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新年の安息日と魔物達の休日



新年のリーエンベルクは、丸々閉じてしまう。


一月の最初の一日は、大晦日のお祝いからの怪物騒ぎの疲労を癒すべく家でまったりと過ごし、二日後の祝祭日に盛大な新年の祝いの儀となるのがこの土地の風習だ。



なので、リーエンベルクもかぽりと結界で覆って空間ごと閉ざしてしまうと、出入りそのものを封じてしまうのだ。

怪物騒ぎが落ち着く夜明けまでに全てを片付けてしまい、家事妖精達もお休みに入る。



よって、リーエンベルクに残るのは、ネアとディノだけになる………筈だった。




ネアは、ぱちりと目を覚ました。



「ふみゅふ。…………ディノ、新年ですね。今年も一年、宜しくお願いします」

「これからもずっと側にいるよ。君は、今年の大晦日の一日前には、私の伴侶になるのだからね」

「むぐふ。……ことふ、……今年の婚約記念日は、絶対に間違えませむ!……ぐぅ」

「可愛い。寝惚けてる…………」

「むみゅ?!擽ったいでふ。………そんな悪い魔物はお仕置きですよ………でふよ、………ぐぅ」

「ご主人様!」

「………むぎゅる。大喜びでしたね…………」



眠たい目をこしこししながら起きると、外は一面の雪景色だった。

元々雪深いウィームで何を今更と思うだろうが、そう表現するしかない大雪だったのだ。



「…………これは、またジゼルさんが……」

「ニエークではなさそうだね。雪竜かな」

「きっと、昨晩は子狐さんと楽しく過ごしたのでしょうね」

「ネア、これは何だろう?」

「……………む。私はなぜ、誰かの靴を抱っこして寝ていたのでしょう。ぽいです!」

「…………アルテアの靴かな」

「となると、アルテアさんは片方だけ靴なしで帰ったのでしょうか?」

「かもしれないね。…………夜明け前にはこちらを離れたから、起きられたようだ」



アルテアは、今日は王都での新年のお祝いに参加するのだそうだ。

安息日なので公式な行事はないのだが、それでも王族と、親しい貴族達だけの内輪のお祝いの食事会があるのだとか。

安息日なのに寝て過ごせない、王族というものは難儀なものだ。



そして昨晩、最後の怪物を見てしまったネアは荒ぶり、自らの記憶を抹消するべく深酒してしまった。

なぜかそれに付き合ってしまったのは、その最後の怪物が足元から出てきてしまったエーダリアだ。

寧ろ、全てを忘れたかったのはエーダリアだったのかもしれない。



その結果、謎に全員が盛り上がってしまい、かなりの大騒ぎになった。

思えば、ウィリアムとアルテアも呪いが解けたばかりであったし、羽目を外す条件が整っていたのかもしれない。



「アルテアさんが帰ったのを知っているとなると、ディノはその時にはもう、起きていたのですか?」

「君が眠っているのを見ていたからね」

「…………怖っ」

「ご主人様…………」



ディノ曰く、昨晩のネアの酔い方は可愛かったらしい。

部屋に戻ってくるまでは、怪物を見えなくしてくれなかったアルテアに怒り狂っていたそうだが、部屋に帰ってくると、まだどこかに怪物が残っていたら怖いと言い張り、ディノにずっとくっついていたのだそうだ。



