水仙と石弓の村
その村には、傭兵などに重用される石弓の民が暮らしていた。
物静かだが芯が強く、彼らの弓術は正確で研ぎ澄まされた妙技とされる。
小柄だが持久力に長けた肉体を持ち、嵐の中でも標的がやってくるのを静かに待ち続けられるような、辛抱強さには定評があった。
特に接点はなかったが、一度、彼らと暮らしてみたいとウィリアムも思っていた程だ。
けれどももう、そこには生き残った者達は誰もいないのだ。
百人あまりの小規模な氏族ではあったものの、彼等も、敵対する部族に滅ぼされるなら兎も角、まさか古くからの掟を破ったことで疫病に滅ぼされるとは思ってもいなかっただろう。
とは言え、そういうものなのだ。
掟や伝承にはそれなりの意味があり、残されたものには残さねばならなかった理由がある。
人知れずに障る魔術も多いのだが、今回のものは激甚な反応を示した荒ぶる災いであったらしい。
「……………もう終わったのか」
「ええ。…………まだこの疫病が残っているとは思いませんでした。これは、何世代か前の水仙妖精殺しの疫病ですね。どこかの時代で、その時代の水仙の妖精の信頼を得た花の魔術師が手放させた、悍ましい疫病の一つですよ」
「……………あれを止めたのは、エーヴァルトだったか。ウィームの王だった男だ。王子だった頃に五十年ほどかけて世界を旅し、様々な者達の心を捉えた稀有な人間の一人」
ウィリアムは遠くから見かけたことがあるくらいだが、その人間は人外者との関わりに於いては特等とされた有名な人間だ。
あの頃のウィーム王家の者達が総じて魔物や妖精、精霊に竜達の好む資質を備えていたということもあるが、その中でもエーヴァルトと、その祖父であった男は群を抜いて話題に上がる。
(アルテアが、珍しく気に入っていた人間だったな………………)
グレアムもウィームの統括をしていたが、彼が気に入っていたのはそのエーヴァルトの祖父の方であった。
その王の下で魔術師として仕えていた程に心を許し、同じようにその王に惹かれて滞在していたエヴァと出会ったのだ。
小高い丘から見下ろす集落は、静まり返っている。
その災いが花開いた時、ここには恐怖に満ちた絶叫と怒号が飛び交い、誰よりも早く駆けつけたローンはこの集落の一つしかない入り口を閉ざした。
きっと、誰もがここから逃げ出そうと、閉ざされた入り口に取り縋り悲鳴を上げただろう。
呪詛の声や懇願のその全てを受け止め、ローンはここを強固な結界で封鎖した。
別の惨状で鳥籠の気配を探っていたウィリアムが駆け付けたのはその後で、ローンだけでは内側から壊される可能性のある結界を覆い、共に全ての物音が途絶えるまでここに立っていた。
やがて生き物達が死に絶え、ローンが疫病の系譜の者達を引き連れて集落に入ると、ここにだけ広がったその疫病が活動を止めるまではと、ウィリアムはこの地を離れ疫病封じの魔術を整えることになった。
折良くウィームでは疫病祭りとなっていたので、ウィリアムは初めて疫病封じのケーキを食べた。
そしてその後で、更に疫病除けの呪いや魔術を編み、特殊な鳥籠を作ったのだ。
その鳥籠は今、全てが絶えたこの集落の跡地を覆っている。
今回の鳥籠は、生者の為のものではない。
この土地で目を覚ます、疫病で死んだ死者を閉じ込める為のものだ。
ここに暮らした人間達は、魔術の理に応じて妖精の国にある、妖精との約束を破った者達が落とされる罪人の土地に行くだろう。
最も重いとされる罪を犯した彼等は、死者の国にすら行けないのだ。
「…………その花の魔術師が、以降の水仙の妖精達からこの魔術を奪ってくれて、どれだけ助かったことか…………」
