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掌に咲く花と婚姻のしらべ



その夜になって、リーエンベルクにやっとグラストとゼノーシュが戻って来た。

二人とも悪夢の間中外で領民達の為に働いていたので、くたくたくたかと思えば、グラストは久し振りに友人達と夜通し語り合え、力を合わせて作業が出来て楽しかったらしい。


清々しい笑顔でエーダリアと話しているグラストに対し、ゼノーシュの顔はぐったりと疲れている。


「ゼノ、大丈夫ですか?お外の悪夢はやはり大変だったのですね……」

「大変だった。女の子がみんな、グラストに慰めて貰おうとするんだよ」

「そちらの危機でしたか!確かにこれ程の好機はないでしょうし、ご婦人方は必死でしょうね」

「僕、頑張った!」

「そんなゼノに、私の隠し財産を進呈します」

「クッキー!!」


余程の心労だったのか、クッキーに喜ぶゼノーシュの声はいつもより高めだ。

キャラメルと杏のクッキーの箱を抱きしめ、ぴょんと飛んだクッキーモンスターにネアも破顔する。

可愛さの補充はこれで完璧である。


(質素に生きるのかと思ってたから備蓄したクッキーだけど、普通にご飯も美味しかったし……)


悪夢の中では開封されることなく終わったクッキーだが、こうして大仕事を終えたゼノーシュにあげることが出来て良かった。

さっそく開けて食べているゼノーシュを見るだけで、幸せな気持ちになれてしまう。


今回ネアはあまり働けていなかったので、羽飾りの悪夢の中で狩ってきた葉っぱ型の謎の生き物をエーダリアに進呈したところ、一か月分のお給金に相当すると笑顔で受け取って貰えた。

ディノが合流してから急場しのぎでぱぱっと狩ったのだが、喜んで貰えて良かったと一安心だ。


「ネアは、どんな悪夢に落ちたの?」

「確定されてしまいました」

「エーダリアが話してたよ。ウィリアムがいても駄目だったの?」

「と言うより、アルテアさんの悪戯で将来に不安を抱いた結果、ウィリアムさんを籠絡すべくウィリアムさんの悪夢にもお邪魔しました」

「………凄いことになったのだけはわかる」



クッキーモンスターの眼差しが駄目な姉を見るそれになってしまったので、ネアは慌てて事のあらましを説明した。


「僕、ウィリアムはネアのこと好きだと思ってたけど………?」


しかし今度は、そちらの疑問を提示されてしまう。


「あの通り、面倒見の良い方ですから。でも、この度、友達の妹的な位置からやっと直接の繋がりに進展したので、念願通りにお爺ちゃんと孫という空気感の素敵な関係性を構築出来そうなんです」

