠れたような墨色の木材と鉱石の間のもので、おとぎ話に出てくる魔法の扉のような趣きではないか。

ネアはひそかに、お気に入りの扉七十六号の名誉を授けることにした。



そして、そんな扉の前でなぜかノアがぎくりとしたように立ち止まる。




「あ、こりゃ事故だ……………」

「ほわ、事故………………」

「強い呪いの気配がするから、ネアは近付かないで僕の後ろにいること。いいね?」

「ノアは大丈夫なのですか?きりんさんもぞうさんも一緒にいるので、必要なら言って下さいね」

「それを出すと、真っ先にアルテアが死にそうだなぁ…………」

「と言うことは、アルテアさんはこの中に………」



ごくりと息を飲み、ネアはノアの背中にぴったりと張り付いた。


念の為にムグリスディノにはしっかり服の中に入っていて貰ったが、押し込まれてしまったもふもふは、ちびこい三つ編みをしゃきんと立てて、自分も戦うというような主張をしていた。



「ネア、僕のお腹に手を回すようにして離れないようにね」

「むむ。分かりました!はぐれたら大変ですものね」

「キュ?!」

「ディノは、潰されないようにもう少し上に出て下さい。それともポケットに隠れますか?」

「キュキュ!」

「あらあら、ここでノアの応援をするのですね」

「……………僕、ちょっと欲張った自分に、罪悪感に苛まれてきた」

「む?」




カチャリと、扉が開く。


まずは合わせを開き、その後で重たい扉をぎぎぎっと押し開けるお城などにありがちな大きな大きな扉なのだが、人間には音を立てずに開くことが難しいその重さを、魔物であるノアはいとも簡単に静かに開けてくれた。



部屋の中は薄暗いようだ。

どこかで嗅いだような水っぽい燻したような不思議な香りがして、ネアはくんくんしてみる。


香料などに向いたものではないが、決して嫌な香りではない。

冷たくてとろりとしていてと考えている内に、魔術インクの匂いだと気付いた。




「ぎゃ!」



そして、するりと開いた扉の向こうに、ネアはあまりにも悲しい光景を見て悲鳴を上げた。

頑張ってぎゅむっと顔を出したムグリスディノも、その部屋で何が起きたのかを見るなりびゃっとけばけばになる。



「……………おい、部屋を出るなと言わなかったか?」



部屋の真ん中で、ぽたぽたと黒い液体を滴らせている誰かがそう言った。



大まかな輪郭は見えるのだが、誰なのか分らないくらいに真っ黒になってしまっており、ネアはいつかの逃げ沼の説明を思い出した。

恐らく、この液体も高位の魔物を汚せるような特殊なものなのだろう。



「ノア、誰だかわからない黒びしゃびしゃした方が、荒ぶっています」

「あーあ、これは鉱物系統の呪いだよね。アルテアは元の色に戻るかなぁ………」

「まぁ、これからはアルテアさんは真っ黒なままなのですか?」

「やめろ。縁起でもない。…………それとお前はもう少し下がれ。闇の系譜の鉱石で、おまけに植物の系譜もある。下手をすると食われるぞ………」



苦々しくそう言ったアルテアに、ふうんとノアが呟く。

ネアは真っ黒魔物にはらはらしてるのだが、特に心配をしている様子はない。




「そっか、呪われたからこの城に引き篭ったんだ。この土地だと呪いの効果は弱められなくても、その上で外部からの侵食を受ける危険はないからね」

「…………アルテアさんは、先程から呪われていたのですか?」

「うーん、症状が出るのに規則や条件があるんじゃないかな。案外そういう呪いは多いんだよ……」



それは例えば、満月の夜だけ狼になる的なものだろうかとネアは首を傾げる。

その動きで髪の毛が一筋、ムグリスディノにぱさりとかかってしまい、ムグリスなディノは突然前が見えなくなったと慌てて小さな手を振り回していた。


そんな婚約者を救出しつつ、ネアは部屋の中の様子にぎくりとする。



そこかしこに黒い羽が並んでいて、アルテアの様子といい、これではまさに呪いの部屋ではないか。



「…………この羽は」

「匂いからすると、インクの羽毛を編んだのか、絵の具の結晶かな。高価だし稀少なものだけど、…………ありゃ、………まさか、呪いまで削って商品化してる?」

「この呪いになったものは、稀少な顔料の材料だ。こっちで手間暇かけずとも絵の具になるなら、願ったり叶ったりだな」

「いや、絵の具まみれになってもそう言えるのはアルテアくらいじゃないかな。僕は絶対に嫌だけど…………」

「ノア、今の使い魔さんの声の感じだと、若干投げやりになっているみたいです。きっと、本当は寂しくて悲しかったに違いありません。ほら、あの黒いびしゃびしゃだと、泣いていても分かりませんしね………」

