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猫の話と守り手の話



その夜、行方不明になったアンゲリカという騎士を探しに、僕とグラストは砂漠に出た。



ざあっと砂地を渡ってゆく夜の風は冷たく、先程までの結界に守られた中庭とはまるで気温が違う。



(寒くないかな………?)


グラストが魔術でふわりと取り出した毛皮付きのケープを見て安心すると、飛び降りた先で踏んだ砂に足が沈まないよう、グラストの足元を魔術で調整する。


「砂漠は砂の中にたくさん生き物がいるから、グラストははぐれないようにね」

「ああ、ゼノーシュの側にいるようにしよう。だが、あまり無理はしないようにな」

「うん。…………僕が怪我すると、グラストも嫌なんだよね?」


その問いかけには少しだけ緊張したが、勿論だと言って大きな手で頭を撫でてくれたので気持ちがほこほこする。

すぐにアンゲリカを見付けて、グラストにたくさん褒めて貰おう。


「あのね、流星雨の下で一緒に居ると、絆が深くなるんだよ」

「そうなのか?じゃあ、ゼノーシュと、ますます仲が良くなれそうだな」

「うん!」


また気持ちがぽわぽわして、足跡も風に流されてしまう砂丘を、斜めに爪先を入れて上がってゆくグラストを見上げる。

足場なんて幾らでも整えてあげるのに、グラストは地面を踏んでいる感覚が好きらしい。

疲れてしまうのですぐに歩きやすい魔術の道を敷いてしまうゼノーシュとは大違いで、ネアにもそういうところがあった。


『ぱりぱりさくさく踏む落ち葉や、ぎしぎし音を立てて体重で踏み固められ、崩れてゆく砂地の感覚も、なかなかに楽しいのです』



ネアがそう言うので、グラストにもそうなのか尋ねてみると、そんな風に上手に言葉には出来ないけれど、きっとそういうものなのだろうと教えてくれる。

それを聞いてからゼノーシュは、あまり足に負担がかからない場所では、グラストの足元を不必要に魔術で整えないようにした。



「…………すごい星だな。流れてゆく先で、詰まってしまいそうだ」

「星はね、行き先で落ち着く位置がもう決まっているから、椅子から椅子に移動しているだけなんだよ。でも、時々落ちちゃうんだ」

「さっきの星は大きかったものな。あんな大きな星が落ちたのを見たことはなかったが、そういうこともあるのだと知ったのは大きな収穫だ。きっと、星の落ちた場所を見られて、エーダリア様は喜んだだろう」

「グラストも見たかった?」

「いや、俺はあの場所でゼノーシュやアンゲリカと色々話せて良かったと思う。ただ、一緒に居るのが俺だけだった頃ではエーダリア様に見せて差し上げられなかったものを、今はあれこれと手にする姿を見ることが出来る。あの方をお守りする騎士として、………あまり正しい言葉ではないかもしれないが、肩の荷が下りた」



そう微笑んだグラストに、ゼノーシュは首を傾げる。

時々大好きなグラストであっても、人間の心はわからないことがある。



「エーダリアは、グラストにとっては、負担だったの?」

「そうではないよ。………俺が一番辛い思いをしている時に、あの方は自身も決して恵まれた立場ではないのにも関わらず、俺の好きなようにさせてくれていた。案じて下さり、力も貸してくれた。それにどれだけ救われたことか。だが、俺がエーダリア様を救って差し上げるには限界があったからな。己の力不足を恥じていただけ、今のあの方の健やかさに安堵してしまう」


そう笑ったグラストに、ゼノーシュは小さく鼻を鳴らした。

グラストに足らないものなどないのだが、グラストが充分過ぎる程に持っているものだけでは、エーダリアを今のように楽にさせてやるような働きをしなかったのだろう。



「ネアがね、みんなが橋の一部だったって言ってたよ」

「橋の一部………?」

「うん。ディノと出会ったお蔭で、安心して生きていけるようになったけど、そこには、エーダリアや、ヒルドや、グラストや僕がいたから、その全員が橋をかけてくれて今の場所に辿り着けたんだって。だからきっと、グラストもエーダリアの橋の一部だったんだと思う。グラストは僕のだけど、エーダリアの橋になっても怒らないよ」

