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失踪と足跡




ネアが、海竜の戦に巻き込まれた。

そんな一報は、リーエンベルクに戻ってきたディノからみんなに伝えられた。



すぐにエーダリアがダリルに連絡を取り、青い顔をしたヒルドが少しだけよろめく。

グラストは一度深く頷くと、リーエンベルクの警備や外客対応などは騎士達に任せておいてくれとヒルドの背中に手を当てて、微笑んで部屋を出た。



「……………ゼノーシュ?」


ややあって、視線を持ち上げたヒルドがそう名前を呼ぶ。

僕は頷いて、グラストに言われたことをそんなヒルドに伝えた。



「僕もここにいるの。でも、グラストに何かがあったらそっちに行くね」

「……………助かります。………あなたの力も、助けになるかもしれませんから」

「うん。僕も協力する。でもね、ヒルド、ネアなら大丈夫だと思うよ。僕にも、いっぱいお菓子を備えてあるから、戦いに参加してもお腹が空かない筈だって話してくれたから」

「………………ええ、………………ええ。そうですね」



項垂れるディノには、ノアベルトがついているようだ。

すぐにウィリアムも呼ばれ、戻ってきたエーダリアから、ダリルは本来の候補者であったウォルターと話をしていると聞かされた。


ウォルターは、時間になっても召喚がかからなかったので、かなり慌てていたそうだ。

一緒に組む筈だった夜海の竜は、直前に決まった相棒だったらしい。

ネアの会の会員だったようで、その竜はネアが巻き込まれたと知って憤然とし、海竜達に抗議に行ったそうだ。



「シルハーン、……………ネアから連絡は?」

「……………先程、カードに連絡があったよ。あの子が組む相手は、海嵐の精霊王だそうだ」

「……………ゾーイですか」



そう呟き考え込んだウィリアムの隣で、ノアベルトが小さく唸って首を傾げている。

みんなは会食堂のテーブルにつき、家事妖精がすぐに飲み物と軽食を運んで来てくれた。



窓の外はいい天気だ。

夏至祭も終わって、ウィームも夏らしい色に変わってきている。

庭には色とりどりの花が咲いていて、その花々のあちこちに妖精や精霊達がいた。



(ネアは、お腹空いてないかな…………)



「精霊王なら、ネアの助けになるかな?」



ネアも戦うだろうから、一緒に戦えるひとと組むのがいいと思って聞いてみると、ノアベルトは何だか難しい顔をする。

ウィリアムは、影の国に続く離宮を襲う計画はまだ立てない方がいいと思う。



「……………ゾーイなら、割と柔軟な奴だし、能力的には問題ないから守り手としては手堅いと思うけど。うーん、ただなぁ。…………シル、ネアとゾーイの接点はあの日くらいだよね?」

「…………私が知る限りでは、あの日だけだろう。名前を知ってはいるが、一方的なものだ。面識がある程ではない。………………あの子を怖がらせたりしないだろうか…………」

「その精霊は、…………ネア様とは相性が良さそうなのですか?」



ヒルドのその言葉に、みんなが首を傾げている。

名前しか知らない精霊だったけれど、あまり気が合わなさそうな感じなのかもしれない。



暫く唸った後に答えたのはノアベルトだった。

ディノと同じように飲み物には手をつけていなくて、落ち着かない様子で最初にごくごくと飲んでしまったウィリアムとは対照的だ。



「ゾーイはさ、…………何だろう上手く言えないけど、雰囲気だけなら少しアルテアっぽいかもね。その代り、アルテアに比べるとがさつっていうか、…………精霊だしちょっと頭が固いところもあるかな。例えば、僕やシルが予めネアを頼むねって言っておけば安心して任せられるだろうけど、初対面だと人間には冷淡で横暴かもしれない。彼は、あまり人間と好んで関わるような精霊じゃないんだ」

「……………成程。せめて精霊ではなく竜であれば、竜の媚薬の効果が期待できたのですが………」

「だが、媚薬の効果が強く出過ぎても厄介だと思うぞ。…………………だが、精霊か……………」

「精霊にネアを守れるのかな………」



みんなが一度黙り込んでしまったので、キャラメル風味の冷たい紅茶を飲みながら、海嵐の精霊についてと、ネアとアルテアの出会いについてを考えてみた。



(アルテアのことも、最初に捕まえちゃったもんなぁ……………)



