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ごろつきと十字路の櫛


その日ネアは、死者の国でごろつきに絡まれていた。


なぜそうなったのかと言えば、大通りに脆弱そうな死者の少年と二人でいたからなのだが、そんな無防備な状態でいたのには理由がある。


話に聞いた女教皇だと思われる女性に街で遭遇し、謎に崇められてしまったことを話した結果、グエンのお客だという死にたての少年と一緒のところを見せ、虫よけパフォーマンスをすることになったのだ。


聞けば、その少年は来て早々に街の苛めっ子に絡まれたのだそうだ。


少年がグエンに仕事を依頼したのは、あのグエンがケープを忘れて帰った日のことで、道が閉まっていたという謎の理由で渋滞していた死者達がどっと入国した日があり、その日に入ってきた死者の一人であるらしい。


「これで、僕も少し舐められなくなるといいな。でも、ネア様が傍にいてくれるだけで、謎に頼もしいです」

「私自身は無力な一般人なので、その隣にいる墓犬さんでしょうか」

「でも、全ての中心はネア様なんですよ」


フィリップ少年は、淡い金髪のおかっぱ頭をした、育ちの良さそうな貴族の子供だ。

しかし話を聞いてみると、生まれつき体が弱く、あまり外に出られないままにずるずると体調を悪化させて亡くなってしまったらしい。


ヴェルリアとアルビクロムの領土境界のあたりにある山間部の小さな街の男爵家の生まれで、魔物の薬などを手に入れられないような貧乏貴族であったらしい。


「僕ね、死んだら元気になったんです!」


嬉しそうに言うのは、死後初めてお外を自由に散歩したり、走ったりも出来るようになったから。

そうなってしまうとここでの生活が楽し過ぎるようで、少年の目はきらきらしていた。


「今は、集合住宅住まいだけれど、郵便舎での仕事でお金を溜めて、いつかは家を買うんだ」


そう楽しそうに語る少年の姿に、ネアはいずれはグエンに任せるつもりのあの家を、この少年に安価に譲って貰うことも考えた。

とは言え、正真正銘のホラーハウスなので少し不安もある。


「フィリップさんは、郵便舎のお仕事が大好きなのですね」

「はい!だって、仕事をするのなんて初めてだから、楽しくて仕方ないんですよ!