「………それなのに、この靴は持ってきていたようです」

「君がそんなものを持っているのには、気付かなかったな…………」

「となると、ディノにも見付からないように、こっそり持って帰ってきたのでしょうか。昨晩の自分がなぜにこれを略奪したのかが謎めいています………」



綺麗な靴だが、地べたを踏みつけるものなので、決して抱いて寝たいものではない。

そう考えて眉を寄せていると、ふと、お布団の外は少し肌寒いことに気付いた。



「足がすーすーしますね。少し部屋の気温が……………む」


そこでネアは、なぜか自分が寝間着を上しか着ていないことに気付いて、ばさりと毛布に包まった。

むぐぐっと頭を抱えてから、そろりと隣に寝ていたらしい魔物を見上げる。



「…………ディノ、私が着替え途中なのはなぜでしょう?」

「夜明け前に、突然狩りに出かけるから、着替えをすると言って着替えようとしたんだよ。そしてすぐに、毛布に包まって眠ってしまった」

「むぐぅ」

「寒いといけないから、着せてあげようとしたのだけど、君が暴れてしまうから諦めたんだ。少し部屋の室温を上げようか」

「……………恥ずかしさでいっぱいです」

「おや、とても可愛かったよ?」

「なぜか、余計に心がくしゃりとなりました」



ディノがどこか満足げに艶麗に微笑んだせいで、ネアは丸一日くらい毛布の蛹になりたい気分になった。

どうしてディノは、こんな時に限って老獪な魔物らしい目をして微笑むのだろう。

しかしながら、自分の罪は自分で償うしかないので、現実と向き合って、起きて顔を洗わねばなるまい。

淑女にあるまじき行いにむがむがと毛布の中で悶絶した後、ネアは頑張って起きることにした。



「…………さすがにそろそろ起きますね。ディノも、お腹が空いたでしょう?」

「おや、もう少しこのままでもいいよ。君が可愛いからね」

「むむぅ。誘惑の言葉にくらりときましたが、起きます!」

「うん。ではそうしようか」



そうしてネアは、魔物に浴室に出ていて貰い、その隙にひとまず寝間着のズボンを探し出して装着した。

ほっとしたところで顔を洗うべく浴室に向かう。




(………まるで、夢から醒めてもまた美しい世界にいるように)




この世界は今朝も美しい。

いささか雪深さが過ぎる降雪量だが、青白く輝く木々は宝石のようだし、雪の隙間から顔を出す満開の花は、魔術が潤沢な土地でなければ見れないものだ。

ぺかりと光るのは、妖精か精霊だろう。


雪の中でぼうっと光を放つのは、何かの魔術結晶が育った証だ。



(ここが、私の部屋)



こつこつと集めてきた素敵なものがあちこちに置かれ、瑞々しい花々が生けられている。

しかし何よりも気に入っているのは、大事な同居人がいると分かる毛布の巣だ。



「…………ネア?」

「あら、心配させてしまいましたね。元気にしていますよ!新年だと思って、何だか窓の外の雪景色をしみじみと見てしまいました」

「後で、外に出てみるかい?」

「今日はディノとのんびりする一日なので、ディノが疲れてなければ遅い朝食兼お昼を食べた後で、少しお庭を歩いてみましょうか」

「暖炉は………」

「ふふ、暖炉の前で二人でのんびりお食事しましょう?」

「うん…………」



本来魔物は暖炉を嫌うのだが、今日ばかりは特別だ。

暖炉の前で大切な人と語り合うという風習があるので、そこで得られる大切な人という称号と、そして昨年の試みでご主人様にべったり膝枕という楽しみを見付けてしまった魔物は、数日前からそわそわと暖炉の部屋を丁寧に結界で祓い清めていた。



「まずは、厨房でスープを作りますね。そして用意して貰っていたパンとバター各種で、のんびりお食事しながらぬくぬくしましょう」

「…………スープは」

「勿論、グヤーシュにしますよ!ただ、クリーム風味の白いものも作れますが、どうしますか?」

「………白いのにしてみようか」

「ええ、ではそうしましょうね。夜には強くて甘みのある蒸留酒を使ったクリームソース煮の肉団子に黒すぐりジャム添えと、ジャガイモの軽いチーズグラタンに、ぴりっと辛めのパスタを作る予定です」

「みんな君が作ってくれるのかい?」

「ふふ。ディノが喜んで食べていたものの中から、私も大好きだったものを選んでみました。久し振りに一日手作りご飯ですので、好きなものを食べましょうね」

「ご主人様…………」



大事にされた魔物はへなへなとなってしまい、ネアは、そんな魔物の指輪がいつの間にかネアのあげた結晶石になっていることに気付いた。

これで、主石はネアの髪の毛から紡いだ宝石に、そしてリングの部分もネアが育てた宝石となるのだ。

とは言え、ニエークが提供してくれた雪の結晶石もここ一年間はディノの指輪として活躍したものなので、ネアはそれもまた別のものに変えて活用することを提案してある。



「ディノ、………何をしているのですか?」

「君もお揃いにする」

「あら、私の髪の毛を三つ編みにしてくれるのですね?」



どうやら魔物は二人きりの時間にはしゃぎ出したようだ。

そんなディノを見ると、その無防備な愛情に心の澱やネアの人間としての邪悪なところが剥がれ落ちて綺麗になるような喜びを覚える。

前の世界で、愛くるしい子犬や子猫を飼い始めた人達が突然世界に優しくなったことを思い出し、やはり無垢な愛情が齎す幸福は浄化作用があるのだなとネアは考えた。


(それは多分、違う生き物だからこそ得られる喜びというものでもあるのかもしれない)


