白けものと青い首輪
その日ネアは、リーエンベルクの夏季休暇に向けて、エーダリア達と打ち合わせをして帰ってきた。
ディノは一足先に帰り、大好きなお風呂タイム中だ。
ネアが入浴剤を変えると聞き、ぴゃっと戻って行ったので、昨晩の入浴剤をまだ楽しみたいのだろう。
なのでネアは、銀狐と共に中央棟から戻る途中だった。
ちびまろ館を眺めながら帰れるようにと、外客棟を経由して戻るその廊下に、ネアは初めましての生き物を見付けてしまう。
「し、白けもの!」
歓喜の声を上げた人間に、廊下の端っこで大きな鏡張りの飾り扉を覗き込んでいた生き物は、長い尻尾を毛羽立たせた。
こっちを見た途端逃げ出そうとしたので、ネアは全力で駆け寄ってその見事な尻尾を鷲掴みにした。
「……ッュ?!」
いきなり通りがかりの残忍な人間に捕まってしまった獣は悶絶した。
尻尾がびぃんとなったので、真剣に逃げようとしていたのだろう。
「捕まえました!」
ネアがそう報告すれば、一緒にいた銀狐はムギーっと威嚇の声を上げた。
大事な住処に毛皮の競合が現れて猛り狂っている。
しかしネアは、捕まえた生き物が真っ白な雪豹に似た生き物だと知ると、頬っぺたを緩ませて尻尾を握り締める。
「ほわ、白けものさん!愛くるしくて格好良くて、もう二度と離したくありません!」
その途端お尻に何かがぶつかったので、むっと振り返れば、けばけばになった銀狐が飛び上がってお尻に体当たりしてきている。
「むぅ、嫉妬は醜いですよ、狐さん。狐さんはもう家族なのでいいではないですか。こやつは獲物です」
ネアはそう宥めすかしたが、どうしても我慢がならないらしく、引き続きネアのお尻に体当たりジャンプを繰り返している。
微笑みかけて銀狐を宥めつつ、掴んだ尻尾を引き摺り寄せて白けものも逃さないようにしているので、中々の重労働だ。
逃げ出そうとしている獲物の、じたばたしている後ろ足を掴んで引き摺り寄せれば、くわっと牙を剥いて威嚇したので、さっと抱き着いて押さえ込み、耳の後ろの毛をわしわしと掻いてやった。
「ふっ、いちころですね」
それが気持ち良かったのか、ふにゃんとなりかけた獣は、ネアの言葉で我に返ったようだ。
またしても暴れ出したので、ネアは右側の足を二本共掴んで、その体をひっくり返してしまった。
ふわふわの白い毛のお腹が剥き出しになり、けものはギャッと声を上げたが、そこに襲いかかったネアはわしわしとお腹を撫で回す。
本能には逆らえないのか、白い獣は今度こそうっとりと目を細めた。
獰猛そうで優美な獣がしどけなくお腹を撫でられている姿に、ネアは至福の境地である。
ふわふわのお腹の柔らかな毛を堪能し、途中で欲望に負けてぼふんと顔を埋めて頬ずりした。
そこでムギーと怒りの悲鳴が聞こえ、銀狐が走り去ってゆく。
あまりにも我慢し難い事態に、誰かに告げ口しに行ったのだろう。
この隙に白い獣を堪能出来るなと、ネアはしめしめと笑みを深め、なぜか固まってしまっている獣のお腹のふわふわを容赦なく撫で回す。
「ほわ、何でしょうかこの珠玉の白もふは!海の精霊さんを超える白もふに、まさかこんな短期間で出会えるとは!」
「………ッキュ。………フキュ」
「む!逃してなるものか!これからは私と一緒に暮らすのだ!!」
瀕死の声を上げて逃げ出そうとする白けものに、ネアはひしっとふわふわのお腹を抱き締めて取り縋る。
(まずい!このままでは、逃げられる!)