「ああ。古い呪いは強くなるというが、ここまでの強い呪いを残すのはスリジエの系譜と水仙くらいのものだ。薔薇も祟るが標的以外の者にはあまり悪さをしないからな…………」
「もしかして、ロクサーヌ様に呪われたことが…………」
「はは、あの時は自分で片目を抉ることになったよ。薔薇もやはり恐ろしいか」
心を踏み躙られたのだと、恋人である自分を見上げもしないその目など必要ないだろうと、涙を流しこの身を詰った紅薔薇のシーを思い出す。
あの時は何がいけなかったのかをよく理解出来ていなかったが、今であればその理由は明白であった。
彼女は、共に過ごすその時間を、少しでも無駄にしたくないと眼差しを向ける相手ではなかったのだ。
心が伴わないからこそ、こちらの振る舞いにも惰性が滲む。
ロクサーヌは、愛情を司る者として、その不誠実さを感じ取っていたのだろう。
今であれば、その程度の感情であれば彼女に失礼だと手を伸ばさなかっただろうか。
とは言えロクサーヌは紅薔薇のシーだ。
ウィリアムがそう思ったとしても、彼女は自身の欲するものを容赦なく掴み取ったのかもしれない。
がらんと、風に揺れて崩れ落ちる家畜小屋がある。
そこで飼われていたという家畜達も、今回の呪いの犠牲となった。
大人達だけでなく、子供達も。
飼われていた獣達や集落で暮らしていた生き物達、それどころか草木に派生した妖精や虫達までも。
その全てが今、清廉な花を満開にした水仙の苗床となり集落の全ては一面の水仙に覆われていた。
そこに在る全ての命を喰らい尽くすまで、水仙は芽吹き咲き続ける。
全ての命を喰らい尽くしたこの水仙は、後はもう夕暮れと同時に枯れ落ち消え失せるばかりなのだが、この呪いに冒された者が土地の外に逃げ出すと、その足跡の全てに呪いの種を残していってしまう。
動けば動くだけ呪いを広げ、かつては一つの国を滅ぼしたこともある恐ろしい呪いであった。
「…………なぜ、大切なことを忘れてしまったんだろうな」
「人間達の寿命は短いですからね。かつて、水仙のシーを殺す時に、仲間達と交わした約束を、いつの間にか忘れてしまったんでしょう。一族は栄えたかもしれないが、最初の約束を残した男はとうに生まれ変わってるでしょうに…………」
そう呟くローンに、最も重い罪を犯した筈の最初の誰かは、この惨状を知らずに死ねたのだなとあらためて考える。
水仙殺しの呪いは、かつて水仙のシーだけが持っていた恐ろしい呪毒を得る為に何度か発現した災厄である。
以前の水仙のシー達は、愛する者の裏切りを罰する為にだけ使う、特殊な毒を作ることが出来た。
けれどもその毒は、持ち主のシーの血と混ぜ合わせて土地に染み込ませると、その土地に生まれる者達を守り栄えさせるという不思議な力があったのだ。
まだ人間達が貧しく弱かった時代に、あえて水仙のシーの心を奪ってから裏切り、毒を作ったシーを殺してその呪法を行なった人間の王がいた。
その国はとても栄えたが、殺した水仙のシーを祀り鎮めることを忘れてしまい、この水仙殺しの呪いで一晩で滅びた。
その時には国の外に逃げ出す者達が多くおり、ウィリアムは三ヶ月の間一睡もせずにその足跡となった土地を清めて回った。
恐ろしい呪いに冒された同胞を助けただけの心優しい者達も、たまたま通り道に暮らしていた人々や獣達も、その全てが水仙に飲み込まれたあの時の惨状を思い出すと、今でも憂鬱な気持ちになる。
それだけのことがあっても尚、水仙殺しの呪いを恐れずにその禁術に手を出すものがいたのだろう。