「こちらの郵便舎は、どんなお仕事をするんですか?」

「夜の内に配達まで出来ないお店の荷物を預かって届けたり、死者の日の切符を配達したりするんです」

「死者の日の切符?」

「僕もまだ使ったことがないんですけど、死者の日は、事前にどこそこへ行くみたいな切符が配られるんですよ」


家族が移転したりしても死者が迷わないように、運用されているものなのだそうだ。

死者の日の一週間前になると、地上でも、教会や墓地で死者に訪れて欲しい場所を申告し、その結果が魔術的な謎システムで切符に反映される。

切符を持って死者の門を出れば、その行先にぽいっと吐き出される優しいシステムだ。


「いい運用方法ですね。限られた時間しか地上にいない死者さんが迷子になってしまったら、可哀想ですから」

「昔は、家族に再会出来なかったから帰らないって、ごねる死者が多かったみたいですよ」

「…………人間は逞しいですねぇ。管理者側の苦労が目に浮かぶようです」

「でも、教会で殺された死者と、火事の死者、水難事故の死者は帰れないんです。郵便舎に勤めていると、それがお気の毒で……」

「帰れない方達も、帰ってこれない家族を持つ方達も、きっと悲しいでしょうね」


死者の国には、そこから離れられない死者というものがいる。

教会兵に殺された者は、咎人として地上には戻れない。

同じように咎人扱いされるのは、生者のまま落とされて死者になった者もだ。

これは、戻って来ることで世を乱す恐れのある死者を門前払いするシステムであるらしい。


そして、火事の死者と水難事故の死者も死者の国を出れない死者である。


その二つの要因の死者は、例外はあるもののそれぞれの死因に紐付く要素に体を持って行かれてしまうらしく、その結果地上に戻れない状態になっているという死者だ。

各自状態の良しあしがあるそうで、例えば全焼で亡くなった死者は、花売りのような黒い影になってしまい、燃え残りがある死者はその部分だけが生前の形を留めていたりする。

水難事故の場合は、じわっと青く滲む影の様になり、やはり水に浸かっていた程度でその色合いや形を変えるのだそうだ。


グエンの家族の状態をウィリアムが覚えていないのも、この理由によるものだった。

ウィリアムが見たと言う赤毛のご老人は、高位の魔術師であったが故に抵抗力が高く、海に沈むのが最後の方であったらしい。

だからこそ、姿形がはっきりしていたのだそうだ。


『火や水は、その系譜の力が強いからな。魔術的な表現としては、そこに取られたという扱いになるから、姿や形を変えてしまうんだろう』


病にもそれを司る者がいるが、病であれば死者の王の領域のものである。

という訳で、病死した死者というのは比較的こちらでは恵まれている死者だ。

このフィリップ少年のように、生前の病の影を落とし、言うならば元気な死者になる。


そんなことを話しながら、二人と一匹が歩いていた時だった。



「へぇ、随分と呑気なお客じゃねぇか」

「フィリップ、お前生者の知り合いなんていたのかよぉ」


あからさまにごろつき感を満載にして話しかけてきたのは、ひょろりと背の高い男と、やけに目つきの鋭い小太りの男だった。


(見るからに怪しいやつという風体の人が……)


どうやらこれが、フィリップ少年がグエンに相談した、道で遭遇して以来、何かと絡んでくるごろつきとやらのようだ。


ネアが焦ることもなく憐れむような目になるのは、たまたま一瞬だけ姿が見えなくなっているだけで、足元の影にプールの飛び込み遊びの要領でぽちゃんと飛び込んだ墓犬がすぐ側にいることと、初めてのおつかいに行く子供を見守る親の要領で、少し離れた位置から、ディノとグエンが見守ってくれているからだ。

この二人は仲がいいのか、話が噛みあっているのかよく分らないが、ひとまずディノがエーダリア達と上手くやっていることだけで、グエンにとっては“いい魔物”というカテゴリになるらしい。

初対面からぶつかることもなく、無難にお喋り出来ている。


因みに魔物達が見守りモードを強要されているのは、今回のパフォーマンスが、フィリップ少年は、教会が崇め奉るネアの知り合いの死者だという周知をさせる為だからだ。

この街の中だけで生活が完結してゆく死者達は、厄介ごとには手を出さないという傾向がある。

唯一の過激派である教会の不興など買いたくないので、知り合い感を演出するだけで虫除けになるという作戦だった。


やはりこちらでも、子供が一人で暮らしてゆくのは大変なことだ。

ましてや世間知らずどころか、寝室から出たこともないこの少年を、グエンはとても心配していた。

そんな少年が変な奴らに目をつけられたとあって、ネアと一緒に街の中心地をぶらつかせることで、怖い知り合いがいるぞと、ちょっとした威嚇をしておこうという魂胆なのである。

上手くいけば、教会派が勝手に良くしてくれる可能性もあるという、一度で二度美味しい作戦なのだ。



(死者同士で、殺したりは出来ないそうだけど、足の引っ張り合いは出来るそうだし)


グエンが直接にごろつきを懲らしめて終わりに出来ないのは、死者同士の傷付け合いが禁じられているからである。

それなのにごろつきを懸念しているのは、掃除婦の出現時などに、ネアがジュリアン王子にされたように、あえて立場の弱い者から囮にするようなことを強いられる危険があるからなのだとか。



そんなこんなで、ネアとフィリップは、目立つようにこの通りの端から端まで二人で歩いてみているところだった。


因みに、市場で偶然出会ってこの流れになったので、ご主人様とのお散歩を邪魔されたディノはかなり恨みがましい視線を送ってくる。

可哀想だがこれも善行の一つであるので、少しのボランティアを許して欲しい。



(そして、フィリップさんの報告より、かなり困ったさんな感じのするごろつきのような……)