そういう意味では、自立は出来るが無垢な生き物というこの魔物は、何とも素敵な存在ではないか。


うっかり寝ている間にうつぶせ寝になってしまったりもしないし、それでいてこつこつと育ててゆくことも、その行為に一緒に成長することも出来る。

更には、ネアより遥かに年長者で頼もしいという部分もあり、大雑把で心の柔軟性の低いネアにとっては万能の同居人なのだ。




厨房に行くと、ネアはお気に入りの包丁を取り出し、これまたお気に入りの白い琺瑯のお鍋を取り出した。

お花も生けてあり、アルテア監修で小綺麗になった厨房は、何ともお気に入りの空間だった。


アルテア曰く、来年のお誕生日にあの土地の上物をくれる際には、この厨房に空間連結をして厨房はここを使うようにしてくれるのだそうだ。

そうするとこの場所も末長く使えるので、ネアはそんな心遣いに感謝していた。



(でも、アルテアさんのそういうところが大好きなんですよと言ったら黙り込まれた挙句にぷいっとされてしまったから、その繊細さに気付かれるのは嫌なのかしら?)



まったく、難しい魔物だ。

とは言えウィリアムも、それなりに小難しいところがあるのでみんなそんなものだろう。

そういう揺らぎの有無においては、大切なものを幅広く持つノアが、気難しい魔物としての拘りの部分は自分で上手く処理する器用な人だ。




「…………ディノ、今年はどんな年になるのでしょうね」

「ネアが側にいる年かな」

「むむ。そういうことではなく……」

「ネアが可愛い………」

「質問の難易度が高かったようです………」



そんなやり取りをしながら、ネア達は遅めの朝食兼昼食を完成させると、暖炉のある部屋に移動した。



火織りの毛布を一枚持ち込み、それを膝にかけて暖炉の前に陣取ると、ディノがこの日の為に手に入れてくれていた、長椅子風座椅子のような座面が低く背もたれのある暖炉用の椅子を出してくれた。


そんな椅子に合わせるテーブルは、足の部分の結晶石が用途に合わせて都度育ったり退行したりする、生きているテーブルなのだ。


最初は床の上に置かれた天板の部分だけに見えたが、ディノが綺麗な指先でついっと触れると、ぱきぱきと音がしてテーブルの足が育ち始めた。



「………綺麗なテーブルですね。森結晶みたいな、けれどもっと深い青緑です」

「育ち枯れてゆく記憶を溜め込んだ、森の記憶そのものの結晶石なんだ。昔は、大国の王族に子供が生まれると、この結晶石で机を作ったものだ。成長に合わせて高さを変えられるし、何しろとても貴重なものだからね」