「…………孫じゃないと思うなぁ」

「………玄孫?」

「お労しい…………」


ゼノーシュがぽそりと何かを呟いたが、クッキーを食みながらであったので聞き取れず、ネアは首を傾げた。


「それと、ゼノに教えて欲しいことがあったのです」

「どうしたの?」

「実は、悪夢の間はアルテアさんが何かをしでかしそうだということで、事件の前にウィリアムさんが核とやらをくれたのですが、回収されぬまま旅立ってしまいました」

「…………核」

「お薬のように飲まされたのですが、こやつを返却する方法はありますか?……お腹を切る以外の方法がいいです」


ゼノーシュは27枚入りの最後のクッキーを食べつつ、可愛らしく首を傾げた。

破壊力抜群の可愛らしさだが、なぜか目には微かな達観が見える。


「核はね、その魔物の力や魂の欠片なんだよ。ディノの髪の毛と同じ」

「………む」

「だから、僕は最初からウィリアムは、ネアのこと大好きだったと思うな。でも自覚してなかったのかも……」

「むぅ、自覚なしのお爺ちゃんだったのですね」

「…………お労しい」


ゼノーシュにネアが貰った核の形状を説明すると、恐らくそれはウィリアムの血の結晶だろうということになった。

少し猟奇的なので、出来れば魔術の結晶とかだと嬉しかった次第である。


「でも、どうしてディノに相談しなかったの?」

「まずはゼノに概要を教えて貰ってから、上手に言葉を選んで相談しようと思いまして」

「ネアは何だか知らなかったんだし、そのまま話しても大丈夫じゃないかなぁ。でも、上書きするから少し手はかけられるかも」

「上書きとは何でしょう?」

「ウィリアムの血の効果を消す為に、ディノのものをより多く摂らせる感じかな」

「…………血」


ものすごく嫌そうな顔をしたネアに、その程度の血の採取は簡単なのだとゼノーシュは教えてくれたが、ネアはあの魔物にまた怪我をさせるのかと少し落ち込んでしまった。

それなら、ウィリアムがまた来てくれた時にでも回収して貰うとして、暫くは静観する方向でもいいかも知れない。



「そう言えば、ゼベルが結婚したよ」

「ゼベルさんが?!」

「うん。でも事前申請してないから、エーダリアが呆れてた」

「悪夢の滞在中にですか?」

「遮蔽の中で理想の相手に会ったんだって。ネアが好きそうな可愛い女の子だった」

「や、やっと女の子のお友達が出来るかもしれません!!」


正直、顔見知りの結婚情報よりもはしゃいでしまったネアに、ゼノーシュは悲しい現実を教えてくれた。


「獣型の妖精だから、ネアとは喋れないかも」

「…………それはまさか、ゼベルさんも喋れないのでは」

「飼うよりは結婚するってなったみたい」

「結婚とは………」


しかも、どうやらお相手はネアが拾い上げた灰紫の夜狼のようだった。

あまり他種と交わらない夜狼が、たくさんの見知らぬ人達が怖くて遮蔽施設のクローゼットの中で震えていたところを、見付けたゼベルが大喜びで抱き上げて、ほぼずっと面倒をみていたのだそうだ。


