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祝祭の足音と小さな贈り物




薔薇の祝祭を明日に控え、ウィームの街はどこか華やいだ雰囲気に包まれていた。


そこかしこに薔薇のモチーフやふんだんに飾られた薔薇が溢れ、気の早い住人達は、既に玄関先に薔薇の花びらを振りまいている。

こうして美しく楽しい祝祭には、人外者達が幸せな気持ちで祝福を気前よく授けるので、その前取りを狙った頭脳犯のお宅なのだろう。



清涼な雪景色に色とりどりの薔薇が溢れれば、そこには人ならざる者達が息付くこの世界でしかありえないような美しいものがあちこちに見かけられた。



ひらりひらりと、色鮮やかなドレスの裾を透かして消えてゆくのは、浮足立った妖精達だ。

どこからともなく甘い香りが漂い、誰もいない筈の街角からはバイオリンの音色が聞こえてくる。

あちこちのお店や住宅でカーテンの織り柄が咲いてしまい、街路樹の木々には明日を待ちきれない小さな生き物達が弾みながら鳴き交わしていた。



「今年で二回目になるこの余裕を楽しむべく、強欲な人間はすっかりご機嫌で街に出るのです!」



そう宣言したネアは、隣を歩く魔物を見上げた。



「ご機嫌なんだね」

「ええ。ディノから花束を貰えるので、今迄の私とは違いますよ。去年からはもう、何だかいたたまれない気持ちでこっそりお家で一人で祝祭を楽しまなくてもいいのです」

「前の場所では、一人で楽しんでいたのかい?」

「大勢の幸せそうに見え、きっと幸せに違いないという羨望の眼差しで見てしまう方々に紛れると、自分が特別に孤独に思えたのでした。今はこうして大人げなくはしゃいでしまいますが、こんな風に安心して過ごせるのはまだたった二回目なので、大目に見て下さいね?」

「………弾んでる。かわいい」



勿論、こちらの世界にも心細い者や、悲しみを堪えて俯いている者達は沢山いるだろう。

なのでネアは、過去の自分を基準に考え、決してにこにこし過ぎないようにと己を戒めた。

けれどもどうしても口角は上がってしまうし、瞳はきらきらしてしまうようだ。


幸せなみんなが美しいと感じるものを、ようやく自分も在りのままに美しいと感じることが出来るのは、何という幸福だろうか。

ネアが今迄知らなかったそんないいものを、今迄の分も取り返したいと、ついつい贅沢になってしまうのだ。




「怖くないということは、こんなにも自由なことなのですね」

「それまでは、怖かったんだね?」


そっと手を伸ばして頬を撫でてくれた魔物の優しい声に、ネアはふすんと鼻を鳴らす。


「恐らく、何が恐ろしいかということを突き詰めればそんなことはない筈なのに、皆が持っているものを自分だけが手に入れていないようで、そんな自分の異質さが恐ろしかったのです。私のような自分しか愛せないような単身者が一般的であれば、きっとそれはそれで楽しくやっていた筈なのですが………」

「…………そうだね。君は、一人で生きてゆくことも好んではいるようだった」

「ええ。私の大事な私が、常に最優先出来るのは中々に愉快なことですからね。でも今は、そんな気楽さへの欲求と同じくらいに、何でもないことでディノとお喋りしたり、こうして手を繋いで外を歩けるのです」



ディノより遥かに短い生涯を送っていたネアにとって、孤独は慣れてしまえばそれなりに便利なものであった。

だからこそきっと、心を寄せる誰かをどうにかして見付けたいという願いの深さは、ネアではディノに遠く及ばないだろう。

愛せないということを受け入れてしまえるくらいには、ネアに用意されていた時間は短いものだったのだ。



「ネアが今日も大胆過ぎる………」

「エーダリア様からも教えて貰ったでしょう?薔薇の祝祭の近くになると、積み残しさんという怖い通り魔さんが出るので、こうして手を繋いで側に居て下さいね」

「…………ずるい」

「さて、それではどこに行ってみたいですか?」



実は今日、こうして街を散歩してみたいと言い出したのはディノであった。


もしかしたら誰かが、女性はこの時期にデートをするのが好きだと話しているのを聞いてきたのかもしれないが、それでも自分から一緒に街に出ようと言ってくれて、ネアは驚いたしとても嬉しかった。

