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死の森と木の繭



そこは、穏やかな森の外れであった。



ぱりぱりと落ち葉を踏んで、昨晩の追跡を逃げ延びた者を追う。


「言っただろう?何人たりとも逃れることは許されないのだと」


穏やかな声でそう言い、息を潜めた森の中でその気配をゆっくりと辿る。

その先では苦しい息を必死に殺す者の気配と、その者を抱き締めこちらに憎悪と絶望を向ける守護者の気配。

届く眼差しの鋭さはいつものことで、懇願に血が滲むのも昔から変わらない。



(しかし、あの檻から逃げ出す者は珍しい……)



その滅多にないことを可能にしたのは、王家に昔から伝わる秘宝だったのだそうだ。

しかし、彼等は逃げ延びる際にその理由を口にしてしまい、こうして終焉に追いかけられる羽目になってしまったのだ。



「…………どうしてなのだ。この恩寵は、かつてあなたが与えたものではないのか」


そう叫ぶ声は、どこか悲鳴にも似ていて。

そう言って豪奢な首飾りに仕立て上げられた宝石をかざすのは、ウィリアムが知りもしなかった一人の男だ。


彼の手の中にある深紅の宝石に目を眇め、ウィリアムは小さな溜息を吐く。


「彼は、やはり自分では使わなかったのか。それは、君に与えたものではない。ましてや、それを利用して運命から狡猾に逃れようとした者に情けをかける理由が、どうして俺にあるだろう」



その男が握り締める宝玉は、かつてウィリアムが友のように過ごした若い王子に与えたものだ。

その王子は運を味方につけ、正当な魔術の理の賭けの下にウィリアムからその宝石を与えられている。

三回だけ死の手を避けるという恩寵を与えられたその宝石は、やはり本人が使うことはなかったようだ。




(もう、どれだけ昔のことになるだろう………)



その宝石を与えた時、ウィリアムはカードで負けたのだった。

あまりその手の賭け事はしないのだが、その時は王子がウィリアムの正体を知った上で、人間に紛れた高位の魔物からその守護を得ようと張り巡らせた策略に躓いたのだ。

そんな豪胆さに感心したし、決してカードには弱くないウィリアムに勝負で勝ってみせただけの能力にも脱帽した。

だからこそ、彼に与えた彼の為のものなのだ。



ふと蘇るのは、賭けカードに勝って声を上げて喜んだ青年の姿だ。

ウィリアムは苦笑して、彼の勝利に恥じないだけの祝福を、彼が受け継いだ王族の証である赤い宝石に込めた。


その夜のことを思い出さねばならない目の前の男との邂逅があり、先日ウィリアムは、ネアから誘われたカード遊びを断っている。

その日のウィリアムは、戦場でこの宝石を免罪符に鳥籠から逃れた一団に遭遇した直後であった。


(…………彼に似た要素はないし、彼があの後伴侶を得たという話は聞かないな。となると、血族に残したという訳でもないのだろう)