その愛情の深さに夜狼もゼベルが大好きになってしまい、この度の慶事となったのだとか。

ある意味とても、吊り橋効果が生きた恋の顛末である。


「だから、今は掌に花が咲いているんだ」

「掌に花が咲くのですか?」

「うん。妖精を娶ると、掌に花の模様が浮かび上がるんだよ。消えちゃうと、相手に婚姻が破棄されたってことだから、咲いてる間は結婚してるってことになるんだ」

「それは、喧嘩の翌朝とかに見るのが怖いやつですね………」


これは、異種族婚であることと、お相手の妖精が女性である場合のみの現象であり、理由は解明されていないらしい。

妖精を伴侶とする場合、婚姻が長期に及ぶと羽が生えてくるという説があるが、夜狼には羽がない。

その場合はゼベルに尻尾が生えてきたりするのだろうかと、ネアは少し楽しみになった。


「ゼノは、夜狼さんなら大丈夫なのですか?」

「結婚してるから平気!」

「未婚だったら駄目だったのですね……」



そこで、エーダリアからの通信に応じていたディノが戻ってきた。


「エーダリアはダリルのところに少し残るそうだよ。ヒルドはこちらに戻るようだ」

「残ると言うよりも、居残りさせられてしまったような気がします……」

「ゼノーシュ、こちらはもういいよ」

「うん。でもここでグラストを待ってる」


ディノは、ゼノーシュのことは全面的に信頼しているようなのだが、これもある意味お相手がいる魔物だからなのだろうか。

ゼノーシュの言葉からそう推察し、ネアは得心する。

こうやってネアの見張りを頼んだりと、どこかゼノーシュのことを頼っている場面も見受けられるので、このまま仲良くしていって貰いたい。

異動などがないように、そろそろ裏で悪辣に画策するべきやもしれない。


「ディノ、ゼベルさんが夜狼さんと結婚したようですよ」

「夜狼と…………?」

「私が硝子戸のところで拾った、灰紫の可愛いあの子です!女の子だったのですねぇ」

「……………あの獣と」


そこでディノは少し考え込んでしまい、やはり知り合いが結婚したりすると感慨深いのだろうかとほこほこしていたネアは、次の言葉で凍りついた。


「獣と結婚する人間もいるくらいだから、やっぱりネアも…」

「やめ給え!ゼベルさんは、元から狼大好きな病気の人です。皆違ってそれぞれに嗜好がありますので、一律に考えてはいけません!!」

「でも、君も毛皮の生き物が好きだろう?」

「可愛いと思っても、恋愛感情を持つことはありませんよ」

「プールにいた人間が、何とも思ってなかった筈なのに、可愛いと思ってたらいつの間にか好きになってたって話していたよ」

「なぜいつも、誤解を拗らせるようなお喋りを聞いてきてしまうのだ……」


グラストを待って同じ輪に残されているゼノーシュも、困ったなぁという目でこちらを見ている。

魔物中での最後の常識枠は、このゼノーシュなのではないかとネアは思い始めていた。


(………まずい、考え込んでしまっている!)


あまり困った結論を出されても困るので話題を変えようかなと思っていたネアは、リーエンベルクに戻ったのか、こちらにやってきたヒルドにぱっと顔を輝かせる。

無意味に微笑まれてしまったので、ヒルドは少し驚いたようだ。


「さすが、この距離でもわかってしまうものですね」


やって来たヒルドが、そう言って小さく微笑んだ。


「…………この距離?」

「僕もわかるよ!ジェラートだよね!!」

「ジェラート!!」


天使の様に微笑みを深めたゼノーシュに続き、ネアも思わず弾んでしまう。

簡単な晩餐をいただいた後だが、ジェラートは別腹の代表ではないか。


ヒルドは大きな紙袋を三つ程持っており、肩に乗った銀狐もジェラート好きなのか、尻尾を千切れんばかりに振り回して風を起こしていた。

紙袋を開ければ、白いケーキ箱のようなものが入っていて、そこにカップに入ったジェラートが何種類も並んでいる。

溶けないように冷気を放っているのは氷の魔術だろうか。


「店の主人曰く、今回の悪夢で保冷魔術に破損が出たそうですので、少し分けていただきました」

「ご店主さん、何て素敵な方なのでしょう!」

「有名な店なので、災厄明けの皆へのふるまいという面もあるようですね」

「その魔術の破損のせいで、困ってしまったりはしませんか?」

「すぐに修理できるものですし、ウィームからの支援金が出るので損失という意味では問題にならないでしょう。ダリルと、ダリルの弟子達が手配をしておりまして、既に申請者の元に入り始めているようですよ」

「…………とても早いのですね」

「他領と比べて優遇されているのは、ダリルの弟子たちが有能であることと、ウィームはこのような場合の予算が潤沢であることですね。今回は想定以上に被害が少なかったことも幸いでした」


ネアはびっくりしてしまったが、お金は、ぽこんと申請者の手元に届く魔術仕掛けなので振り込みなどの手間もかからないようだ。

おまけに今回の支援金の計算や配分には、宰相家のご子息も応援に駆け付けているのだとか。

大切な長男がダリルに取られてしまった宰相の苦労が偲ばれるが、ウィームとしては有難い限りである。

有能なのはその宰相の息子だけでなく、他にも神童と言われていたガーウィンの青年など多彩な顔ぶれのボランティアがおり、ウィームの災害復興は異様に早い。


しかし、弔慰金については、別途お悔やみの言葉などの手紙が同封されるのでもう少し時間がかかるそうだ。


「とは言え、魔術の織りが深いところについては、少し丁寧に修復しますので、明日以降になりそうです」

「やはり直し方が違うのですね」

「ええ。アクス商会からも声がかかっておりましたので、目をつけられないように早めに直してしまいたいのですがね」

「アクスに目をつけられてしまうと困るのですか?」

「公共施設には機密も多いので、やはり民間には修復依頼を卸し難いものなのです。しかし、今回は悪夢に際して商品の融通を利かせていただいたので分が悪いところでしたが、彼がいて助かりました」