「はは、ゼノーシュは優しいな。………そうか、橋の一部か。………確かに、誰もが自分の関わる者達の橋の一部なのかもしれないな。そう考えると、他者との関わり合いは力強く、尊いものだと思う」

「僕も、グラストの橋の一部?」


そう尋ねると、こちらを見た琥珀色の綺麗な目が、くしゃりと温かい微笑みを浮かべてくれた。



ずっと昔みたいで、つい最近だったあの小さな女の子が生きていた頃。


その頃にその女の子にだけ向けられていて、その女の子の為にケーキを作っていたグラストの目だ。

クッキーをあげた狐には微笑みかけても、こんな風には笑ってくれなかった。



「橋というよりも、ゼノーシュはその橋の先にあった家みたいなものかもしれない。家族のようなものだと俺は思っている」

「……………家族!」



その言葉は最近、ノアベルトが気に入って良く使っている言葉だ。


ネアも何度も言うようになって、リーエンベルクは家のようだと話していた。

でも、勿論そこでみんなと一緒にご飯を食べるのも楽しいけれど、ゼノーシュはグラストさえいれば、どこにだって行けるのだ。

ゼノーシュが欲しいのは、いつだってこの人間の微笑みばかりなのだから。



「僕、家族?」

「ああ。でも、前にも言ったことがあるが、そう言われるのは嫌じゃないか?」

「凄く嬉しいよ!一日に、何度も言っていいからね!」

「はは、じゃあ、たくさん言おう。………ゼノーシュ、俺の所に来てくれて有難うな」

「……………うん!」



さくさくと砂漠の砂を踏み、砂漠の歌い手の歌声がどこからともなく聞こえてくる。

砂に僅かに残った足跡を追ってアンゲリカを探しながら、大好きなグラストの影を踏む。


ずっと昔、こうやって甘えて父親の影を踏んでいたのはあの子で、グラストが歌ってくれた子守唄もあの子の為のものだった。

それなのに呼ばれてしまったあの日、新しいお墓の前で涙を流していたグラストをまだ覚えている。



(やっと、僕のものになった)