そのことについて、ダリルは未だに不思議がっているみたいだ。

グラストは、最初から仲良くなると思っていたと笑って教えてくれて、僕は、やっぱりグラストは凄いなぁと思って嬉しくなった。

グラストがそう言うのだから、その精霊も、アルテアみたいに仲良くなれるかもしれない。



「…………少ししたら、ネアに懐くんじゃないかな。アルテアに聞いてみる?」

「確かに、ネアなら懐かせそうだな…………」



エーダリアもそう呟いたので、ディノとウィリアムは顔を見合わせている。

不安は減るかもしれないけれど、きっとそれも嫌なのだ。

精霊を警戒する気持ちはとても良く分るので、僕も頷いておく。

もしグラストが精霊と仲良くなったりして、それも二人で旅をしたりしたら、その精霊は絶対にどこかに埋めてこないといけない。


精霊は絶対に駄目だ。



(でも、ネアが安全に過ごせるように、今は懐かせた方がいいと思うな…………)




「影の国そのものの、治安などはどうなのでしょう?」


そう言ったヒルドに、ディノは僅かに瞳を眇めた。

飲み物には手をつけていなくて、ネアのカードをずっと手に持っている。

何が書いてあるのかなと思って覗いてみたら、大好きなディノという文字が見えた。



その文字を指先で撫で、ディノは悲しそうな目で唇の端を少しだけ持ち上げた。

こんな時だけど、その言葉が嬉しいのは分かる気がする。



「私は、滅多に行かない土地だね。…………前の代の世界の中で、魔術が潤沢であったり栄えていたりした土地の残骸が、海に飲み込まれたその底であわいの国として再生したところなんだ。私があまりあちら側を訪れると、地上との均衡が崩れてしまう。それに、今は海竜の戦を始めてしまったことで門が閉じているからね……………」



ディノの説明に、エーダリアは目を丸くしていた。

前の世界と呟いてノアベルトの方を見てから、ノアベルトに頷いて貰って今度はヒルドの方を見ている。


その様子を見て少しだけ和んだのか、ノアベルトがやっと飲み物を飲んだ。



「俺も、シルハーンと同じように、あまり訪れられない土地ですね。確か、アルテアが何度か訪れていましたよね?」

「海竜の戦の後で、何度か入ってみたとは話していたね。ただし、あわいの制限があるからかなり擬態の精度を上げる必要があったそうだよ」

「僕も三回くらいは行ったかな。でも、入り口からあまり離れないようにしていたし、街しか知らないんだ。………あっち側のあわいはね、本来は管理者から招かれないと入れないんだよねぇ。その管理者が、海の底のあわいへの扉を任されてる海竜と海の精霊なんだけど、彼等に招かれて訪れても、あっち側にいると力を振るい難いみたいだよ」



(僕も、美味しいものがあるかなと思って一度視てみたことがあるけど、あんまりよく見えなかったな…………)



ノアベルトの説明を聞いて、色々な規則があるのだなと考えて心配になった。


海の底の影の国には、ウィリアムも滅多に行かないそうだ。

あの国の人々は、死んでしまうと長い巡礼の旅をして、地上にある死者の門までやって来る。

それくらいにかなり特殊な土地であるらしい。



「死者達には厳しい土地だ。その巡礼の旅でまずは地上への扉に辿り着かなければいけないし、そこからも死者の門までの旅が続く。魔術が潤沢な土地を経由して、魂がひび割れないようにしながら、俺の管轄下に入るまでは三年はかかる」

「そんなにかかるものなのか………」

「ああ。特に、海の生き物達は死者を喰らったり、奴隷や人形として使う事も多いからな。死者の門まで辿り着けるのは、半数くらいなんだ」



だから人間達は、海で死ぬことを厭うのかもしれない。

海を愛する船乗りですら、海の生き物に囚われることを恐れ、まじないなどで自衛することが多い。

けれども、そんな恐ろしさを孕みつつも、人間を魅せ続けるのも海なのだとは思う。



もしグラストが、そんな海の底のあわいの国に招かれてしまったらどうしよう。

そういう誘いがあったら、絶対に応じないようにと言っておかなくちゃと考えながら、キャラメル紅茶を注ぎ足した。



(海の生き物と仲良くなるのも禁止する!)