とある人間の魔術師が、このままではその呪法目当てで狙われることもあるだろうと水仙の妖精達にかけあい、秘伝の毒のレシピを捨てさせるまで、何度かこのような事件はあった。
どれだけ長く、かつて謀殺した水仙のシーを祀り続けていたことか、ここは、その最後の呪いが猛威を振るった土地なのだった。
「…………これから、地の底から妖精の番人達が死者を迎えに来ます。…………ウィリアム様……」
何かを言いかけ、そちらを見て苦笑したウィリアムに、ローンは小さく首を振ると深く一礼した。
「疫病の閉じ込め、ご苦労だったな。後はこちらの仕事だ。…………帰って、ゆっくりと休むといい。他の疫病の系譜の者達にも宜しく伝えてくれ」
「………………ええ。今回は、ギード様は?」
「いや、まだ見かけていないが、…………あまりこれから起こることを見せたくはないな。彼が来る前に終わってしまえばいいんだが……………」
漆黒のローブを翻し、ローンが帰って行くと、あたりはまた静けさに包まれた。
「さて、…………」
そう呟き、夕暮れが無人の集落を翳らせるのを見届けた。
みるみる枯れてゆく水仙の下から、水仙の呪いに殺された住民達が青白く光る死者になって立ち上がるのを無言で見守る。
ざわりと影が揺れ、あちこちから死者の行列に連なる者達が顔を上げた。
「やれやれ、こりゃ水仙の呪いですか」
「おお、まだこんな呪いが残っていたのか」
「…………あら、これを見るのは久し振りねぇ」
死の精霊や死体喰らいの妖精、虐殺の魔物に亡骸運びの魔物まで。
今回の仕事にあたり、先に現場に出た疫病の者達ではない、それ以外の終焉の系譜の者達がざわざわと立ち上がり、途方に暮れて立ち尽くしている死者達を見守る。
「これは水仙殺しの呪いだ。すぐに、妖精の国から咎人達を捕まえる為に妖精鯨が来るだろう。呪いに殺されなかった者達も少しだがいるようだ。………そちらの死者達を死者の門へ」
そう命じれば、死者の行列は水仙の妖精達の取り分から溢れた死者を探し、集落に下りて行った。
「……………普通の死者も混ざっているんだな」
ふいに、後ろからそう声をかけられて、ウィリアムは振り返る。
小さく溜息を吐き、思っていたよりも早く訪れてしまった友人の顔を見た。
「まだ早いだろう。…………もっと後で来れば良かったのに」
「絶望なら、最初の水仙が芽吹いた時からずっと舞い散っている。…………これからの方が酷いだろうが、目を覆うことはしないつもりだ」
「さぼってしまえば良かったんだ。俺と違って、ギードは必ずここに来なければいけないという訳でもなかっただろう…………」
そう言えば、ギードは小さく微笑んだ。
大振りな耳飾りが風に揺れ、ウィームの疫病祭りで聞いたような澄んだ音を立てる。
「来なければいけなかったさ。ここで、あんたが仕事をしているんだ」
「……………来てくれて有難うと言うべきかな」
「それよりも、来るのが遅いだとか、待っていたと言ってくれた方が覚悟が決まる」
「はは、覚悟か…………」
集落には、悲鳴をあげて逃げ惑う死者達がいる。
幼い子供達はまだ自分が死んだことが理解出来ず、なぜ側にいる両親達から引き離されて死者の行列に捕まるのかが分からないのだろう。
他にも、引き離された夫婦や、家族の中でたった一人だけ連れて行かれる少年など。
彼等はあまりの苦しみに自ら命を断ち、或いはこの呪いの顛末を知っていた誰かが呪いに喰い殺される前に殺してやった者達だ。
水仙に殺されなかったこの少ない者達だけは、その呪いを逃れて死者の国に行く事が出来る。
オオオと、鈍く低い鳴き声が聞こえた。