ネアはそこで、とても良い物のことを思い出した。
何とか片手で首飾りの金庫からそれを取り出し、指先の感覚だけで留め金を外す。
そしてそれを、ぴしりと白けものの首に振り下ろした。
カチャリと音がして、けものの動きがピタリと止まる。
そろりと目を向けているのは、自分の首元にはめられた綺麗な青色の首輪だ。
捕獲用の首輪なので、くるりと巻き付いて留められる仕掛けなのだ。
「捕まえましたよ!それはかつて、青い瞳の竜さんにあげようとしたものなので、残念ながらあなたの瞳の色とは合わないのですが…………、む、……綺麗な赤紫の瞳ですね。まるで、うちの雪豹アルテアが動き出したようなお姿です…………」
じっと見つめるネアと、凍りついたままこちらを見返す白いけものが向かい合う。
あまりにも悲しげな瞳でこちらを見るので、ネアはそっと手を伸ばしてその頭を撫でてみた。
「………まさかの、そっくりさんに会えるなんて!きっとこれはもう運命なのだと思います。うちの子になりますか?」
「…………ガウ」
ネアの言葉に、けものはがくりと項垂れた。
なぜか安堵しているようだが、少しふるふるしているのが愛くるしい。
「ウィリアムさんと毛皮の会を立ち上げたばかりですが、まさかこんなに近くで至高の白もふに出会うとは。………これはもう、ムクムグリスは用済みなのでは………」
しかし、ネアがそう呟いた途端、なぜかけものは目をきらりと鋭くした。
赤紫の瞳にどこか老獪な輝きが揺れると、まるで魔物のような神々しさを帯びる。
「あら、大人しくなりましたね。……ふぁっ!擽ったいです!」
唐突にきちんとお座りして寄り添ってくれた白けものは、ネアの頬にすりりっと顔を擦り寄せてから、ぺろりと口を舐める。
やっと懐いてくれたのかと相好を崩し、ネアは暫く好きなようにさせてやる。
これは獣の挨拶なので、拒絶したら可哀想だ。
その挨拶が一通り終わると、ネアは男前に口元を手の甲で拭ってから首輪に指を引っ掛けて、引っ張った。
「さ、こっちに来て下さい。寝台に入れる為には、綺麗にしなければなりません」
「グゥ?!」
「うちの魔物がそろそろお風呂から上がるので、一緒にお風呂に入りましょう!いつか、賢いペットと一緒にお風呂に入るのが、四歳の頃の夢だったのです!」
「ムガッ!」
「ほわ?!なぜにまた逃げるのだ!」
逃げ出した白いけものを追いかけようとしたネアは、背後から何者かに捕獲された。
「おのれ、なにやつ!」
追跡を邪魔されて怒り狂ったネアは、振り返って微笑んでいるけれど目が笑っていない魔物の姿を認めてぎくりとする。
「…………ディノ」
「ご主人様、目を離した隙にまた浮気かな?」
「いえ、………廊下で白い獣を見付けたので、皆さんの安全の為に捕獲したのです」
「一緒に入浴して、一緒に寝るつもりだったのかい?」
「…………聞かれていたようです」
しょんぼりしたネアは、廊下の向こうに消えていった白いけもののことを思った。
あっという間に逃げて行ってしまったが、結局のところ何者だったのだろう。
「そして、注文購入したバーレンさん用の首輪を持ち逃げされました」
「大丈夫だよ、もう二度と会う事はないと思うから」
「さては、ディノが脅したのですね!」
「君が入浴させると言って、怖がらせてしまったんじゃないかな」
「そう言えば、ネコ科の生き物は水が嫌いな子もいましたね………。宣言せずに、力尽くで連れ込んでしまえば良かったです」
「それと、なぜ口元を拭いているのかな?」
「けものさんに舐められたのです。ご挨拶ですから、致し方なく……ふぁっ?!」
目を瞠ってふるふるしているご主人様に、ディノはどこか酷薄な眼差しで目を細める。
凄艶な凄みのある美貌が際立つ表情だが、そうさせている理由が残念過ぎるので、ネアは悲しくなった。
「困ったご主人様だ。君は私のものなのだから、他の男にあまり気を許してはいけないよ」
「………ディノ、犬の挨拶の本家として張り合ってしまう気持ちはわかりますが、相手は愛くるしいけものさんです。敵対視してはいけませんよ」
「犬………」
「と言うか、けものさんが舐めた上から舐めるのは衛生的ではありません。私も顔を洗おうと思っていたので、一緒に、ディノはうがいをしましょうね」
「うがい…………」