「成る程、権威の象徴でもあるのですね」



その美しいテーブルの上には、ネアの作った白いグヤーシュと、ほかほかの焼きたてを保持するふかふかパン。

ホイップバターに、ラベンダーの香りの熟成バター、ぴり辛カイエンバターに、ちょいレアのお肉のペーストと、それだけでも素晴らしい。

おまけにそこに、無花果ジャムと、梨とオレンジのジャムもある。



「…………いい食事だね」



ほろりと微笑んだディノに、ネアは思いがけない喜びを貰った。



「ええ。ディノと一緒にこうして食べるのが、最高に素敵であたたかな気持ちになります」



なので勿論、ネアもそう答える。

すると魔物は、自分からほっこりし始めたくせに、きゃっとなって顔を両手で覆ってしまう。



「…………ディノ、また今度、一緒に海で遊びましょう?サムフェルにも行きましょうね」

「…………水着」

「水着を着ると、ディノが上着の裾を引っ張って下げに来るのですよね」

「隠さないとだからね」

「あらあら。あれでも、海での正装なのですよ?」

「ご主人様が虐待する…………」

「むむぅ」



こぽこぽと音を立てて注がれるのは、新年用にとっておきで用意しておいた祝福の強い満月と夜の虹の下で手摘みされた紅茶だ。

澄んだ藍色の不思議な色になるが、きちんと美味しい紅茶の味がする。

そして、カップの紅茶の水面には必ず満月が見えるのだ。



「ディノ、お揃いの三つ編みの私はどうですか?」

「ネアはいつも可愛い…………」

「ふふ。また今度、お揃いにして下さいね?」


ディノの三つ編みは少し不恰好だが、その歪さが逆にゆるふわ感を出してくれて、ネアを何倍増しかでかなり可愛く見せてくれる素敵な三つ編みだった。

リボンが縦結びになってしまっているのが、見ているだけで口元がもぞもぞする可愛さだ。



「このグヤーシュも美味しいね。いつものグヤーシュも好きだけれど、これもとても好きだ」

「まぁ!ではまた作りましょうね」

「うん」



食事が終わると、ディノは待ってましたと言わんばかりにネアの膝の上にとさりと頭を乗せた。

微笑んでその髪を撫でてやると、ほっとしたように、それでいてはしゃぐように瞳を煌めかせる。



「…………ネア、どこにもいかないでくれて有難う」




ぽつりと、ディノはそんなことを言う。

目をぱちぱちさせ、ネアは視線を彷徨わせた魔物の顔を覗き込んだ。



「ディノ?」

「……………本当は、婚約の更新の日に言おうと思っていたんだ。……でも、上手く言えなかった」

「いつ言って貰っても、とっても嬉しい言葉です。ディノも、私を見つけてくれて有難うございます!」

「…………ネア?やはり、更新の日に言えば良かったかな?」


ネアがぱっと顔を上げたので、ディノは少し不安そうに瞳を揺らした。

うっかり怖がらせてしまったので、ネアは苦笑する。


「ぱっと顔を上げてしまったのは、こうして顔を下げてしまうと頬っぺたのお肉が下がって不細工になるからです!私としたことが、とんでもない危険な技を使ってしまいました」

「ご主人様はいつも可愛い…………」

「ちらりと下を向いてもディノの目を見てお喋り出来るのに、なぜにあんな風に下を見てしまったのでしょう………。不覚」

「ご主人様…………」



しんしんと雪が降り積もる。



その雪の降り続ける様を窓の向こうに見ながら、ぱちぱちと燃える薪を眺める。

薪の燃える独特な香りは、魔術の仕掛けで心地が良い程度にしかこちらには漂ってこない。

時折、からりと薪が崩れネアはその音にも胸がほこほこした。



さりさりとディノの髪を撫でて、ネアはその感触にむふぅと満足の息を吐く。

これで変態でさえなければ最高なのだが、そんなところも、最近は少しだけ完璧さを緩める隙のようで好きかもしれないと考えてしまう。



「ディノ、………大好きですよ」



すーすーと寝息を立てていたので眠ってしまったかと思ってそう言うと、魔物はぴっとなってしまい、顔を覆ってじたばたし始めた。



「む。さては寝ているふりでしたね?」

「ずるい。ネアが可愛い………」

「むむ!逃げてはいけませんよ!慣れるのです」

「ずるい…………。可愛いことばかりする……」

「どうしてこちらの表現には慣れてくれないのでしょう。謎めいています」



暫くはじたばたする魔物を宥めたり、二人であれこれお喋りをしていると、ネアもすっかり眠ってしまったようだ。




(………………おや)




ぱちりと目が覚めた。

体はほかほかしていて、ぱちぱちと燃える薪の音も聞こえる。


膝の上にはディノが頭を乗せてすやすやと眠っており、特に異変はないようだ。

それなのに、何かが気になったネアはそろりと視線を巡らせる。




「……………む」



すると、ディノが体を横にしている反対側に、誰かがすやすやと眠っているではないか。

その誰かが肩にずしりと頭を乗せているので、ネアは身動きが取れなくなって目を覚ましたのだった。



(ノアかな………………)