アルテアが来たら、もう少しそんな影の国のことを尋ねてみよう。

もし、影の国に入るのに必要な条件があるなら、グラストがその扉を通れないように出来るかもしれない。

そう考えて部屋の中を見回したが、まだアルテアは来ていないみたいだ。



ちょうど同じようなことを考えていたのか、ディノが不思議そうに首を傾げている。




「アルテアは、今日は来ないのだね」

「……………ありゃ、本当だ。……………こんな時に、アルテアがいないのは珍しいね」

「……………うん。呼びかけに返事がないんだ。忙しいのかな?」

「もしかすると、いち早くその影の国にまで追いかけていっているのではないか?」

「エーダリア、それは無理だと思うよ。あそこはね、海竜の戦の間は入り口を厳しく見張るし、戦の期間は条件付けのある誓約魔術で余分なものは削ぎ落とされるんだ。僕も試してみたことがあるけど無理だったからなぁ………」

「であれば、ダリル達の方にいるのだろうか………」



エーダリアはそう言ったけど、僕はその時、ウィリアムがぎくりとしたのを見ていた。



(アルテアがいない理由を知ってるのかな………?)



目が合うと苦笑してくれて、ディノに何かを言って少しだけ席を外す。

みんなで何だろうと思って待っていたら、すぐに小さな籠を持って帰ってきた。

木苺などを摘んで入れる為の小さな籠は空っぽで、アルテアが入っていたりはしないみたいだ。



「ウィリアム、その籠はなあに?」

「アルテアを最後に見かけたのがここだったんだが、いないみたいだな」



そう言って微笑んだウィリアムに、ノアベルトが椅子に座ったまま少しだけ後ずさった。

不思議そうにそちらを見たディノの方をゆっくりと振り向き、悲しい目をして首を振っている。



「ノアベルト?」

「………………こっちも事件みたいだよ、シル……………」

「……………ウィリアム、アルテアをどうしたんだい?」

「いえ、元に戻るまではと、一時的に隔離しておいたんですが、その後、籠をここの、アルテアの使っている客間に置いたまますっかり失念していました」

「か、隔離しておいたのだな…………」



そんな説明を聞いてエーダリアも不安そうに表情を曇らせているのだが、ウィリアムは苦笑しているくらいだ。

結構な事件なのかもしれないけれど、あまり気にしている感じはしない。


ウィリアムにはちょっとこういうところがあって、こんなウィリアムのことをグラストは大らかだなと言うけれど、ノアベルトやアルテアはよく、雑過ぎると話している。

ネアはよく、本人が意識していないところは案外繊細だったりするので、あまり触れてはいけないと話していた。



「参ったな……………」



空っぽの籠をテーブルの上に置き、ウィリアムは腰に手を当てる。


終焉の仕事に関してはかなり計画的だと思うけれど、こういう時には少しだけ記憶が曖昧になるみたいだ。

一生懸命記憶を辿っているみたいだけど、アルテアの居場所は思い出せないように見える。



「アルテアを………どこにやったかな………」

「………………シル、これって、もしかするともうアルテアには会えないかもだよ」

「…………アルテアは、いなくなってしまったのかい?」



ノアベルトは、アルテアの生存の可能性をすぐに諦めてしまったみたいだ。


ウィリアムだからさと、隣のヒルドに耳打ちしている。

そんな様子を見たディノが悲しそうにすると、ウィリアムは少しだけ困ったように頭を掻いた。



「いえ、あまりにも目に余るところがあったんで、少しだけ叱ったんですが…………その後でどこにしまっておいたかなと………………。勿論、ちびふわにしただけですし、まだ生きている筈ですよ」