「はい。野生のけものなので、汚いといけませんからね」
「汚い………」
なぜかディノはしゅんとしてしまい、ネアに三つ編みを方向指示器として引っ張られて浴室に連れて行かれる。
「さ、がらがらぺっと、して下さいね」
「…………ぺっ」
「はい!よく出来ました」
よしよしと頭を撫でられて、腑に落ちない顔のまま魔物はふきゅんと頷いた。
その隣では、結構真剣に顔を洗ったネアがいる。
それを見て、また魔物がしゅんとするのが不思議で、ネアは首を傾げた。
「ところで、ディノはなぜあそこにいたのですか?」
「ノアベルトが呼びに来たんだよ」
「むぅ、狐さんが言いつけたのですね」
「ネア、君はあの………生き物を飼うつもりだったんだね?」
「まずは一晩お部屋に入れて懐かせてから、お庭に小屋を…」
「…………庭でなんだね」
「屋内には既に狐さんがいますから。ただし、白い子なので汚れないように、まめに洗う用のホースを購入する必要もあります」
「ホース………」
「まだ夏ですから、お水でもいいのでは?」
「水…………」
落ち込んでしまった魔物を連れて長椅子に向かえば、そこにはけばだち過ぎて膨らんだ銀狐が待っていた。
「あら、狐さん。冬毛のようで可愛いですね」
しかし、狡猾な人間にそう言われてしまい、銀狐ははっとして自分の体を見回した。
確かにいい具合に膨らんでいるので、これはいけると思ったのか、尻尾を振り回してネアを見上げた。
「ふふ、やっぱり銀狐さんはそのくらいふかふかだと可愛くて素敵ですね」
「ネアは、ふかふかが好きなんだね」
「ええ。先程のけものさんも、お腹がふかふかで…」
ネアがそう言った途端、銀狐はまたしてもムギーと叫んだ。
じたばたしているので、ネアは長椅子に張られた布を傷付けないように、さっと銀狐を抱き上げる。
しかし今度は、隣から三つ編みが差し出された。
「ディノ、今は手が塞がっているのです」
「ノアベルトは床でいいんじゃないかな」
「むぅ、そうするとまた荒ぶりそうですので、ここにしましょうね」
そっとディノの肩の上に設置された銀狐は、仲間を得たと思ったのか胸を張って尻尾を振り回した。
しかし、尻尾が当たって髪の毛がばさばさになるので、ディノにすぐさま尻尾を押さえられている。
ネアはディノの三つ編みを受け取り、長椅子に座る事にした。
まずは、この魔物達を落ち着かせることが大事だと思ったからだが、座った途端にディノが膝の上に頭を乗せて来た。
これはかなり甘えている時の仕草なので、ネアは真珠色の頭を丁寧に撫でてやる。
その代わり、肩から落ちてしまった銀狐は、ディノの肩のあたりに飛び乗ってムギムギと苦情鳴きをしていた。
やれやれとネアが自分の反対側の太腿の方を叩けば、さっと駆けてきてそちら側にもたれかかる。
左右から挟まれた形になり、ネアは小さく溜め息を吐いた。
「まったくもう。甘えん坊だらけなので、あのけものさんは諦めるしかありませんね」
「ネア、獣という言葉がいつもと違うのかな?」
「はい。先程の白もふさんは、あのもふもふお腹の愛くるしさから、獣!という猛々しさがなく、柔らかく発音する、けものという感が満載なのです」
「けもの………」
「あら、ディノの言い方も可愛いですね」
「ネア………」
少し頑固な目をしてこちらを見るので、ネアはふわりと微笑んだ。
「そんなに嫌なら、あの白もふさんは飼いません。大事な魔物が辛いと困ってしまいますから」
「うん………」
「あらあら、そんな顔をしないで下さいね。私にも優先順位があるので、ディノを優先しますからね」
「ご主人様!」
「なので、今夜はムグリスになって下さい。やっぱり、大事な魔物のもふもふが一番ですね」
「ご主人様…………」
ふと、反対側が静かだと思って見てみれば、銀狐はお腹を出して眠っていた。
猛り狂って暴れたので、疲れてしまったらしい。
(魔物とは…………)
ムグリスになるべきか悩み始めてしまったディノも静かになったので、ネアはその隙に先程のけもののことを考えた。
白く優美で、雪豹に似た赤紫の瞳の素晴らしい生き物は、ネアが初めて見る生き物だった。
しかし、リーエンベルクの外客棟にいたのだから、お客が連れて来た生き物だったのかもしれない。
(……………は!)
