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雨降らしとボール投げ要員



その日のネアは、とある任務に邁進していた。

リーエンベルク前の広場にある大きな木に、風で飛ばされたボールが引っかかっているのを、拾って来た木の棒で落とそうとしていたのだ。


嵐も来ていないのに何故ボールが木に引っかかったのか、そもそも、どうしてノアが元の姿に戻って自分で取らないのか、謎だらけだが仕方あるまい。


けばけばになって涙目でムギーと泣いている銀狐に、ネアは微笑んで男前に頷いてみせる。

そして、見つけ出してきた長い棒でていっと枝に引っかかったボールをつついた。



「むぅ。なかなか上手く固定されていますね。もう少し大きく枝を揺らせるといいのですが」


ディノか、羽のあるヒルドを呼べるといいのだが、そもそもここにはノアがいるのである。

お風呂中のディノや仕事中のヒルドを呼ぶのはどうだろう。

しかしその塩の魔物の筈の銀狐は、一撃でボールが落ちてこなかったことにけばだって足踏みしていた。

びょいんと跳ねてムギーと鳴くので、ネアはもう少し待ちたまえと言うしかない。


「むむむ。やはりしっかり枝の間に嵌ってしまっていますね。本当に風で飛んだのでしょうか?……苛めっ子がいるのではなく?」


棒でつんつんしても動く様子がないボールに、ネアにそう尋ねられた銀狐はけばけばになって首を傾げていた。

尻尾がブラシのようになっているので、苛めっ子に悪さをされている可能性を考えているのだろう。



実は先日、またお庭に現れた首無し馬の亡霊に、銀狐は追いかけ回されたばかりなのである。

ネアが以前お尻を蹴られた個体程に悪辣な感じはしないが、それでも尻尾にじゃれついた銀狐を怒って追いかけていたので、その可能性もあると思うのだ。


(風で飛ばされたにしては、枝の間に入り込んでいる感じがしっかりし過ぎているみたいだし、何というか、枝と枝を手のひらに見立ててぎゅっとしたような……)


そう考えてぞくりとしたネアは、大きな木から少し距離を取りじっと見上げた。

しかし、幸いにもこの木は動いたり荒ぶったりはしていないようだ。


ほっとして肩の力を抜いたとき、大きな枝ががさりと揺れた。




「このボールが欲しいのか?」



次の瞬間、穏やかで無垢な声が木の上から落ちてきた。

驚いて見上げたネアの腕の中に、なぜか弾んで飛び上がった銀狐がシュートインされる。

抱っこは構わないのだが、ここは護衛として機能するべき場面ではないかとネアは切なくなった。



そして、枝の上からこちらを覗いた生き物に目を丸くした。



「まぁ、何て綺麗な翼なのでしょう」


枝の上からこちらを見下したのは、はっとするほど透明感のある不思議な男性だった。

淡い紫色の瞳は無垢で、紫紺からの複雑な色合いの翼は幼気な堕天使のようだ。

藍色がかった黒い髪までを視界におさめて、ネアは、この生き物を以前にも見たことがあると思い出した。


「………君は、夏至祭でお菓子をくれた子だね」


相手も気付いたようだ。

こくりと頷いたネアに、少し困ったようにしてから淡く淡く微笑む。

すると、ネア的にはゼノーシュとダナエを足して二で割ったような感じの雰囲気になるので、是非に下りてきて貰って頭をなでなでしたい心持ちだ。


「覚えていて下さったのですね。そして、ええ、そこにあるボールは、この狐さんの大事なボールなのです。取って欲しいとせがまれていまして、棒でつついたのですがしっかりはまってしまっているようです」