集落を囲んでいた岩山が銀色に光り、光の粒子が凝ったような巨大な鯨が現れる。
「…………現れたな」
「妖精の番人達か。久し振りに見た」
「妖精の王族を殺し、その妖精の呪いに殺された死者だけを迎えに来る妖精だ。その咎人が十人以上いないと出現しないからな。俺でも滅多に見ないよ」
光の尾を引いて、妖精鯨が水仙殺しの呪いに殺された死者達を飲み込んでゆく。
恐怖に逃げ惑う者や、この先の己の運命を悟ったのか立ち尽くして覚悟を固めた者。
小さな子供達を守るようにして、必死に抱きしめている親達。
彼等は妖精の管理する咎人の土地に収監され、妖精の国に住む怪物達の餌にされたり、奴隷として永劫に働かされることになる。
これは、特定の回避手段を講じずにシーを長く禁術に使った者達に課される罰で、他にも妖精の伴侶を裏切り殺した者や、生まれたばかりの妖精を数多く虐殺した者達が連れて行かれる土地だ。
逃れる手段はあるのだが、それでもこうして連れて行かれる者は少なくない。
あの鯨は、その咎人達の迎えの番人なのだ。
「こちら側の者達が誤って飲み込まれるとまずい。俺もそろそろ行かなければだ」
「ああ。………そう言えば、明日の夜は空いてるか?」
「ああ。ここは今晩で終わるし、どこかで戦が始まっても数時間くらいなら自由になる」
「じゃあ、飲みにでもゆこう。シルハーンの誕生日の贈り物について相談もしたいんだ」
「ああ、そんな季節だったな」
そう微笑みを交わし、ウィリアムはどこかほっとして軍帽を深くかぶり直した。
明日はギードと息抜きをするのだと思えば、目の前の凄惨な光景に歩み寄る苦痛も少しは減るというものだ。
(ああ、…………)
悲鳴が上がり、死者達が逃げ惑う。
あまりの恐怖に心が壊れてしまったものか、既に表情を無くして蹲る子供や、我が子を守ろうと死者となっても必死に戦おうとしている父親がいる。
彼等は一様に、ウィリアムの姿を見ると微かな希望に瞳を揺らすのだ。
死者の国に行けば、微かな安堵や平安が得られることを彼等は知っている。
もう死んでしまったのなら、死者の国で過ごすのは吝かではないだろう。
そこには街があり、集落があり、死者達は生前と比較的変わらない生活を送れる。
死者の日に戻って来る家族から、そのようなことは聞いているに違いない。
であれば、せめてそこに安寧を見出そうと表情を緩めたのに、その最後の希望すら奪われる者達が殆どで。
「…………そちらの子供は連れて行くが、お前は向こう側だ」
呆然とする父親から娘を奪い、抱き合う夫婦を引き裂く。
赤子を抱いた妻子を妖精の国に落とされ、一人先に命を絶ってしまった夫は何を思うのだろう。
どこまでも、どこまでも。
ここにあるのは、苦痛と絶望と悲しみと。
「ああ、有難い死者の王だ。お前達をこの手で殺した甲斐があった。…………安心して死者の国に行くんだよ」
そう涙ながらに微笑み、孫達の背中を押した老人がいた。
ウィリアムがそちらを見ると、彼は涙を零して深々と頭を下げる。
「娘と婿は間に合わず、救ってやれなかった。どうか、孫達を宜しくお願いします」
顔を上げてそう言った老人に頷いてやり、泣いてそちらに戻ろうとする子供達を死者の行列に引き入れた。
子供達が伸ばした手の先で、老人は鯨に飲まれる。
ゴーンと、どこかで遠い鎮魂の鐘が鳴る。
この鐘の音がどこから聞こえてくるものか、ウィリアム自身にもまだよく分かってはいないが、死者の門が開くとき、死者の国にある教会や聖堂のどこかと繋がるのだろうか。
僅かばかりのこちらの領域の死者達がぞろぞろとその中に引き摺り込まれてゆくと、残った死者達はあっという間に妖精の番人に飲み込まれた。