かつて、この赤い宝石の持ち主だった王子は、やがて王となり、その国が内乱で滅ぶまで王であり続けた。


彼の最期は戦場で自ら剣を振るい、返り血で剣から手を滑らせ敵兵に討たれたのだと言う。

或いは、内乱に疲弊しきった民衆に捕らえられ処刑されたのだとも。

復讐に取り憑かれ国を滅ぼした若い王は、今でも亡霊となって戦場に現れると噂されている。


しかし、実際には亡霊となってその王が蘇ることを恐れた者達の手によって、海に沈められ海の系譜の者達の餌となったのだ。

だから彼はとうとう、ウィリアムの治める死者の国にすらやっては来なかった。



友人だと考えていた。



実際彼もそう言ったし、それはウィリアムが人間ではないと知られた後にも続いたものだ。

しかしそんな日々は、彼が生涯をかけて結ばれたばかりの妻と、生まれたばかりの子供を亡くしたことであっけなく終わってしまった。


その二人は、敵国の王子と王女であったのだという。

外遊先でのお忍びで出会い、二人はお互いの祖国を欺き国を変える覚悟で結ばれた。

そこに至るまでに多くの犠牲を払い、王子は自らの父を手にかけすらした結果、二人は敵対していた二国を結ぶ架け橋として伴侶になったのだ。


だからこの宝石は、持つべき者を、使うべき場面を良く考えるようにと、あれだけ言い含めたのに。


それなのに王子は、調印式に宝石を持ってゆき、その留守の間に城で蜂起した保守派の兵達の手によって、彼の人生をかけて手に入れた妻子はあっけなく殺されてしまった。

妻と幼い子供の遺体に取り縋り、なぜだと慟哭した彼に詰め寄られ、ウィリアムはどんな言葉をかけるべきだったのか。



生きるべきか、生かすべきか、どちらを選ぶのかを彼が考えたのかはもう分らない。

国を出る前の彼に、保守派が不穏な動きをしているが大丈夫なのかと声をかけたウィリアムの言葉を、彼がその後思い出したのかどうかも。



終焉の魔物としてその場に現れたウィリアムに、どうして見殺しにしたのだと斬りかかってきた王子は側近達に取り押さえられ、ウィリアムは踵を返すと鳥籠を張る為にその場から立ち去った。

保守派の貴族達とその貴族達に頷いた兄王を相手取り、復讐を始めた王子の手によって、その国は五十年にも渡る長い内戦への道を進むことになる。



あの夜から、どれだけの月日が経ったことか。



(もう一度、この宝石を目にするとは思わなかった………)



死蔵されていたものか、或いは機会を窺っている内に持ち主達が死んでしまったのか、深紅の宝石は今、回りまわってカルウィの王弟の息子の手にある。

そしてその契約の精霊の手によって、カルウィの西南部で起きた戦場より鳥籠を逃れ、ヴェルクレアのとある森の中にまで逃げ延びる為の盾となったのだ。



「成程な。君は腐食を司る精霊か。その宝石の制限となるべき部分を腐敗させ、都合良く使えるように改変したんだな」


男を抱き締めた精霊は、美しい黒髪の女だった。

黒曜石のような瞳に憎しみを込めて、こちらを睨んでいる。


「なぜなのです、終焉の王よ!鳥籠を離れてまで、あなたが特定の者達を追って滅ぼしたことなどありますまい。それなのに、なぜ今回ばかり!やはり、あのロアド王子はあなたに何かを囁いたのですね?」

「誤解しているようだから言っておこう。俺は、誰かの為に生かす訳でもなく、誰かの為に殺す訳でもない。今回は、君達が終焉というものの理を冒した結果だ。抜け道が作れないということはないが、抜け道を見逃す訳にもいかないんでね」


森には血臭がたちこめ、けれども地面に転がるのは骨となった躯ばかり。

死者の王が振るう剣で殺された生き物達は、こうして一瞬で骨と成り果てる。



腐食の精霊の手で、数十年の月日をかけて一部の効果を書き換えられた赤い宝石は、その持ち主である個人ではなく、持ち主を警護する騎士団や代理妖精達の逃亡も可能にした。

特定の者の死を三度回避する筈が、魔術誓約の一部を腐敗で削ぎ落とされ、範囲をなくして使われたこの宝石のお陰で、百人近い逃亡者を出す羽目になってしまったのだ。



(やはり、俺は細かい調整に長けてないな。二度とこういうものは作らないようにしよう)


幸いにも鳥籠は閉じる頃合いであったので、ウィリアムは後始末を系譜の者達に任せ、逃亡者達を追跡し刈り取ってきたのだが、後始末に三日以上もかかってしまったのはつくづく相性の悪い相手だったと言うしかない。