そんなところも、こうしてご機嫌でいる一因になっている。


「リノアールの一階に、大きな薔薇の装飾があるそうだよ」

「むむ。さては誰か情報源がいますね?」

「ご主人様………」

「でもそんな素敵な情報を聞いてしまったら、行かずにはいられません。リノアールに行ってもいいですか?」

「勿論だよ!」



魔物は、予定通りにネアが興味を示したからか、ほっとしたように微笑んだ。

水紺色の瞳を煌めかせ、嬉しそうにはにかむ魔物を見ている限り、目の前の三つ編みの生き物が万象を司る者には到底見えない。

もっと無垢で、そしてどこにでもいるような、ネアだけのものに思えて大事にしたくなった。



「私の魔物は、世界一優しい魔物ですね」

「世界一…………」

「ふふ、お顔を隠してしまわないで下さいね。薔薇の祝祭の特別な飾りを見せに連れて行ってくれる、大事な魔物の顔が見たいです」

「……………ずるい」

「むむぅ、またしても狡いの定義が行方不明になりましたね。…………あら、あの方は………」



そんなことを話しながら二人が歩いていると、見知った人影がとあるお店の前で途方に暮れたように立ち尽くしているではないか。

ネアはディノと顔を見合わせると、こてんと首を傾げる。


あまりにも悄然としているので見過ごせなくなり、声をかけてみた。



「…………ベージさんどうされましたか?」

「これは流石に男一人では買えな………………」



あまりにも所在なさげなので思わず声をかけてしまったネアに、考え込み過ぎていたせいか普通に答えてしまってから、氷竜の騎士であるベージは、愕然とした面持ちでこちらを見た。




「…………ネア様」


すっかり青ざめてふるふるしているベージに、ネアはディノの手を引っ張ったまま、ひょいと彼が凝視していたものを覗き込む。



「むむ!薔薇の形にしたクリームが乗ったカップケーキですよ!」

「竜なんて………」


あまりにも可愛らしそうで美味しそうなカップケーキに、ネアは思わず弾んでしまった。


苺のつぶつぶがあるピンク色のクリームのものと、檸檬クリームの淡い黄色、そして夜の滴を使った少し高価な青いクリームの薔薇を乗せたカップケーキがあり、花びらを沢山重ねた丁寧な薔薇の形に一瞬で心惹かれてしまう。


「ディノ、お土産に買って帰りましょう!ベージさん、私達と一緒に買えば良いのではないでしょうか?」

「い、いえ………それではご迷惑をおかけしてしまいますから」


そう首を振ったベージは、明らかにディノの方を見ている。

ネアは慌てて魔物の手をぐいぐいと引っ張ると、一人で買い物に出ると、こうしてケーキ一つ買うのに苦労してしまうこともあるのだと、過去の苦労を語ってみせた。


「かといって、お友達などを連れて戻ってくるのも非効率です。ここは通りかかったのも幸いと、一緒に選ぶのがさだめ。そして私は、初めて見るこのカップケーキを買って帰るのです」

「とても気に入ったんだね………」

「はい!」



しかし、魔物があまりにも悲しげな顔をするので、ネアは、もしかして今日のおでかけではどこかにケーキを食べに行く予定だったのかを聞いてみた。

すると、ケーキは予定していなかったが、スープは予定しているとしょんぼり言うので、ネアはそんな魔物に向ける微笑みを深める。



「あらあら、甘いものとしょっぱいものは別の区分です。カップケーキをお土産に買って帰ってもスープは美味しく飲めるので、心配しないで下さいね。寧ろ、甘いものを買って帰るからこそ、スープは絶対に飲みたいと言わざるを得ません」