「落としてあげるよ。君には、美味しい砂糖菓子を貰ったから」

「有難うございます!」


相手は、謎かけというそこそこに厄介な試練を与える雨降らしなのだが、銀狐は警戒する様子もなく、尻尾をふりふりして喜んでいる。

ボールの優先度の方が高いらしく、ボールを取ってくれるだけでもう善人指定されたようだ。


そしてその雨降らしは、ひょいと指先を伸ばしてボールを取り上げると、ぽーんとネアの方に投げてくれた。

繊細な細い指の爪は綺麗な紫紺色で、掠れたような色付けが何だかお洒落な感じである。

綺麗な指の動きに見惚れてから、ネアは手を離してしゅたっと地面に下り立った銀狐の代わりに、落として貰ったボールを受け取った。


「有難うございます!……ほら、狐さん、良かったですね」


喜びに弾んで、銀狐が尻尾をふりふりする。

その口にそっとボールを咥えさせてやれば、もう二度と落とすものかと言わんばかりにしっかり咥え直した。


「小さな秋靄の妖精達がここに運んでいたようだよ。悪さをしたのかな」

「なぬ。そうだったのですね。教えて下さって有難うございます」


ネアはその妖精の名前に聞き覚えがあるので記憶を引っ掻き回して、山車人形祭りの前に、ヒルドから聞いたことがあったのだと思い至る。

確か、紐に毛玉のついたような形状の妖精なので、犬用玩具と勘違いした銀狐が追い回して叱られていた筈だ。



「狐さん、以前追い回してしまったので、復讐されたのでは?」


ネアの言葉に銀狐は目を丸くし、必死に首を傾げているようだ。

どうやらすっかり忘れているようで、ネアは秋靄の妖精達の復讐が悲しくなった。

考えてみたもののやはり思い出せないらしく、銀狐は濡れ衣であるという表情でじっとりとした目をする。

何だかまた仕返しされそうであるので、ネアは穏やかに窘めておいた。


「またボールを隠されてしまわないように、今度見かけたら謝っておきましょうね」

「………物を取ったのだからと、殺してしまわないのか?」


不思議そうにそう尋ねたのは雨降らしで、休憩していたらしい木の枝の上から首を傾げてこちらを見ている。

大きな翼はゆったりと閉じられており、ネアはその翼を広げた姿が見たいと思わずにはいられない。


「ええ。こうして森深い中に位置する領主館ですので、隣人の皆さんとは仲良くやってゆきたいのです。お庭には小さな家もあって、毛皮生物に住んで貰いたいと思っていますしね」

「………家は、作ったのか?」

「ええ。秋の入りまでは、ちびまろこと餅兎さん達や、ココグリスが住んでいたのですが、涼しくなってきたので渡りをしてしまいました。新規入居者を探しているので、現在は小麦を置いてムグリスを勧誘中なのです」

「………ウィームは不思議なところだな」

「ふふ。愛くるしい生き物達と仲良くなれれば、幸せな毎日が送れますからね」


ネアのその主張には、銀狐がけばだって抗議の声を上げた。

冬毛になっていっているという自負があるので、ご新規などに負けはしないという反抗の心である。


「………その狐は、………飼っているのだろうか?」

「いえ。狐さんは家族なのですよ。自分の部屋も持っていますし、お食事の席もみなさんと一緒ですしね」

「…………狐が」


雨降らしは少し驚いたようにそう呟き、なぜか少しだけもじもじした。

おやっと首を傾げて見上げたネアに、ぽそりとお願いを切り出す。


「その、………危害を加えたりはしないので、撫でてみてもいいだろうか」


思わぬお願いに驚いたネアは、目を瞠ってから、ふわりと微笑んだ。

もふもふを愛でる心は種族を超えるようで、仲間に出会った気分で嬉しくなる。


「勿論ですよ。手のひらや指に毒や武器がなければ、どうぞ撫でてあげて下さい」


何をされるのだろうと尻尾をぴしりと立てて凍りついた銀狐に、ネアはもふもふが素晴らしいので撫でてみたいファンが現れたのだと説明してやる。

その結果、銀狐は胸元のふさふさの毛を見せつけて、自分が世界で一番のもふもふであるというアピールに入った。

すっかりご機嫌で、いつでも撫でて宜しいという表情だ。



ばさりと、大きな翼が広げられ、はらはらと数枚の葉が舞う。

見事な翼の色と大きさにネアは思わず見惚れてしまい、大きく一度だけ羽ばたいて柔らかく地面に着地した雨降らしを受け入れた。


歩くのはあまり得意ではないのか、それとも銀狐を怖がらせないようにしているのか、ひょこひょこと近寄ってきた雨降らしは、ネアが撫でやすいようにと持ち上げた銀狐をそうっと撫でた。