「わーお、ちびふわにしたのか」

「…………その籠には、ちびふわがしまわれてしまったのかい?」

「ええ。ネアが喜ぶと思って、一度、ネアの持っている術符を借りてちびふわにしたんですが、…………ネアに少し渡して遊ばせた後にかえってアルテアを喜ばせてしまったと分かったので回収して…………その後は見てないな………」

「ありゃ。そんな状態でなくしたのか。絶望的じゃない………?」

「………ノアベルト、俺は確かに籠には入れたが、アルテアも魔物だし、あの術符の効果は時間的には解けている頃合いだ。さすがにちびふわのままではいないだろう。…………多分…………」

「アルテアが…………」



ディノがとても悲しい顔をしたので、僕は椅子から立ち上がった。

そんなディノを見たウィリアムも、少しだけ悲しい顔をしたからだ。



「ウィリアム。僕がアルテアを探すよ!」

「…………すまない、ゼノーシュ、頼んでいいか?」

「うん。ちびふわなら、他にはいない生き物だから、簡単に足跡が辿れるから任せて」



会食堂を出るとウィリアムが最後に見た部屋にゆき、その移動の痕跡を調べると、ちびふわはウィリアムがしまった籠から自力で脱走していたことが分かった。



ちびふわという生き物の残す魔術証跡を追いかけてゆけば、それはネアの部屋に続いているようだ。

何だか、とても不安になってしまったらしく全員が一緒に来てくれたので、こっちだよと案内する。



(アルテアがいないと、影の国のことも詳しくは分からないもんね)



その為にも、早くアルテアを見付けないといけない。

それに、戻って来たネアが、アルテアにはもう会えないと分かったら悲しむだろう。



「ここから先は、ディノとネアの部屋の方だよね?」

「うん。こちらに来たのだね。見かけてはいなかったけれど、どこかに隠れているのかな………」

「ありゃ。僕の部屋の前を通ったんだ…………」



あまりネア達の部屋の方に来ることはないので、何だか冒険みたいだ。


廊下を歩いて小さな移動の痕跡を追いかけてゆくと、途中で窓の魔術の手入れをした後の家事妖精に出会った。

この棟の雑務を担当しているというその妖精に、ヒルドがちびふわの行方を尋ねてくれる。



「…………このあたりで、小さな菓子袋を抱えて走っているのを目撃したそうです」

「お菓子を食べてたんだ!」

「………………アルテアが…………」



ディノは、その目撃情報に落ち込んでしまった。

エーダリアが慌てて慰めている。



「その、………ちびふわになっているのだから、仕方がないのではないか?ノアベルトも、よくボールを追いかけていなくなってしまうのだ」

「うわっ、ウィリアムの前では言わないで!」

「………………それ以前に、俺の前にもボールを持って来たことがあるぞ」

「……………きっと、それは僕じゃないと思う」

「……………ネイ、往生際が悪いですよ」

「ヒルド、こういう時は慰めて…………」



そのまま足跡を辿ってゆくと、小さな足跡はとある部屋の前で途切れていた。

そのまま中に入り込んでいるようなので、たまたま扉が開いていたのか、どこからか侵入してしまったらしい。



「…………この部屋の中かな」

「シルハーン、ここは?」

「ネアの衣装部屋だね」

「…………場合によっては制裁が必要ですかね」

「わーお。ネアが着替える部屋に忍び込むなんて、アルテアも身を落としたもんだなぁ…………」

「ディノ、この部屋の中も見ていい?」

「構わないよ。ここに隠れているなら出て欲しいからね」

「うん!」



そして分かったのは、ちびふわはこの部屋で、お菓子を隠れて食べていたらしいということだった。


ネアの衣装部屋に入り込んだというよりも、持っていたお菓子をゆっくり食べる為に、ここに隠れていたらしい。

らしいと言ってしまうのは、アルテアはもうここにいないからだ。

足跡の途切れたところにかかっていたドレスと一緒に、どこかに行ってしまったらしい。



「ドレスに入り込んでいたんだね…………」

「うん。ここから移動した痕跡がないし、魔術の痕跡が少し上に伸びてる気がする。でも、スカートの裾の方だよ?」

「…………ネアが着ていたドレスは、海竜の戦に巻き込まれるといけないからと、仕立ての魔物に頼んで届いたばかりのものなんだ。ここにかけられていて、スカートの裾にもポケットがある」