「キュ………」

「やめろ。妙な印象操作をするな」



ネアはとても不憫になったので、白けものかちびふわになったら、大事になでなでしてあげたい所存であったが、ノアはどこか冷ややかに片手を振る。



「……………うーん、この状態はその絵の具にされかけた鉱石の呪いなんだろうけど、それはつまり、鉱石との殺し合いみたいな状況なんだよね。鉱石にここまで呪われるってことは、アルテアが作ろうとしてたのもかなりえげつない絵の具なんじゃないかな」

「むむ、絵の具にえげつなさがあるのですか?お値段が高いとかでしょうか?」

「どうかなぁ。確かに高値で取り引きされそうだけど、呪いや災厄を描く穢れ絵の絵の具かもしれないよ?」



多くの鉱石は、美しいものを好むので絵画に転じる絵の具にされることは好きだし、育った祝福の正しい在り方として採取されることも満更ではない為、絵の具の材料がここまで荒むことはないのだそうだ。

そこまで不本意な使われ方となると、絵の具そのものまで汚染されるようなものしかないのだという。



「強い呪いだと聞いたのですが、命に別状があったり、痛かったりはしませんか?」

「そういうのはないだろうね。頭から絵の具をかぶったようになるくらい?しかもそんな呪いも、アルテアは売る気満々で絵の具に加工してるしなぁ…………」



その説明にふすんと頷き、ネアは取り込み中の使い魔に声をかけておいた。



「我々はもう半刻程したら帰りたいので、落ち着いたらまたお外まで案内して下さいね」

「うわ、冷た!!」

「しかし、自業自得なようですし、現状してあげられることがありませんものね………。頭からお湯でも注いでみます?」

「いいか、やめろよ。絶対にだ」

「であれば、…………ほこりに食べ……飲んで貰います?」

「あんまり言いたくないけど、その場合この状況ってさ、アルテアの呪いソースがけって感じだよね」

「……………やめておきましょう!」

「キュ!」



ネアは他にも改善策を練ろうとしたのだが、この呪いは使えるからあえてまだ解かないのだと真っ黒な魔物に言われ、渋々お部屋に戻る事にした。

そろそろ反応が出る時間が終わるので、半刻もすれば、元通りになるらしい。



とりあえず無事だと分かったので、ネア達は部屋に帰って誕生日会最後の一大イベントの、エーダリアの持ち上げ振り回し大会をして待っていることにした。



部屋に戻るなり、不意打ちで掴んで持ち上げようとしたものの、持ち上げられずに愕然としたネアに、エーダリアは目を丸くする。


しかし、その隙にノアが持ち上げてしまったので、振り回されたことよりもノアに持ち上げられたことに焦っているエーダリアという、とてもおめでたいものが拝見出来た。




その後、予測通りにアルテアは半刻程で呪いの反応が現れなくなったらしい。


無事に迎えに来てくれて、もう二度と来るなよと門の外まで送ってくれた使い魔に、ネアは試作段階で形がイマイチだったりしたものを貰ってあった、身代わり君難あり品をたっぷり渡しておいた。



呪いは呪いなので、商品利用に満足してもういいやと思ったら、それで絵の具まみれ地獄を脱出出来るかもしれない。





その日の夜に、アルテアのカードに返信があった。

さすがに就寝時に絵の具まみれにされるのはとても嫌なので、それまでに絵の具の採取を終えて身代わり君を使ったのだとか。

その結果無事に呪いは解けたようで、ネアもほっとする。



ネアは、全身を絵の具まみれにされたくないので、今後は特に鉱石の扱いには気を付けようと気持ちを引き締めることにした。


だが、帰りの列車の停車駅でも張り切って珍しい鉱石をたくさん拾ってしまったので、その夜は、同じ罪を犯したエーダリアと共に、宝石の系譜でもあるヒルドに荒ぶっている鉱石はないかどうか調べて貰ったのだった。



アルテアのあわいのお城では、一輪の美しい鉱石の花を摘んで帰った。

ネアが通りかかったところ丁度ぽきんと折れたので、有り難く頂戴してある。


ウィリアムからは、千年に一度ぐらいしか見かけないとても珍しい終焉地の花の結晶なのでと、危なくないように特別に耐性をつけて貰った。

どんな効果があるものなのかはこれからだが、一緒にいたディノが止めなかったので持っていてもいいものなのだろう。


そんな報告をするとアルテアはとても荒ぶったが、あのお城は間接的にネアのものでもあるので、その収穫がご主人様の財産になるのは致し方ないことである。








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