大きな翼の間合いに入るようで少し緊張したが、見上げればもっと緊張しているのは雨降らしのようなのだ。

ふるふるする指先でそっと銀狐の頭を撫でてやり、本人からもふもふの聖地はそこではないと耳の下や胸元を撫でろと催促されている。

またそっと指先で丁寧に撫でて、ほうっと幸せそうな吐息を漏らした。



「もふもふがお好きなのですか?」

「………好きだ。でも、触ってみようとして追いかけると、死にもの狂いで逃げられてしまう」

「追いかけ方が、捕食のように見えてしまうのではないでしょうか?餌などで気を惹いて、優しく低い位置から撫でるといいかもしれませんよ?」

「低い位置から……?」

「ええ。小さな生き物は、上から迫ってくると怖いのだそうです。体を屈めたり、しゃがんだりしてあげると敵意がないと伝わることも多いようです」

「…………やってみよう」


生真面目に頷いた男性を見上げてネアも微笑むと、雨降らしは、はっとしたように少しだけ目元を染めた。

ついもふもふの魅力に負けて素直になってしまってから、何だか気恥ずかしくなってしまったようだ。

ネアには細かい服飾の名前まではわからないが、何だか王子様のような素敵な服装の生き物である。

とは言え紫紺色をベースに装飾も銀一色なので、華美すぎる感じはせずに人外の高位者のようでとても美しいばかりだ。


(鷹の翼を大きくしたものみたい。ラファエルさんのように二対の翼じゃないから、ますます天使のようで何て綺麗なのかしら……)



「これからの時期は、ムグリスのお腹が素敵にむくむくしていますよ」


ネアにそう教えられた雨降らしは、ぱっと目を丸くしてから控えめにそわそわした。

ムグリスを撫でてみたいのだろうが、残念ながらまだウィームのこの辺りには飛来してきていないようだ。

一番近くではディノなムグリスもいるのだが、見ず知らずの雨降らしにお腹を差し出されたらきっと嫌がるだろう。


「今度、ムグリスを撫でてみる」

「ええ。是非楽しんでみて下さい。麦を食べるようですので、撫でたあとに麦をあげると懐くかもしれませんよ」

「…………懐く!」


今度は喜びを隠しきれなかったのか、雨降らしはほにゃっと口角を持ち上げてしまった。

淡い瞳の無防備な表情のなんとも清純な微笑みに、見ているネアはその無垢さに心が温かくなる程だ。



「雨降らしさんは、ウィームに住んでいるのですか?」

「暫くは、ガーウィンに住んでいたんだ。だが、あの土地の生き物はあまり可愛くない……」


そう言ってしまってから、また雨降らしは少しだけおろおろとした。

引っ越しの理由を知られてしまい、視線を彷徨わせがちにするが、またすぐに銀狐を撫でてしまうので、こうして撫でられるのはよほど嬉しいに違いない。

銀狐も、何とも丁寧に撫でられるからか、よきにはからえな王様気分だ。


「では、これからはウィームに住むのでしょうか?」

「………夏至祭の時に食事をしに来たら、小さな生き物達がたくさんいた」

「もふもふ達と仲良しになる為に、こちらに引っ越して来たのですね」

「…………可能だろうか」

「小さき者達は、とても貪欲なものです。もふもふ達の好物を研究して、餌付けすれば可能だと思いますよ」

「餌付け………」

「ええ。美味しいものをくれる人は好きになってしまうのが、小さきもののさだめ。餌付けで騙して酷いことさえしなければ、根気強く接するとすっかり懐いてしまうものなのです。かくいう私も、悪さばかりする魔物さんがあまりにもお料理上手なので、致し方なく使い魔さんにしているくらいですから」