フィリップの話では、ごろつきは、気の弱い少年にちょっと絡んでくる苛めっ子ぐらいの言い方であった。

しかし、目の前の二人は、もう少し難易度の高いならず者感がある。


(これじゃ、私が一緒にいるだけでは役に立ちそうにないけれど……)


しかし、ごろつき度が高いなら高いで、周囲の保護者達がどうにかしてくれそうな気もする。



「ど、どうしましょう?逃げますか??」

「周囲に保護者が多過ぎて、寧ろこの方達が不憫という感じしかしませんね……」

「お前、生者だろ。名前を寄越せよ」

「死者の国ってんだからさ、死者らしく死ぬのが流儀だよなぁ?」


空気を読まずに絡んでくるごろつきに、ネアは半眼になった。

死しても尚、こんな風に窮地に陥ってしまうのだから不憫でならない。


(墓犬さんが吠えるぐらいならともかく、ディノがなぁ……)


そう思っていた時のことだった。


「…………っ!!」


隣りにいたフィリップが、小さく悲鳴混じりの声を上げる。

ざぶんと影から顔を出して、不審者を追い返そうとした墓犬が、ぴたりと止まった。


「なんだ?呆けてねぇで、さっさと……」


背の高い方の男が続けて凄んだが、ネア達の視線を辿って振り返ってしまった小太りの男の方は絶句している。

そんな相棒の異変に気付き、背の高い男も振り返った。



どこか遠くで、ゴーンと鐘が鳴った。



「………ふぇ」


気の抜けた声を漏らしたのは、どちらのならず者だろう。

二人が振り返った先に立っていたのは、兎頭が特徴的な掃除婦だ。

箒と籠を背負った掃除婦が、腕をばきばき鳴らしてみせ、片手ずつでむんずっとならず者を掴むと、まるでじゃがいもでも投げるようにぽーんと後ろに投げ飛ばした。


その横に立っていた枝切り鋏の方の掃除婦が、お姉さんが妹の面倒を見るようにネアの頭を撫でてくれる。

頼りになる女性という存在に恵まれなかったネアは、それだけでぐっときてしまい、喜びの笑顔になった。


「有難うございます!」

「………ごじゃいます」


隣で絞め殺されるような声が続いたのではっとすれば、フィリップの目が虚ろになっている。

掃除婦がどんな存在なのかは知っているだろうし、この近さは怖いのだろう。

がたがたと震えていた。


「この死者さんも愛くるしいお仲間ですので、どうぞよしなに」


ネアは一拍考えてから、そう宣伝活動をしておいた。

こくりと頷いた掃除婦が、ガチガチに強張っているフィリップの頭もふわりと撫でて去ってゆく。

日陰プールから這い上がってきた墓犬が、やれやれという感じでネアの隣に座った。


(掃除婦さんは、箒と籠の方が腕っ節の強い感じで、枝切り鋏の方がお姉さんみたいに優しい感じ?)