「そうなんだね?」

「ええ。スープ屋さんは外さないでくれると嬉しいです」

「ご主人様!」



寧ろ、カップケーキを買うからこそスープは必須であると聞いた魔物はほっとしたのか、ベージと一緒にカップケーキを買うことには何の不安もなくなったようだ。


ベージがどこかそわそわしながらネア達と一緒にお店に入るのを見ても、ゼノーシュという偉大な先人を知るディノには、甘党の男性は別に珍しいものではないらしい。




「そして、十三種類もあるのは想定外でした………」

「この店では、檸檬とバーベナのクリームのものが有名なんですよ。部下の伴侶にそう教えられて来たのですが……」

「では、絶対にそれは買わなければですね……………」

「ご主人様の好きなチーズクリームのものがあるよ?」

「…………むぐぅ。林檎とチーズクリームのこやつも、絶対に買います!」



ネアは散々自問自答して、ディノのものと合わせて四個のカップケーキを購入した。

最初に選んだ二つに、色合いだけで欲しくなってしまった苺のクリームのものと、ブルーベリーと星の祝福結晶のものである。

強欲な人間は、魔物と分け合いっこをすることで、結果四種類の味を楽しもうという魂胆だ。



「では、全種類セットを二箱ですね」



しかしそんな満足感も束の間、背後から聞こえてきたお店の人の声に、ネアは、全種類セットを二箱注文したベージを羨望の眼差しで振り返った。


大勢で食べる予定なのか、それともこれくらいは自分でぺろりなのか、整った容貌の男性がこんな風にカップケーキを購入している姿は、何だか微笑ましい。



「全種類の詰め合わせを購入されたお客様には、只今薔薇の祝祭の限定の花びら飾りをおつけしています」




「…………なぬ」



そしてネアは、朗らかな店員さんの言葉により、ここで衝撃の事実を知ることになった。


何と、全種類セットを購入したお客様には、薔薇の花びらについた朝露を結晶化した石で作った、花びらの形をしたチャームめいたおまけがつくらしい。


それは知らなかったとふるふるしたネアは、全種類を買い占める強欲さは封印しようと考えたほんの少し前の綺麗な自分を心から呪うことになる。

あんな素敵なおまけがつくのなら、リーエンベルクのみんなにお土産として全種類セットを買ってゆけば良かったのだ。




「では、それはあちらのお二人に選んでいただいても?ネア様、代わりに如何ですか?」

「……………ほわ?」

「もし宜しければ、私の代わりにこちらの結晶石の花びら飾りを貰っていただけませんか?私の手では、この繊細な飾りを壊してしまいそうですから」

「……………いいのですか?」

「ええ。お嫌でなければ是非」



さっと振り返って見上げてきたご主人様に、ディノは少しだけ困ったように微笑んだ。



「欲しいんだね?」

「…………ふぁい」

「では、贈与に連なる魔術の繋ぎを絶っても構わないだろうか?好意で譲ってくれたのに、すまないね」

「いえ、元々私は、騎士としての職務に忠実である為にと、その種の魔術の繋ぎは誓約で制限しておりますから。御身の指輪を持たれる方に、不利益となるものは繋がないようにしましょう」



かくして、ネアはベージが買った全種類セット二個分のおまけを貰えることになった。


それもこれもベージからのご厚意と、その優しさに魔物が過剰反応しないように上手く話をしてくれたベージのお陰という、素晴らしい氷竜からの恩恵尽くしである。



「婚約者様とお揃いにされては如何でしょう?」



更に、そんな粋な提案をしてくれたのもベージだ。

優しい微笑みに目を瞠り、ネアは隣にいたディノを見上げる。

その発想はなかったのか、ディノは目を瞬いてからほんの少し目元を染めた。



「ディノ、お揃いにしましょう!」

「……………うん」


お揃いという言葉に舞い上がり、頷いてから少しだけきゃっとなった魔物は、他のお客さんの買い物の邪魔にならないようにと、店員がネアに渡したおまけの入った箱の中を一緒に覗き込む。