鯨は最後に一声鳴くと、巨体をくねらせて大きな山に飛び込むようにして姿を消す。
そしてまた、山間の集落の跡地には耳が痛くなるような静けさが残った。
誰もいなくなり、枯れた水仙だけが残る集落を一つ一つ見て回り、隠れて残っている死者がいないかを確かめると、ウィリアムは深く息を吐いた。
振り返れば、ギードはもう立ち去ったようだ。
(…………俺に声をかけてくれる為だけに、ここに来たのかもしれないな)
そう思うと、また少し胸の重苦しさが晴れる。
踏み荒らされ地面に落ちて千切れた子供のぬいぐるみを見下ろし、役目を終えた死者の行列に解散を告げた。
帽子を脱ぎ、風に翻った白いケープを解いて人間の街に紛れられるような擬態に切り替える。
目を閉じて、耳の奥に残った絶叫を削ぎ落とそうと空を仰いだ。
暫くの間誰もいなくなった集落跡に降り注ぐ月光を浴びてから、一番近くにある大きな人間の街に転移した。
その夜のことは、あまりよく覚えていない。
「ウィリアムさんを見付けました!」
背後から柔らかな声をかけられ、ウィリアムははっとする。
いつの間にか、周囲は夜が明けていた。
あの後一晩かけて商人の街の繁華街をあてもなく彷徨い、賑やかに騒ぐ商人達と酒を飲み交わしたことまでは覚えていた。
どうやらその後、いつもの砂漠のテントに帰り、夜が明けるなりリーエンベルクに来てしまったらしいと、ウィリアムは自身の無意識の行動に小さく呻いた。
「…………ウィリアムさん、もう少しだけリーエンベルクにいられますか?」
「…………ん?……ああ。情けないな、少しだけ厄介な仕事があって、……………その後に俺は、無意識にここに来たらしい」
「ふふ、それならその無意識のお疲れが癒されるくらいの間だけでも、ここに居れば良いのではないでしょうか。実は、以前にディノと狩りに行った時に出会った梟の魔物さんから、美味しい果物がたくさん届いたのです。こやつを食べたいので、一緒に食べてくれる方を募集中でしたので、ウィリアムさんを見付けて喜んでしまいました」
「…………梟の魔物から?」
「ええ。時々送ってくれるんです。パイナップルを切りたいのですが、一人だと食べ切れませんし、ディノはまだお風呂中なのでこの会食堂に誰かいないのかなと思って来たところだったんですよ!」
清廉な窓の向こうの緑を映し、鳩羽色の瞳を輝かせてネアはそう微笑む。
「刺激物ではないんだな?」
悪戯っぽくそう尋ねて微笑みかけると、ネアは嬉しそうに頷いた。
「はい!アルテアさんにカードで確認しました。…………そして、ウィリアムさんなら、このしっかりとしたパイナップルを、ごとんと包丁で切れますか?」
「ああ、勿論」
おずおずと差し出されたパイナップルに、シルハーンが入浴を終えるまで我慢出来ずにそれを抱えてここまで来てしまったネアを思ってくすりと笑った。
「任せてくれ。一緒に食べよう」
「ウィリアムさんがここにいてくれて、私は幸せ者です!」
早朝の光に照らされた会食堂で、二人で新鮮なパイナップルを食べた。
ネアが会食堂の扉から繋いだ厨房で、二人であれこれ話していると、やがて入浴を終えたシルハーンが慌てたようにやって来る。
その直後、どうやらエーダリアの執務室のカーテンに何かをしたらしいノアベルトな狐が逃げて来ると、すぐさま追いかけてきたヒルドに連れて行かれた。
水仙だけが揺れていたあの場所を思い出し、小さく苦笑した。
ここはもう、耳が痛くなる程の静寂には包まれていない。
ただ、優しい朝の光が揺れているだけだった。