ネアは、ナイスバディなお姉さんに頭を撫でられてほわほわしていたが、我に返ってフィリップの方を見てみた。

先程まで震え上がっていたが、頭を撫でられてしまって大丈夫だっただろうか。



「…………わぁ、……すごく恰好いい」


震えの止まったフィリップ少年は、撫でられた頭に手をあて、とろんとした目でならず者達を引き摺ってゆく掃除婦を目で追っている。

それはまさに病弱な少年が颯爽とした強い女性に憧れてしまう絵面そのものであったので、ネアは微笑ましい気持ちで頷いておいた。


掃除婦の出現に怯えていた住人達は、ならず者たちを担いで掃除婦達が去ってゆくのを、物陰や家々の扉の隙間から覗いていたようだ。

掃除婦達の姿が消えると、ぽつぽつと人影が戻り始める。

街の中心地にある家々の人々は、流石に対応慣れしているようで、出たり入ったりの見極めが的確だ。


「ネア、危ないからこっちにおいで」


解決までは大人しく見守ってくれたディノが、よろよろと歩いてきてネアの手を握った。

いつもならご褒美にもなる三つ編みリードでもあるが、目が完治するまでは髪の毛を引っ張らないように素直に手を繋いでくれるので嬉しい変化だ。


「そうだな、予定外が重なっちまって、もう充分過ぎるくらいの牽制になったろう」


そう口にしたのはグエンで、まだ掃除婦の消えた方をうっとりと眺めているフィリップの肩に手を乗せる。

振り返ったフィリップ少年は、目を輝かせて、契約したばかりの便利屋さんに報告を始めた。


「グエンさん、掃除婦はもっと怖いものだと思ってたんですが、恰好いいですね!」

「………いや、普通はおっかないもんだぞ。くれぐれも、自分から近付いたりすんなよ?」

「ガウ」

「ほら、墓犬も同意見だ」

「頭をぽんってしてくれたとき、いい匂いがしました」

「冷たくはなかったのか……」

「氷みたいでしたけど、いい匂いで格好いい印象の方が………。それに、胸が大きくて腰がすごく細いです!」

「………お前さんは、悪い女に惹かれる傾向がありそうだな」

「掃除婦が良く出現する通りの家が買えたら、窓から見れるのかなぁ……」


すっかり初恋に盛り上がってしまったフィリップ少年の姿に、ネアは数歩下がって少し離れ、大人しくディノと手を繋いだままその様子を後ろから見守る。

息子世代の少年には軒並み甘い気がするグエンがあれこれ説得している姿は、何やらお父さんと息子のようで微笑ましい。


「すっかり憧れてしまいましたねぇ……」

「人間は、時々捕食者に自ら近付いたりするけれど、なぜなんだろう……」

「今回の場合は、悪いやつから助けてくれた素敵なお姉さんなのでしょう」

「ネアは怖くないのかい?」

「ウィリアムさんと再会した日に、転んでいたところを助けてくれた素敵なお姉さんですね。………ディノ?」


少し複雑そうな顔をしたディノに頭を撫でられて、首を傾げた。


「ネアを守ってあげる前に、あの魔物が出てきてしまったから……」


拗ねたように言うのは、ごろつきに絡まれたネア達を助けたのが、掃除婦であったからのようだ。

ネアとしては目を損なっているので出来る限り省エネでいて欲しいのだが、仕上げに頭を撫でられてネアも満更ではない感じだったので、ディノは少ししょんぼりとしている。

だからさっき歩いて来た時にはよろよろとしていたのかと考えていると、手を繋いでいるだけでは物足りなくなったのか、ひょいと持ち上げられた。

ネアはお返しに、手が届くようになったディノの頭を撫でてやる。


「私は、ディノが後ろにいたので少しも怖くありませんでした。やっぱり、大事な魔物が傍にいてくれると安心感がありますね」

「…………ご主人様!」



機嫌を直した魔物と手を振り、臨時ボランティアで貢献出来たグエン達と別れて帰路についた。


今日は、もう外をうろうろしなくても備蓄は充分なのだが、せっかくディノが来たのでこちらのプチ観光としゃれ込んだのである。

帰り道では地面に下してもらって、ネアは自分の足で歩くようにした。

あまり外出が出来なくなった分、運動出来る時間としては有難い。

とは言え体型についてはホラー心労が響いたのか、ディノ曰く減っているようだ。



「そう言えばなのですが、あのホラーなキャンバスを一枚だけ持って帰りたいのです。私は怖くて触れませんので、どうにか手配出来ますか?」

「いいよ。アクス商会に持ち込むのかい?」