「…………彼?」


詳しく聞けば、保管庫のある通りに敷かれた魔術基盤に破損が出たそうで、それについてはノアが片づけると聞き驚いた。

いつの間にかエーダリアと業務上も生かせる個人契約を結んだそうで、初仕事で貰えるらしいよく弾む高級ボールの為に全力で修復するそうだ。

本来はリードを買い与えて貰う筈だったのだが、ノアの意向でボールになったらしい。


(お給金が、ボール………)


そもそも、銀狐用のボールは既に何種類かある。

ネアの買ってやった一般的なボールに、グラストのくれた獣の毛皮が張られて噛みごたえのあるボール。

自分で買ってきたボールに加え、最近一番のお気に入りのエーダリアの持っている釣竿式の棒と紐のついたボール。

そんな中でも、賢明な者達があえて与えなかった弾むボールを買い与えてしまうなど、恐ろしい限りである。


(ものすごくボール遊びの可動範囲が広がるし、永久運動率が高まりそうだから投げる側の運動量も大変なことになりそう………)


そのボールには関わらないようにしなければと、ネアは心に誓った。

その隣で、全ての箱を開けたゼノーシュが幸せそうに教えてくれる。


「ネア、いろんな種類があるよ」

「ゼノ、私は何でも嬉しい派ですので、先にお好きなものをどうぞ」

「………いいの?」


ほわりと微笑んだクッキーモンスターの顔を見れただけで、充分なのである。

そしてゼノーシュは、クッキーモンスターの名に恥じぬチョイスで、クッキーと苺のジェラートを選んでいった。

氷菓子は、あまりもそもそしない方が好きなネアにとっては、嬉しい棲み分けだ。


ディノの袖を引っ張って仲間に入れつつ、狩人の目で覗き込んだ箱には、幾つものカップが入っている。

オレンジと紅茶のものが欲しいらしい銀狐の目線がそこを突き刺しているので、ネアはさっとそのカップを取り上げてヒルドに渡した。


「狐さんの分です」

「ネア様は宜しいのですか?」

「他に欲しいものが残っているときは、奪い合わない主義ですから。ヒルドさんはどれがいいですか?」

「いえ、私はその場でいただきましたので結構ですよ。残った物は、厨房や家事妖精達に持ってゆきましょう」


ネアが真剣に見ているのは、カップの側面に書かれた手書きの商品名だ。

林檎とシナモン、ミルクと薔薇と木苺が二個、マスカルポーネと蜂蜜が四個、葡萄とラベンダーが二個、そして西瓜に芒果がそれぞれ五個くらいずつある。

一つに選びきれない素晴らしさなので、ネアは後日この店を訪れてみようと心のメモに書き留めた。


「私はこれをいただきますね」


ネアが選んだのは、ミルクと薔薇と木苺のものだ。

ディノが林檎とシナモンを見ていたので、一口貰おうという魂胆である。

案の定ディノがそれを取ったので、一口どうぞという心の余裕を見せつける体で、無事にディノのものも一口貰うことに成功した。


「…………美味しい!」


箱に入っていた使い捨ての木のスプーンですくって口に含むと、ふわりと薔薇の香りがする。

薔薇の香りも食べ物として邪魔にならない程度の上品さで、想像していたよりずっと美味しいジェラートだった。

ディノのものも、林檎が思っていたよりも香り高く、素材から引き出される味が最大限に生きている。


(あちらは…………)