「……………わーお」



部屋の中は、何だか少しだけ悲しい空気になった。



みんなの視線の先には、小さなお菓子の包装紙が落ちている。


ディノ曰く、これは市販の小さな杏の砂糖菓子を包んである紙で、ネアが気に入ってよく持っているものなのだという。

ちびふわがそれを持っていたのだから、ネアにお菓子を貰ったのかも知れない。

それをすぐに食べずに隠し持っていて、ウィリアムから逃げてきてここで食べていたようだ。



「………シルハーン、ネアから次に連絡が来た時に、アルテアのことを聞いてくれますか?」

「…………うん。あの術符は本来なら数時間で擬態が解ける筈だから、無事だとは思うよ…………」

「まさかの、ネアが今日着ていたドレスかぁ…………。でもさ、ネアは水着に着替えたんじゃなかったっけ?」

「あの子はいつも、事故に遭ってもいいようにと着替えを衣装籠には残さないんだ。首飾りの金庫に入れた筈だから、影の国に持って行ったのではないかな」

「え、まさか、アルテアごと持っていかれたの?途中で落としてるならともかく、影の国まで………?」

「わぁ、じゃあ、アルテアはネアと一緒なのかな?」




それって、とてもいいことな気がする。

そう思って質問すると、ディノは頷いてくれた。



「恐らく、他に足跡がない以上は、あのドレスのポケットの中にいるのではないかな。………あの包み紙の砂糖菓子を食べてしまって、ネアのドレスのポケットで酔い潰れてしまったのだろう」

「わーお、…………ってことは、同伴や召喚は出来なくても、所持品としての持ち込みは大丈夫ってこと?」

「或いは、術符の効果が切れて元の姿に戻れば、弾かれてこちらに戻るのかな…………」

「そもそも、もう戻っているべき時間ですよね………」

「多分だけどさ、開発者の意見としては酔いの効果で解術が遅れてるんじゃないかなと思うんだよねぇ……」

「…………アルテアを持ってゆけたのなら、あの子は安心かな?」



そう呟いて、ディノはネアとのカードを指先で撫でる。


そこにはネアからの素敵な言葉が書かれていて、たくさんやり取りをしたいのに、その文字を消してしまうのが悲しいのだそうだ。

あまりにも大事そうにしていたからか、エーダリアが、同じ言葉をネアに紙に書いてくれるように頼むようにすると言ってあげて、ディノは少しほっとしたようだった。




暫くすると、ネアからの連絡が入った。

影の国では、ちびふわのアルテアが保護されただけじゃなくて、グレアムも一緒にいるらしい。



そのことには、ディノとウィリアムがまた違う動揺を見せていたけれど、グレアムは、ネアが危ないことに見舞われた際に手助け出来るように、そんな時に自分を呼び出す手段を授けていたのだそうだ。




「そうか、………犠牲の召喚は、対価との交換魔術でしたね…………」

「魔術の理だからこそ、影の国でも可能なのだね…………」

「その魔物は、海竜の戦に巻き込まれても、大丈夫そうなのか?」

「アルテアから事故の多さを引いた感じかな?」

「おや、それは頼もしいですね」




(今のグレアムは、どんなグレアムなんだろう…………)




そう考えて、ディノやウィリアムの方を見る。

ネアとは春告げの舞踏会で一緒にお喋りしたらしいし、純白の時にも助けてくれたみたいだ。

エーダリアやヒルドもほっとしたようだけど、いつの間にかネアがグレアムと仲良くなっているのは、やっぱりネアも凄いなぁと思うのだ。

やっぱり、ネアなら海嵐の精霊王も懐かせてしまいそうだ。




(それに、もしかしたらグレアムは、ディノ達のことを覚えているんじゃないのかな………)




ふと、そんなことを考えて嬉しくなった。

前のグレアムみたいなグレアムだったら、ネアは元気に帰って来ると思う。



取り敢えず、アルテアが帰ってくるまで、グラストが海に近付かないように見張らなければならない。








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