空っぽになったキャンバスは、勝手に地下室に戻ることもなくなり、このまま捨てるかどうするかを審議しているところである。


「いえ、ほこりへのお土産にしようと思って。最近は、変わったものを食べることにはまっているらしくて、普段であれば手に入らないようなものが欲しいみたいなんです」

「ほこりだったら、石や煉瓦の方がいいんじゃないかな」

「変わったもの度合いでは、やはりあのキャンバスのような気がします。でも、こちらの煉瓦も一つくらい持って帰ってあげることにしますね」


ネアが名前をつけた可愛い雛玉は、最近あれこれと思春期の悩みを抱えているようだ。

そんな中ストレス発散で食欲も倍増しているのだが、シュタルトのお土産となると無難なものしかなかったので、今回はいいお土産が出来てほっとする。

帆立や石造りの細工物の他に、祟りものや精霊も気に入って食べているようなので、祟りものに近い範疇として、あのキャンバスに目を付けたのだ。


目につくものを片っ端から食べてしまうので、うっかり新婚さんの奥様を食べないよう、この前ゼベルが結婚したことを手紙で報告した際に最近のお気に入りの食べ物を教えて貰った。

文通が出来るくらいに成長したのに、手紙の半分が食べ物のことなのが可愛い雛玉である。



「む。落し物がありますね……」


街の中心地からネアの買った家まではさほど離れていない。

大通りを二本挟んで一度だけ曲がるという簡単な道順だ。

そんな、二本目の大通りのところで、石畳の道路の真ん中に綺麗な櫛が落ちていた。


踏まれたりして割れてしまうと可哀想なので、慌てて拾ってあげようとしたネアは、繋いだ手をディノに引っ張られる。


「ディノ?」

「十字路の真ん中に身に着けていたものが落ちている場合は、拾ってはいけないよ」

「…………そうなのですか?」

「落とし主の背負った呪いや、災厄を引き受けてしまうんだ。元は妖精の風習だけれど、ここ数百年は人間もよく使っているね。あれは、まだ新しい死者のもののようだから、色々と未練があるのだろう」

「その死者さんが、わざと置いていったものなのでしょうか」

「十字路の真ん中に、丁寧に置いてあるだろう?少しだけ、陰りが立っている」

「陰り……」


ディノの目には、その小奇麗な鼈甲と宝石の櫛から黒い靄のようなものが立ち昇って見えるそうだ。


(それをわざわざ置いて立ち去った誰かは、どんな思いだったのだろうか)


死しても尚、その災厄や呪いを誰かに取り除いて欲しいと思ったのか、死へと繋がってしまった運命を未だに呪わずにはいられないのか、どちらにせよ、決して良い気分ではないに違いない。


「むぅ」

「ガウ!」


少し不憫になってしまったのが伝わったのか、隣を歩いていた墓犬に叱られてしまった。

魔物も繋いでいる手をぎゅっと握ったので、ネアは淡く苦笑する。


「自分が幸せだと、変に心が広くなりそうで困りますね。でも、私は自分のことで手一杯のちっぽけな人間ですので、あの櫛を拾ったりはしないので安心して下さいね」

「ガウ……」

「む!確かに、強欲さに負けても拾いかねない綺麗な櫛ですが、そんなことよりも、早く帰って素敵なケーキを食べるのです!墓犬さんも、ロールケーキ食べますか?」

「ガウ!」


カードで食べたいものの話をしたとき、ネアは単なるお喋りだと思ったので色々と我儘なことを書いた。

そこには、ザハのケーキも含まれており、ディノは状態保全の魔術をかけてケーキも買ってきてくれたのだ。


(とは言え、墓犬さんは味が濃く感じるかもしれないので、控えめにあげてみよう)


ザハの生クリームと果物たっぷりのロールケーキは、一本で買ってきてくれたのでみんなで分けようと思ったものの、地上の食べ物は味が濃すぎて食べれないというグエンは、最初から辞退の申し出があった。

なのでまずは、輪切りのものを四等分くらいにして味見して貰おう。

大丈夫なようであれば、残りも食べて貰えばいいのだ。



そんなこと考えて、微笑みを深めたネアは知らなかった。


ネア達が素通りした十字路の櫛を、思いがけない人物が拾っており、後日地上でお目にかかることになるのだ。

そのせいで地上でもホラーな目に遭う羽目になったネアは、その櫛をどこかに捨てておかなかったことを心から後悔した。









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