「…………では、私は私の矜持において、契約の王をお守りしましょう」


ウィリアムの表情を見て、腐食の精霊はどこか澄み渡った微笑みを浮かべた。

追跡の中で気付いたのだが、この二人は恋人同士なのだろう。

であれば、こういう場面での精霊の戦い方は一つしかない。

ウィリアムはその瞬間に備えるべく、魔術を編み、目を細めた。



「チャルチ?!」

「お逃げ下さい、我が君」

「な、……お前、まさか?!……チャルチっ!!」


言うなり精霊は契約主を後ろに突き飛ばすと、素早く自分の胸に持っていた剣を突き立てた。


「………っ、私の命を糧に、終焉の魔物…………の手足を腐敗で腐り落としてくれる」



呪詛の言葉を一気に吐き出し、精霊はどうっと地面に倒れた。


吹き出す血飛沫に悲鳴を上げて取り縋る男を見ながら、ウィリアムは飛散した血に翳した片手を素早く斬り落としながら、精霊の呪いをその腕のみで完結させるべく小さな鳥籠を張る。


ざあっと黒い霧が凝るように切り落とした腕を元に戻せば、血と涙に濡れた顔を上げた男が暗く濁った瞳をこちらに向けた。

もう、精霊の亡骸はどこにもない。

人間とは違い、精霊も遺体を残さない生き物の一つだ。



「……………命を懸けた精霊の呪いすら無効化してしまう。あなたは、何とおぞましい存在なのだ」


そう囁いた男に、ウィリアムは小さく肩を竦めた。


「俺とて魔術の理は変えられない。ただ、回避の仕方を知っているだけだ」



だからこそあえて呪いを受けた腕を自ら落したのだが、そんなことは今のこの人間には理解出来ないのだろう。

愛する者が命と引き換えにした魔術が成就しなかったと理解するだけの冷静さはなく、こうして今も愚かにもこちらに剣を向けている。

その無謀さに呆れ、ウィリアムは小さく溜め息を吐いた。


「少し、強欲が過ぎたな。君だけが、……或いは彼女と二人だけであれば、俺も鳥籠から抜け出した者がいたことには気付かなかったかもしれない。だが、さすがに今回は人数が多過ぎた」


もしかしたらそれは、彼の心を壊す言葉だったのかもしれない。


わぁっと意味を成さない叫びが続いた。


斬りかかってきた男の首を一閃で落として、続け様に地面に落ちた宝石を剣で砕く。

流れた血を払えば、愛剣は一度青白く燃え上がって穢れを払うと、一片の汚れもない姿に戻った。



高位の人外者には必ずしも必要なものではないが、こうしてウィリアムの剣、アルテアのステッキのように、自身の命の欠片を割り割いて作っている道具がある。

こういうものは気の遠くなるような年月をかけて少しずつ補強しているので、決して替えが利くものではなく、その分便利なものであった。


だからこそ、重要視させまいと毎回作り変えているように見せ、実際には一つのものを擬態させて使いまわしているアルテアとは違い、己にとっての唯一のものでありながらも落してしまう、ヨシュアのような迂闊な者もいる。




(確か、まだ代理妖精が一人残っていた筈だな………)


その時、背後に無防備な気配を察して、ウィリアムはゆっくりと振り返った。

しかし、そこにいたのは生き残った妖精ではなかった。



「……………ネア」


呆然と呼んだその名前は、ここに居る筈もない人間の名前だ。

ぞっとして周囲の惨状を思えば、ネアは鳩羽色の瞳を大きく瞠って、両手で口元を覆っていた。



「どうして、ここにいるんだ?」


答えがないのでそう問いかければ、ネアは意味もなく首を振ってしまってから、自分でもその行為に気付いたのか、小さく眉を顰め、体の強張りを解くように深く深く息を吐いた。


「ノアが………」

「ノアベルトが、ここに連れてきたのか?」

「ええ…………」

「シルハーンは?」

「お庭でムグリスディノ姿で遊んでいたところ、エーダリア様が不用意にも人面魚さんを桶に入れっぱなしにしていたその桶に落下しまして、恐怖のあまり寝込んでいます。今も胸元に入っていますよ」