ノアが時々そうして甘えてくるので、ネアはぎゅっと固定されてしまっていた手をその誰かの腕の下から引っ張り上げて、肩に乗せられた頭の白い髪をそっと撫でてみた。



「なぬ。なぜなのだ…………」



するとそれはノアではなく、なぜか疲れ果てて眠っている風のアルテアではないか。

ネアが手を持ち上げたまま固まっていると、気配の変化を感じたのか、ぐぐっと瞼を揺らしてからふっと瞳を開けた。



「…………不法侵入でしょうか」

「お前に靴を取られたからな」

「む…………」

「それと、…………もう、忘れてないだろうな?」

「…………アルテアさん、実はとても寂しがりやさんなのでは…」

「やめろ」

「でも、昨晩は忘れてしまってごめんなさい。もう呪われないで下さいね」

「…………二度と御免だな」



そう言って深く息を吐くと、アルテアはまた目を閉じてしまったので、ネアはぎりぎりと眉を寄せた。

一度になれる枕はお一人様までである。

血流的に、それ以上はただの人間には荷が重い。

頭というものはそれなりに重いではないか。



困り果ててむぐぐっとなっていると、次の侵入者が、ふらりと戸口に現れた。



「やれやれ、困ったことになってるな。すぐにどかそう」

「ウィリアムさん!」



微笑んで頷いてくれたウィリアムは、容赦なくアルテアの頭を掴むとネアの肩から撤去してくれた。


何でも昨晩の内に、ウィリアムが感じた終焉の予兆が本当に消えたかどうか、本日中に一度みんなで確認にくると決まっていたのだそうだ。

ネアは後半はすっかり酔っ払っていたので、そのやり取りを聞いていなかったらしい。


「それで、確認に戻れるように、結界に元々道筋をつけていて貰ったんだ」

「それでこちらに入れたのですね」



だから閉じた筈のリーエンベルクに入れたのかとふむふむと頷いていると、新年の安息日は戦場でも終焉が姿を見せないこともある恩赦日となるらしく、ウィリアムは少しだけ休むことが出来るそうだ。


一度は放り出されたアルテアも戻ってくると、なぜか二人とも暖炉の部屋で寛ぐ感じになる。



「…………アルテアさんも、ひと休みですか?」

「新年だからな。王都での祝いでうんざりだ。あの王妃は最悪だな」

「怖いと噂の王妃様ですね…………」

「精霊に好かれるのも納得の人格だな。俺は二度と御免だ」

「むむ、お疲れ様でしたね。ウィリアムさんも、またしても顔色が……」

「今回の戦場は狭い分、敵味方になった親族同士が多くてな。やるせない戦場なんだ」

「それは、胸がきゅっとなりますね。少しでもここで休めるといいのですが………」


さすがにネアの膝の上で目を開いた魔物が、ここは自分のテリトリーだとしゃーっと威嚇をしているので、ウィリアムもアルテアも怯えてしまったのか、その後は近くには寄ってこなかった。


しかし、ウィリアムは窓際の長椅子にどさりと潰れてしまい、アルテアも本来暖炉の前にあったものを部屋の奥に移動してあった肘置き付きの素敵な揺り椅子に収まると、くたりと眠ってしまった。



「…………お疲れのようですね」

「なぜここに来てしまうのかな」

「結局皆さん、寂しがり屋さんなのかもしれませんね」




しかし翌日に戻って来たエーダリア達に、ウィリアムとアルテアがくしゃくしゃだったのは、大晦日の夜に荒ぶったネアに、コルヘム百倍なるものを飲まされてしまい、まだそのお酒が抜けきっていなかったからだろうと言われ、ネアはいたく反省したものだ。




新年の安息日は、すやすやと眠る魔物達に囲まれ、ネアは穏やかな一日を過ごした。

こんな日があってもいいのかもしれない。



ただし晩餐の準備の時に、お料理の材料は二人分しかないと言うと、ウィリアムとアルテアはどこか愕然とした顔をしていた。

安息日のウィームは、食材を買い足そうにも、お店も全てお休みだったのだ。











薬の魔物の解雇理由の本編は、明日の更新はお休みになります。

明日の更新は、薬の魔物達が登場する白雪姫なお話の更新のみとなりますこと、どうぞご容赦下さいませ。


次回の更新は三日になりますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです!

どうぞ宜しくお願い致します。


桜瀬 2018.1.1

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