「…………この薔薇色が、透明で鮮やかで何て綺麗なんでしょう。…………むむ、薄紫色のものもありますね」



魅力的な色揃えでネアはたいそう悩んだが、限られた時間の内でそれなりに短時間で結論を出す。

こういうものは、ぱっと目を惹いたものを選ぶのが一番だ。



「ディノに纏わるような色とも迷いましたが、この薔薇色のものにしますね。普段自分の持ち物にはない色なので、とても心惹かれました」

「……………負けた」

「あらあら、では、ディノもお揃いの色にしますか?」

「ご主人様!」


自分の要素のある色が落選したと落ち込んでしまった魔物は、そんな提案で元気を出したようだ。


箱からネアと同じ薔薇色の花びら飾りを取ってもらい、手のひらの上に置かれた結晶石の花びらを嬉しそうに見つめる。



「壊れないように、状態保存の魔術をかけておこう」

「では、私のものもお願いしますね。………ベージさん、こんな素敵な薔薇の花びらを私達に譲ってくれて、本当に有難うございました」

「……………本望です」

「本望……………?」

「い、いえ、…………その、騎士という役目にある者として、こうして喜んでいただけるということは、私にとっても喜びですから」

「ベージさんは、本当に騎士さんらしい優しい方ですね」


ネアが竜を褒めたからか魔物は少しだけそわそわしたが、ご主人様とお揃いのものをくれたベージを無下には出来ないようで、ネアの手の中にそっと三つ編みを設置するに留めてくれてそれ以上荒ぶりはしなかった。



お店を出たところでまた深々と慇懃に一礼をして、ベージは大きな紙袋を下げて帰っていった。

そんな氷竜の後ろ姿を見送りながら、ネアは思わず唇の端が持ち上がってしまう。



「ふふ、弾むような足取りです。よほどカップケーキが楽しみなのでしょうね」

「竜も甘いものが好きなのだろうか……」

「トンメルの宴の主催者の方も、確か氷竜さんでしたしね。甘党な種類の竜さんなのかもしれません」



これまでは何の接点もなかった竜ではあるが、今年は年明けから立て続けに三回目の邂逅である。

このまま仲良くなれればいいのになと考えかけ、ネアはベージの氷竜もまた、冬眠ならぬ夏眠があるかもしれない冬の系譜の竜であることを思い出した。



(という事は、初夏には雪竜さん達のようにお城に篭ってしまうのかしら………)



それは少しだけ残念なことだったが、代わりに春になれば遠くの国々を旅していたダナエ達がまた遊びに来てくれる。


季節が巡るからこその出会いや喜びもあるので、それをゆっくりと楽しんでゆけばいいのだ。




「そう言えば、エルトさんは花竜なので、この薔薇の祝祭の当日は大活躍でしょうか?」

「火の気配の宿る花を作れるようであれば、とても重宝されるものだから喜ばれるだろう」


持って生まれた属性の加護は、体の置き換えをしても得意とする分野として魂に残るのだそうだ。

なのでエルトは火の系譜の花を得意とする花竜になるそうで、エルトが作れる花は、よく祝祭などで素敵な灯りになっている光ったり燃えたりする花になる可能性が高いそうだ。


置き換えをしてもなお、そういう意味では火の恩恵がウィームに残るのだ。

エルトが賢者として持っている火の系譜の知識も合わせ、ウィームにとっては心強い人材になる。



(もうすぐ、薔薇の祝祭だけれど………)