そしてネアは真実に気付いてしまった。
「ディノ、先程の白もふさんは、きっと雪豹アルテアさんのモデルですね!やっとわかりました。灰白のまだらはありませんでしたが、そっくりでしたから」
「…………どうだろう」
「アルテアさんが連れて来ているのなら、また会わせて下さいとお願いしてみます」
「ご主人様…………」
「いえ、勿論ディノも一緒ですよ?大事な魔物が悲しいのは嫌ですから。でも、一緒なら大丈夫ですよね?」
「…………アルテアが嫌がるんじゃないかな」
「そしてその時に、あの首輪も返して貰います。私でなければ外せない、特別な首輪ですから」
ふんすと胸を張ったネアに、膝の上に頭を乗せたままの魔物は、驚いたように目を瞬いている。
「…………あの首輪は、外せないのかい?」
「ええ!リーナさんの飼い主さんのご実家では、竜騎士を目指す方への入門道具として、首輪と鞭のセットも販売してるのです。外れない首輪はとても人気なんですよ」
「…………外してしまうかもしれないね。階位が上なら、何とかなるだろう」
「まぁ、あの子は強いのですね!」
その日の晩餐で、ネアは廊下で出会った白いけもののことをみんなに話した。
エーダリアはなぜか一度噎せてしまい、ネアが首輪をつけてしまった話では、頭を抱えてしまった。
案の定、今日、アルテアがこちらに来ていたようだ。
やはりネアの推理通り、あの白けものはアルテアが連れて来たのだろう。
「あら、アルテアさんならきっと怒りませんよ!なぜなら、よく懐いているが故に立候補までしてきた使い魔さんだからです」
「…………ネア、お前はその獣をよく見たのだろう?気付かなかったのか?」
「雪豹アルテアさんに似てました!あの子をモデルにして作られたぬいぐるみだと思うのです」
「…………そうか、いや、もうそれでいいのだろうな」
「む?」
「しかし、野生の獣ですからね。その後、消毒はされましたか?」
そう心配してくれたのはヒルドだ。
ネアは力強く頷いてから、どれだけ可愛くても野生の獣なので石鹸で丁寧に洗ったと説明した。
「ところで、アルテアさんは帰ってしまったのですか?」
「…………ああ。後回しに出来ない用事が出来たそうでな」
「あら、デートでしょうか」
「…………どうだろうな」
エーダリアが遠い目をしているので、もしかしたらまた悪さをしているのかもしれない。
今日リーエンベルクに来ていたのは、アルテアから提示された訪問予定日には、リーエンベルクは夏季休暇に入ってしまうので、こちらから今日を指定していたのだそうだ。
「用事は済んだのでしょうか?」
「ええ。ヴェンツェル様からの伝言や、統括のお仕事の関係で、ガレンとの連携を取るべきことがありましたからね、そのご相談を」
「まぁ、もし私達がお手伝いするようなことがあれば、言って下さいね」
「ああ。特殊な祟りものの破壊でな。お前達にも、一部を任せる予定だ」
「………破壊、なのでしょうか?」
「今回の祟りものは、屋敷でな」
「…………ホラーハウスなのでは」
「ほらーはうす?」
首を傾げたエーダリアの代わりに、素敵な香草蒸しのチキンを食べ終えたゼノーシュが教えてくれた。
「家の形をした魔物なんだよ。歩いて旅人が入りそうなところに行って、入ってきた旅人を食べちゃうんだ」