「つ、使い魔にしてしまうくらいなのか………。その、危なくはないのか?」

「ふふ。野生の獣さんのような時もありますが、それはそういう生き物なので当然なのです」

「………そんな風に」



ネアと使い魔な魔物の関係を聞き、雨降らしはもふもふとの素敵な未来に思いを馳せたようだ。

きらきらとした目で遠くを見たので、いつか自分も愛くるしいもふもふとの恒久的な仲良し関係を結べることを夢想しているのかもしれない。



「もし上手くいかなかったら、ムグリスが渡ってくる時期になったら、私を訪ねて下さい。私はムグリス狩りの名人なので、捕らえたムグリスを解放する役目をお任せします」


その提案に、雨降らしはぎくりとしたようだ。

人間の残虐さを知ってしまい、少し怯えたような目をする。



「ムグリスを捕らえてしまうのか」

「簡単に木から落ちてくるのです。危害は加えませんが、捕まってしまうことで怯えるので、解放してくれた方に懐く可能性が高いかと」

「………しかし、一度捕まえるのだろう?」

「むくむく毛皮をもみもみ出来ますよ」

「……………傷付けないのなら……」


一度はあまりにも残酷だからと抵抗を見せた雨降らしだが、あっさりむくむく毛皮への憧れに負けたようだ。

世の中とはそういうものなので、ネアも神妙に頷いておく。



そこで、門の向こう側で少し動きがあった。

ネアの名前を呼ぶ騎士の声が聞こえたのだ。

銀狐のボール探しで手分けしていた、ゼベルがネアを探しに来たらしい。


ばさりと、翼を振るう音がする。



「………俺は、そろそろ森に帰る」

「森にお住まいなのですか?」

「ああ。ここの森はとても豊かだ」

「雨降らしさんは、何を食べるのでしょう?森にご飯はありますか?」


ネアがここで食べ物の心配をしたのは、ダナエのように悪食だったり、領民を襲う生き物だと困るからだ。

そうすると雨降らしは、葉っぱ姿の妖精と、人間の雨待ちの信仰心、そして森の木の実や砂糖菓子を食べるのだと教えてくれた。


前の土地では昆虫姿の妖精を食べていたそうだが、ウィームにはいないので、独自に葉っぱ姿の妖精という食料を見出したらしい。

カリカリしているのが美味しいと聞き、ネアは異種族の味覚にほほうと唸る。


「領民の方に悪さをする方で討伐命令が出たりすると嫌でしたので、共存出来そうな鳥さんでほっとしました」

「………時々、謎かけもする。魔術を得る為に人間や妖精と戦う必要があるから」

「そういうことでしか、魔術は得られないのですか?」

「それが理なのだそうだ。でも俺は、あまり雨が好きじゃないから、魔術の補填は時々でいい。ここに来る前にガーウィンで一人食べたから、百年程は食べなくても大丈夫だ」


それを聞き、ネアは夏至祭の時は自分が狙われていたのだと言われたことを思い出した。


「鳥さん、私の魔術可動域は六ぽっちなので、私を攻撃して私の契約の魔物にくしゃりとやられないようにして下さいね」

「話していたら、可動域が低いのがわかった。最低でも五百はないと食べないから安心していい」

「ごひゃく…………」


ネアが固まってしまった理由を何と思ったのか、雨降らしは少しだけ居心地が悪そうに項垂れる。


「………狐を撫でさせてくれた。だから、もし魔術可動域が高くても食べない」

「………失礼しました。一瞬、五百な魔術可動域への憧れで目眩がしていました。食べないでくれて、有難うございます。百年くらい大丈夫なのであれば、また狐さんを撫でに来て下さいね」