王都では、今年もドリーが真っ赤な薔薇の花束を用意されてしまうのだろうか。

今年のみんなから貰う薔薇はどこに飾ろうかと考えながら歩いていると、二人はあっという間にお目当のリノアールの前に辿り着いた。



「見て下さい、薔薇の祝祭仕様です。とても素敵ですね」

「花びらを踏むことで高める祝福の魔術を、既に敷いてあるようだね。薔薇の系譜の誰かに頼んだのだろう」

「だから、この入り口を入るとわくわくするのですね!」



リノアールは入り口から薔薇の花びらが床に振り撒かれ、ふくよかな薔薇の香りに包まれていた。



期待に否が応にも高まる胸を押さえ、扉を開いて貰い中に入れば、ネアは、すぐさま一階の吹き抜けの中央に見えてきた素晴らしい空間に目を凝らした。




「ほわ…………」


どこからか響く硝子のベルを鳴らすような不思議で心地よい音が聞こえて来る頃にはもう、ネアはその光景に釘付けになってしまっていた。



「ふ、噴水があります!吹き抜けの天井には薔薇のアーチがあって、花びらが雪のように降ってきますし、噴水の中には宝石で出来た様々な色の薔薇がたくさん浮かんでいます!!」

「落ち着いて、ご主人様。ほら、もっと近くで見てご覧」

「……………ふぎゅう。あまりにも素晴らしい光景が広がっているので、もっと近くで見たいのに、近付いていいのだろうかと悩んでしまうという、謎に自分を焦らしたいような大混乱な心なのです」

「君はこういうものが好きだろう?」

「……………はい。とても」



噴水の部分は、青みがある乳白色の素晴らしい雪の結晶石で作られたものだ。

ディノ曰く、白く見えるものは光の反射と雪の祝福で齎される視覚効果で、実際には青い噴水なのだそうだ。


こぽこぽと音を立てて溢れる澄明な水に浮かぶのは、色とりどりの宝石で出来た薔薇である。

その薔薇たちが水の動きで触れ合って、硝子のベルを鳴らしたような不思議で繊細な音楽を奏でているのだ。




ネアは、ディノにその噴水がよく見えるところまで連れていって貰い、暫くはその素晴らしい光景を声もなく見つめていた。



しゃりんしゃりんと音を立てる宝石の薔薇は、水や他の宝石からの光を浴びてまた複雑に光る。

その光を集めた噴水の水は万華鏡のようだ。


それだけではなく、水面には、天蓋になっている見事な薔薇のアーチも映り込んでいるではないか。

そこから差し込む木漏れ日の光は、何を光源にしているのだろう。



「胸がいっぱいです……………」

「気に入ったかい?」

「ディノ、…………こんなに綺麗なものを見せてくれて、有難うございました」

「君が喜んでくれて良かった」



隣に座った魔物は、噴水の近くにだけ吹いている柔らかな風に微かに髪を揺らし、その瞳には噴水の方で煌めいている宝石達の色が映る。

ネアの膝の上に置かれた三つ編みは青灰色に擬態されているが、ここに真珠色の髪を持つ魔物がいたらさぞかし美しいだろう。



柔らかな風を肌に感じ、宝石の薔薇たちが奏でる音楽に耳を傾けながら、二人は暫くその噴水を眺めていた。


宝石の薔薇を浮かべた噴水を見た日に、その薔薇を思い出させてくれる結晶石の花びら飾りを貰えて良かったという話をネアがすると、魔物は何だか嬉しそうにネアとお揃いの飾りを見ている。

ネアは、貰った花びら飾りを手帳に装着しており、ディノは上着の内側のポケットのところにつけたようだ。


こちらの世界では、魔術などで使う結晶石や通信用の道具、術符などを落さないようにするために、男性用の上着の内ポケットにはそれらの道具を固定出来るようにチェーンがついていたり、自前の鎖や紐を通せるようなボタンホールのようなもの予めが作られていることが多い。


決して高価なものではない花びら飾りをそこにつけている魔物を見ると、ネアはついつい頭を撫でてやってしまいたくなるのだが、そうすると魔物が頬を染めて爪先を差し出してきてしまうのがいささか残念なところだ。



その日は、最後に二人でお馴染みのスープ専門店にゆき、薔薇の祝祭の期間だけの限定である、色合いが綺麗な赤色になるトマトクリームのスープを飲んで体もほこほこにした。



あのカップケーキのお店は、その後突然の大人気店になってしまったようで、ゼノーシュが並ばないと買えなくなったとしょんぼりしている。


春には春の花をクリームで表現したカップケーキが出るそうで、今から楽しみだ。









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