「またしても新しい魔物さんを知りました!」
「それが祟りものになったの。食べたものが不味かったんだって」
「なんと迷惑なやつでしょう!美味しくなくても、食べたのは自分ではないですか!」
ネアもこの前、美味しいかなと思って買ったオーツクッキーが、もそもそするだけで美味しくなくても、無駄にしないようにジャムやクリームをつけたりして頑張って食べたのだ。
それを祟りものになってしまうなど、なんと我儘な魔物なのだろう。
「公爵だから、少し大変かも。ネア達は、アルテアと一緒に中に入るみたい」
「……それはつまり、そやつのお口の中なのでは………」
「外から、みんなで普通の屋敷にしておくから大丈夫だよ。食べたものの中に、大事な道具があるんだって。人間じゃないと触れないから、ネアが必要なんだ」
「あら、それなら取り戻さないといけませんね。と言うか、ディノとアルテアさんがいれば、何とかなりそうな気がします」
聞けば、食べられてしまった道具とは、最後に食べられたガーウィンの教会騎士が持っていた密書を入れた箱なのだそうだ。
密書には、人外者の手練れを使った略奪などを懸念して人間にしか触れられない呪いをかけてあり、その呪いが食べた魔物を祟りものにするくらい不味かった原因となったのだとか。
「既に密書の内容を反映した法案は成立しているから、必要性という意味では価値はないのだが、兄上とガーウィンとの間で密約があったと露見するのは好ましくない。あまり、滅多な者には依頼出来ない仕事でもあるのだ。引き受けてくれるか?」
「エーダリア様の大切なお兄様です。勿論、任せて下さい!」
アルテアは統括の魔物として、祟りものになった高位の魔物の処置にあたるそうだ。
(その時に、入れ替わり一位になった、白もふさんのことを聞いてみよう)
夏季休暇でみんなで行く避暑地から戻った翌日から、その任務が始まるのだそうだ。
ネアは、少し憂鬱な魔物のお口の中任務に、白いけものの続報を得られる楽しみを重ねておいた。
その晩、アルテアのカードにメッセージを書いて、白いけものの様子を尋ねてみた。
あの首輪は何なんだと叱られたので、ネアにしか外せないものだと自慢してみれば、謎に罰としてムクムグリス禁止令を出されたので憮然とする。
ムクムグリスのことをアルテアに話した記憶はないので、ウィリアムが言ってしまったのかもしれない。
(むぅ。勧誘したのかもだけど、アルテアさんは毛皮の会には興味ないと思うのだけど……)
とりあえず、ムクムグリスの会はまだ先のことなので、それまでにはアルテアも忘れているだろう。
翌日、リーエンベルクにはアルテアから青い首輪が届けられた。
どれだけ丈夫なんだと苦情のメッセージ付きだったので、アルテアが外してやったのかも知れない。
外す為に呼ばれて、もう一度白いけものに触る野望を抱いていたネアは、がくりと崩れ落ちた。
その後、なぜかムグリスディノのお腹を撫でていると、お前の手つきは洒落にならないとアルテアに叱られるようになった。
あのけものが、お腹撫での報告をしたようなので、アルテアとは意思疎通が出来るようだ。
また遊びに来て下さいと伝言を頼めば、ネアはなぜか頭をはたかれた。
その日リーエンベルクに白けものが出現した理由をネアが知るのは、館型の祟りものを調伏する時のことである。