家族になって、白いケーキを作ってくれて、あの子だけに向けていた微笑みをくれる。

そうするとゼノーシュの心はぽわぽわ温かくなって、あの大きな手で頭を撫でて貰えるだけで、グラストの為に何でもしてあげたいと思うのだ。



「流星雨の夜って、いい夜だね!」

「ああ。今夜はこんな場所で過ごせて幸福だな。後は、アンゲリカに何もなければいいんだが。…………あれは、………」

「見付けた!アンゲリカは元気みたいだよ」



もう一つ砂丘を越えると、砂の上に仰向けで伸びきっているアンゲリカがいた。

手には靴を片方持っていて、全力疾走をした後のように胸を揺らして呼吸をしている。



「アンゲリカ!」


グラストがそう声を上げると、弱々しく片手が上がった。

慌てて駆け寄ったグラストに抱き起され、アンゲリカは小さく咳き込む。



「ゼノーシュ、水を用意出来るか?」

「うん。グラスに入れるね」

「………………すみません。………う、運動量に差があり過ぎて……………」

「運動量……………?」


そこで、水を飲んでやっと人心地ついたアンゲリカの説明によると、壁から落ちたのは単に酔っ払いだったからであるらしい。


慌てて携帯していた酔い覚ましの薬を飲んで砂地に落ちた靴を拾おうとしたところ、なんと、走ってきた砂虎の子供がその靴を咥えて逃げていってしまったのだそうだ。


追いかけると立ち止まって尻尾を揺らすので、まだ子供で遊んでいるつもりであるらしい。

砂漠は深くまで誘い込まれると危うい土地である。

砂丘を三つまでと追いかける上限を自分で決め、全力で追いかけたものの、靴を取り返すまでにかなり走らされたのだそうだ。



「だが、………まだ砂丘を二個目のところだ。すぐに取り返せたんだな」

「いえ、…………あの子虎は、その場で円を描くように回って走ったりするんですよ。距離としてはさほど離れていませんが、走った距離は相当なものです…………」

「……………それでだったか」

「やはり、ウィームの騎士では砂地を走るには筋力が足りませんね。随分と魔術で足場を整えたのですが、雪とは違い、砂漠の砂の層は深過ぎる。一瞬であれば体を支えてくれますが、持続しない。同じ場所をぐるぐる走っているのに、その度に整地魔術を展開しなければなりませんでした」

「砂の表面じゃなくて、砂の上のところに薄く何かを固めるといいんだよ。僕は空気か、今日みたいに夜の砂漠だったら靄を固めて氷の結晶石にするんだ。でも、アンゲリカには難しい?」

「ええ、俺ではそこまではとても。………ですが、万が一砂地で交戦になるようなことがあれば、そのように足場を固定するべきなのだと知っていることは強みです。教えていただき、有難うございました」

「大丈夫。何かが来ても、僕が追い払うからね!」



とは言え、水を飲んで足に治癒魔術をかけて肉体疲労を除去したところで、アンゲリカも無事に動けるようになった。

さて戻ろうかというところで、ふわりと転移の気配がしたので、慌ててグラストを背中の後ろに押し込む。



「…………うん、無事そうだね」



転移でやって来たのは、ノアベルトだった。



「ノアベルト、迎えに来てくれたの?」

「そりゃ、君達がコルをひと瓶飲んでたからね。そっちの騎士も、酔いは醒めたのかな?」

「…………ノアベルト様、お手数をおかけしまして、申し訳ありません。………エーダリア様?!」


ノアベルトと一緒にエーダリアとヒルドも来たからか、アンゲリカは慌てたように居住まいを正した。


ゼノーシュは、このアンゲリカが、エーダリアを盛り立てる会の活動にかなり熱心に参加しているくらい、エーダリア贔屓であることを知っている。

内緒かもしれないので特に言及したりもしないが、アンゲリカの槍のサハナムもかなり熱烈なエーダリアの支持者なのだ。


ただし、そこは仕えるべき主人としてエーダリアを大事に思っているアンゲリカと、精霊の目で見てエーダリアを土地を治める可愛い人間の子だと思っているサハナムでは気に入り方が違う。

凛々しく美しい方だと言うアンゲリカと、頑張り屋で可愛いというサハナムで、二人は先程もエーダリアがいない間に何度か価値観の相違から喧嘩していた。



そんなサハナムも連れて来て貰ったのか、ヒルドからアンゲリカに手渡されている。



「無事で良かった。星の落ちた先に古い知人がいてな、話していて戻るのが遅くなってしまってすまなかった」

「いえ、とんでもありません。こちらこそ、せっかくの酒席でしたのにお騒がせしました!」

「砂虎の子供に靴を取られたんだって!砂虎は、円を描くように走るから捕まえるのが大変だったみたいだよ」

「おや、そうでしたか。だからそこかしこに、魔術調整の気配が残っているのですね」

「軟弱者め。虎などささっと捕まえてしまうがよい!」

「サハナム、誰のせいでこんな目に遭ったと……………」

「お前が酔っ払いだったせいであろう?」



きらきらと、見上げなくても地平線に添ってどこまでも流れてゆく流星の中で、みんなが小さく笑う。

どこか遠くでチリンと鈴の音が聞こえて、ウィリアムのテントはどこにあるのかなと首を傾げた。



ネア達も今頃、この夜空を見ているのだろうか。



(……………あれ)