「そうか、完全に一人じゃないんだな、ほっとした」


とは言え、こんな場所にネアが一人でいることが我慢ならなくなって、ウィリアムは手を伸ばそうとして少しだけ躊躇った。

振り返った瞬間に見た、ネアの怯えたような目を思い出したのだ。



(一体、どうしてここに一人で来てしまって、どこから見ていたのか……)



らしくなく気鬱になって剣を仕舞おうとする。

けれども直後、短く息を飲んでネアの肩口を掠めるようにして、その背後に立った妖精に剣を投げつけた。

絶命の声を上げる間もなく、ネアに忍び寄った妖精は塵となって崩れ去る。


「……………っ、」


そう短く声を上げたネアの顔色は真っ青だが、事前に声をかけている余裕はなかった。

ネアが現れたことで油断してしまっていたのか、妖精が一人残っていることを失念しかけていたのだ。

忸怩たる思いで唇の端に微笑みを作りつけ、怖がらせないようにゆっくりと歩み寄る。


しかし、足元に折り重なった亡骸を踏んでしまい、亡骸の骨の砕ける音に小さく溜め息を吐いた。



「………すまない、怖かっただろう」

「………いえ、とてもびっくりしましたが、ウィリアムさんは、悪い奴を退治してくれたのです。この方がどんな由縁のどんな方であれ、悪さをしようとしていたから、滅ぼしてしまったのでしょう?」

「…………いや、生き延びようとしていただけなのだろう。だが、仕事だったからな」

「その割には、私は背後から忍び寄られたような気がするのですが………」

「俺が君と話しているのを見て、君を盾にして俺を攻撃しようとしたみたいだな。………ネア、ノアベルトと一緒に来たのなら、ノアベルトはどうしたんだ?」

「べたべたにされて、少し後ろに転がっています」

「…………ん?」


思わず首を傾げてしまったウィリアムに、ネアはどこか遠い目をした。



「この有様ですので、何かみなさんで大騒ぎをしたのでしょう。我慢ならなくなったあちらの大木が荒ぶりまして、急に大きな口を開けたかと思ったら、べたべたするお餅のような粘液を吐いたのです。ノアは私を庇って犠牲になり、死んでしまいました」

「…………ノアベルトが」

「ええ。お餅が繭のような塊になり、自力では出て来れないのだそうです」

「………ノアベルトが、自力では出られないのか」

「ですので、ウィリアムさんがお急ぎでなければ、ノアを助けてあげてくれないでしょうか?」

「ああ。それは構わないが、…………粘液?」


ネアの示す方に行こうとして歩み寄れば、こちらを見たネアの視線の鋭さに胸が重苦しくなる。

ガゼットの殲滅戦で出会ったのだし、そもそも終焉というものがどういうものなのか、悪夢の中でその一端を見せてはいる。

だが、今回のように凄惨な現場を見せるのは初めてなので、怯え警戒するのは当然のことだろう。


「ネアはどうしてこちらに来たんだ?」

「元々この辺りに枝削ぎさんが現れたと、お友達の近隣住民の方から聞いていたのですが、今日はまた別の近隣住民さんから、終焉の魔物が暴れているという情報を得まして、一緒にいたノアと、何事かと思って慌てて駆けつけてきたのです」