他者と食べ物を分け合うのはあまり好まないのだが、相手が狐だとさすがに気にならない。

容赦なく銀狐のものも貰えるかなと振り返ってみれば、ヒルドの肩から下され、椅子の上で夢中で食べている。

カップに顔を突っ込んでがつがつと食べている姿に、ネアはすっと視線を逸らした。


ヒルドが濡れたおしぼりを持っているので、食べ終わった途端に顔を拭いてやるのだろう。



「思わぬところで幸せな気持ちになってしまいました。ヒルドさん、お土産を有難うございます」

「いえ、折角ですからね」

「明日の修復では、何かお手伝い出来ることはありますか?」

「実は、その件でお願いがありまして。明日も休日のところ大変申し訳ないのですが、禁足地の森の様子を見てきていただけますか?こちらの目が届かないところで土地が荒れていることもありますので、視野の広い方に見ていただきたい」

「わかりました!変なところや、荒れている部分がないか調べてきますね」


やっとお仕事を貰えたネアは、喜んで頷いた。

少しだけ子供のおつかい的なやつかと勘ぐったりもしたが、いつもであれば騎士や魔術師などの複数名で見回りせねばならず、時間がかかる厄介な仕事なのだそうだ。


「飛び地の森はどうするんだい?」


ふと、ディノがそんなことを尋ねた。


「飛び地もお願い出来れば幸いです。あの土地へ入るのには、いささか難儀しますからね」

「いいよ。ネアは飛び地の森に行くのは初めてかな?」

「飛び地の森……?」


首を傾げたネアに魔物が教えてくれた。

飛び地の森とは、元は禁足地の森と繋がった土地であったらしい。

ウィームに広がっていた原始の森は、禁足地の森と、リーエンベルクの地下、歌劇場や大聖堂の地下にも残っている。

だが、飛び地として大聖堂の近くにも小さな森があるのだそうだ。


ここは魔術的な要素が強く残された土地なので、不用意な立ち入りが禁じられているらしい。


今は季節的に違和感がないものの、この森の中だけは常に冬のウィームなので、夏には不思議な光景が見られると、魔術を詰めた銀を鍛えた柵ごしに、観光客達が必ず立ち寄る場所になる。


「楽しみです!」

「ご主人様は迷子にならないようにね」

「………そんなに広かったでしょうか?」

「広いよ。あの中には幾つかの森が残っているから」


どうやら、話に聞くより遥かに不思議な森のようだ。

ネアはわくわくと心を弾ませ、ふと、聞こえてきた音楽に目を瞠った。



「………音楽が聞こえますね。ワルツのような、不思議で優しい音楽です」

「………ああ、」


銀狐の口を拭き、残りのジェラートを家事妖精に預けていたヒルドが、顔を上げて微笑んだ。


「私も聴くのは初めてですが、リーエンベルクの敷地の中に住む者が伴侶を得ると、この婚姻の調べが何処からか聞こえてくるのだそうですよ。ゼベルがこちらに戻ってきたのでしょう」

「ほわ…………。どこからこの素敵な音楽が聴こえるのか決まっているのですか?」

「かつて騎士の一人が結婚した際にも聴こえたそうですが、探しても音楽がどこから聴こえてくるのかわからなかったと、エーダリア様が仰っていました」

「素敵な不思議ですね」


この婚姻の調べの不思議なところは、きちんと婚姻の儀式を執り行った後でなければ聴こえないところであるらしい。

今回のゼベルは、自身で儀式を執り行えてしまう魔術師でもあったので、済ませてしまっていたそうだ。



「………何でしょう、この旋律を聴いていると、ふわりと幸せな気持ちになりますね。イブメリアの夜や、薔薇の祝祭で飲んだお酒のような効果があるのかも知れません」

「よい楽器を使っているからだろう。これは多分、この土地と楽器に残された幸せな記憶なんだろうね」

「…………楽器の幸せな記憶」



ネアは、その言葉の温度に微笑んだ。

悪夢も明けた今夜は、素敵な夢が見れそうだ。










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