その時ふと、誰かにじっと見られているような感覚がした。

まだ魔術も漂ってこないくらい、遠くから感じる視線だ。

盗み見て知ろうとするその気配に、ゼノーシュはとても敏感なのである。

眉を顰めて口元をきりりとさせると、ノアベルトも気付いたのか瞳を眇めて遠くの方を見ている。



「ネイ…………?」

「うーん、気のせいじゃないと思うけど、何かがこっちに来るかも?早く帰ろうか」

「僕も何かに見られている気がする」

「ゼノーシュ…………?」

「グラスト、あんまり見てくるものは困ったものが多いんだよ。ここから離れたほうがいいと思う」



そう言ったゼノーシュに、全員が頷いてくれたその時のことだった。




すぽんと、日傘を勢いよく広げたような音がした。


慌てて全員が上を見上げ、ひらひらとした白っぽいものが空にふわりと広がるのを見る。



「待たれ、待たれよ!」


子供のものにも似たあどけない声が響き、布をいっぱい重ねたスカートを膨らませて、サハナムよりも幼いくらいの女の子が広げた傘を翼のようにしてふわふわと飛び降りてくる。



ぼすんとお尻から砂地に落ちた女の子は、慌てて立ち上がると砂まみれになった頭を振って、お尻をはたいた。


「…………ぷはぁ!危うく入れ違ってしまうところであったわ。御客人、ここで出会ったのも何かのご縁。砂漠の砂猫商会の商隊から、珍しい品物を買ってゆかないか?砂漠に沈んだ王国の絵画や財宝、この砂漠で行き倒れた大魔術師が持っていた秘宝、罪人が持って逃げたという誰も知らない偉大な魔術書まで、砂猫商会は魔術製品から魔術書の取り扱いは、どこの業者にも負けぬ!是非にご覧あれ!!」



広げていた傘を畳んで綺麗にお辞儀をすると、その女の子はそこまでを一気に喋り切った。



よりにもよってその子は、栗色の巻毛で、緑の目をしている。

ふりふりとした赤いドレスは、可愛いけれどどこかこの砂漠には不似合いな気がした。



ゼノーシュはとても怪しいし、この容姿の女の子は凄く好きじゃないなと思って困惑していたが、エーダリアが魔術書があるのかと呟いているので、あの魔術書大好きな人間をノアベルトは早く連れ帰った方がいいかもしれない。



そう思ってノアベルトの方を見ると、ノアベルトは腕組みをして目を鋭く細めていた。


「砂猫商会かぁ。………僕さ、君の商会の異名を知ってるよ」

「それなら話が早い。少ない支払いで良い品物を持って帰れるのが我らの自慢!」


そう笑った女の子は、目が合ったのかグラストに向けてもう一度にっこりした。


「騎士は支払いの種類にないが、この人間でも良いぞ!なかなかに良い目をしている。魔術師ではなくとも、祝福や守護を集める類の人間の目だ!」


そう言って笑った女の子を見た瞬間、どうしてノアベルトが冷やかな目をしているのか、この商会が何を支払いの代金代わりにしているのかが、ゼノーシュにも分った。



(魔術師縛りの彷徨える隊列だ………!!)



「面倒臭いのう。刺してしまうか」

「サハナム…………」

「ヒルドは、エーダリアを押さえていてくれるかい?自分で飛び込んじゃいそうだからね。僕が…」

「…………大丈夫。これは、僕がぺしゃんこにする!」

「…………ゼノーシュ?」



驚いたようにグラストがこちらを見たので、笑顔で頷いておいた。

異変を察したのか、栗色の髪の毛の女の子は不安そうに首を傾げている。

また少し大きめの星が流れてゆけば、正面の女の子の瞳の瞳孔がきらりと縦長に光った。



「御客人…………?」



(もうグラストは僕の家族だけど、栗色の巻毛で明るい緑色の目をした女の子は大嫌い!!)