「……………ああ」



次回の許可を貰い、ネアの腕の中の銀狐も丁寧な撫で方に尻尾をふりふりしたので、雨降らしは、またほわりと嬉しそうに唇の端を持ち上げた。



「…………俺の名前は、ミカエルだ」

「まぁ、素敵なお名前ですね。お名前を教えてくれて有難うございます」

「その、……鳥さんだと、他にも鳥がたくさんいる。ムグリスのことで訪ねた時に、誰だか分からないといけないから………」

「ふふ、それは大事なことですね。この通り、魔術可動域が六ぽっちなので、私のお名前を教えても大丈夫かどうかはうちの魔物と相談しなければいけません。お手数ですが、私を訪ねる時にはリーエンベルクの歌乞いをお訪ね下さいね」

「わかった」



ばっと翼を鳴らし、ミカエルは飛び立って行った。

その美しい姿を見上げて、ネアはほうっと溜め息を吐く。



「綺麗な鳥さんでしたね」


そう言えば、腕の中の銀狐は尻尾をふりふりした。


「狐さんは、あの鳥さんがボール遊びをしてくれそうだと考えて、ミカエルさんを追い払わなかったのでしょうね」


しかし、ネアにそう見抜かれた途端、銀狐はぱたりと首を落として寝たふりに入ってしまう。

ネアは仕方なく、ぐんにゃりした銀狐を抱いたまま、リーエンベルクの中に戻った。




「…………まぁ」



そしてそこに居たのは、すっかり荒ぶってしまったディノと、そんなディノを慰めているゼベルだ。

話を聞けば、ゼベルがご主人様を探しているディノを拾って来て、この門の内側のところで、また新顔の鳥と仲良くしているネアを見てしまったらしい。



「……………ネアが浮気する」

「あらあら。先ほどの綺麗な翼の方は、鳥さんですよ?」

「雨降らしなんて………」

「最近は食事をしたばかりなので、百年程は謎かけもしないそうです。なお、私はお食事対象には入らず、もふもふ好きのお仲間となりました。このように寝たふりで誤魔化していますが、狐さんもすっかり懐いたので、近い内にミカエルさんは狐さんのボール投げ要員にされてしまいそうですね」


ネアの説明に、ゼベルは遠い目をした。


「ネア様、………雨降らしは相手に服従する時と、その相手に好意を向ける時にしか名乗らないんですよ」

「ネアがまた浮気した……」

「私に名乗って下さったと言うよりも、ムグリスを捕まえたら撫でさせて欲しいので、必死だったのだと思います」



ネアがそう言えば、ディノは目を瞠って首を傾げた。



「ムグリスをかい?」

「ええ。ミカエルさんは、もふもふと仲良しになる為にウィームの森に越してきたみたいですよ。でもご主人様はとても優しいので、ムグリスディノを差し出すようなことはしませんでした。ディノも、見ず知らずの鳥さんにお腹を撫でられるのは嫌でしょう?」

「…………ネア以外の者に、触れさせることなんて許さないよ」

「ですから、ミカエルさんには野生のムグリスが渡って来たら、その子達を撫でさせてあげましょうね。もし森でお友達が出来なかったら、ムグリス狩りに連れて行ってあげようと思うのです」

「ネアが虐待する…………」

「ムグリス狩りなど、その辺を歩けば終わるでしょう?半刻もかかりませんよ」

「ずるい………」

「まぁ。それでは、ムグリスディノがお腹を差し出してあげますか?」

「……………ご主人様」



恐ろしい代替案を出され、魔物は目を瞠ってからふるふると首を振り、慌ててご主人様にへばりついた。

返答を間違えると生贄にされてしまいかねないと、危険を察知したようだ。


あんまり他所の生き物と仲良くすると、ディノ様が可哀想ですよとゼベルにも言われてしまったネアだったが、鳥カテゴリの生き物は長らく狙っていたので、策士の顔で次回以降は気を付けますと答えておいた。



(竜さんが駄目なら、鳥さんなら飼えるだろうか………)



密かな野望を抱え、ネアはすっかり拗ねてしまった魔物に捕獲されたまま、部屋に戻った。



なお、撫で方の妙技に陥落し、ボール投げ要員欲しさにミカエルを受け入れてしまった銀狐は、それを知ったヒルドにいたく叱られたそうだ。















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