「鳥籠から不正に逃げ出した者達を追っていたんだが、森の住民からすると俺が暴れているという認識になるんだな……」

「剣を持ってがおーとやっているように見えたのでしょうね。………これだけの有様になっていますし」


この森に逃げ込んだのは、三十人程度だ。

騎士達や魔術師、そして代理妖精もいたので、確かに森は小さな戦場のようになっている。

それはウィリアムを退けるべく展開された術式が大規模なものだったからなのだが、被害を広げないようにと気付いて結界を展開するまでに、ある程度の損傷は出してしまった。

隣接するブナの森は無事だが、こちらの針葉樹の森は惨憺たる有様に近い。


代理妖精の一人が起こした嵐により、見事な木が何本も倒れてしまっているし、濃密な血臭はそのままだ。



「すまない、少し刺激が強過ぎたな」

「……………腕は、ちゃんとありますね?」


伸ばされた手が自分の腕を掴むのを、ウィリアムは呆然としたまま見ていた。

指先が触れる際になぜか息を詰めてしまい、真剣に片手を検分されるに任せる。

ネアに、ウィリアムに触れるのを恐れるような素振りはなかった。


「俺が、腕を落すのも見ていたのか………」

「その瞬間にウィリアムさんを見付けたのです。あまりにも痛そうで心臓が止まりそうになったので、私は心の回復に時間がかかりましたが、………むむ、何やら元通りのご様子……」

「ああ。精霊の呪いを封じ込める為に切り捨てただけだからな。あの程度であれば、すぐに元に戻せる」

「ちゃんと動きますか?痺れていたり、具合の悪いところもありません?」

「……………ネア?」

「人間めにはよく分らないのですが、切り落として何の損傷もないものなのでしょうか?髪の毛ならともかく、腕を肘下からばっさりだったのです……」


悲しげにそう言われ、ネアはウィリアムの腕をなぜか抱き締める。

ぎくりとしてなぜ抱き締められたのだろうと問えば、温かいですねと言うので温度確認だったようだ。


「…………心配してくれたんだな」

「勿論ですよ!お餅まみれのノアに仰天して、助けを求めるべくウィリアムさんの声の方に走ったのですが、まさか腕を剪定している場面に遭遇するなんて。ぐーに拳を握れなかったりしません?」

「はは、ネアは心配性だな」


笑って剣を手放して魔術の粒子に戻すと、微かな躊躇を覚えつつ、そっとその頭を撫でた。

心配して当たり前ではないかと叱られつつ、粘液まみれになったというノアの所に一緒に向かう。



なぜだと問われることが多い。

そしてその多くは、絶望に濡れた瞳か、血を吐く口から発せられる。

憎まれ、剣を向けられ、おぞましいと罵られることも決して珍しくはない。


特に今回は苦い思いを呼び起こす事件だっただけに、今夜は一人で砂漠のテントに籠ろうかと考えていたところだ。

しかし、何も考えずに星空を見上げる夜の代わりに、今はこうして自分の手を引っ張るネアを微笑んで見下ろしている。




なお、ノアベルトの様子は思っていたよりも芳しくなく、ウィリアムも、やっと意識を回復してムグリス姿ながらに事情を聞いたシルハーンも、古木の吐いた粘液をどうすれば剥がせるのかは誰にも分らなかった。

慌てて隣接するブナの木の森に住む森の賢者の力を借りることになり、立派な茂みになるまで枝葉を伸ばしたその賢者は、家にあったそれ専用の銀色の鋏で、さくさくと粘液の繭を綺麗に切り開いてくれた。


その後、酷い目に遭ったと項垂れるノアベルトと一緒に、トトラという森の賢者の家でお茶を飲ませて貰ったウィリアムは、風竜の子供にトトラという名前を持つ一族がいた話をし、久し振りにのんびりとした時間を過ごせた気がする。



「この前、カードに誘ってくれただろう?」

「むぐふ」


金庫から持ち出して広げた焼き菓子を頬張りながら、ネアがこちらを見る。

ウィリアムを怖がる様子はないし、特に本心を隠している様子もない。


「今度は俺も誘ってくれ。あの日は、カードを上手くさばける自信がなかったんだ」

「それなら、第二回大会の時には是非来て下さいね。私は強いですよ!」



そう無邪気に微笑んだネアを見て、ウィリアムは酷く穏やかな気持ちになった。












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