「僕は、大事なグラストをお金代わりにして、魔術書なんか買わないよ!!」



そう宣言すると、ゼノーシュは勿論、その不届きな商人をしっかりと追い払ったのだった。





「………ほわ、その猫さんはどうなったのでしょう?」



そう尋ねたのは、昨晩の出来事を話していたネアだ。

今はここで一緒に、少し遅めの時間にした昼食が始まるのを待っているところだ。

食後にパイを食べるので、少し軽めの昼食になるらしい。



「僕達の前に現れた時は女の子の姿だったんだ。僕がぺしゃんこにしたら、猫になって逃げていったよ!」

「………ゼ、ゼノ!ゼノのお顔が大変なことになっています!!お昼前ですが、クッキーを食べましょう!」

「……………食べる」


さくさくと貰ったクッキーを齧ると、少しだけその甘さに心が落ち着いた。


あの後グラストは、そうか守ってくれたんだなと言って頭を撫でてくれたし、エーダリアもうっかりその猫を追いかけていってしまうことはなかった。



「そんな悪い猫さんがいるのだと、ウィリアムさんに教えて貰ったことがあります。魔術師さん達の魂を引き連れているというお話でしたが、魔術師さんの魂を対価として品物を売る商人さんでもあったのですね…………」

「砂漠で死んだ人間の皮を被ってたから、砂猫の魔物の隊列だって気付くのが遅くなっちゃったんだ。賢人や賢者、学聖や魔術師だけを集めた隊列なんだよ。砂猫の魔物がいない時に、その隊列にいる魔術師の知恵を借りることも出来るから、人間は時々自分から会いに行くみたい………」

「ふむ。砂猫さんがいるときだと、きっとその方々にはただでは近付けさせてくれないのでしょうね」

「知恵は、魔術師の魂と引き替えなんだ。僕達と一緒にエーダリアがいたから、お客だと思ったみたい?」

「まぁ!何て失礼な方なのでしょう。ゼノとグラストさんや、ノアとエーダリア様が仲良しだとは考えなかったのですね!」

「うん。それにグラストに笑いかけたから、僕が懲らしめたよ!」

「ふふ、ゼノは頼もしいですね。きっと、グラストさんもゼノに守って貰えて嬉しかったに違いありません」



そう言ったネアがまたくれたお菓子を食べていると、すぐ側でテーブルに突っ伏していたノアベルトが小さく呻き声を上げた。

もうお昼になるのに、今迄眠っていたのだ。



「…………僕、昨晩見たものは忘れないんじゃないかな。ゼノーシュの目の前でグラストに手を出したらどうなるのか、すごく良く分った…………」

「あらあら、ノアだって、エーダリア様に悪さをされたらそうなってしまうでしょう?」

「まぁ、僕は元々そういうところもあるからね。でもさ、ゼノーシュは意外だったっていうか、僕でも宥めて連れて帰るのに一苦労だったんだけど…………。ネア、僕を褒めて」

「はいはい、ノアは頑張りましたね。………それと、その手をもう少し下げないと、髪の毛を毟りますよ?」

「ごめんなさい……………」



抱き着いたネアに叱られているノアベルトを見ながら、僕はあの夜の女の子のことを考えた。


くるくるした栗色の髪の毛に、明るい緑色の瞳で無邪気な笑顔を思い出すと、ふつふつと不快感が込み上げてくる。



「僕のグラストに悪さをしようとしたし、あの女の子の姿も嫌い…………」

「ゼ、ゼノ!!またしてもお顔が大変なことになっています。は!ここに美味しいキャラメル林檎なクッキーが!!」

「食べる……………」



もすもすとクッキーを食べながら、そう言えば今日は美味しい焼き立てパイが午後に食べられることを思い出した。


アルテアがネアにとても懐いているので、ネアの為に、みんなでクリームの日を再現する為のパイを焼いてくれるのだ。

焼き立てのさくさくしたパイに檸檬クリームと紅茶のジャムを添えることを考えると、何だか砂漠であった砂猫の姿ももやもやっとして曖昧になってきた。



今年はノアベルトが狐姿じゃないから、ヒルドが狐の口の周りを拭くことはなさそうだ。

そう思って安心していたら、なぜかパイの時だけ銀狐になってヒルドやエーダリアにすごく甘えていた。


後で何でなのかを聞いてみたら、アルテアなちびふわに負けない為にノアベルトも色々と頑張っているらしい。

















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